志尊淳(C)2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT

【志尊淳インタビュー】映画監督デビューで感じたプレッシャーと願いとは 芽生えた新たな想い「今までたくさんの人に救われてきました」

2022.02.19 12:01

短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライ アーフィルムズ) Season2」(2月18日より公開)にて、初めて映画監督を務めた志尊淳がインタビューに応じた。

  
自由で新しい映画製作の実現を目指して、年齢や性別、職業、若手とベテラン、メジャーとインディーズの垣根を越え、切磋琢磨しながら映画を作り上げ、4シーズンに分けて公開する短編映画制作プロジェクト。志尊の初監督作品『愛を、撒き散らせ』は、無縁社会に生きながらも“つながり”を求めてもがく人々の物語を描いた。

監督・志尊淳の責任感

『MIRRORLIAR FILMS Season2』(C)2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
『愛を、撒き散らせ』(C)2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
― 今回「MIRRORLIAR FILMS」に参加した理由を教えてください。

志尊:俳優として、監督さんやプロデューサーさん、カメラマンさんなどクリエイターの方々と関わっていく中で、俳優としての視点以外の視野から作品を見てみたいと思うようになっていて。そんなときに、今回の企画のお話を聞いたので、ぜひやってみたいと思い、参加しました。最初は「やらせてもらえるんだったら、やってみたい」という軽い気持ちだったというのが正直なところです。

― ということは、始めてからは軽い気持ちではなくなった?

志尊:そうですね。自分で言うのもナンですが、僕自身が生真面目な性格だというのが一つ。それと、監督という一つの作品の舵を切る立場になると、着いてきてくださるスタッフさんや出てくださるキャストさんがいて。自分の好き勝手だけでは進められないなという責任感が出てきたというのがもう一つです。

― それは俳優として作品に出ているときとは違う責任感ですか?

志尊:似ているとは思いますが、主演を務めるときとはまた違うプレッシャーでしたね。でも逆に、今は最初に持っていたようなプレッシャーは皆無で。作っている途中から「自分に求められていることって別にないな」という考えに変わったんですよね。始めはどうしても「クリエイティブなものをを作らなきゃ」という気持ちが強かったのですが、だんだん「みんなで楽しくできればいいや」というマインドに変換されていきました。

― その気持ちの変換には何かきっかけがあったのでしょうか?

志尊:一番プレッシャーを感じていたのは脚本ができるまでの期間で。初めはいろいろ詰め込んでしまって、脚本の中に余白が作れなかったんです。でもいろんな監督さんとお話をしていく中で「初めての今だからこそ自由にやれるんだよ」「余白があるほうが面白いよ」「好きなことやりなよ」と言ってもらって。そういう言葉をもらって、少し気が楽になりました。脚本ができてからはプレッシャーもなくなって、楽しくやろうと思えるようになりました。

― その結果、『愛を、撒き散らせ』は余白の多い映画になりましたね。

志尊:はい。今回、題材として取り扱っているのは“命”。命に対しての価値観って人それぞれで、その考えは他人に強要するものではない。この映画では、それぞれの命に対する価値観を尊重したいと思ったんです。否定もしたくないし、何かを訴えかけることもしたくない。あくまでも物語として、「こういう人もいるよ」という見せ方をしたかった。そう思ったときに、いろいろな想像ができるように、余白は作っておきたいなと思ったんです。

志尊淳、監督としての願い

板谷由夏(C)2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
― 今作の主演は板谷由夏さんです。板谷さんとはどのようなやりとりをされましたか?

志尊:演技についてはほぼ話していないです。この脚本を作っている段階から、もう主演は板谷さんしかいないと思っていて。板谷さんが出られなければ脚本を変えようと思うほどでした。僕は女優・板谷由夏さんがものすごく好きで信頼していたので、むしろ僕の手を入れたくなかったんです。板谷さんがこの脚本を読んだときに感じたものを尊重してほしかったし、表現してもらいたかったので、僕の想いを詳しく説明することはせず、委ねたところが大きかったです。

― 先ほど「主演は板谷さんしかいないと思った」とおっしゃっていましたが、その理由はどうしてですか?

志尊:まりさんは普遍的な人であってほしかったんです。儚さもあるけど、それは自ら出してほしいわけじゃなくて、背負っているものみたいな形で見えたらいいなと。板谷さんとはこれまで2回お仕事させていただき、共演する中で、本当にいつも笑顔で素敵な方なのですが、ふとした瞬間に儚さと言いますか、悲哀みたいなものを勝手に僕が感じまして。それでいてまったく飾らなくて、生き様や佇まいがすごく美しい方なので、「板谷さんしかいない」と思いました。

― 実際に板谷さんのお芝居はいかがでした?

志尊:もう、素晴らしかったです!板谷さんが作品を大きくしてくれました。これを観た全ての人に「板谷由夏さんが素晴らしい」と思ってもらえると思っています。

― 志尊さんご自身も出られていますが、ご自身の監督作でご自身が演技されるというのはいかがでしたか?

志尊:そこに関してはあまり自分ではワークや割りに関して指示をしていなくて。「もう適当に撮ってください」って。編集で観ていても恥じらいがあり、本当はもっと出ていた予定だったんですけど、自分の出番はすごく減らしました。でも自分が出ることにも意味があると思っていて。自分が作ろうとした物語でもあるし、そこに自分の意志を入れるためにも自分が出る必要があるなと思いました。

― 先ほど余白のお話がありましたが、余白が多い分、作中の音の使い方、聞こえ方も効果的だと感じました。

志尊:ありがとうございます。この作品に一番あってはいけないものは作為的なものだと思っていて。だからSEや効果音はほぼ使わず、リアルに現場で撮った音を生かしています。屋外で撮影をしていて、例えばヘリコプターの音が入ってしまったら撮り直すのが普通だと思うんです。整音のときに選択肢が限られてしまうから。でも僕はお芝居を重視したかったので、屋上のシーンで聴こえてきているサイレンの音もリアルだと思って生かしています。

― 『愛を、撒き散らせ』、ご自身ではどんな作品になったと思いますか?

志尊:自分では何十回、何百回と観てもどんな作品になったのかわからないですけど、先ほど言ったように、僕はこの映画で何かを伝えたいわけではまったくなくて。まりさんの生きる道を見てもらいたい、ただそれだけで。「こういう人がいて、こういう生き方があって、こういうものの捉え方があるんだよ」って。確かに、僕自身にとって“否定されないこと”ってすごく大事なんです。そういう意味では「それぞれの思いを受け入れる世の中になってほしいな」という願いはありますけど、だからといって、この映画でそれを伝えたいわけではないので。あとは賛同して一緒に作ってくれたスタッフさんとキャストさんが「やってよかったな」と思う作品になったらいいなと思っています。僕が言うのはおこがましいですけど、「この板谷さんが素晴らしい」と話題になってほしいし、「このカメラマンさんいいな」「この照明さんいいな」など、この作品に携わったみなさんの次の仕事に繋がることをただただ願っています。

「またやりたい」志尊淳のビジョン

志尊淳(C)2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
― ご自身の監督としての出来はいかがですか?

志尊:時間や予算など、決められたものの中でできる限りのことをしたつもりではいます。もちろん編集していて「この素材があったらな」と思うことはありましたが、それは現場で撮らないと決めた自分の実力ですし、何よりもそれを後悔することは手伝ってくれた人たちに対して失礼なことだなと。だから自分に対しても、皆さんに対しても「お疲れ様」という気持ちです。

― 監督業自体は楽しかったですか?

志尊:とても楽しかったです。またやりたいですね。

― 次は長編も?

志尊:いや~……15分でもこんなにてんやわんやですからね。でもいずれ、撮れるなら撮ってみたいですね。あとは脚本が決まっている作品の監督をやってみたいなとも思いますし、CMの監督もやってみたい。映像を撮るということに限らず、やったことないことに挑戦してみたいという気持ちがあって。俳優として10年間やってきて、俳優の仕事しか知らないので、ほかのクリエイティブに触れて、作り手の意図や想いを、身をもって感じるべきだなと思うんです。

― 今回、映画監督という立場に立ってみて見えたものはありますか?

志尊:今はメディアが増えてTwitterやインスタ、YouTube ……と作品を発表する場所がたくさんありますが、テレビに比べると見られる数は明らかに少ないですよね。作品って、見られるからこそ作れるものだと思うので、見てもらうということに対するアプローチも考えていかないといけないなということは思いました。ただ好きという気持ちだけでも作品を作ることはできるけど、見られなかったらこの仕事で生活はしていけないし、生活できなくなるとみんな辞めてしまうから。だから俳優としても、撮って終わりとは言っていられないなと、今は自分に対しても思います。

― お話をお伺いしてさらに、志尊さんの作る作品をもっと拝見したいと思いました。

志尊:僕もまたやりたいですね。僕はこの業界を生きてきて、仲間や先輩、後輩……今までたくさんの人に救われてきました。その人たちの魅力的なところを僕は知っているから、それを最大限に引き出したいなって。そういう意味では「この人でこんな作品を撮りたいな」というストックはいくつかあって。タイミングが合えばやってみたい、そういう気持ちが今、芽生えています。

(modelpress編集部)

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