葵うたの「同じ場所にずっといるのが苦手なんです」"引っ越し族"がたどり着いた田舎暮らし
原宿を拠点にエンタメをリードしてきたアソビシステムに所属する、27歳の俳優・葵うたの。彼女は田舎で暮らしながら作品に出続けている。そんな葵が、7月31日公開の映画『トーキョーナイトフォール』で東京の底辺でうごめく若者を演じた。勢いを増すアソビシステムに所属しながら田舎暮らしというギャップが気になる彼女に、作品のことやこれまでの暮らしの遍歴を聞いた(前後編の前編)。
――『トーキョーナイトフォール』では、同級生の自殺を目撃して、やがて自身も自殺してしまうアンナを演じています。東京の若者の闇を描いた、ダークな作風でした。
葵 第一印象は、かなりハードな物語だなと思いました。集団心中なんてイベントも描かれます。でも、もしかしたら実際にあるかもしれない話だな、とも思ったんですね。社会に見えない貧困のようなものが増えている中で、他人事ではないと感じました。
――その現場で、心がけていたことは。
葵 ストーリーは暗くても、リラックスして臨みました。清水監督とは、去年『僕の中に咲く花火』で初めてご一緒して、今回が2回目になります。現場では「家族のような空気感で撮りたい」と話してくれましたし、安部伊織さんほか共演の皆さんも優しくて安心感がありました。だから映画では一見怖そうだけど、皆さんの優しさもキャラクターの性格に反映されていると思います。
――劇中でアンナが「親が離婚したのが一番嬉しかった記憶」と語るシーンがありました。葵さん自身の人生で、一番嬉しかった記憶を挙げるなら。
葵 そうですね…昔からおじいちゃん子で、祖父が絵を教えてくれた時のことが思い出です。一緒に河原に行って絵を描いたり、遠近法を教えてもらったりしました。それで小学生の時に、学校で何か賞を取って、すごく嬉しかったのを覚えています。祖父は柔道や空手、もできる人だったんですが、私はスポーツはいまいちで。続かなかったです。自分の好きなことで賞を取れたのが、期待に応えられた感触があって一番嬉しかったです。
――そして、何度も引っ越しをされてきたそうですね。
葵 子どもの頃から、家族で何度も引っ越ししてきたから、抵抗がないんですね。引っ越し族です(笑)。同じ場所にずっと居るのがなんだか苦手というか、飽きちゃうんですよね。「リセット癖」があるのかも。
――今まで、どんな場所で暮らしてきましたか。
葵 生まれは埼玉の西部ですが、茶畑はあるもののそこまで田舎っぽくはない場所でした。芸能活動を始めてから18歳で上京して、まず阿佐ヶ谷に住みました。メイド服を着たお姉さんが働いている喫茶店があったり、銭湯もあってお気に入りの場所がどんどん見つかっていって、楽しかったです。初めて東京らしい刺激を味わえましたね。
――その後は、東京のどこで暮らしを?
葵 23歳の頃に初台に引っ越しました。都内のマンション暮らしを一度経験してみたかったんです。部屋に絨毯があったりして、キラキラしているイメージがあったので(笑)。阿佐ヶ谷以上にザ・東京という感じでした。交通量も多いし、24時間ゴミが出せることに感動したりもしました。それに歩いている人も皆ちゃんとしているというか、スリッパや寝巻きで外を歩いている人なんて一人もいなかったです(笑)。他にも小田急沿線に住んでいたこともあるんですけど、近所が昔はちょっといかがわしいエリアだったそうで(笑)。喫茶店のママやお客さんの雰囲気も、阿佐ヶ谷のスナックとも違いましたね。
――なぜ、引っ越しが好きなんでしょう?例えば葛飾北斎も引っ越し魔だったそうですが…。
葵 なんでだろう?考えたこともなかったです(笑)。ただいろんな環境で暮らしてきた分、人との触れ合いも豊かになったかなと思います。訪れるのと住むのも全然違って、住んでみないとその街のスーパーやカラオケだってどんなものか分からないです。街ごとの特色を体感できるのは楽しいし、今回のお芝居の役にも立っているのかなと思います。
――今はまた田舎で暮らされているそうですね。
葵 大人になって、ある程度自由がきくようになったので、子どもの頃以上に田舎な場所でも暮らしてみたくなりました。田舎への憧れもあったので「レッツ、人間生活!」の気持ちでまた引っ越してみました。
――具体的にはどんな毎日ですか。
葵 自給自足でちゃんとご飯を作ったり、食材をちゃんと選んだりして、健康に生きています。静かですし、近所の地主のおじいちゃんがジャガイモをくれたりするんですよ。今の家へと続く道も、その人が提供してくれたおかげでできたんです。もし提供してもらえなかったら不便な家だったので、そういうことにも感謝しながら暮らしています。
――顔の見える関係性があるのは、心強いですね。
葵 ただ、撮影で一ヶ月くらい家を空けるときは大変です(笑)。家って、人が住まないとあっという間にダメになっちゃいますよね。一番の天敵は草で、手入れしないと庭がすぐ草でボーボーになりますが、近所のワンちゃんの散歩道でもあるので毒になる除草剤も使えなくて(笑)。だから大きな撮影に出る前は、必死に草むしりして出かけます。
(プロフィール)葵うたの あおい・うたの 1999年7月4日生まれ、埼玉県出身。2021年にドラマ『ガールガンレディ』にて初のドラマレギュラー出演を果たす。主な出演作は、ドラマ『パリピ孔明』、『さっちゃん、僕は。』『三人夫婦』映画『僕の中に咲く花火』『時のおと』などがあり、2025年に公開された映画『タイムマシンガール』では初主演を果たし、福岡インディペンデント映画祭にて俳優賞にノミネートされた。7月31日より公開の『トーキョーナイトフォール』、8月28日より公開の『ロストフォリア』に出演。
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