伊藤英明が「海猿」から最凶殺人鬼に変貌!「ほぼ全裸」の体当たり演技も<インタビュー>
2012.10.26 12:28
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「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」(国内部門)でともに1位を獲得した貴志祐介のベストセラー小説「悪の教典」がこの秋、映画×BeeTVドラマのコラボレーションで映像化される。映画公開に先駆け、主演の伊藤英明、三池崇史監督がインタビューに応じ、今作にかける思いや撮影エピソードを語った。
小説「悪の教典」は高度なIQをもつ高校の人気英語教師が、学校の生徒たちを大殺戮する異色の物語。11月の映画公開に先駆け、BeeTVではドラマ「悪の教典-序章-」が配信中。映画で描ききれなかった原作のストーリー部分にフィーチャーした“もう一つの物語”が展開されている。
伊藤英明演じる蓮実聖司は、“ハスミン”という愛称で呼ばれ、絶大な人気を誇る高校教師。学園のトラブルを次々に解決し、生徒や職員、PTAからの信頼も厚い、いわば“教師の鑑”だ。一方で、生まれながらにして他人への共感能力を欠くサイコパス(反社会性人格障害)という特殊な人格を隠し持っている。映画では表面上は平穏だった学園生活の小さなほころびからサイコパスの本性を現した蓮実が、教え子たちに向ける悪意と壮絶な凶行が生々しく描かれる。
伊藤:原作のボリュームを映画にするとき、あとからゾクゾクくる怖さをどう(映画の中で)出していくんだろうと思っていましたが、三池監督が撮るというところでそこの安心感はありました。サイコパスという役は到底理解できない役。だけど、原作を読んでいる中でどこかでサイコパスである、殺人鬼である蓮実を応援してしまっている感じがあって…蓮実はすごく純粋だし、動物的な本能を持っている。どう演じるかというよりは、三池監督やスタッフの前で心を裸にしてエネルギーをぶつけようと思いました。
また、ドラマでは映画で表現できなかった原作のストーリーを伏線的に描きたいと思っていましたが、スクリーンサイズから携帯サイズで視聴するという環境でどう見られるのかというところを意識して、小さな画面だから誰が見てもわかりやすい作品に仕上げたいと考えていました。だけど、映画を撮り終えたときに、この作品はドラマ的な誰もがわかる作品じゃなくていいんじゃないかなと思って、そういう意識をせずに演じました。単なる携帯ドラマのくくりからは外れてとてもいい作品になったと思います。
― 伊藤さんと言えば『海猿』で演じた“正義の味方”のイメージが強いですが、今作で悪役にチャレンジしてみた感想をお聞かせください。
伊藤:役者っていつも自信がなくて、もしかしたらできないかもしれない。って思うからこそ全力で取り組める、そうゆうのが大事だと思うんです。『海猿』がヒットした年に全く逆のキャラクターを演じられるのは役者として恵まれているなと思っています。役者を始めて13年くらいになりますが、30代になってからの面白さというのも感じるようになって、40代・50代もしかしたら80代までずっと続いていく役者人生にまたいろんな面白さを感じられるのだろうと思うと本当に楽しみになってきました。
自分が全力でエネルギーを出し切った作品をお客さんに観てもらっていろんなことを感じてもらうことの爽快さは、三池監督に教わりました。ネガティブではない辛さを感じたり、昼夜逆転の撮影が続いてどうしても神経が高ぶっていたり、身体もものすごく疲れていて、それでも監督は役者もスタッフも時間すらも全てを使い倒すエネルギーの塊のような方なので(笑)、自分も童心に戻ってピュアな気持ちで作品に取り組めて、そこが本当に楽しいなと思いました。
キャラクターについてのイメージも監督から言葉で伝えられることはなくて、「蓮実を恐く撮るのも不気味に撮るのも僕の仕事ですからね」といわれていました。台本を読んだからといって理解できるキャラクターではなかったし、原作を丸写ししてもしようがない。映画をヒットさせよう!とか、明日の撮影のためにエネルギーを残しておこうとかそういった意識もせずに本当に心を裸にしてエネルギーをぶつけていけばいいんだという気持ちで、出し切れるものを出し切った。そういう気持ちが今回は必要だったんだと思っています。
― ドラマ『悪の教典-序章-』で共演された中越典子さんや高岡早紀さんの印象はいかがでしたか?
伊藤:自分が勝手に思っているイメージですけど、女優さんってすごく逞しいんです。心も強いしそういったところが美しいなと。中越さんは特に声が魅力的で、耳に心地がいい声。声ってすごく大事だなと思いましたね。初めての共演でしたが、関係性やキャラクターについても共演者の皆さんや監督と相談しながらクオリティの高いものづくりを意識しながら進められました。
高岡さんもいろんな人生経験をされているからこそ、感じることをエネルギーに変えて演技をしていけると思うので、色気があって女性らしい素敵な女優さんだなと思いました。
― 生徒一人一人と向き合って惨殺していく演技上での緊張感はありましたか?
伊藤:常にニュートラルな状態。無心でいました。サイコパスはこうでなければいけない。わかりやすく表現しなければいけないって思うと、自分の幅が狭くなってしまうような気がして、そこは恐かったからこそ裸になれたんだと思います。
生徒役の新人の子たちは特にプレッシャーだったと思うし、監督に怒鳴られる子もいれば優しく諭される子もいるし、三池監督自身も人を使い分けて演出されていたんだと思います。監督は蓮実のように人を見抜く力があって、見透かされているような気がする。だから僕も裸でぶつかっていきました。
5年ぶりの共演でしたがとても愛がある。ものの捉え方、人に対する接し方は“三池塾”で改めてストイックにたたきこまれた気がしました。自分に勝るものは絶対にないはずだけど、それ以上に自分を引き出してくれるのは監督でありスタッフであり共演者の力であり、だから一緒にぶつかり合うくらいの気持ちでやりました。きれいごとを言うと愛があればなんでもできるかなって。まぁ、愛なんて知らない男ですけど。(笑)
― 生徒の死に際に人の本性が出ていると感じましたが、伊藤さんだったら蓮実にどう立ち向かいたいですか?
伊藤:潔く腹を切って死ぬべし。(笑)「一命」につなげようと思ったんですけど違いましたね。どうするかな?最初は先生がそんなことすると思わないから、「見てきてやるよ!」って最初に行って、「俺が警察とか呼んでくるよ!任せろ!」といいながら一番に殺されるタイプかもしれないですね。(笑)死に際に「だろ?」って言いながら死んで生きたいです。(笑)僕はお調子者なので、そういう感じだと思います。
◆三池監督インタビュー:現場では「ほぼ全裸だった」伊藤英明
― 原作は上下巻に及ぶ大作ですが、2時間の映画にしていく脚本を製作した際の苦労はありましたか?
三池監督:自分が読んでいた中で、中心とストーリーになる部分を残してそぎ落とす、という流れでやりました。原作はラストに向かって群像劇のような広がりを見せて、最後の部分だけ蓮実に集約させる感じだったんだけど、その部分をシンプルに、余計な映画的な物語をくっつけないで作りました。いろんなアプローチはあるのかなと思いましたが、今回はとにかくシンプルにすることが一番かなと思いました。
― 伊藤さんを蓮実役に起用した理由をお聞かせください。
三池監督:蓮実が面白いところは全てを持っているのに一つだけ欠けているところ。ちょっと(伊藤と)似ていますよね。(笑)『海猿』でヒーローをやって、同じ年に「悪の教典」で蓮実を演じる。世界中を見てもこんな役者いないと思うし、そういう強さを持っている。
自分が『スキヤキ・ウエスタンジャンゴ』を撮っていたときは撮影が終わった後の彼(伊藤)は大体蓮実のような感じでした。(笑) 夜のガンマンって自分では言ってましたけど。(笑)(伊藤は)言いようのない不思議な魅力がある。何のために存在してるかなんて意味はなくて、いろんな人生の選択肢はあったかもしれないけど生まれたときから俳優という定めだったようなことを感じる俳優。生きようとする生命力も強いし、自分らしく生きていたいけどそういう場所がない、孤独の蓮実聖司が少し重なるんです。
(映画の中で伊藤は)後半から目の中身が狂ってくるんですよね。まゆとか表情じゃなくて、演技なんてできないはずの眼球が狂ってる。普段はクールなんだけど無邪気に笑う笑顔が恐い。そういったところも蓮実的だなと思います。
伊藤:嬉しいですね。(笑)
― 伊藤さんの演技についてはどのように指導されましたか?
三池監督:蓮実のポイントは二面性というところ。普通のキャラクターだと朝と夜で気持ちの変化もあるしニュアンスも変えていかなければいけないけど、蓮実はとにかく2つの顔をごく自然にこなしていく。蓮実は人間だけが持っている共感能力という点だけが人として欠けている。だけど、それは、昔は(人間にも)なかったんじゃないかなと思うんです。組織を作って社会に存在するため、自分の身を守るために備わってきた能力で、そこに全ての善悪が存在する。蓮実はそこが欠落して生まれてしまっただけで、人に対する恨みとかはなく、より人間的で、動物的な存在なだけ。
人として共感はできないけど、何か欠落した人間を哀れに見るのはエゴ。だから(蓮実の)そういった部分に恐怖を感じつつ、興味深く見るというのが自分のスタンス。気づいてもらいたいのは、このわずかな時間(の映画)の中で観客として殺していいやつができてくるんですよね。「よくやった!蓮実!」と思っちゃう。(笑)まあ、山田孝之の役は元から死んでいいような役でしたが(笑)いいキャスティングでした。そういったおもしろさ、普段生活している中では感じられないスカッとした感じや興奮。全うな人間としての感覚を、蓮実のおかげで楽しめたと思っていただければと思います。
― 映画では伊藤さんのセクシーなシーンも印象的でした。
三池監督:もちろん魅力的な肉体を手に入れているので生かさないわけにはいかないなと思っていました。蓮実がアメリカに居たときはビジネスマンとしてスーツを着こなして、教師になったらさっぱりした飾らない姿でいた。蓮実がイメージしている人間の服を着ることによってこう見てもらおうという意図があったと思うんですが、それ自体が本来の蓮実にとっては邪魔な存在だったと思うんです。だから家にいると自然に脱ぐ。自分自身でいることが自然だと。
それと、英語の教師にしては不必要な筋肉がついていること自体も映画の伏線として描かれています。それは何かのとき動物的に早く動かなければいけなかったり、強くなければいけないとか。その瞬間がいつ訪れるかわからないからいつも家で鍛えている孤独な蓮実。だから、ほぼ全裸という感じになりました。(笑)
でも、そういった背景があるのでいやらしくなくすごく自然に感じられたと思います。現場の中でもほぼ全裸で動いていましたし、女子スタッフもだんだん慣れていってね。(笑)
― 映画のレイティングは意識して撮影されましたか?
三池監督:元々原作が持っている部分を、PG12にするためにはだいぶ印象を変えなきゃいけないなと思った。でもバイオレンスを見せたいから蓮実を暴れさせるとすると成人映画になっちゃう。蓮実の行動を邪魔したり、否定したりできないし、生徒たちにも向き合っていきたいと思った。
生徒たちの中には初めて映画に出演した子もたくさんいて、群衆の中だと自分がどこにいるかもわからない。自分で出来上がったものを見て、悔しい思いをする子もいるかもしれないけど、それぞれ必ず死ぬシーンの一瞬があると思うから、そこで自分の役らしく最後を形に残したかった。そこを隠すわけには行かないと思って、それが役者一人ひとりへの愛情が重なっていくと結果的にいつもバイオレンスにいきつくんだと思う。
(モデルプレス)
■ドラマ「悪の教典―序章―」
10月15日より、「dマーケット VIDEOストア powered by BeeTV」で独占配信中
配信:毎週月曜日更新 全4話(1話=約30分)
出演者:伊藤英明、中越典子、岩松了、高杉亘、高岡早紀、吹越満
監修:三池崇史
監督:野本史生
【アクセス方法】
スマホ:dメニュー>dマーケット>VIDEOストア
iモード:iチャネル>BeeTV もしくはiメニュー>動画>BeeTV
■映画「悪の教典」
11月10日全国東宝系ロードショー
出演者:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、山田孝之、吹越満
監督:三池崇史
伊藤英明演じる蓮実聖司は、“ハスミン”という愛称で呼ばれ、絶大な人気を誇る高校教師。学園のトラブルを次々に解決し、生徒や職員、PTAからの信頼も厚い、いわば“教師の鑑”だ。一方で、生まれながらにして他人への共感能力を欠くサイコパス(反社会性人格障害)という特殊な人格を隠し持っている。映画では表面上は平穏だった学園生活の小さなほころびからサイコパスの本性を現した蓮実が、教え子たちに向ける悪意と壮絶な凶行が生々しく描かれる。
伊藤英明インタビュー:『海猿』とは真逆の役どころ「役者として恵まれている」
― 二つの顔を持つ男の演じ分けは、どのように意識しましたか?伊藤:原作のボリュームを映画にするとき、あとからゾクゾクくる怖さをどう(映画の中で)出していくんだろうと思っていましたが、三池監督が撮るというところでそこの安心感はありました。サイコパスという役は到底理解できない役。だけど、原作を読んでいる中でどこかでサイコパスである、殺人鬼である蓮実を応援してしまっている感じがあって…蓮実はすごく純粋だし、動物的な本能を持っている。どう演じるかというよりは、三池監督やスタッフの前で心を裸にしてエネルギーをぶつけようと思いました。
また、ドラマでは映画で表現できなかった原作のストーリーを伏線的に描きたいと思っていましたが、スクリーンサイズから携帯サイズで視聴するという環境でどう見られるのかというところを意識して、小さな画面だから誰が見てもわかりやすい作品に仕上げたいと考えていました。だけど、映画を撮り終えたときに、この作品はドラマ的な誰もがわかる作品じゃなくていいんじゃないかなと思って、そういう意識をせずに演じました。単なる携帯ドラマのくくりからは外れてとてもいい作品になったと思います。
― 伊藤さんと言えば『海猿』で演じた“正義の味方”のイメージが強いですが、今作で悪役にチャレンジしてみた感想をお聞かせください。
伊藤:役者っていつも自信がなくて、もしかしたらできないかもしれない。って思うからこそ全力で取り組める、そうゆうのが大事だと思うんです。『海猿』がヒットした年に全く逆のキャラクターを演じられるのは役者として恵まれているなと思っています。役者を始めて13年くらいになりますが、30代になってからの面白さというのも感じるようになって、40代・50代もしかしたら80代までずっと続いていく役者人生にまたいろんな面白さを感じられるのだろうと思うと本当に楽しみになってきました。
自分が全力でエネルギーを出し切った作品をお客さんに観てもらっていろんなことを感じてもらうことの爽快さは、三池監督に教わりました。ネガティブではない辛さを感じたり、昼夜逆転の撮影が続いてどうしても神経が高ぶっていたり、身体もものすごく疲れていて、それでも監督は役者もスタッフも時間すらも全てを使い倒すエネルギーの塊のような方なので(笑)、自分も童心に戻ってピュアな気持ちで作品に取り組めて、そこが本当に楽しいなと思いました。
キャラクターについてのイメージも監督から言葉で伝えられることはなくて、「蓮実を恐く撮るのも不気味に撮るのも僕の仕事ですからね」といわれていました。台本を読んだからといって理解できるキャラクターではなかったし、原作を丸写ししてもしようがない。映画をヒットさせよう!とか、明日の撮影のためにエネルギーを残しておこうとかそういった意識もせずに本当に心を裸にしてエネルギーをぶつけていけばいいんだという気持ちで、出し切れるものを出し切った。そういう気持ちが今回は必要だったんだと思っています。
― ドラマ『悪の教典-序章-』で共演された中越典子さんや高岡早紀さんの印象はいかがでしたか?
伊藤:自分が勝手に思っているイメージですけど、女優さんってすごく逞しいんです。心も強いしそういったところが美しいなと。中越さんは特に声が魅力的で、耳に心地がいい声。声ってすごく大事だなと思いましたね。初めての共演でしたが、関係性やキャラクターについても共演者の皆さんや監督と相談しながらクオリティの高いものづくりを意識しながら進められました。
高岡さんもいろんな人生経験をされているからこそ、感じることをエネルギーに変えて演技をしていけると思うので、色気があって女性らしい素敵な女優さんだなと思いました。
― 生徒一人一人と向き合って惨殺していく演技上での緊張感はありましたか?
伊藤:常にニュートラルな状態。無心でいました。サイコパスはこうでなければいけない。わかりやすく表現しなければいけないって思うと、自分の幅が狭くなってしまうような気がして、そこは恐かったからこそ裸になれたんだと思います。
生徒役の新人の子たちは特にプレッシャーだったと思うし、監督に怒鳴られる子もいれば優しく諭される子もいるし、三池監督自身も人を使い分けて演出されていたんだと思います。監督は蓮実のように人を見抜く力があって、見透かされているような気がする。だから僕も裸でぶつかっていきました。
5年ぶりの共演でしたがとても愛がある。ものの捉え方、人に対する接し方は“三池塾”で改めてストイックにたたきこまれた気がしました。自分に勝るものは絶対にないはずだけど、それ以上に自分を引き出してくれるのは監督でありスタッフであり共演者の力であり、だから一緒にぶつかり合うくらいの気持ちでやりました。きれいごとを言うと愛があればなんでもできるかなって。まぁ、愛なんて知らない男ですけど。(笑)
― 生徒の死に際に人の本性が出ていると感じましたが、伊藤さんだったら蓮実にどう立ち向かいたいですか?
伊藤:潔く腹を切って死ぬべし。(笑)「一命」につなげようと思ったんですけど違いましたね。どうするかな?最初は先生がそんなことすると思わないから、「見てきてやるよ!」って最初に行って、「俺が警察とか呼んでくるよ!任せろ!」といいながら一番に殺されるタイプかもしれないですね。(笑)死に際に「だろ?」って言いながら死んで生きたいです。(笑)僕はお調子者なので、そういう感じだと思います。
◆三池監督インタビュー:現場では「ほぼ全裸だった」伊藤英明
― 原作は上下巻に及ぶ大作ですが、2時間の映画にしていく脚本を製作した際の苦労はありましたか?
三池監督:自分が読んでいた中で、中心とストーリーになる部分を残してそぎ落とす、という流れでやりました。原作はラストに向かって群像劇のような広がりを見せて、最後の部分だけ蓮実に集約させる感じだったんだけど、その部分をシンプルに、余計な映画的な物語をくっつけないで作りました。いろんなアプローチはあるのかなと思いましたが、今回はとにかくシンプルにすることが一番かなと思いました。
― 伊藤さんを蓮実役に起用した理由をお聞かせください。
三池監督:蓮実が面白いところは全てを持っているのに一つだけ欠けているところ。ちょっと(伊藤と)似ていますよね。(笑)『海猿』でヒーローをやって、同じ年に「悪の教典」で蓮実を演じる。世界中を見てもこんな役者いないと思うし、そういう強さを持っている。
自分が『スキヤキ・ウエスタンジャンゴ』を撮っていたときは撮影が終わった後の彼(伊藤)は大体蓮実のような感じでした。(笑) 夜のガンマンって自分では言ってましたけど。(笑)(伊藤は)言いようのない不思議な魅力がある。何のために存在してるかなんて意味はなくて、いろんな人生の選択肢はあったかもしれないけど生まれたときから俳優という定めだったようなことを感じる俳優。生きようとする生命力も強いし、自分らしく生きていたいけどそういう場所がない、孤独の蓮実聖司が少し重なるんです。
(映画の中で伊藤は)後半から目の中身が狂ってくるんですよね。まゆとか表情じゃなくて、演技なんてできないはずの眼球が狂ってる。普段はクールなんだけど無邪気に笑う笑顔が恐い。そういったところも蓮実的だなと思います。
伊藤:嬉しいですね。(笑)
― 伊藤さんの演技についてはどのように指導されましたか?
三池監督:蓮実のポイントは二面性というところ。普通のキャラクターだと朝と夜で気持ちの変化もあるしニュアンスも変えていかなければいけないけど、蓮実はとにかく2つの顔をごく自然にこなしていく。蓮実は人間だけが持っている共感能力という点だけが人として欠けている。だけど、それは、昔は(人間にも)なかったんじゃないかなと思うんです。組織を作って社会に存在するため、自分の身を守るために備わってきた能力で、そこに全ての善悪が存在する。蓮実はそこが欠落して生まれてしまっただけで、人に対する恨みとかはなく、より人間的で、動物的な存在なだけ。
人として共感はできないけど、何か欠落した人間を哀れに見るのはエゴ。だから(蓮実の)そういった部分に恐怖を感じつつ、興味深く見るというのが自分のスタンス。気づいてもらいたいのは、このわずかな時間(の映画)の中で観客として殺していいやつができてくるんですよね。「よくやった!蓮実!」と思っちゃう。(笑)まあ、山田孝之の役は元から死んでいいような役でしたが(笑)いいキャスティングでした。そういったおもしろさ、普段生活している中では感じられないスカッとした感じや興奮。全うな人間としての感覚を、蓮実のおかげで楽しめたと思っていただければと思います。
― 映画では伊藤さんのセクシーなシーンも印象的でした。
三池監督:もちろん魅力的な肉体を手に入れているので生かさないわけにはいかないなと思っていました。蓮実がアメリカに居たときはビジネスマンとしてスーツを着こなして、教師になったらさっぱりした飾らない姿でいた。蓮実がイメージしている人間の服を着ることによってこう見てもらおうという意図があったと思うんですが、それ自体が本来の蓮実にとっては邪魔な存在だったと思うんです。だから家にいると自然に脱ぐ。自分自身でいることが自然だと。
それと、英語の教師にしては不必要な筋肉がついていること自体も映画の伏線として描かれています。それは何かのとき動物的に早く動かなければいけなかったり、強くなければいけないとか。その瞬間がいつ訪れるかわからないからいつも家で鍛えている孤独な蓮実。だから、ほぼ全裸という感じになりました。(笑)
でも、そういった背景があるのでいやらしくなくすごく自然に感じられたと思います。現場の中でもほぼ全裸で動いていましたし、女子スタッフもだんだん慣れていってね。(笑)
― 映画のレイティングは意識して撮影されましたか?
三池監督:元々原作が持っている部分を、PG12にするためにはだいぶ印象を変えなきゃいけないなと思った。でもバイオレンスを見せたいから蓮実を暴れさせるとすると成人映画になっちゃう。蓮実の行動を邪魔したり、否定したりできないし、生徒たちにも向き合っていきたいと思った。
生徒たちの中には初めて映画に出演した子もたくさんいて、群衆の中だと自分がどこにいるかもわからない。自分で出来上がったものを見て、悔しい思いをする子もいるかもしれないけど、それぞれ必ず死ぬシーンの一瞬があると思うから、そこで自分の役らしく最後を形に残したかった。そこを隠すわけには行かないと思って、それが役者一人ひとりへの愛情が重なっていくと結果的にいつもバイオレンスにいきつくんだと思う。
(モデルプレス)
■ドラマ「悪の教典―序章―」
10月15日より、「dマーケット VIDEOストア powered by BeeTV」で独占配信中
配信:毎週月曜日更新 全4話(1話=約30分)
出演者:伊藤英明、中越典子、岩松了、高杉亘、高岡早紀、吹越満
監修:三池崇史
監督:野本史生
【アクセス方法】
スマホ:dメニュー>dマーケット>VIDEOストア
iモード:iチャネル>BeeTV もしくはiメニュー>動画>BeeTV
■映画「悪の教典」
11月10日全国東宝系ロードショー
出演者:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、山田孝之、吹越満
監督:三池崇史
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