小栗旬、橋本環奈、中島健人ら人気俳優が配信ドラマに続々参戦 いま「配信」を選ぶ納得の事情
かつて配信ドラマはテレビに出られない俳優が出演するものという見方が一部にあった。しかし今夏、小栗旬、高橋一生、橋本環奈、中島健人といったトップ俳優が配信ドラマで主演を務めている。脇を固める俳優陣も豪華で、地上波に勝るとも劣らない勢いだ。なぜ今、人気俳優は配信ドラマを選ぶのだろうか。
この夏だけでも、7月には小栗主演『ガス人間』(Netflix)、高橋、斎藤工、水上恒司のトリプル主演『犯罪者』(Prime Video)、8月には橋本主演『バカンスの法則』(ABEMA)、中島主演『SとX』(Netflix)、9月には松岡茉優主演『ダウンタイム』(Netflix)が配信されている。こうした一線級の俳優陣が配信ドラマを選ぶだけの土壌が昨今、一層培われているからだ。
Netflixにおいて、日本作品は非英語圏で2番目に多く見られおり、今年上半期には、視聴時間が全世界で過去最多の61億時間以上となったことが発表された。また、東宝スタジオとの契約を拡大し、従来の2倍以上、年間最大15本の制作を見込むことも明かされている。
Prime Videoは今後2年間で、日本のオリジナル作品への投資を2倍以上に拡大し、オリジナルシリーズや映画の本数の大幅拡大を明言。配信プラットフォーム側が日本市場そのものと、日本発コンテンツの国際展開を本気で狙いに来ており、その勝負期に入ったことが分かる。
俳優側にとっても、大規模な映像表現で、地上波では扱いにくい題材、短尺・一挙配信など自由なフォーマット、世界同時配信といったメリットのある配信ドラマは魅力的なものであるはずだ。
今夏のラインナップを振り返ると、各作品の挑戦的な狙いが見えてくる。小栗主演『ガス人間』は韓国クリエイターとの共同制作で、アジア市場を意識していることが明白だ。ハリウッドデビュー経験もある小栗に加え、国際映画祭出品作に多く出演する蒼井優が助演に回っている。さらに広瀬すず、林遣都、竹野内豊といった主演級俳優が奇抜なメイクで誰だか分からなくなったり、本木雅弘の長男・UTAがガス人間役で俳優デビューするという実験的要素もあった。
『犯罪者』は人気小説のドラマ化で、警察、政治、巨大企業それぞれの思惑が複雑に絡み合うクライムサスペンスだ。高橋、斎藤、水上と、世代を跨いだトリプル主演で、国内の演技派ファンと海外のサスペンス好き双方が狙える設計と言えるだろう。3人が刑事、ライター、生存者というバラバラな立場で、それぞれの視点から事件が描かれたり、主演3人がほとんど出てこない回もある。
そうした構成の複雑さや暴力の過激描写は、普通のドラマ規模では実写化が難しいものだった。ただ、これまで物語の改変を恐れ映像化に難色を示していた原作者だが、「これ以上ない形」でのオファーだったため、原作を預けることにしたとコメント。ここでも配信ならではの自由度の高さが生かされたようだ。
橋本主演『バカンスの法則』は、ABEMAで国内配信されつつNetflixで世界配信されるという2段構えだ。1話15分で週3回配信と、チャレンジングな若者向けのショートドラマになっている。また今作は、『東京タラレバ娘』などを送り出してきた人気漫画家の東村アキコ氏が、初めて連ドラの原作・脚本・監督を務めた。こうした実験的要素に橋本クラスが主演を務めることで、企画の存在感が一気に際立ってくる。物語もかなりコメディに振り切ったりゆるゆるな回もあったりと、遊び心満載だ。
中島主演『SとX』は、爽やかアイドルである中島が自身もトラウマを抱えるセックスセラピスト役を演じ、多様で切実な性の悩みを真正面から扱っている。共演の新木優子も含め、センシティブなシーンも攻めた表現で挑んでおり、配信ドラマだからこそ実現した企画だろう。また、中島はソロアーティストとしてアジアツアーを敢行するなど海外進出に戦略的に挑戦しており、Netflix側も彼の人気・知名度にあやかる形で日本発コンテンツを世界に発信出来ている。
松岡主演『ダウンタイム』は、整形依存、医療ミス隠蔽、キッズ整形といった美容整形業界の暗部に切れ込んだ意欲作で過激な描写も多分にある。数年がかりで患者や医者などを入念に取材しリアリティを追求しつつ、世界共通で社会的関心を集める美容整形において、日本ならではの闇を国際テーマとして提示した。カンヌ国際映画祭最高賞受賞作『万引き家族』でも高い評価を受けた松岡が、主人公の形成外科医役を務める。仲里依紗演じるカリスマ美容外科医との刺激的な心理戦も国内外で関心を集めるだろう。
潤沢な資金に、テーマやフォーマットの自由度があり、世界市場や若年層といった新規層へのリーチが可能な配信作品には、今後も人気俳優の参入が続きそうだ。ただ、アクセスが容易で広く一般に視聴されるという点では地上波ドラマにアドバンテージがあり、地上波と配信の棲み分けも進んで行くだろう。
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