横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会

横浜流星「ちはやふる」オーディション受けていた 過去の苦悩語る「腐らなくて良かった」<線は、僕を描く>

2022.09.18 19:50

俳優の横浜流星が主演を務める映画「線は、僕を描く」(10月21日公開)の公開記念イベントが18日、京都府・立命館大学にて開催。横浜が、共演の江口洋介、監督の小泉徳宏氏とともに、撮影の思い出や俳優を目指したきっかけについて語った。

  

横浜流星主演「線は、僕を描く」

同作は、2020年「本屋大賞」3位、2019年TBS「王様のブランチ」BOOK大賞を受賞した青春芸術小説「線は、僕を描く」(砥上裕將著/講談社文庫)を実写映画化。『ちはやふる』を青春映画の金字塔に仕立て上げた小泉徳宏監督を筆頭にした製作チームが再結集、かるたの次は水墨画に挑戦する。

横浜流星、撮影振りに立命館大訪問「色んな記憶が蘇ってきました」

江口洋介、横浜流星、小泉徳宏監督(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
この日は映画公開1ヶ月前ということで、ロケ地となった立命館大学で公開記念イベントを実施。本作キャストである霜介役の横浜、西濱役の江口、そして小泉監督が登場した。

京都と滋賀でのオールロケとなった本作。撮影当時の思い出や、京都と滋賀の印象について聞かれると、横浜は「空気が澄んでいて癒されましたし、ロケ地からパワーを頂けました。今日ここに入ってきて、『僕そこで水墨画描いてたな』と色んな記憶が蘇ってきました。本当に良い場所だった記憶があります」と撮影振りに立命館大学へ訪れた喜びをコメント。江口は「最初、ロケ地を鎌倉にするという話もあったんですけど、滋賀になりました。京都で降りてレンタカーで滋賀まで1時間半。そこからまたロケ場所まで1時間ほどかけて、琵琶湖のほとりへ行きました。僕が印象に残っているのは近江商人の屋敷で撮影したんですけど、庭や建物の大きさ、そのスケールが凄くて、こういうところで昔の人たちは暮らしていたんだ、とイメージが湧きました。本当に滋賀があってのこの映画という印象ですね」と滋賀での撮影を明かした。

また、小泉監督は「滋賀で6割くらい、京都で4割くらいの撮影をしました。京都はここ立命館大学や結婚式場で撮影させてもらいました。滋賀はロケーションとしては珍しいと思われる方も多いと思うのですが、本当に撮影しやすいんです。京都のような雰囲気も出せるし、どこでもない日本のような景色といった撮り方もできる。京都はもちろん、どこを撮っても京都の雰囲気が出る。滋賀は両方の雰囲気が出せるというのが、撮影する側としては嬉しいですね」と監督目線でのロケ地の魅力をコメント。1年前の撮影の思い出を振り返った。

小泉徳宏監督、映画監督目指した理由は?

小泉徳宏監督(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
さらに、今回は大学でのイベントということで、学生時代に映画監督を目指した理由について聞かれた小泉監督は「学生の時に1度国語の授業で学生映画を撮るという機会があったのがきっかけです」と回答。

「それが非常に面白くて」と続け、「自分で作るというのを経験したときに、『こうやって作っているのか!だったらこうしたらもっとあのドラマ、映画のようになるんじゃないかな』と工夫し始めて、そこから、もっとこうすれば…もっとこうすれば…の繰り返しで気が付いたら今になります。その途中で、大学生の時に映画監督のワークショップに参加して、そこで初めて本物の映画監督に会ったんです。『本当に(映画監督って)いるんだ!』と思ったときに同時に、もしかしたら自分もなれるんじゃないか…と勘違いしたんですよね(笑)。明確に意識したのはその時ですね」と学生時代を回顧した。

横浜流星「立ち止まっていることの方が1番怖い」俳優業への思い

「線は、僕を描く」公開記念イベントの様子(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
そして本作は、悲しい過去を背負った主人公・霜介の「喪失と再生の物語」でもある。映画の中でも三浦友和演じる湖山や江口演じる西濱が、霜介や千瑛(清原果耶)を素敵な言葉で励ますシーンも印象的だが、霜介と同じように困難なことに立ち向かわなければいけない時、新しいことにチャレンジする時に、どのように乗り越えていくかを聞かれると、横浜は「まず僕らの仕事は、挑戦していかなければいけない仕事ですし、そこで立ち止まっていることの方が1番怖いので、失敗とか何があるんだろうという不安は怖いですが、それよりも立ち止まっていることが怖いので、1歩踏み出してみて、そこで失敗したら次成功すればいいし、その失敗は自分の経験にも成長にもなるので、そうやっていっぱい失敗して、進んでいけたらいいなと常に思っています」とコメント。

「作品作りに関しては、簡単な仕事ではないですが、観てくださる方々が待っていると思うと、頑張れますよね。この作品が僕らだけのものではなくて皆に届けられると思うと、どんどん(やる気が)みなぎってくるので、辛さはないですね」と前向きな思いを語った。

江口洋介、横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
同様の質問に江口は「いつの間にか時間が経って今ここにいるという感覚が正直なところです」と答え、「俳優になろうと思ってすぐなれるわけではなく、テレビも出て俳優をやりながらも、『俺って俳優と言えるのかな』と思う時期も10年位続きましたね」と吐露。「どんどん新しい役をやっていく中で、自分が変わっていき、気づいたら自分のことを俳優と言えるようになりました。かなり長い時間をかけてきたなと思います。この映画の中でも好きな台詞があって、流星くん(霜介)がある過去を抱えて影がある役なのですが、何かを見つけようとする霜介に、僕が演じる西濱が『人は何かになろうとするじゃなくて変わっていくんだよ』という言葉を掛けるんです。原作にもあるその言葉が凄く印象的でした。常に模索していくというか、過去にこだわらず前しか見ないで行くという感覚でやってきたという感じですね」と伝えた。

横浜流星、俳優として1歩踏み出せた理由

江口洋介(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
さらに、俳優や監督として最初の1歩を踏み出したときに怖くなかったか、その『最初の1歩』を踏み出す時のモチベーションについて聞かれると、小泉監督は「監督になろうと決めたときは楽観的でしたね。無謀な考えでしたが、いざデビュー作の話が来た時は恐怖でしたね。それまででずっと監督になろうとして、そのために色々なことをやってきたのですが、いざ決まった時はとても怖かったです。その怖さを克服するには、怖くなくなるまで練習するしかない。『やれることを全部やってダメだったら仕方ない、と思えるまで頑張る』というモチベーションでやり切りました」と、映画監督になる決心をした当時の苦悩を語った。

横浜は「自分はありがたいことにスカウトされる機会を頂いたので、最初は好奇心が強かったですね。その当時はどちらかというと空手の方をメインにしていたし、自分はいずれ格闘家になるんだと思ってました。でも高校2年生の時に戦隊もののオーディションに受かって、1年間芝居を学ぶ場を頂け、そこで芝居が楽しいなと思いました」と当時を回顧。

「そして高校3年生のときに大学進学するか、格闘家の道にいくか、芝居の道を選ぶか迷ったのですが、自分が1番楽しいと思えるのが芝居でした。やはり怖さはありますけど、戦隊ものが終わってからも、それこそ『ちはやふる』のオーディションを受けましたが、落とされ(笑)。半年くらい仕事がなかったんですよね。あれ、楽しいと思って決心して『この仕事で生きていくぞ!』と決めて、半年間仕事がなかったときは『どうしよう…』と思いました。でも先程監督がおっしゃっていたように、そこに怖さがあっても自分がやるべきことをやっていこうと思い、ワークショップに通ったり、色々なインプットをしたりした結果、色々な機会を頂けて、今ここにいます。腐らなくて良かったです。あの時」と、俳優として本格的に動き出した当時の難しさや思い出を赤裸々に振り返った。

江口は「やっぱり現場に行って仕事を頂いたのに出来ないんですよね。でもそこには、芝居が出来ている先輩がいっぱいがいる。ちょっとくらい演技の練習をしてもすぐにできないんですね。その時には時間があったので、殺陣の練習をしたり、馬に乗ったり、ダンスの練習や発生の練習をしたり…何年間かそういう練習をしてきたのですが、『やっぱり向いてないかな』と、少し俺は腐ってたのかもしれないです(笑)。ちょっと無理かななんて思う時期もあったのですが、新しい仕事を貰って演技をすると、またちょっとチャレンジしてみたいなと思わせてくれる。面白い世界なんですよね。大変なんですけど、1つ作品が出来上がると次のことに頭が動き始めて。その繰り返しで、少しずつ自分のことを勇気づけていったという感じですね。そこまでやり続けてきたから今があるという感じなんですね」とコメント。

さらに「ちょっと勘違いするのもいいですよね。『いけるかもしれない!』と」と続け、「今はすぐにネットで凄い才能を持った人が出てくるが出てくるから、それを見て諦めちゃう気がするんですが、俺たちの時は何もなかったから、それがよかったのかもしれないですね。人と比べないのは大変だと思うけど、自分がどのように時間を使っていくかを考えていくのが1番幸せかなと思っています。自分と向き合っていくと時間が大切なんだろうな、と思いますね」と集まった人々へ向けての応援メッセージとも受け取れる熱い言葉や思いを披露した。

100人の観客と劇中シーンを再現?

「線は、僕を描く」公開記念イベントの様子(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
終盤には、公開を楽しみに待つファンに向けて横浜が「僕が完成した作品を観たときは、水墨画の素晴らしさを存分に伝えられるなと思いました。自分も触れてこなかったので、水墨画の魅力ってどんなものだろうと思っていたのですが、監督の演出もあってエンターテインメントとして素晴らしいものとなりました。そして作品を観ると、周りの人への感謝の気持ちを伝えたくなりましたし、自分と向き合うことの大切さや新しいことへチャレンジする人へ背中を押してくれるような作品になっています。是非楽しみにしていてください」とメッセージ。

イベントの最後には、約100人の観客と共に劇中シーンを彷彿とさせるフォトセッションを実施。本作の水墨画監修を担当した小林東雲が描いた水墨画を手に持ち、暖かい空気の中、イベントは終了した。(modelpress編集部)
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