山崎賢人は自分を殴り、神木隆之介は目で魅せる―「ジョジョ」実写化で“見えない敵”と戦う男たち<撮影現場レポ&会見>
2017.04.20 12:00
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荒木飛呂彦氏の人気コミックを満を持して実写化、三池崇史監督がメガホンをとる映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が今年8月4日に公開される。モデルプレスは昨年11月、東宝スタジオで行われた撮影を取材。現場では三池監督をはじめ山崎賢人(※「崎」は正式には「たつさき」)、神木隆之介、岡田将生、真剣佑、平野隆プロデューサーが会見に参加し、それぞれが今作にかける想いや撮影のエピソードを語った。
目次
【現場レポ】見えない敵と戦う山崎賢人&神木隆之介
“ジョジョ”と呼ばれる“ジョースター家”代々の戦いを描く「ジョジョの奇妙な冒険」。今回は第4部「ダイヤモンドは砕けない」をシリーズ化を見据えた製作体制で実写映画化する。昨年10月中旬から約1ヶ月間、スペイン・シッチェスで物語の舞台となる「杜王町」(もりおうちょう)のロケを敢行し、帰国後ほどなくして東宝スタジオでの撮影に臨んでいたキャスト陣。大掛かりな屋敷のセット内はホコリまみれのグランドピアノやシャンデリア、蝋燭、バラバラと山積みになった木くずなどで隅々まで世界観が創り込まれ、退廃的な雰囲気が漂う。頭上から光が差し込み、ホコリが煙のように舞う“灰色”の世界で、この日は山崎演じる主人公の高校生・東方仗助と、神木演じる同級生の広瀬康一が“敵”と対峙するシーンが撮影された。スペインロケを経て、特徴的なリーゼントと学生服がすっかり馴染んだ様子の山崎。数年前と比べてガッチリと筋肉がつき、ぐっと逞しくなった後ろ姿に驚かされる。
お互いに変な顔や動きをして笑わせてみたり、雑談をしたりと和やかな山崎と神木だったが、ひとたび撮影が始まるとピリッと張り詰めた空気が漂う。自分の体をグーで何発も殴り始める山崎。既に顔が血まみれの仗助が、追い討ちのように攻撃を受けてよろけるというアクションシーンの撮影だったが、目の前の“敵”はCG合成。想像力を研ぎ澄ませつつ、物理的にも自分の体を痛めつけて気持ちを一気に持っていく必要があったのだろう。
ボロボロにやられた仗助の背後に佇む康一。「康一、隠れてろ!」という仗助の叫び声を聞いて、康一は全身に警戒感をまとわせる。その康一の「表情」にフォーカスしたシーンで神木は一切瞬きをせず、見開いた瞳と眉間のしわの微妙な動きだけで緊迫した心情を表現。カットがかかった瞬間、パチパチと瞬きをして次に備える姿が可愛らしかったが、“オフ”のにこにこ笑顔から一瞬にして“オン”に切り替わる瞬間を繰り返し目の当たりにした。
会見コメント(山崎賢人・神木隆之介・岡田将生・真剣佑)
現場取材の後に行われた会見には、仗助&康一の敵“虹村兄弟”を演じる岡田(兄・形兆役)、真剣佑(弟・億泰役)の2人が合流。会見は東方家のリビングのセットにて。愛されキャラの山崎にツッコミが飛ぶなど仲の良さが垣間見えるやり取りの中で、終始異彩を放っていたのは真剣佑。口調や目つきに億泰を“憑依”させたまま質問に答えるため、プロデューサーから急きょ“状況説明”が入る一幕もあった。― 独特な髪型・衣装を身につけての感想と、撮影の手応え
山崎:やっぱり…かなりグレートな髪型なので。
一同:(笑)
山崎:すごく気に入っています。朝、この髪型をセットして仗助になると「よしっ!」と気合いが入る感じ。今流行っている髪型とかじゃないんですけど、仗助自身、髪型にすごくこだわりがあるので、その髪を作って現場に入るというのは、仗助をやる上ですごく大事な部分になっています。こんな髪型で、こんな衣装を着ることなんて絶対に「ジョジョ」でしかできないと思うし。「ジョジョ」の世界を体感しながら毎日ワクワクして、壁にぶち当たりながら…壁をぶっ壊しながらやっています。そして、シッチェスは本当に杜王町にピッタリの町でした。
神木:僕は初めて、オールバックのような髪型をしました。最初は見慣れていなかったので不思議な気持ちでした。しかし画面を通してみると、その景色も含めて違和感なく馴染むことができました。目に前髪がかかっていることが多いので、それがないと伸び伸びと、目の表情などの芝居ができるのだということは、今回初めてオールバックにして感じたことでした。
賢人くんも話していたように、(シッチェスの)景色がすごくいいので、どんなお芝居をしても町の風景に助けられる部分がすごく大きかったですが、僕の中ではこの作品における康一の役目を意識しました。オールバックですが、おそらく、一番髪型が落ち着いていると思います(笑)。普通なんです。康一という人間はこの映画の中で、いたって「普通」でなければいけないというのは、シッチェスで芝居をしていてすごく感じていたことですし、観てくださる方が康一と共に「こんなことに自分達は巻き込まれてくんだ」と思えるような芝居や表情をしなくてはいけないなと。それができているかどうかわかりませんが、今では康一という人間がきちんと自分の体に染み込んで芝居ができているので、あとは監督にお任せしたいと思います。
岡田:僕もリーゼントに負けないぐらい、すごい髪型をしていまして。スペインの方は、僕を見た瞬間に2、3秒固まっていました。
一同:(笑)
岡田:それぐらい存在感があって。賢人と同じく、メイクをして衣装を着ると、本当に形兆になれる。ふつふつとエネルギーが湧いてくるという状態で現場に臨ませてもらっているので、僕自身もワクワクしていますし、ワクワクさせなきゃいけないと思っています。これからセットで大切なシーンを撮っていくんですけど、また気合いを入れて、みんな一緒に良い作品を作ろうという気持ちで毎日頑張っています。
真剣佑:まず、スペインで髪型を見られると…皆さんのリアクションは「Oh…WOW!」って感じ。だけど康一は、見られても別に…
神木:スルーされる(笑)。
真剣佑:兄貴(=形兆)を見ると、固まる。それで、僕は睨まれるんですよ。
一同:(笑)
真剣佑:一番怖いと思います、僕の髪型は。
神木:あと、体格も大きいからね。
真剣佑:おそらく、こだわり的には仗助と同じくらいあると思うので。(髪を指差して)ここ、色違うんだぜ。「コイツ何だ!?」って感じがするんですけど、ぜひ見て欲しいっすね!
平野プロデューサー:(真剣佑の様子を見て)真剣佑くんは役に入り込みすぎて。ずっと億泰になりきって、毎日生活してるから。
真剣佑:億泰です。とにかく、毎日楽しんでやっています。あんまり記憶が無いんですよ(笑)。
― 撮影中、山崎さんが自分の体を何度もグーで殴っているのを見たが
山崎:気合いです。気合いを入れるためにやりました。実際は銃も食らってないし、ミサイルも撃たれてないので。
― 「ジョジョ」は普通の人には見えない敵(スタンド)と戦うことになる。現場ではどうやってアクションに臨んでいるのか
山崎:スタンドと本体は一心同体。スタンドがダメージを受けたら、本体もダメージを受けるから、戦う時は「自分が戦っている」と想像して、自分もスタンドの動きをやってから本番に臨んでいます。
神木:僕は(スタンドが)見えない役なので…そのままです(笑)。それこそ、仗助が戦っているのを見て「あれ?なんで今この人は攻撃されたんだろう?」と疑問に思うので。そこはお芝居としては、どちらかと言うと見える人よりはそのままのリアクションを取れているのではないかと思います。
岡田:僕は軍隊なので。しかもその中で、指揮官みたいな人のセリフがあって、結構、その人にお任せする感じです…(笑)。
一同:(笑)
岡田:実はまだそこのシーンを撮っていないので、今のは冗談ですが(笑)、色々と考えてはいます。
― では、億泰さん…
真剣佑:真剣佑です。
一同:(笑)
真剣佑:僕は「こいつを潰してやる」という思いでやっています。あと、「背中で殺してやる」って感じですかね。何ていうんですかね…監督。
三池監督:わからん。俺には全然。
一同:(笑)
三池監督:(『背中で殺す』の意味が)俺には全く理解できん。
真剣佑:実際に攻撃するわけじゃないので…
山崎:気合いだよね?
真剣佑:言葉で説明できないんですよね。
山崎:わかる、わかる。俺もやってる。
神木:背中から行け!というような?
真剣佑:背中から「ウォー!バーン!行けー!」っていう感じです。以上です!
― “壁をぶっ壊しながら”という話があったが、実際に現場で乗り越えなければならない“壁”だと感じていることは
山崎:「ジョジョ」の世界は普通の喧嘩ではないけど、大事なのはやっぱり「本当に戦っている」ということ。中身を大事にして、かつ「ジョジョ」の世界も大事にしなければいけない。スタンドという特殊能力で見えないものを出すということがありながら、観ている人たちには説得力のある仗助だと感じてもらえるようにしたいです。
監督・プロデューサーコメント
― 企画の経緯平野プロデューサー:この映画は10年ほど前から構想を抱いていましたが、シリーズが非常にたくさんあり、日本を代表する漫画でもあるので、その中からどのシリーズをどういう形でやっていくのか…そういうことに年月を要しました。特殊な世界観で、本当にちょっと間違うと「おっ…」という方向に行きかねない作品でもある。誰に作っていただければこの作品が多くの人達に届くのか、いい作品だと言われるのかと考えた時、三池監督ならばそれができるんじゃないかと。それで「是非に」とお受けいただき、その後クリエイティブの作業や、この作品をどうやって成立させるのか?ということに非常に時間をかけ。さらに演じる人もとても限定されるということに気づき始めました。その組み合わせが成立するのがこのタイミングだったということで、今日に至ります。
― 第4部を実写化することになった決め手
平野プロデューサー:舞台が日本というのが一番大きいです。そして日本人が主役であること。他のシリーズで登場人物を変えることも検討しました。主役が外人の名前というのもマズいだろうと。そうなると特異な世界になって、日本の映画としてはなかなか厳しいだろう、という点も含めて考えました。第4部はある意味スリリングで面白いんですよ。まとまりがあって人気のシリーズなのでこのシリーズにしました。
― スペインを杜王町のロケ地にした理由
三池監督:まず原作を読んで、杜王町を「素敵な町だな」と思いました。日本人が作った町なんだけど、「こういう町があるといいな、こういう町に住んでみたいな」っていう。だからこそこういうコスチュームも馴染んでくる。実際、バルセロナの市街地のちょっと裏ぶれた路地でカツアゲシーンをやるとピッタリだった。パンチパーマがものすごい似合うんですよ。
要は、今こういう髪型にこだわって、それぞれ自分だけのスタイルでっていうヤンキーたちが減りつつある中で、なんかノスタルジー、懐かしさもあるんですよね。なんか違う国だけど、僕らの中にある原風景みたいな。それがおそらく、荒木先生の中ではあの町、ってなったと思うんですよ。先生の出身地である仙台を、杜王町という架空の町に置き換えて。自分の思い出の中で増幅してきた町を、漫画で再現してるっていう。
それで我々も「どこがいいかな」って色々、ヨーロッパ中探して。ただ、風景のいいところはいっぱいあるんですが、観光映画になりすぎてもダメ。そんな中でシッチェスという町が、スタッフや機材の問題、宿泊の問題も含めて総合的にすごく優れた場所だということで決めました。
― 「シッチェス・カタロニア国際映画祭」などで馴染み深いのでは
三池監督:行っているうちに、ホテルから眺める町の景色と、漫画を読んだ時の杜王町の全景がぴったりリンクしたんですよね。「あ、これはいいかもしれないな」という。海と、近くに山もあって。観光地でセレブ向けな部分がありつつも、リタイアした人達が夫婦で暮らしてたりとか。そういう色んな人達がいる町なんですよね。それは作品を観ていただけるとわかると思うんですけど、非常にマッチしてると思います。
(modelpress編集部)
映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年8月4日公開)
原作:荒木飛呂彦(集英社ジャンプ コミックス刊)監督:三池崇史
出演:山崎賢人、神木隆之介、小松菜奈、岡田将生、真剣佑、観月ありさ、國村隼、山田孝之、伊勢谷友介
配給:東宝/ワーナー・ブラザース映画
<ストーリー>
この町、何かがおかしい
美しい海沿いの町、杜王町(もりおうちょう)。
平和に見えるこの町で、変死事件など次々と奇妙な出来事が起き始めた――。
この町に住む高校生・東方仗助(山崎賢人)。見た目は不良だが、心根の優しい性格の持ち主。彼はスタンドと呼ばれる特殊能力を持っており、仗助のスタンドは触れるだけで他人のケガや壊れたものを直すことができる。一連の事件が別のスタンドを使う者たちの仕業だと知った仗助は、愛する街を守るために立ち上がる!
【Not Sponsored 記事】