【「スロウトレイン」インタビュー前編】脚本家・野木亜紀子氏、オリジナル脚本描くきっかけになった土井裕泰監督の存在――再タッグで生まれた新ドラマとは
女優の松たか子が主演を務めるTBS系新春スペシャルドラマ「スロウトレイン」(2025年1月2日よる9時~)。松をはじめ、多部未華子、松坂桃李、星野源、チュ・ジョンヒョクら豪華なキャスト陣はもちろん、脚本・野木亜紀子&演出・土井裕泰の“最強タッグ”が話題に。そんな野木氏と土井氏にインタビューし、制作秘話や互いの魅力を語ってもらった。【前編】
松たか子主演「スロウトレイン」
ドラマ「空飛ぶ広報室」(原作:有川ひろ)(2013年/TBS)、「逃げるは恥だが役に立つ」(原作:海野つなみ)「重版出来!」(原作:松田奈緒子)(ともに2016年/TBS)、映画「罪の声」(原作:塩田武士)(2020年)など数々の作品でヒットを生み出してきた脚本・野木氏×監督・土井氏が再びタッグを組み手掛けた本作。変わりゆく時代の中でも普遍的に在り続ける「家族」を通して、痛快で、胸が高鳴り、最後には思いっきり笑顔になれる、宝物のような新時代のホームドラマとなっている。野木亜紀子×土井裕泰「スロウトレイン」誕生秘話
― 今回の作品は土井さんのTBS卒業制作ということで。土井:私事ではあるのですが、2024年の春に60歳を迎えたんです。TBSドラマのディレクターとしてひとつの区切りになるような作品をつくってみようと思い立って、2年程前に野木さんに声をかけてみたんです。野木さんとはドラマと映画で4度ほどご一緒してますが、まだオリジナルをやったことがなかったので、この機会に実現させたいなという思いもありました。
野木:土井さんに「卒業制作を一緒にやりたい」と言われたら断れないですよ(笑)。せっかくお声がけいただきましたし、土井さんの卒業制作を撮るなら私が書きたいと思い、やらせていただきました。
― 本作のテーマに「ホームドラマ」を選んだ理由を教えてください。
土井:野木さんは、やると決まれば徹底的に取材や下調べをされる方ですが、今回は忙しい中で急に時間を空けてもらったので、あまり負荷が大きくないものがいいなと。僕は、野木さんが書いた「コタキ兄弟と四苦八苦」(2020年/テレビ東京)というドラマが大好きだったので「コタキ兄弟」のようなテイストをイメージしながら、今の社会や市井のリアルな悩みが描けたらいいなと思い、人生の岐路に立った3人の姉弟の話を考えていきました。
― 鎌倉と韓国を舞台に選んだ理由は?
土井:電車に乗っていた時に「小津安二郎生誕120年没後60年」の企画展の広告を見たんです。鎌倉を舞台にすることで、小津監督の映画で描かれていたような、あの頃の家族像や結婚観と現在との変化が自然に浮かび上がってくるのではないかと考えました。
韓国に関しては、2002年に「Friends」という日韓共同ドラマを制作し、日本と韓国には政治や過去の歴史など様々なわだかまりがあるけど、若い人たちが互いの文化を理解し合うことで乗り越えていけるのではないか、ということをテーマに描きました。今気が付けば、日本の若い世代が韓国のカルチャーやエンターテインメントに憧れて追いかけています。この20年間で起きた意識の変化を描きたいという思いがありました。
野木亜紀子オリジナル脚本のはじまり――土井裕泰が語る魅力
― 野木さんのnoteでは、土井さんのスピーチが「アンナチュラル」(2018年/TBS)を書くきっかけになったというお話がありました。土井:ドラマ「重版出来!」の打ち上げの時ですね。その前に「空飛ぶ広報室」を一緒にやっていたのですが、ドラマでは有川ひろ先生の原作にないエピソードが多かったんです。特に新垣結衣さん演じたリカのテレビ局サイドの話はほとんどオリジナルでした。野木さんはちゃんと取材をして書く人で、最終話も震災の後の松島の話だったのですが、過酷なスケジュールの中でちゃんと自分の足で現地に行って書いていて、原作の元々のテーマをさらに深めるためにオリジナルのエピソードが機能していて素晴らしいなと思いました。「重版出来!」も、最終回はほぼオリジナルなのですが、一回完成して準備を進めかけていたものを『いや、やめる』と全部捨てて一晩で書き直したんですよ。何かを生み出す力がある人なんだと、この2つの作品で感じましたね。
野木:今はあの当時よりもオリジナルドラマが増えてきましたよね。「アンナチュラル」がそこそこヒットしたことで、“オリジナルでも面白いものが作れるんだ”とオリジナル作品を作る機序が戻ってきたんじゃないかと私は勝手に考えていますが、今後もその流れが続けばいいなと思います。やっぱりオリジナルを作らないと、プロデューサーも作る力がどんどん失われていくと思うんです。もちろん原作ものが悪いということではなく、業界全体が両方上手く織り交ぜながらやっていければいいんじゃないかなと思います。
ホームドラマは「この先もなくなることはない」
― これまでも多くのホームドラマが作られている中で「逃げ恥」のように新しい結婚や家族の形を描いた作品もありますが、ホームドラマを書くことに対する考えなどがありましたら教えてください。野木:多分ホームドラマって形は変われど、5年後も10年後も作れるものだと思います。今やっている「海に眠るダイヤモンド」もいろいろな要素はありますが、昭和の一つのホームドラマとして描いている部分もある。変遷していく家族像は時代が変わっても描けるので、ホームドラマはこの先もなくなることはないと思います。
― 与える影響も大きいと思います。
野木:そうですね。ただ、実際どれぐらい与えているんですかね。「逃げ恥」は海野(つなみ)先生の原作あっての作品ですが、ドラマで描いたことで世界がどれぐらい変わったかと聞かれたら大して変わっていない気もします。世の進みはゆっくりだからあまり期待しても仕方ないなと思いつつ、たとえ劇的に何かを変えることはできなくても、ドラマでスタンダードとして描くことでスタンダードになっていくこともあるかもしれないですよね。
野木亜紀子・土井裕泰、お互いから見た魅力
― 厚い信頼関係のあるお二人ですが、改めて、お互いの素敵だなと思うところを教えてください。野木:急に恥ずかしいですね(笑)。でも、この年代でこんなに穏やかで才能のあるディレクターはなかなかいないんじゃないでしょうか。今回も土井さんの卒制と聞いてスタッフみんな「やります」と前のめりになっていたみたいで、そのくらい人徳がある方。役者さんたちもみんな土井さんのことが好きだから集まってくれたんだと思います。
土井:野木さんは、一言で言うと根性がすごい(笑)。自分が納得いくものを出すまで決して妥協しないし、はっきりものを言う人なので、すごく仕事がしやすいです。僕たちがやっていることって正解がないので、道に迷うことも多い。そんな時、野木さんのようなブレずにものを言う人がいると、ぼんやりとしていた作品の輪郭やテーマがちゃんと見えてくるんです。
野木:本当にありがたい出会いです。今回また土井さんとこういう形で一緒に作れて良かったです。
★キャラクター誕生の裏話などについて聞いたインタビュー後編も公開中。
(modelpress編集部)
野木亜紀子(のぎ・あきこ)プロフィール
脚本家。これまで、 「空飛ぶ広報室」(2013年/TBS)、「重版出来!」(2016年/TBS)、「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年/TBS)、映画「図書館戦争」シリーズなど多数の名作を手掛けた。オリジナル脚本作品にドラマ「アンナチュラル」(2018年/TBS)、「獣になれない私たち」(2018年/日本テレビ)、「コタキ兄弟と四苦八苦」(2020年/テレビ東京)、「MIU404」(2020年/TBS)など。近年の主な作品は、ドラマ「海に眠るダイヤモンド」(2024年10月期/TBS)、映画「カラオケ行こ!」(和山やま原作)、「ラストマイル」(ともに2024年)など。土井裕泰(どい・のぶひろ)プロフィール
TBSテレビのドラマ演出家・映画監督。主な演出ドラマは「魔女の条件」(1999年)、「フレンズ」(2002年)、「GOOD LUCK」(2003年)、「ラブシャッフル」(2009年)、「空飛ぶ広報室」(2013年)、「コウノドリ」(2015、2017)、「重版出来!」(2016年)、「カルテット」(2017年)、映画「ビリギャル」(2015)、「罪の声」(2020)など。近年の主な作品は、ドラマ「持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜」(2022)、「ラストマン-全盲の捜査官-」(2023年)、映画「花束みたいな恋をした」(2021年)など。2025年4月4日に映画「片思い世界」の公開が控える。もっと詳しくみる
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