「いちばんすきな花」スタイリストに聞いた 衣装に隠された4人のテーマカラーと裏設定・あえてトレンドを追求しない理由とは<インタビュー>
2023.11.23 17:00
views
俳優の多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠が“クアトロ主演”を務めるフジテレビ系木曜劇場『いちばんすきな花』(毎週木曜よる10時~)では、4人のそれぞれの個性が光るファッションが話題に。今回モデルプレスでは、スタイリングを担当する立花文乃氏にインタビューし、コーディネートのポイントや色使いに隠された秘密、キャスト陣と話し合った衣装合わせの裏話などたっぷりと語ってもらった。
多部未華子・松下洸平・今田美桜・神尾楓珠主演「いちばんすきな花」
本作は、4人の俳優が主演を務める新しい形の“クアトロ主演”ドラマ。“男女の間に友情は成立するのか?”をテーマに違う人生を歩んできた4人の男女が紡ぎ出す“友情”と“恋愛”、そしてそこで生まれるそのどちらとも違う“感情”を丁寧に描いていく。塾講師・潮ゆくえ(多部)、出版社で働く会社員・春木椿(松下)、美容師・深雪夜々(今田)、コンビニで働きながらイラストレーターの夢を追いかける青年・佐藤紅葉(神尾)という年齢も性別も、育ってきた環境も違う4人のファッションは、それぞれのキャラクターが浮き出ており、四者四様。しかし、4人が集まったときもどこかすっと馴染むようなナチュラルさが温かな物語を引き立てている。
ゆくえ(多部未華子)・椿(松下洸平)ら4人のコンセプトに迫る
― まずは、4人のファッションのテーマやスタイリングのコンセプトを教えてください。立花:ゆくえは、監督との最初の打ち合わせのとき、「オンオフをあまりつけたくない」といったお話があったので、仕事着でもいわゆるオフィスカジュアルのようなカチッとしたスタイルよりは、普段着の延長で日常に近い仕事着として、“自分の好きなものを着る”ことを大事にしました。一方、部屋着や普段着は、仕事着でそのまま椿の家に行く流れが多かったので、少し印象を変えつつ多部さんの持つ柔らかさに合うようなゆったりしたシルエットの服を多く選んでいます。
椿は、仕事柄スーツになりますが、ゆくえと同じようにビジネスマンっぽくするよりは、このドラマの世界観に合った雰囲気に寄せたかったので、スーツをブラウン系の色味にしたり中にニットなど柔らかい素材のものを合わせたり、椿の穏やかな印象がそのまま残るようにしています。普段着は家の中で着用していることが多いので、家のウッディな雰囲気に馴染むように、色味もナチュラルなものを多く取り入れました。
夜々は、自分が女の子らしく見られる事へのコンプレックスがある役柄なので、少し離れたところに衣装を寄せた方がいいんじゃないかと考えていました。そのバランスを取りながら彼女のキャラクター性を衣装に投影することが難しかったです。ただ、女の子らしいものを好んでいないからといって、ボーイッシュなテイストに寄せすぎたりメンズライクな衣装にしたりするのではなく、4人の中では一番目を引くような差し色やはっきりした柄物を取り入れて、自分なりにファッションを楽しんでいるようなキャラクターにしようと考えていました。また、仕事のときはパンツスタイルが多いですが、“スカートは絶対履かない”と決めつけた感じにはしたくなかったので、「ゆくえも夜々もスカートもパンツも両方履こう」と監督と話し、その日の気分でいろいろなファッションを楽しんで着る設定にしています。
紅葉は、設定上ワードローブはあまり多くないイメージでしたが、ファッションや自分の着ているものに無頓着な感じに見えないよう、古着のパーカーやネルシャツなど気に入ったアイテムを着回しして好きなものを長く着ている感じが出ればいいなと思いました。
4人の衣装に秘められたテーマカラー
― 個人的に、紅葉を中心に緑やマスタードなど秋カラーの服が多いなと感じていたのですが、色使いは意識されていたのでしょうか?立花:色使いに関しては、かなり意識しています。実は、4人それぞれにテーマカラーというか好きな色があるので、衣装にも投影しようと話していました。ただ最初の決め事として、レンジャーのように「この人は〇〇色」みたいな感じにするよりは、ポイントとして柄や差し色で4人のカラーを入れていこうという考えでいました。紅葉のカラーは黄色になるのですが、古着好きという設定を一つ作っていたので、ビビットな黄色ではなくマスタードのような落ち着いた色味にしていて、そこに馴染むグリーンはよく使っています。
― なるほど…!ちなみに、他のお三方のテーマカラーは?
立花:ゆくえは水色、椿は赤色、夜々は紫色です。
「いちばんすきな花」あえてトレンドを追求しない理由
― ドラマのタイトルやストーリーにおいて、それぞれの個性を尊重されていますが、衣装でも4人の役柄が反映されている部分はありますか?立花:4人の個性がバラバラなので、一人ひとりの好きなものをはっきり印象づけたいと考えていました。今回お話をいただいて4人をスタイリングすることになったとき、4人の並びが一番大事になってくるので、並んだときの安心感、まとまりがポイントになると思いました。椿の家に集まったときの4人は、チーム感が出るような見え方になったらいいなと思ったので、それぞれ一人で仕事場にいるときは個性的でもみんなで集まったときはまとまって見えるように考えました。
― トレンドのアイテムを多く使っているわけではなく、いい意味で4人が集まったときも衣装ばかりに目が行かず物語に溶け込んでいると思いました。
立花:最初に監督とプロデューサーの村瀬(健)さんと4人の見え方について話したとき、「特別何かが秀でたわけでもないただただ普通の人たちの集まりにしたいから、オシャレで洗練された4人には見えたくない」という話になりました。ただ、作品を観た方たちが「この4人羨ましいな」と思うような、どこか憧れるような見え方にはしたいと考えたとき、例えば、リンクする柄は個性的で変わったものではなく、チェック柄やノルディック柄などありふれたものにしようと思い、今どきのものはあえて狙わないようにしていました。
好きな人が同じ柄や色味のものを着ていると、それだけですごく距離が近くなったり運命を感じたりしませんか?洋服にはそういう力があると思っていて、きっとこの4人はそういうものをすごく敏感に感じるような気がしたので、被る柄はそれぞれ意識しています。
夜々(今田美桜)・紅葉(神尾楓珠)ら4人だからこそのアイテム&話し合ったこと
― 多部さん、松下さん、今田さん、神尾さん、それぞれ4人だからこそ取り入れているアイテムやコーディネートのポイントはありますか?立花:多部さんは、塾講師ということもありシャツスタイルが多くなるのですが、スタンドカラーのシャツやチェックのプリーツスカートなど王道アイテムがすごく似合うとずっと思っていたので、プレーンなファッションが多いです。ただ、部屋着で少し可愛らしさや緩さは出したかったので家の中で抜けを作るよう意識しました。
松下さんについては、個人的には、先程お話したそれぞれのテーマカラーで、椿さん=赤というのが意外だったのですが、監督との話の中で、「椿は好きな色は赤でもそんなに赤を身につけない」と好きな色と実際身につけるものは違うのではないか、という考えに至りました。ただ、暖色系のスタイリングにしたかったので、赤やコーラルピンクを最初の方にポイントとして多く取り入れています。椿は大人の男性ですが、可愛らしい人柄がたくさん出てくるので、シンプルな服装の中でも素材感やシルエットにはこだわりがあります。松下さんも衣装合わせのときに「一番はシルエットだね」と話されていたので、あまり体のラインが出ないようなたっぷりとしたシルエットに一貫しています。
今田さんは、そこまでメンズライクにならないようにウエストの位置を高めにしてトップスをインするようなスタイルで少し女性らしくするなど着方で印象づけるようにしています。衣裳合わせの際にボトムのシルエットや丈感、着方の調整などご本人とお話ししなが出来たことは夜々のキャラクターを作る上で貴重な時間でした。
神尾さんは、顔立ちがはっきりされているので、衣装で全体的に落ち着かせました。また、紅葉を学生っぽい感じには見せたくなかったのですが、パーカーやネルシャツ、ゆったりしたコーデュロイのズボンなど、使っているアイテムも一歩間違えると大学生や浪人生のような印象になりかねないので、4人との並びも含めて落ち着いた印象になるようにサイズ感や色選びはこだわっています。
― キャストのみなさんの意見も衣装に反映されているのですね。
立花:そうですね。4人それぞれ衣装合わせのときに少しお話してご本人も思っていることを伝えてくださりましたが、こちらがイメージしていたことや最初に用意して感じていたことと近かったので、一緒に話しながら着方やちょっとしたサイズ感を調整して作っていきました。
― 最後に、読者が真似しやすいコーディネートのポイントを教えてください。
立花:バラバラで集まった4人が、だんだん家の中で集まるようになって仲良くなっていく過程で、衣装の雰囲気もよりまとまり感を大事にしています。その中で、それぞれが好きなものを楽しんで着ているということを意識していて、後半になるにつれてそれが調和できるといいなと思いながら作っています。先程お話したように、一つひとつのアイテムが王道なものが多いので、観ている人が親近感を持ちやすく、真似したくなるようなファッションになっていると思いますので、そういった視点でファッションも見ていただけたら嬉しいです。
― 貴重なお話をありがとうございました。今後の4人のファッションにも注目しています!
(modelpress編集部)
【Not Sponsored 記事】