上白石萌音「“yattokosa”Tour 2024-25<kibi>」カメラマン:板橋淳一/柴田和彦、取材・文:森朋之

上白石萌音、全国ツアー東京公演にゲスト登場&豪華セッション こだわり演出も多数【“yattokosa“ Tour 2024-25<kibi>】

2025.02.09 21:30

女優の上白石萌音が2月9日、全国ツアー「“yattokosa“ Tour 2024-25<kibi>」の千秋楽公演を名古屋・愛知県芸術劇場大ホールにて開催。ここでは、新たなチャレンジと自身で練ったこだわりの演出で走り抜けた今ツアーの東京公演(2月2日・
東京・東京ガーデンシアター)の模様をレポートする。

  

“歌手・上白石萌音”の世界表現

上白石萌音「“yattokosa”Tour 2024-25<kibi>」カメラマン:板橋淳一/柴田和彦、取材・文:森朋之
2016年のデビュー以降、作品のリリースやライヴ活動をコンスタントに続けている上白石。最新アルバム「kibi」を中心とした今回のツアーは、初めて訪れる場所(青森、佐賀、三重、京都、福井、香川、広島)を含んだ自身最多の全10ヶ所11公演。ツアー終盤となる東京ガーデンシアター公演でも彼女は、こだわり抜いたセットリスト、舞台美術、演出、そして、表情豊かなボーカルによって“歌手・上白石萌音”の世界を表現してみせた。

開演時間を過ぎると、ステージの幕に浮かび上がっていた「“yattokosa”Tour 2024-2025<kibi>」の文字が消える。朝の訪れを想起させるイントロに導かれた最初の楽曲は上白石自身が作詞を手がけた「あくび」。<ねえ今日はもうずっと寝転んでいようよ>というサビで幕が開くと、椅子に座った上白石の姿が。1番を歌い終わったタイミングでスッと立ち上がり、一礼。客席からは大きな拍手が送られた。

セットリストの中心は「ある1日の時間の流れの中にある様々な情景や感情の機微を表現した」という最新アルバム「kibi」の楽曲たち。繰り返す日常への愛しさを描いた「Loop」から、「みなさん、立っていいですよ!」という呼びかけでポップチューン「skip」へとつなぎ、心地よい一体感が生まれた。

「アルバム『kibi』は同世代のアーティストのみなさんとたくさんご一緒しました」とMCでも語ったように、アルバムでは「かさぶた」や「アナログ」を提供したとたや、「perfect scene」を提供したLaura day romanceなど、同世代アーティストの楽曲がライブでもスパイスとなり、上白石の新たな表現を引き出していた。そして、自身の想いが濃く反映されたアルバムの世界観は、図面の時点からこだわった舞台美術などにも繋がって表現されていた。

「風」は、鍵盤と歌のシンプルな編成。アルバムの中でもある意味異色の1曲で、様々なジャンルの提供曲を歌いこなす上白石の、歌手としての軸がそこに見えたような気がして、<でも風 君はこの空を思うまま行け>というフレーズを手渡すように歌う姿が強く心に残った。

上白石萌音「なんでもないや」独唱 思いも語る

上白石萌音「“yattokosa”Tour 2024-25<kibi>」カメラマン:板橋淳一/柴田和彦、取材・文:森朋之
また、公演先の土地にちなんだ楽曲を歌う“ご当地ソング”コーナーで、東京公演では「東京キッド」(美空ひばり)をセレクト。戦後の時代に誘われるようなノスタルジックな雰囲気がゆったりと広がり、幅広い年齢層のオーディエンスを魅了した。

ライブ中盤では、“ロンドンコーナー”も。昨年、舞台「千と千尋の神隠し」の公演でロンドンに約3ヶ月滞在した上白石。「そのときに得た文化的な刺激をみなさんと共有したいと思いまして」と選ばれたのは、「Yesterday」(ザ・ビートルズ)、「お砂糖ひとさじで(A spoonful of sugar)」(ミュージカル「メリー・ポピンズ」より)、「夢やぶれて」(ミュージカル「レ・ミゼラブル」より)。自ら和訳した歌詞を映し出しながら、楽曲へのリスペクトを込めたボーカルを届けた。切なくも力強いバラードナンバー「変わらないもの」は今ツアーでの新たな挑戦のひとつ、ピアノの弾き語りで披露され、伸びやかで力強い歌声が会場に響きわたった。

「“これだ!”と思えるような言葉を人からいただけるって、人生の宝物ですよね」というMCで導かれた「スピン」、美しく洗練されたメロディ、アレンジを丁寧に描き出した「ひかりのあと」とアルバム「kibi」の楽曲を続け、観客の心と身体を揺さぶった。

楽曲冒頭部分、独唱から始まった彼女の歌手としての始まりの曲「なんでもないや」(movie ver.)を歌い上げた後、「私もしんどいときはいろんな曲やエンタメに力をいただいてきて。すごく感謝しているので、その恩返しをみなさんに渡していけたらいいなと思っています。ちょっとでも心が軽くなったり、元気になれる何かを手渡せたらいいなと思っているので、みなさん、幸せに生きていってください」そんなMCとともに披露された本編ラストの「スピカ」。おおらかで優しい歌声は、ひとりひとりのオーディエンスを包み込み、朗らかなパワーへとつながったはずだ。

アンコールでは“スペシャルゲスト”いきものがかり登場

吉岡聖恵、上白石萌音吉岡聖恵「“yattokosa”Tour 2024-25<kibi>」カメラマン:板橋淳一/柴田和彦、取材・文:森朋之
アンコールでは、東京公演のみのスペシャルゲスト・いきものがかり(吉岡聖恵、水野良樹)が登場。まずは水野が作詞・作曲を手がけた「まぶしい」をセッション。さらに、上白石がいきものがかりを好きになるきっかけとなった「YELL」(いきものがかり)を歌い上げた。

吉岡、水野がステージを去った後、感激のあまりステージに倒れ込んだ上白石。最後の楽曲も水野が作詞・作曲を担当した「夜明けをくちずさめたら」。<分かち合うことをあきらめたりしない>というメッセージを響かせ、豊かな感動が広がる。そんな余韻がまだ残る中、ライブ1曲目で披露した「あくび」の一節を歌って幕が降り、ライブはエンディングを迎えた。

カーテンコールではちょうど当日が節分だった為、バンドメンバーと一緒に豆まきを楽しみ、サイン入りボールを投げ入れた後、生声で「ありがとうございました!」と感謝の言葉を伝えステージを後にした。スクリーンに映し出された「ありがとうございました!あったかくして寝てください 萌音」という手書きメッセージを含め、こだわり作り込まれた演出と、彼女自身の飾らない姿や想いがしっかりと感じ取れるステージとなった。(modelpress編集部)
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