中山優馬「毎日探っていました」難役での苦労明かす<ダディ>
2022.07.09 04:00
俳優の中山優馬が8日、都内で行われた舞台「ダディ」(9日より東京グローブ座ほかで上演)のゲネプロ&取材会に共演の原嘉孝、大場泰正、前島亜美、同作の脚本を手掛けた劇作家がジェレミー・O・ハリスとともに出席。稽古を振り返り、役作りについて語る場面があった。
中山優馬主演「ダディ」
2021年のトニー賞でストレートプレイでは最多となる12部門にノミネートされた「Slave Play」。その脚本を手掛けた新進気鋭の劇作家、ジェレミー・O・ハリスが、2019年にオフ・ブロードウェイで初演。人種、セクシュアリティ、家族、格差社会、モラル、アイデンティティといったテーマをリアルな会話で鋭く描き、大胆で刺激的な内容が魅力的だと話題となった舞台「ダディ」が小川絵梨子演出、中山優馬主演で日本初演を果たす。中山優馬&原嘉孝、初日公演目前の心境告白
― まず、ゲネプロを終えて手応えはいかがですか?中山:はい。本日はみなさんお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。
この作品が明日から上演ということで本当にワクワクしております。なんといってもこのプールが前代未聞のといいますか、新大久保のこのグローブ座にプールが出現するという本当にワクワクした気持ちとドキドキした気持ちを一緒に観に来て下さる皆様と体感できたらなと思います。
手応えとしてはバッチリじゃないでしょうか?これからもっともっと、ここからがスタートなので励んでいきたいと思っています。皆さんのお力添えでたくさんの方々に観ていただければと思いますので、よろしくお願い致します。
原:本日はありがとうございます。この作品は淡々な作品ではもちろんなくてメッセージ性が強いんです。実は通し稽古もあまりそんな回数をやったわけではなくて、本当に深いところを掘り下げる作業をずっとやってきて、だから今日のゲネも本当に新鮮に目の前の方のセリフが刺さることもたくさんありました。ここから本番を重ねていくに連れて多分もっともっと深い作品になっていくと思うので、1公演1公演楽しみながら頑張りたいと思います。
中山優馬、試行錯誤繰り返した稽古を振り返る
― これまでの稽古を振り返って苦労した点があれば教えて下さい。中山:やはり背負っているものというのは登場人物によって違うんですけれども、その中で自分が「何を欲していて、何を見つけたいのか」ということを稽古の中でずっと毎日探っていました。セクシャル的な問題に取り組んだということでは全くなくて「自分が欲しい愛はどこにあるんだ」ということで感じたことを今もアプローチし続けています。自分が好きな相手に対して「どう思われたいか。何をしたいか」ということを考えています。
原:全てが難しかったです。最初に台本を読んだ時からこの作品はどうやって形になっていくのか想像ができなかったので。自分の役の全てを理解することは本人じゃないからできない。ただ、ジェレミーの書いた作品のメッセージをどういう風に伝えていくかということはすごく考えました。舞台なので生でここに存在することや台詞の交換だけではなく生の人間と人間の営みをこの場で見せるということはそこに行き着くために台詞を全部頭に入れる必要があって、そこから本気で深く考えるという作業をずっとやってきたんですけどそれが今、感覚として本当に存在している気がして…今はここからの本番が本当に楽しみです。
― 今作では視覚的にプールが特徴となる作品だと思いますが、舞台上にある本物のプールについてはどのように捉えていますか?
中山&原:刺激的です(笑)。
中山:舞台の裏では本当にたくさんのスタッフさんたちにケアをしていただいているので、本当に僕たちは舞台上で集中できます。濡れていることや水が滴っていることも全てその時間を生きているアイテムというか状況を表してくれるものだと思うので助かっています。本当に刺激的です。
― ちなみにですが、これまでに舞台上でプールに入った経験はないですよね?
中山:ないです(笑)。
原:ただただ楽しんでいます。コロナになってプールに入れていないので。ここでは入れるんです、毎日!1日2回も(笑)。楽しいです。
中山:今日の天気にばっちりです(笑)。
― 特に中山さんはプールの出入りが多いと思いますが、寒さなどは感じますか?
中山:演劇をしている途中では全く気づかないんですけど、舞台公演でもちろん長い期間続きますし、本番じゃない時のケアがプロとしてのやるべきことだと思うので、そういうところは特に皆さん気をつけていると思います。
― 稽古場ではどのようにプールのシーンを再現されていたのでしょう?
中山:稽古場ではプールのセットを組んでいただいて、もちろん水なしで稽古はしていました。この劇場に入ってからこのプールとご対面です。
― 実際に水がある状態でのプールを目の当たりしてみていかがですか?
中山:水が入ってもちろんプールはプールなんですが…僕たちにとって、特に僕にとってはただのプールではなくて本当に神聖なものになっていく1つの重要な要素なので、実際に劇場に来てこの劇場の空間とリアルなプールのサイズと水が入った状態で演じてみてより感じるものというか感覚というのはやっぱりこの場に来てみて受け取るものがたくさんありました。
― 小川絵梨子さんの演出で刺激を受けたことや稽古中に印象的だったことを教えて下さい。
中山:作品の全てを導いてくれる方ですし、僕らは絵梨子さんのおかげで生かしてもらっているので、僕たちにすごく寄り添ってくれているという印象です。
最初の稽古や本読みの段階で、繊細なシーンも多くお芝居をすること、人に見られることはやはり怖いものなので「そこは焦らずにゆっくりと進んでいこう」と仰って下さって、それですごく安心してみんなが絵梨子さんについていこうと思った瞬間だと思います。細部に渡って、本当に丁寧に見て下さっていて日々「進化しているな」ということが自分たちの肌感としても感じられます。
― 通し稽古よりも役やシーンを深く掘り下げるということに時間をかけていたとのことですが、具体的にどのようにして稽古を進めていたのでしょうか?
中山:本読みの段階で台詞の1つ1つや会話について、「ここはどういう意味なのだろうか」などみんなが持っている疑問をシェアして、絵梨子さんを筆頭に台詞の意味や流れている時間について丁寧に丁寧に全てのシーンについて深めることを1~2週間ぐらいかけて見ていきました。
原:あとは、英語で書かれたものを翻訳して、日本に持ってくる時に言葉のニュアンス1つで変わってしまうことがあるのでそのすり合わせをずっとやっていましたね。最初にもらった台本よりももっと日本人に向けてどういう言葉で言ったら伝わるか、どう台詞を言ったらこの状況が伝わりやすいかを考える作業をしていました。
中山優馬&原嘉孝、互いへの思い語る
― 中山さんと原さんは同じジャニーズ事務所に所属していますが、共演についてはどのように感じていますか?中山:この作品で初共演ではないのですが、もちろん事務所が一緒ということもあって始まる前から楽しさは感じていました。割とプライベートでも仲が良い2人なので怖さが半減する安心感はもちろんありました。
原:優馬くんの作品を結構観に行かせてもらっていて、やっぱり信頼感がすごくて委ねていました。作品が作品なだけにわからないことも多かったんですが、隣にいてくれるだけで助かりました。
僕は普段から筋トレをやっているのですが、体作りでこの期間は筋トレをやっていたのでそこだけは僕が先輩となって色々と教えたりしています。
中山:はい!教えてもらっています。
― 筋トレはプールに入って体を見せるシーンがあるからということでしょうか?
中山:そうですね!そういう物理的なこともありますし、やはり舞台作品、舞台芸術として、役柄としてもですね。
― 初日に向けての意気込みをお願いします。
中山:文化の違いや人種の違いを演じることだったりとか、日本人にとって少し遠い問題なのかなと感じがちなんですけどそういうところが問題なのではなくて、人間なら誰でも感じる痛みや飢え、愛というものがこの日常のこのステージの上に息づいていると思っています。なのでそういうものを見届けて欲しい。舞台芸術としても素晴らしいセット、キャスト、スタッフさんが揃って素晴らしい最高なものができたと思っているので、初日から千秋楽までこの作品に流れている血を皆さんにお見せしたいなと思います。そして作品のタイトル通り「ダディ」というのがどういう意味を持つのか、この劇場で見届けて欲しいと思います。
ぜひ皆さん、濡れる覚悟で観に来て欲しいです…冗談ですよ(笑)。
劇作家・ジェレミー、日本人キャストでの上演に感激
― ジェレミーさんは日本語での上演を観ていかがでしたか?ジェレミー:まず感謝を伝えたいです。日本人のキャストの皆さんがプール、そしてこの作品に深く飛び込んでいただいて、素晴らしい作品にして下さいました。この作品は僕にとってすごく個人的な作品でもありますが、これを日本でこのキャストで実現できたことは普遍性を表しているのではないかと思います。
― 「ダディ」が日本で初めて上演されることについてはどのように感じていますか?
ジェレミー:常に不安はあります。でも日本人が日本語で演じているのを観て、自分がずっと考えていたテーマを表現してくれていたと感じました。(中山)優馬が超越して演じてくれています。
舞台は7月9日から27日まで東京グローブ座、8月5日から7日までCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演される。(modelpress編集部)
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