BTS(左から)V、SUGA、JIN、JUNG KOOK、RM、JIMIN、J-HOPE/photo by Getty Images

【BTS(防弾少年団)5周年】デビュー前から辿る軌跡…苦悩も栄光も“一緒なら”

2018.06.13 16:28

韓国のボーイズグループ・BTS(防弾少年団)が、6月13日にデビュー5周年を迎えた。先月アメリカ三大音楽賞の1つ「ビルボード・ミュージック・アワード2018(BBMAs)」ではK-POPグループとして初めてパフォーマンスを披露し、最新アルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』は米ビルボードの週間アルバムチャート「Billboard 200」でアジア圏の歌手として初めて1位を記録。今や全世界に熱狂的なファンを持ち、音楽的にも世界のトップ歌手たちと並び高い評価を受けている。歴史的な成功を収めた彼らは、5年間どんな道を辿ってきたのだろうか。ずっと花道を通ってきたわけでは決してない。ここで一度、BTSが歩んだ道筋を少しだけ紐解いてみたい。

  

新鋭事務所からのデビュー スキルは皆バラバラだった

K-POP界には、東方神起・少女時代・SHINeeらを有する「SMエンターテイメント」、BIGBANG・iKON・BLACKPINKらを有する「YGエンターテイメント」、そして2PM・TWICE・GOT7らを有する「JYPエンターテイメント」という “三大芸能事務所”が存在し、数多くの大型グループを輩出してきた。

BTSを作ったのは、JYPエンターテインメントから独立したプロデューサーのパン・シヒョク氏が設立した「Big Hitエンターテインメント」。いわば新鋭の中小事務所からのデビューだった。

今やそのダンスパフォーマンス、ボーカル、ラップスキル全てにおいて高い評価を受けるBTSだが、全員がその天才だったわけではない。ラッパー兼プロデューサーとしての才能を認められていたRM・SUGAは最初ダンスの初心者だったし、逆にダンスの腕前の噂が地方からソウルまで届くほどだった実力者J-HOPEは、ラップを事務所に入るまでやったことがなかったという。



そんなメンバーたちがデビューできるようになるまで、どれほどの努力があったのだろうか。過去にテレビ番組では、“デビュー前は睡眠3時間だけでずっとダンスの練習をしていた”と話したメンバーもおり、またデビュー曲の振り付け練習にてついて「1日15時間していた」と明かしたメンバーもいる。それだけでなく練習生時代は、お金がなかったためアルバイトと練習と学業を同時にこなしていたメンバーもいるのだ。



ちなみにSNSでのファンとの密なコミュニケーションがよく取り上げられるBTSだが、彼らのTwitterアカウントはデビューのずっと前から存在したようだ。そこで少しずつ、デビューまでにメンバーが公開されていった。



年齢も、事務所に入った時期も、アーティストとして必要とされるスキルのレベルも、全てバラバラだったメンバーたち。そんな7人が5年前のこの日、「防弾少年団」の名前でデビューした。<10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく>というその由来は、アイドルグループにはあまりない社会的テーマと強い意志が込められていた。

順風満帆ではなった1年目“アイドルラッパー“への批判も【2013~2014年】

ところで大きな音楽番組が週6番組も放送される韓国の音楽シーンでは、それぞれの番組でCD売上やストリーミング回数、ファン投票等を集計した楽曲ランキングが設けられており、その週の“1位”を放送毎に発表。トロフィーが渡される。韓国で活動するアーティストにとって音楽番組で“1位歌手”になることは、1つの大きな登竜門なのだ。

大手事務所の歌手などはデビュー前から知名度が高いことも多く、デビューイヤーに“1位”を獲得することも少なくない。中にはデビュー曲から“1位歌手”となるスーパールーキーもいる。しかしBTSは、この“1位”を獲得するまでに短いとは言えない道のりを歩んだ。



デビュー曲「NO MORE DREAM」(ミニアルバム『2 COOL 4 SKOOL』収録)でBTSは、社会のレールに乗ることを強要される若者の目を覚まさせるような、鮮烈なメッセージを打ち出した。曲も外見も完全なHIP-HOPスタイル。新鋭事務所からデビューし、“普通のアイドルとは違うんだ”と下剋上を叩きつけるかのようだった。同曲はパフォーマンスのかっこよさや、JIMINが腹筋のシックスパックを見せつける振り付けが話題を呼んだこともあり、新ジャンルのボーイズグループとして期待も寄せられた。

その約3ヶ月後には2ndミニアルバム『O!RUL8,2?』ですぐに音楽番組に戻ってきたBTS。同アルバムのタイトル曲「N.O」は多くの若者の心を揺さぶったはずだ。「俺らを勉強ばっかりする機械にしたのは誰だ?」とドキッとするくらいストレートな歌詞でフラストレーションを抱えて生きる学生たちの代弁者となった。しかし、今回も彼らが“1位”を獲得することはなかった。



デビュー当初の楽曲から強いHIP-HOP色をあらわにし、力強いメッセージを発信していたBTS。しかし「所詮は女子たちの憧れのアイドルだろう」「BTSはHIP-HOPではない」と他の歌手から批判されることもあった。デビュー前からHIP-HOPの世界で活動していたRMやSUGAにとって、“アイドルラッパー”と揶揄されることが強く記憶に残ったことは間違いないだろう。

韓国では年末年始に大型の音楽授賞式がいくつも開催され、そこで賞を受賞することもそのアーティストの価値を位置づける。BTSはデビューイヤーにいくつかの新人賞を受賞したが、それがすぐに結果に結びついたわけではなかった。



2014年2月にはミニアルバム『Skool Luv Affair』をリリースし初めて音楽番組の1位“候補”となるも、実際に1位歌手になることはできず。そしてBTSは本国デビュー1周年を前に、早くも日本デビューを果たすこととなる。当時日本ではK-POPブームが下火となっていた時期でもあったが、韓国の音楽市場と比べるとそのマーケットの大きさは何倍も大きい。5月にはTOKYO DOME CITY HALLにて日本初の公式ファンミーティングを開催し延べ5000人のファンが集まった。

2年目、初単独コンからアジアツアーへ ようやっと掴んだ1位【2014~2015】

日本デビューを果たした直後に迎えた、本国デビュー2年目。8月に初のフルアルバム『DARK&WILD』を発売し再び音楽番組に多数出演したが、大きな成果を得ることはなかった。



しかしBTSが注目を浴びる理由の1つである“ファンへの強い愛情”を、彼らは当時から怠ることはなかった。BTSはデビューから1年以上、大勢のファンと直接触れ合える単独コンサートを行っていない。当時あるインタビューでは「防弾少年団はARMYを愛している。感謝している」と必ず伝えてほしいと、インタビューアーにメンバーが念押ししたという。

そしてBTSは同年10月に初の単独コンサートを行い、そのまま日本を含むアジア各国でツアー公演を行った。その後BTSはコンスタントな公演活動に注力し「公演型アイドル」と称される。BTSのペンライトである“ARMYボム”を振るファンの数は確実に増えていき、チケットも売り切れが続くようになった。



そしてBTSは2015年4月、約8ヶ月ぶりにミニアルバム『花様年華 pt.1』で韓国の音楽界にカムバックする。今までの力強くギラギラしたイメージとは一新し、美しい青春時代の儚さ、若者の心の危うさを繊細に表現した「花様年華」シリーズが始まったのだ。そしてBTSは、同アルバムのタイトル曲「I NEED YOU」で、デビュー3年目を直前に初めて“1位”を獲得することとなった。初のトロフィーを受け取ったあとの動画が公開されているが、メンバーたちはなによりもARMYへの感謝を伝え、JIMINは涙を流している。


3年目、海外で精力的に公演「花様年華」で人気上昇【2015~2016】

3年目を迎えたBTSは、同年7月からオーストラリア、アメリカ、南米諸国などを回るワールド・ツアーを敢行し世界中のファンに会いに行った。

すると次のミニアルバム『花様年華 pt.2』は、後に1位を獲得することとなる米ビルボードの「Billboard 200」に、171位で自身初のランクインを果たす。そして同アルバムのタイトル曲「RUN」は、しっかりと音楽番組で“1位”を獲得した。 



安定的な人気を獲得できるようになった「花様年華」シリーズが多くのファンを引きつけた理由の一部として、その“ストーリー性”も欠かすことができない。同シリーズを構成する「I NEED YOU」や「RUN」、「Young Forever」のミュージックビデオ(以下MV)は1つのつながったストーリーを構成しており、さらに、細部までMVを研究し深く考察しなければ解釈が難しい仕組みとなっている。

そのためファンによる“謎解き合戦”が加速し、SNS上でのファン同士の情報共有も不可欠となった。ファン同士がSNSを通して信頼し合い、強い絆でつながっていることも、BTSの強みだと言えるだろう。2016年3月には、米フォーブス誌が発表した「直近30日間に世界で最もリツイートされたアーティスト」で1位となるほど、ソーシャル上の影響力を構築していた。



5月には「花様年華」の最終章となるリパッケージアルバム『花様年華Young Forever』をリリース。「Billboard 200」で107位を記録した。

同作には「引っ越し」というタイトルの曲が収録されており、まさに3年間暮らしてきた宿舎から引っ越すメンバーたちの様子が描かれている。苦労したこれまでを過ごした場所から、環境が変わり新たな場所で再出発する思いを、曲にしてファンと共有したのだ。

4年目「WINGS」の成功 アメリカ音楽界が注目【2016~2017】



『花様年華Young Forever』で公開した「FIRE」もヒットを記録し、作年同様海外ツアー行っていたBTSに再び悲劇が襲う。人気を獲得したせいか、アンチファンによる悪質な嫌がらせが発生したのだ。BTSはメンバー自身がTwitterを利用し、ファンとコミュニケーションを行っているが、メンバー本人も目を通すであろうそのTwitter上でアンチファンによるBTSの中傷ワードがトレンド入りすることもあった。



しかし彼らはそれに屈しない実力を新曲で見せつける。2016年9月に発売された2ndフルアルバム『WINGS』がなんと、「Billboard 200」で韓国アーティスト最高位となる26位を記録したのだ。同アルバムのタイトル曲「Blood Sweat & Tears」はまさに世界のホットトレンドとなっていたムーンバートン&トラップ調を取り入れ、その音楽構成は米メディアからも高く評価された。すでにBTSはアメリカの音楽界からも注目されるグローバルスターとなっていた。

そしてBTSはこの年、年末の音楽授賞式の中でも最も注目される「MAMA(Mnet Asian Music Awards)」にて、遂に大賞にあたる<今年の歌手賞>を受賞する。三大芸能事務所以外のグループが同賞を受賞するのはBTSが初めて。受賞スピーチでリーダーのRMがまっさきに口にした言葉は「ARMY」だった。彼が「デビューからたくさんのことがあり、不可能だろうという人も多かったけれど、最後まで信じてくれて本当にありがとうございます。夢を現実にしてくれてありがとうございます」「いつもBTSはARMYを愛しています」と挨拶する中、何人ものメンバーが涙を流した。



年が明け、2017年2月からは世界19都市40公演をこなす過去最大規模の世界ツアー『2017 BTS LIVE TRILOGY EPISODE III THE WINGS TOUR』がスタートした。世界中のARMYがBTSに熱狂する中、メンバーたちも驚いたというビッグニュースが飛び込んでくる。アメリカ三大音楽授賞式の「BBMAs2017」にK-POPグループとして初めて公式招待を受けたのだ。



5月の授賞式当日、世界のスターたちに混ざってレッドカーペットを歩いたBTS。会場でパフォーマンスを披露することはなかったが、トップ・ソーシャル・アーティスト賞を受賞した。これは同賞ができて以来、連続6年間受賞していたジャスティン・ビーバーを破る快挙だった。

5年目、AMAsにBBMAs…世界トップアーティストに【2017~2018】

精神的にも体力的にも大変だったという『THE WINGS TOUR』が一段落すると、9月にはミニアルバム『LOVE YOURSELF 承 ‘Her’』がリリースされた。新たな物語「LOVE YOURSELF」シリーズの幕開けとなった同作。現在も続いている同シリーズでは、これまで以上に綿密に作り込まれたストーリーが展開されている。



そして同アルバムは「Billboard 200」で7位に入りK-POP最高位を更新するだけでなく、タイトル曲「DNA」はシングルチャートである「Billbord HOT100」に67位で自身初ランクインの快挙を達成。



同作には世界的DJデュオのザ・チェインスモーカーズとのコラボ楽曲「Best of Me」も収録された。また同じく米人気DJのSteve Aoki(スティーブ・アオキ)のRemixバージョンが制作された「Mic Drop」は「Billbord HOT100」で28位を記録した。


10月14、15日には京セラドーム大阪にて初のドームコンサートを成功させたBTS。さらに11月にはアメリカ三大音楽授賞式のもう1 つである「アメリカン・ミュージック・アワード(AMAs)2017」にも招待され、全米に生中継される中「DNA」のパフォーマンスを披露した。

12月の「MAMA」では2年連続で<今年の歌手賞>を受賞し、紛れもないトップスターとなったBTS。その直後に行われた『THE WINGS TOUR』のファイナル公演(ソウル)では、「私達が一緒なら砂漠も海になる」というスローガンがファンによるサプライズで用意されたという。まさにBTSは、ARMYとともに乾いた砂漠を海にしたのだ。



またBTSは昨年、ユニセフ(国連児童基金)とパートナーシップを締結。今年4月の日本ファンミーティングでは、グローバル展開の先駆けとして会場にユニセフの特設ブースが初めて設置された。「LOVE MYSELF (私自身をまず愛そう)」の精神に基づき子どもや青少年に対するあらゆる暴力の撲滅を訴える世界的キャンペーン「#ENDviolence(暴力をなくそう)」の普及と、世界の子どもたちへの支援を呼びかけている。


その日本ファンミーティングを終えた後、遂に5月18日、3rdフルアルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』をリリース。20日(現地時間)には「BBMAs2018」にて同アルバムのタイトル曲「FAKE LOVE」のパフォーマンスを世界初披露した。さらに同授賞式ではトップ・ソーシャル・アーティスト賞の2連覇を達成。この受賞スピーチでも彼らはARMYに「この賞は皆さんが受賞したものです」と伝えた。

「ビルボード・ミュージック・アワード2018」でK-POP歌手史上初めてパフォーマンスを披露したBTS/photo by Getty Images
そして同作は「Billboard 200」で1位に。また「FAKE LOVE」は「Billbord HOT100」にて自身最高位の10位を記録。今回のアルバムリリースに際して出演した韓国内の音楽番組では、“1位”を12回に渡って受賞し敵なしのまま活動を終えた。

BTS、これからの旅路は

世界中を驚かせるほどの成功を手にしたBTS。「Billboard 200」1位を獲得したあと、彼らのもとには文在寅(ムン・ジェイン)大統領から祝福の電報が届いたほどだ。


今後、彼らはどこへ向かって行くのか。何を手にするのか。SUGAは最新アルバムのリリースに際して行われた記者懇談会にて「夢は見るほどいいですから、グラミー賞にも行きたいですし、スタジアムツアーもしたいですし、世界で一番影響力のある歌手にもなりたいですし、こう口にした以上、そこに向かって一生懸命走りたいと思います」と語っていたという。大きな夢だ。



しかし、12日にYouTubeを通して公開された、5周年を記念したメンバーたちの座談会『防弾会食』で彼は、「AMAsのあと、シャワーを浴びながら1人で泣いた。怖くて」と打ち明けた。“想像していた以上のことだったから、今後この負担をどうしたらいいのか”それが怖くて涙を流したという。他のメンバーたちもそれぞれ、大きな栄光を掴んだあとの苦悩があった。JIMINは「突然大きいものを得たせいで、難しい時期にぶつかった。でもそういう時期にぶつかったことで、もう一度考えられる時期が早くきたんだと思います」と話した。

RMもこう打ち明けた「正直、虚しさみたいなのがありました。僕たちが目標としていた事以上の事が叶ったので」。しかし彼は続けた「僕たちがやりたかった以上の事が叶って『じゃあ何しよう?』というんじゃなくて、『他の人が行けなかったところに行けるチケットをもらえた』と考えたいんです」「ただ、これからもたくさん楽しいことが待っているから、力がないメンバーがいるときには誰かが支えてあげれば、進んでいけるんじゃないかと思うように心に決めました」。

BTS(左から)V、SUGA、JIN、JUNG KOOK、RM、JIMIN、J-HOPE/photo by Getty Images
そして彼らの未来にARMYの存在は絶対だ。今月3日、韓国SBSのニュースにて、メンバーそれぞれがARMYについてこう語った。

「本当にたくさんのことがあって、本当にいいことが多かったのでここまで来られたと思います」(JUNG KOOK)

「ARMYのおかげで今のBTSがいて、ARMYがいなければ今のBTSはいなかったです」(V)

「僕たちが大切に思っていることを僕たちは守っていきます。信じてくれたら嬉しいです」(RM)

「可能なら、みなさんと一生一緒に、もっとたくさんの思い出を作りたいと思っています」(JIMIN)

「これからもずっと一緒にお互いが力になれる、そんな存在でいられれば嬉しいです」(SUGA)

「いつも僕たちと一緒にいてくれてありがとうと伝えたいです。愛しています」(JIN)

「(歌いながら)散るときは朝顔の花のように、美しいその瞬間のように。皆さんと一緒にいたいです」(J-HOPE)

BTS(左から)SUGA、JIN、JUNG KOOK、RM、JIMIN、J-HOPE、V/photo by Getty Images
BTSがなぜ成功したのか。彼らの5年間を分析すれば、その理由を説明する方法はたくさんあるだろう。しかしRMが、JINが、SUGAが、J-HOPEが、JIMINが、Vが、JUNG KOOKが、防弾少年団に、BTSになったから。7人が1つとなり、ARMYと出会いお互いを支え合って道を歩んできたから、全てのことが理由となって、今の結果がここに自然とある。そしてBTSとARMYの物語は今後も自然に進んでいく。時には楽しく、時には苦しく。そう考えてしまう彼らの軌跡のように感じる。(modelpress編集部)
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