「『月を抱く人魚』-雨月物語より-」メインビジュアル/撮影:山崎伸康

江戸時代のベストセラー「雨月物語」舞台化決定 岡本圭人ら出演者発表【月を抱く人魚-雨月物語より-】

2026.04.17 10:00

上田秋成氏原作のベストセラー「雨月物語」の舞台化が決定。2026年8月7日~8月23日に、東京・シアタートラムにて上演され、俳優の岡本圭人ら出演キャストも発表された。

  

江戸時代のベストセラー「雨月物語」

「雨月物語」は、江戸時代の日本文学における傑作として今の世にも広く知られている。1776年に刊行された全9篇から成る短編集で、各話は幽霊や妖怪、人間の業といったテーマを扱い、その美しい文体と深遠な心理描写が特徴である。近代においては、1953年に公開された溝口健二監督による映画「雨月物語」が特に有名で、秋成の原作から「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の二つを中心に再構築。美しい映像と深い心理描写が国際的にも高い評価を得て、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞するなど、国内外で数々の賞を受賞している。

「雨月物語」の影響は、文学や映画だけでなく、日本の多くの芸術家にも及ぶ。日本画家の横山大観や現代アーティストの奈良美智など、様々な時代やジャンルのアーティストが、この物語の持つ独特な美しさや不気味さにインスピレーションを受けている。

岡本圭人・南沢奈央ら実力派俳優集結

(上段)岡本圭人、南沢奈央(中段)薬丸翔、鈴木結里、上村聡(下段) 松岡依都美、相島一之/撮影:山崎伸康
刊行から250年を迎える2026年、この江戸時代のベストセラーが若きクリエイターらの手によって現代劇として舞台上に甦る。脚本は、2015年に文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員として英国・ロンドンに10か月留学し、2019年にはポーランドのドルマーナ劇場から招聘され、「Ciuf Ciuf!(チュフ・チュフ)」を滞在創作した経験を持つ鈴木アツト。演出は、文学座附属演劇研究所を経て2016年より座員となり、同年ドイツ文化センターの文化プログラムの語学奨学金(芸術分野対象)を得てドイツ滞在を経験した生田みゆき。ともに国内外で活躍する2人が、日本の古典作品に新たな息吹を吹き込む。今回の鈴木×生田版の「雨月物語」も、日本文化が持つ幽玄的な美しさや不気味さをベースにしながら、今に生きる人々の孤独と渇望、過去から続く人間の業と悲しみ、江戸時代の人々が怪奇や幽霊に仮託して見ようとした人間の情念を、時代を現代へ移して描いていく。

絵画モデル勝四郎を演じるのは、トップアイドルとして活躍後、アメリカの名門演劇学校での武者修行を経て、2021年に初舞台を踏み、2024年の「Le Fils 息子」「La Mere 母」で第59回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した岡本。日本画家の宮木を演じるのは、近年数多くの舞台で幅広い役柄を演じ、着実にキャリアを重ねている南沢奈央。勝四郎の友人・作治には、2006年に映画出演をきっかけに俳優活動をスタートし、近年は舞台・映像と幅広く活躍する薬丸翔。作治の恋人・夢子には、文学座に所属し、劇団公演にとどまらず舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」など外部公演にも積極的に参加している鈴木結里。勝四郎の父・大宅には、「かみむら文庫」主宰として「一冊の本を“上演”する」というコンセプトのもと、小説の文章をそのまま活かした演劇作品を発表している上村聡。高名な画家・青頭金子には、2020年に「きらめく星座」「五十四の瞳」で第55回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し、2024年にはNetflix配信ドラマ「地面師たち」で強烈な存在感を見せた松岡依都美。そして青頭金子の執事・丸谷役に、25歳で三谷幸喜主宰の劇団「サンシャインボーイズ」に参加し、舞台をはじめ映画・音楽・落語と多様な表現を持つ相島一之という多彩な顔ぶれが揃う。

時代を超えて多くの芸術家に影響を与え続け、魅了してきた本作を令和の視点から捉え直し、鈴木アツトの脚本と生田みゆきの演出、旬で魅力的な出演陣によって、令和版の「雨月物語」として瑞々しく立ち上げる。

なお、本公演は、世田谷パブリックシアター「あたらしい国際交流プログラム」の第三弾として上演される。(modelpress編集部)

鈴木アツトコメント

『雨月物語』という原作の小説自体が、社会的な栄達や出世、成功ではなく、人間としての誠実さや、本当に大事なものは何かということを描いているので、原作のエッセンスをきちんと捉えて、現代もそれが変わらないということを観客に伝えられればと思っています。日本の古典が持つ価値観や哲学というものを改めて味わってもらえたらと思います。 生田みゆきさんの演出はいい意味でワイルドなところがあり、稽古で彼女の演出を見るだけでなく、話をしたり作品の方向性の打ち合わせをするということだけでも十分に刺激になっていますし、自分の作家性にもいい影響があるように思います。 岡本圭人さんが演じる勝四郎は、美しいけれど居場所がないともがき、より本質的な自分の居所を南沢奈央さん演じる宮木との関わりの中で見つけていきます。生田さんの演出のもと、出演者の皆さんがどのように表現されるのか、期待を持って稽古を待ちたいと思います。

生田みゆきコメント

私は小学生のころから古典を読むのが好きでいろいろなものを読んできましたが、日本の古典を演劇化するのは今回が初めてになります。上田秋成の怪奇小説『雨月物語』は、人間の愛や哀しみ、執着などの感情を、幻想的に妖艶に描いていて、子供心にも強い衝撃を受けた作品です。この美しくも深淵な世界をどう立ち上げられるか・・・大きな挑戦になると思います。 特にこの作品は「あたらしい国際交流プログラム」の一環での上演です。世界に向けて日本から作品を発信するということを考えた時に、そもそも自分にどういう土壌があるのか、過去から自分に受け継がれてきているものにしっかり踏み込んで、探求してみたいと思っています。 鈴木アツトさんという作家と、私という演出家と、それから多彩な俳優・スタッフの皆様と共に日本の古典の名作に新しい光をあてるという作業は、過去を踏まえて今、いかに私たちらしい『雨月物語』を創り出すことができるかという冒険です。 8月の暑い時期ではありますが、暑さに負けない熱量の高い芝居を創りたいと思っていますので、ぜひ劇場に足をお運びいただければと思います。

岡本圭人コメント

自分たち俳優ができることとして僕が一番重要視しているのは「物語を伝えること」なので、今回この『雨月物語』という古典を現代に置き換えてお客様に届けられることをとても光栄に思っています。 『雨月物語』の原作自体がとても面白いので、この作品が鈴木アツトさんによってどのように現代の『雨月物語』に生まれ変わるのか、時代を超えた物語をお届けできるのではないかととても期待しています。 演出の生田みゆきさんとは昨年『不可能の限りにおいて』という作品でご一緒しましたが、稽古はもちろん本番が始まってからも常に作品がどうしたら良くなるか、どうしたらお客様に届けられるかを考えてくださる、愛のある演出家さんです。 脚本家の鈴木アツトさんと演出の生田みゆきさんと素晴らしい共演者の方々と一緒に、現代の『雨月物語』を届けられるのがとても楽しみです。 個人的には自分がこの作品に出ていなかったら絶対に観に行きたい作品なので、ぜひ僕の代わりにこの作品を観に来ていただき、何かを感じ取っていただけたらいいなと思っています。

南沢奈央コメント

まだ準備稿の台本を読んだ段階ですが、全体的に幻想的な雰囲気が漂っていて、みんなで方向性を見極めて稽古を進めながら創っていかなければいけない繊細な作品だと感じています。 私の役は少し神秘的でつかみどころがない、どのようにも演じられるような幅のある役ですが、女性として印象に残らなければならないし、観客の皆さんの興味を惹くような役にならなければいけないと思うので、なにかちょっと一味違う魅力を持つ女性を創り上げられたらと思っています。 古典の『雨月物語』を下敷きにしているのですが、現代に置き換えることで昔も今も人間の根っこにある欲望や、美しい物を求める心とか、そういった変わらない部分がちりばめられていて共感できる部分もあると思いますし、古典を下敷きにしているからこその夢かうつつかのような不思議な空気を感じてもらえたら面白いのではないかと思います。 また、この人物は一体何者だろう?というような謎を解き明かす要素もあるように感じるので、登場人物の誰かに共感して感情移入して観てもらえると、より作品世界に没入していただけるのではないかと思います。

薬丸翔コメント

台本を読んだ時点では、浮世離れした存在などお客様の想像に委ねる余地みたいな部分を、俳優として自分の身体をもってどのようにお客様に想像させることができるかというのが、ひとつのチャレンジになるのかなと思っています。 岡本圭人さんと南沢奈央さんは昨年のリーディング公演『不可能の限りにおいて』で共演しましたが、岡本さんに対して僕が日常で惹かれる部分と、役柄上で岡本さんが演じる勝四郎に対して作治がどういう風に惹かれるのかといった部分が重なるといいなと思っています。 南沢さんは15歳の時に共演してからの知り合いですが、昨年はじめて一緒に演劇をして改めて南沢さんの魅力や安心感を感じたので、不安なく稽古に臨めそうだなと思っています。

鈴木結里コメント

江戸時代に書かれた「雨月物語」を現代に上演するにあたって、愛情とか、人への憎しみとか、孤独さといった、ずっと人間が変わらず抱いている感情の些細な変化に気づいていけるように、夢子と向き合って一番の友達のような存在になれるように、役に寄り添っていきたいと思っています。 演出の生田みゆきさんは同じ劇団の先輩で、研究生時代に勉強会でご一緒して以来、今回が初めての創作となります。個人的には数年経って成長した姿を見せられるように頑張りたいと思っています。 戯曲の中に岩絵の具など画材が出てくるのですが、準備稿の台本を読ませていただいたときに、色彩が鮮やかに見えてくると感じて、それぞれのキャラクターの色合いを感じ取れたことが一番印象に残っているので、夢子の色を探していけたらと思っています。

上村聡コメント

古典をもとに創っていくことは、人の営みの普遍性を確認することにつながると思っています。今回の鈴木アツトさんの戯曲は現代を描きますが、そこにノスタルジックな要素が加わり、時間感覚が揺さぶられるような作品になっていると思います。 演出の生田さんは、作品ごとに違う色を出す演出家という印象があり、今回はどの引き出しを開けて演出されるのか楽しみです。 共演者の方も初めての方ばかりですが、とても頼もしい方々なのは存じていますので一緒にものづくりができるということが非常に楽しみです。 『雨月物語』は長らく愛されて読まれてきた作品ですが、今回とても大胆にアレンジをされています。新しい『雨月物語』を劇場でご覧いただけたら幸いです。

松岡依都美コメント

古典には古典ならではの文体の美しさや面白さがあると思いますが、今を生きる私たち現代人が現代に置き換えて上演することによって、言葉の壁などもなくなって、演じる側も観てくださるお客様もより身近に感じられるのではないかと思います。 生田みゆきさんは文学座の後輩で、いま大活躍している文学座の女性演出家のお一人なので、今回初めて演出を受けるのをとても楽しみにしています。 いろいろな出自を持った多彩な方たちが集まって、いい化学反応が起こると思いますし、私もいろんな刺激を受けながら、与えながら、取り組んでいけたらと思います。 この作品自体が幽玄的で幻想的な作品だと思います。その中にも人間の持つ本来の葛藤であったり、欲であったりという人間らしさの詰まった作品になると思うので、8月という暑い季節の上演ではありますが、シアタートラムでちょっと涼しくなっていただけるような感覚を体験していただければと思っています。

相島一之コメント

『雨月物語』といえば、溝口健二さんという世界の巨匠が手掛けた映画がパッと頭に浮かびます。僕も何度も見ましたが抜群に面白い。今回のお話を聞いたときは、あれをやるのか、やれるのか、ということがまず最初に浮かびました。しかも、会場はシアタートラム!トラムはいろんな冒険ができて、その冒険が実っていく場所。日本の演劇界で一番豊かな小劇場だと思うんです。そこで、『雨月物語』という映画化もされたイメージが出来上がっている古典作品を新しく作り直す、というのはすごいチャレンジでもありますし、パワーのある作品になると思います。 お芝居は集まった人たちのパワーや想いで出来上がっていくものですが、今回の座組みは若い人が多いので、きっと若々しい芝居になると思います。その中でベテラン組は僕と松岡依都美さんの二人。松岡さんとは何度もご一緒していますがいま波に乗ってお芝居で活躍されている方ですし、僕は一番年上なので、若い人たちの中でどんな立ち位置でいたらよいのか・・・イチ俳優として楽しみですね。 演劇ファンのお客様にはぜひシアタートラムに来て欲しいです。劇場でお待ちしています。
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