三山凌輝、久保史緒里との過酷シーンで感じた「1人じゃない」という感覚「絆が生まれた気がした瞬間はありました」【「誰よりもつよく抱きしめて」インタビュー前編】
2025.02.08 21:00
映画「誰よりもつよく抱きしめて」(2月7日公開)で乃木坂46の久保史緒里とW主演を務めた俳優の三山凌輝(みやま・りょうき/25)に、モデルプレスがインタビュー。強迫性障害による潔癖症に悩まされる男性を演じた彼は、どのようにその難しい役柄と向き合っていったのか。そして恋人役を演じた久保と「2人で乗り越えた」と晴れやかな表情を浮かべた理由とは。【インタビュー前編】
三山凌輝&久保史緒里W主演「誰よりもつよく抱きしめて」
本作は、究極の純愛小説として話題となった新堂冬樹の同名小説「誰よりもつよく抱きしめて」(新堂冬樹/著、光文社文庫)の映画化。「ミッドナイトスワン」「サイレントラブ」をはじめ、生きづらさを抱えながらも愛を通して他者と関わる人間の様相を写し取ってきた、内田英治監督の真骨頂となる一作となる。強迫性障害による潔癖症で、常にビニール手袋着用で生活し、同棲する恋人にも手すら触れることができない絵本作家・水島良城を三山、恋人に触れてもらえず、彼の病気を理解しつつも、自分の揺れ動く心に思い悩む書店員の女性・桐本月菜を久保が演じる。
三山凌輝、強迫性障害に悩む男性演じる役作り
1度洗ったのに何度も何度も手を洗ってしまう。恋人である月菜と手を繋ぐことですら躊躇してしまう。三山は潔癖症に悩まされる良城を丁寧に、繊細に演じた。「もちろんそういう役を演じさせていただく上でリスペクトを持って、当事者の方々がどういう感情を抱いて、普段からどういうことを気になさって何に苦しんでいるのかというのは、自分なりにリサーチさせて頂いたり、監督とも話し合いを都度したりしていました」と当事者に寄り添い、監督とも話し合う中で役への理解を深めていったという。しかし、三山が最も大事にしたのは別のところにあった。「ただ、作品自体を掘っていくにあたって、リサーチなどもすごく大事なところではありながらも、良城というその人に僕はフォーカスするべきだなと思ったんです。良城のセリフや置かれている状況というものは、ある種シチュエーションがすごく分かりやすいけれども、強迫性障害という病気を持っている方の中でも、それぞれの生き方や、その人にとっての苦しみというのは結局その人にしか分からないし、似たような病気で1つにまとめて考えてしまうのは違うと思いました。そういう意味で僕はあえていろんなものや周りを見すぎてしまうよりは、良城という人間にフォーカスして役作りをしたつもりです」
三山凌輝、大切なのは「役に寄り添う」「役と共存する」という感覚
三山は本作に壮大なテーマを感じていた。「『人間同士、分かり合いたいけど分かり合えない時もある。それぞれが抱えているその人にしかない悩みを受け入れてあげたいけれども、理解しきれないもどかしさ、気持ちのすれ違いというものは誰しもあるよね』という、そもそもの大きい壮大なテーマがあると思っていて。なので、そういう大きいテーマに視点を置いて考えられたことで、役に寄り添ってそのテーマとリンクさせながら掘り下げることができたのだと思います」水島良城という人間にとことん向き合い、苦しみを理解していく中で共感した部分はあったのだろうか。「すごく分かりやすい感情で言うと悲しい、もどかしい、分かってあげたいけど分からなくてむしろイライラしてきてしまうとか、そういう部分ってあるじゃないですか。本当はこっちも人のためにやってあげようとしたことなのに、恩を仇で返された気持ちになる瞬間もあると思うんです。本来はぶつかり合う必要がなかったのに、そういうのがすれ違いになっていったり、お互いにここは触れてこなかったということが後になって膨張してきたりする。でもそれが意外と人間の本質なのかなと。そういう部分が結構この作品はすごく詰め込まれている気がしたので、そういう部分を良城側の視点からできるだけ寄り添ってリンクさせていったかなという感覚はありました」
ただ、共感した部分はありつつも「結局、僕という人間に置き換えた時には、最終的な判断と行動は、多分良城とは別のことをしてしまう」とも話す。どうしてそう思ったのか尋ねると、三山は「最終的な性格の違い」だと答えた。感情には共感を抱きつつも下す判断や行動は違う。そんなキャラクターを演じるため、三山が心がけたことは彼が役者として活動する上で大切にしていることだった。
「僕は役者としてその役を理解するためには、やっぱ役に寄り添う、役と共存するという感覚がどちらも大事な事と思っていて。良城の感情はすごく理解できるけど『僕だったらこうするな』とか最終判断が違うという感覚だった気がします。脳みその違いもありますし。でもそれを役者として演じるにあたっては『その役はどう考えているんだろう』『この人はなんでこういう気持ちだからこうなるんだろう』というものになるべく寄り添って、それを自分で消化して、理解して、違和感をなくしてあげるということは良城だけでなく、演じることにおいてすごく大切なことかなとは思いました。特に、自分とは逆の行動を取りがちなキャラクター・別の人格を演じるにあたっては、そういうところが結構大事で。似ている部分があるところは、逆にすごく共存しやすいじゃないですか。だけど最終的に取る行動は逆だと、どこか自分にストッパーをかけたり、自分ではないところを出さなければいけなかったりする瞬間が出てくるので、そういうところを考えて行動するアクティングになったかなと思います」
三山凌輝、久保史緒里と「2人で乗り越えた」シーン
三山が良城に寄り添っていたように、本作の中では久保演じる月菜という存在が、良城の病気と向き合い葛藤しながらも優しく寄り添っていたように感じた。三山は久保と初共演ながら「触れたくても触れられない、でも互いを大切に思っている」という絶妙な距離感を演じることとなったが「すごく悩んで撮影したみたいなのはなかった気がします」と振り返る。その持ち前の明るさで久保の心を開いていったのには作品を良くしようという彼なりの意図があった。「基本的に楽屋ではフランクに話せましたし、期間も映画だから1ヶ月で短かったので、その間になるべくラフにコミュニケーションを取れるような関係性になれていたらいいかなと思って。そういう間柄になることができれば、芝居に入っても自然とリラックスした状態で芝居ができることは多いと思ったので、そういうスタンスを取っていました」
特にその信頼関係が活きた場面を聞くと、街を歩く2人に土砂降りの雨が降り注ぐシーンを挙げた。「作品の後半でとても大事なシーンでもありましたし。それまでに流れてきた感情で撮影してきた事実があるから、それを思い出しながらそのシーンを演じた記憶があります」と語った三山は「本当に2人で乗り越えたなと思いました。結構寒くて、時期も冬だったんですけど、何回も何回も雨を降らせて撮影したので、その時は俳優同士としての絆が生まれた気がした瞬間はありましたね」と笑いながら、久保と助け合った日の心境を思い出していた。
「2人ともブルブル震えていましたが、びちょびちょになりながら毛布をかけ合って1人じゃないみたいな感覚がありました。外のロケで一般の方も通って見ているけれども、周りからはこの人たちが何をやっているか分からなくて、撮影スタッフや僕たちだけが全て分かっているというのはすごく不思議な空間でした。撮影の後半だったので『この作品の大きな山場が来たな』みたいな気持ちもありましたし、数週間の撮影を乗り切った同じ時間を共有している僕たちにしか分からない乗り越えてきたものと、この『最後の正念場だ』という感覚、そしてシンプルに寒いというものも含めて(笑)、共存していた瞬間だったと思います。あと、雨降らしの後のシーンがその前日にあって前後していたんですけど、そこに繋がるようにちゃんと感情を持っていかないといけないシビアなところもありました」
インタビュー後編では、良城というキャラクターと向き合った時期に感じていたこと、そして俳優としてアーティストとして活躍し続ける彼が夢を叶えるために必要だと思うことを打ち明けてくれた。(modelpress編集部)
三山凌輝(みやま・りょうき)プロフィール
1999年4月26日生まれ、愛知県出身。俳優。BE:FIRSTのメンバー。主な出演作に映画「HiGH&LOW THE WORST X」(2022)やドラマ「往生際の意味を知れ!」(2023)、「生理のおじさんとその娘」(2023)、連続テレビ小説「虎に翼」(2024)などの話題作へ出演。「誰よりもつよく抱きしめて」は自身初の主演映画となる。
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