モデルプレスのインタビューに応じた福士蒼汰(C)モデルプレス

福士蒼汰、“一人二役”葛藤抱えた双子の演じ分けは「変えないこと」意識 スピッツ名曲「楓」映画化で新たな挑戦へ【インタビュー前編】

2025.11.12 17:00

映画「楓」(12月19日公開)で福原遥とともにW主演を務める俳優の福士蒼汰(ふくし・そうた/32)に、モデルプレスがインタビュー。前編では、“一人二役”を演じた今作への思いや福原との共演秘話、さまざまな経験をした福士が考える「悲しみを乗り越える方法」を聞いた。

  

福士蒼汰&福原遥W主演 映画「楓」

福士蒼汰(C)モデルプレス
時代を超えて愛される国民的バンド・スピッツの楽曲「楓」が映画化。大切な人を失った男女の、胸に刻まれた過去とそれでも続いていく現在、そして未来へ進もうとする姿を、季節の移り変わりを通して描く。

ニュージーランドでの事故で双子の弟・恵を亡くした涼は、事故のショックで涼を恵だと思い込む恋人・亜子の前で恵のフリをして過ごす。しかし亜子もまた、打ち明けられない秘密を抱えていた。双子の涼・恵を福士が、亜子を福原が演じる。

福士蒼汰、人気楽曲「楓」映画化は“新しい試み”

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 今作はスピッツの人気楽曲「楓」を映画化した物語ですが、お話を聞いた際の心境をお聞かせください。

福士:昨今、歌を原案に映像化した作品も多くありますが、スピッツさんの名曲「楓」が実写映画化されるというのは驚きました。自分もカラオケに行った際に歌っていた曲なので、あの歌がどう映像化されるんだろうという興味がすごくありました。

最初に台本をいただいたときは「あの楽曲をどう読み解いてこの脚本に落とし込んだんだろう?」と、興味深かったです。でも、読み進めていくうちにスピッツの「楓」という曲と、「楓」という映画がリンクする部分を見つけていったんですよね。一人ひとりが感じるスピッツの「楓」があって、そのうちの1つがこの作品なのかな、と考えながら、面白いなと思って読んでいました。

― 楽曲と映画のリンクする部分を見つけていったとのことですが、具体的にどういうところがリンクしていると感じましたか?

福士:例えば「かわるがわるのぞいた穴から」という歌詞は、歌で聴いているといろいろな意味に考えることができますが、この映画ではカメラのファインダーを覗いていく。だとすると、これは僕が演じた涼と恵っていう双子の、両方の目線なのかもしれない…と思えたり。「さよなら 君の声を抱いて歩いていく」という歌詞は、福原さん演じる亜子が「さよなら」と言う場面があるので、涼がその亜子の声を抱いていくという解釈もできるし、亡くなった恵の声を抱きながら亜子と一緒に歩いていくとも読み取れるよね、とか。スピッツさんの曲は抽象的な表現が多い分、読み解き方がいろいろあるなと思いました。

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 撮影期間も「楓」を聴いていましたか?

福士:聴いていました。「楓」を流しながら台本を読んだり、監督との初ミーティングを行ったりと、気づいたらずっと聴いていたので、「楓」のリズムを自分の中に落とし込みたかったんだと思います。改めて考えると、すごくよく聴いていましたね。

― 今作に出会う前と出会った後では、「楓」という楽曲への思いに変化はありますか?

福士:そうですね。これだけ曲の歌詞を読み解こうとしたことはあまりなかったですし、普段は自分の経験と照らし合わせて歌を聴いている中で、今回は「楓」という映画を通して曲を聴くという初めての経験でした。歌が具体的になって、色がついていったような感覚があり、すごく新しいなと思いましたし、新しい発見もありました。

― 小説、漫画などの実写化や完全オリジナル作品とはまた違う感覚なのでしょうか?

福士:確かに違いますね。最近は漫画の実写化も多いですが、すでに絵ができているので、その中で演じる制限と楽しさがあります。逆に、完全にオリジナル作品だと何もないから、制限がない楽しさと難しさがやはりあって。でも、音楽となると、音はあるけど実態はない。視覚的に存在していないからこそ、ある種読み取り方は自由だけど、作詞された草野(マサムネ)さんが何を想像して、どういう気持ちで歌っているのかと想像したくなりました。脚本を読んだ段階で、自分の中でも新しい試みだと感じました。

福士蒼汰、“一人二役”双子の演じ分けは「変えないことを考えて」

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 双子の恵と涼を演じられたとのお話がありましたが、改めて今作で演じられた役どころについて教えてください。

福士:僕が演じた恵と涼は、右利きか左利きか、メガネをかけているかかけていないか、という違う部分もあるのですが、それ以外はほとんど一緒の双子です。涼はちょっと奥手な性格で、恵は好奇心が強く、行動力があるという部分が大きく違うのかな。劇中では恵のフリをする涼がいるので、涼、恵、恵のフリをする涼という、ある種三役を演じました。

― 演じ分けるのに大変だったことや、役作りでこだわったことをお聞かせください。

福士:利き手やメガネ、髪型などビジュアル的な違いがあるので、自分の芝居で大きく変えることはしなくていいかなと思ってました。それをベースにしつつ、彼らが生きてきた過程で変わってきた部分を意識して、声のトーンには変化をつけました。奥手な涼はちょっと口ごもるところがあるので、声を低く。逆に恵は行動力があって人に何かを伝えることが多いと思うので、涼よりも声を高く。あとは逆に変えないことを考えていました。

左利きのトレーニングをしたり、技術的な部分の見せ方は監督ともお話しました。カメラを使うシーンもあったのですが、すごく楽しくて、現場でスタッフさんの写真を撮ったりしていました。

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 涼と恵は、どちらがご自身に近いと思いますか?

福士:涼と恵、どちらの側面も持っていると思います。自分の中ではっきりとした芯がある物事については、恵のように「こうなんだよね!こうなんだよね!」と、その物事を楽しそうに、それしかないかのように伝えます。でも、それ以外はあまりハキハキしていないし、ぬめっとしているので基本的には涼かな(笑)。

― どちらにも共感できるところがあったんですね。

福士:そうですね。もちろん自分が演じているので、自分の中の2人の要素を出したところもあるのかもしれないです。

福士蒼汰「絵力がある」ニュージーランドでの撮影に感動

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 涼と恵が同じ空間にいるシーンもありましたが、どのように撮影されたのですか?大変だったことはありますか?

福士:僕は大変なことはなかったですが、ダブルでやってくれた方がいて、その方は僕が言ったセリフを聞きながら同じペースで言わなきゃいけなかったので大変そうでした。そこでも改めて、人それぞれ喋り方が違うんだなと思いましたね。撮影方法としては半分で切って繋ぎ合わせているんだと思うんですけど、演じた自分でも驚くぐらい自然でした。涼と恵のシーンがたくさんあったら大変だったと思いますが、1シーンだったのでやりがいも感じましたし、作品の中でもいいアクセントになっていると思います。

― ほかに何かやりがいがあったシーンや思い入れが深いシーンがあればお聞かせください。

福士:やはり、ニュージーランドに行ったことが大きいです。海外で撮影するのはなかなか難しくて貴重なのですが、今回はニュージーランドで撮影できて、すごくいいシーンになりました。最初と最後にニュージーランドのシーンが出てきて、絵力がありますね。

― 実際に星空は見られましたか?

福士:あいにく曇っていて雨が降った日もあったのですが、初日は結構見られました。とても綺麗でした。

福士蒼汰「単純な“好き”とはまた違う」大人になった涼&亜子の関係

福士蒼汰(C)モデルプレス
― なんでも器用にこなす恵に劣等感を抱きながらも、亜子の前では恵のフリをした涼の心情をどう捉えていますか?

福士:涼は、最初は恵のフリをしようとは思っていないんですよ。だけど、涼自身も亜子のことが気になっていたし、亜子が「恵ちゃん」って言ってくれた状況で、あの答えしかなかったんだと思います。亜子に「おかえり」って言われて、「“ただいま”って言ったらもう嘘が始まるよな…」とはわかりながらも、あのときはそれ以外の選択肢はなかったんです。きっと後で言おうという思いはあったでしょうし、なかなか言い出すきっかけもなくズルズルいってしまったのはよくないですが、自分で考えても、あのときの答えは1つしかなかったと思いますね。

― 恵として過ごしていく中で、次第に涼自身も亜子に惹かれていっていきますが、亜子のどのようなところに涼は惹かれたと思いますか?

福士:どうなんでしょう…でも、一目惚れに近いかもしれません。学生時代の自転車のシーンがすごく切ないんですけど、実はそういう思いをずっと持っていたんだろうなと。

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 大人になった亜子の姿に惹かれた部分はあると思いますか?

福士:そこが難しいんですけど、大人になっているので単純な“好き”とはまた違うんですよね。学生の頃は“好き”“一目惚れ”というところから恋が始まると思いますが、大人になった彼らが感じていることは、単純な"好き"を超えて「この人を大切にしたい」という感情だと思うんです。涼と亜子は「好きだから一緒にいる」という気持ちももちろんありながら、「放っておけない」「この人を守ってあげたい」という気持ちから来る関係性なのかなと感じます。

福士蒼汰、恋人役・福原遥に感じた説得力

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 今回、福原遥さんとは初の恋人役とのことですが、恋人役として共演してみていかがでしたか?

福士:すごく真っ直ぐで、台本やキャラクターに対して真摯に考えていました。亜子という難しい役を真っ直ぐに捉えてお芝居していましたし、福原さんが亜子を演じることで、「きっと涼も恵もこの子を好きになるよな」と説得力が生まれたと思います。「守りたい」という気持ちもわかるし、流れる空気のゆっくりさが非常に心地よい時間でした。

― お芝居に関して何かお話されましたか?

福士:お芝居のテンション感だったり、涼と亜子、恵と亜子のそれぞれの温度感など、いろいろお話しました。恵といるときはちょっとテンポよくお芝居しようか、涼といるときはもうちょっとダラっと、マイペースな感じで進んでいってもいいかもね、みたいなことを話し合って。だから、ニュージーランドの恵と亜子のシーンでは、ポンポンポンって会話が進んでツッコミも入っている一方で、涼とのシーンは「〇〇じゃん~」みたいな、面白くはないかもしれないけど優しい雰囲気になっていると思います。

福士蒼汰(C)モデルプレス
― お芝居以外のことは?

福士:話していましたが、何を話したかな…(笑)。基本的に僕が写真を撮って、彼女は編み物をしているという時間が流れていました。合間合間で写真を撮っていたので、福原さんが編み物しているところを写真で撮ったり。(記者のカメラを見て)それこそニコンで撮っていました(笑)。

福士蒼汰の悲しみを乗り越える方法

福士蒼汰(C)モデルプレス
― 今作は、大切な人を失った悲しみを抱きながらも前に進もうとしている2人の姿が描かれています。福士さんご自身もさまざまな経験をされていると思いますが、その中で感じた悲しみ・怒りを乗り越える方法を教えてください。

福士:時間が解決してくれることもあると思います。あとは、物事を多角的に捉えること。なにかムカつくことや悲しいことがあっても、相手の立場で考えたらただ捉え方が違っただけだということに気付き、解決に向かえることがあります。「どうしてアイツはこうしたんだ。ムカつく。俺はこうしたい」とただ感情をぶつけるのではなく、相手と向かっている方向が同じだと理解した上で意見のぶつかり合いをして、それを乗り越えると、結果的にいいものができると思います。海外でお仕事をしているとそれぞれやり方が違うこともありますが、いい作品を作ろうと思っているのはみんな一緒なので、お互いにすり合わせながらやるためにも、相手のことを知るというのを意識しています。

★後編では、グローバルに活躍する福士のモットーや韓国での生活で得たこと、そして「夢を叶える秘訣」に迫った。

(modelpress編集部)

福士蒼汰(ふくし・そうた)プロフィール

福士蒼汰(C)モデルプレス
1993年5月30日生まれ、東京都出身。2011年、ドラマ「美咲ナンバーワン!!」(日本テレビ系)で俳優デビュー。同年「仮面ライダーフォーゼ」(テレビ朝日系)で主演に抜擢され、注目を集めた後、2013年度前期放送の連続テレビ小説「あまちゃん」(NHK)でヒロインの相手役を演じブレイクを果たした。その後もドラマ「今日は会社休みます」(日本テレビ系/2014)、「恋仲」(フジテレビ系/2015)、「愛してたって、秘密はある。」(日本テレビ系/2017)、映画「ストロボ・エッジ」(2015)、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(2016)など、話題作に多数出演。

近年の主な作品はドラマ「神様のカルテ」(フジテレビ系/2021)、「大奥」(NHK/2023)、「弁護士ソドム」(テレビ東京系/2023)、「アイのない恋人たち」(テレビ朝日系/2024)など。そのほか、Huluオリジナル「THE HEAD Season2」(2023)、Netflix韓国ドラマ「この恋、通訳できますか?(仮題)」(配信未定)など、海外作品でも活躍している。
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