「下剋上球児」塚原監督語る最終回の見どころ アニメーション演出を取り入れた狙いとは<塚原あゆ子監督インタビュー後編>
俳優の鈴木亮平が主演を務めるTBS系日曜劇場『下剋上球児』(毎週日曜よる9時~)。同作の塚原あゆ子監督がモデルプレスのインタビューに応じ、鈴木の印象、本作の演出に込めた思いを語った。<後編>
鈴木亮平主演「下剋上球児」
高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描く、ドリームヒューマンエンターテインメント。鈴木演じる南雲脩司は、36歳で教員になり、越山高校に赴任。二児の父親で、井川遥演じる妻の美香の実家で暮らしている。同作は、2018年に三重県の公立高校・白山高校が甲子園に初出場するまでの軌跡を描いた「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)にインスピレーションを受け企画。登場する人物・学校・団体名・あらすじはすべてフィクションで描かれている。また、『アンナチュラル』『MIU404』『最愛』『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』をはじめ、多くの人気ドラマを世に送り出してきた新井順子プロデューサーと塚原監督が再びタッグを組む。
「下剋上球児」鈴木亮平ら、現場の雰囲気
― 鈴木さんの現場での様子はいかがでしょうか?塚原:朝、現場に入るとすでに鈴木さんがノックをして待っていて本物の監督みたいです。南雲には人生の欠点がありますが、その罪の深さを自分で償い、大人としてどのような背中を見せていくかを描いていきたいと思っているときに、お芝居においてもまさに背中を見せてくれています。例えば、私が言っていることを鈴木さんの目線で球児たちに伝えてくれているので、球児たちはそこから学んでいると思います。
― 鈴木さんならではの魅力はどこでしょうか?
塚原:ドラマが完成したら完パケを渡すのですが、鈴木さんはオンエアでしかご覧にならないんです(笑)。球児たちはすぐ観て感想を言いに来るので、鈴木さんが置いていかれています(笑)。そのような方は初めてで、役者ではなく視聴者側に立っているのが素敵な姿勢だと思いました。
「下剋上球児」ならではのこだわり
― 本作ならではのこだわりを教えてください。塚原:漫画やアニメによくある、かっこいい、エモいシーンを大事にしたいので、「1秒でも早くホームベースに走り込みたい」「もっと強くバットを振りたい」というイメージを描くためにアニメーションは所々に入れています。スポーツを見ていると、かっこいい瞬間を自分の脳でアニメ化していて、そうしたら感動が倍増するんです。もう少し足を強く踏み込めたら、もう少し早く走れたら…という一歩前に思いが出るような瞬間を伝えたいと思っていて、自己肯定感の低い彼らが「こんな自分になりたい」と思っている部分が少しでも出てくるように作っています。アニメ、漫画から夢を得ている人はたくさんいるので、そのようなことも含めて伝えられたらなと思います。
「下剋上球児」アニメーション演出を取り入れた狙い
― アニメーションの演出によって感動が引き伸ばされている気がします。塚原:打算に近いです。例えば、ホームインする瞬間は、映像として違いを付けるのが難しいので、そこを劇的に盛り上げていけると毎回違う味わい方ができるのではないでしょうか。試合丸ごとであれば単調なカット割りでも十分なのですが、一部分だけ見どころを出すにはテクニックと工夫が必要で、私が見た“彼らがなりたい1歩先”をチラ見せさせました。夢見心地でやっていることができるようになる感動を最後に表現したく、映像表現の新しい形に挑戦するという意味でもアニメーションを取り入れ、模索しています。アニメーションでできることと、私たちができるスーパースロー、ワイヤーカメラ、ドローンなどを使っていく接点が、少しずつ馴染んできているので、最終回までに彼らたちの願いがアニメの世界に追いついていくようにしたいと考えています。
― 休憩中のシーンも使用していると伺ったのですが、それは狙って撮影していたのでしょうか?
塚原:狙ってやったわけではないです。今は3ヶ月ほど経ったので、ワンショットで寄っても固まらないで済んでいますが、初めの頃はカメラを向けると緊張から全く別人の顔になるんです。「いつでもカメラ回しているよ」と伝えると、疲れてきてそのうち緊張が解けるので、慣れてもらうための手法でした。たくさんの方に彼らの魅力を伝えるために、良い顔を少しでも出せたら良いなという考えです。
― 原案の白山高校が甲子園に初出場したことを受け地域全体が盛り上がりました。その様子はドラマでも出てくるのでしょうか?
塚原:甲子園が彼らだけの夢ではなくなっていて、地域全体の大人の夢になっていくんです。第2話の冒頭で、「たかが部活」というセリフが出てきた通り「たかが部活」なのですが、大人も含めて人生で忘れられない一部分になるものだと思います。何かを応援する、誰かに夢中になることがこんなにも素晴らしいことなんだというのは、最終回に向けて表れていきます。彼らの夏はみんなが夢中になって生きるきっかけでしかないので、そういった活力を発信していきたいです。
「下剋上球児」一味違う日曜劇場に
― 他の日曜劇場とは一味違う人間ドラマの描かれ方ですよね。塚原:ただ先生が生徒たちの悩みを解決していくことが王道と言うなら、これは王道ではないかもしれないです。もちろん生徒たちの日常も出てくるし、例えば第2話で描かれた、根室知廣(兵頭功海)がヤングケアラーで、彼の事情や苦しさに寄り添っていくというようなことはこれからも出てきますが、南雲先生にも起承転結を付けています。先生をただの解決屋さんにはしないで、そこにも大人の苦しさを背中で見せていきたいです。
「下剋上球児」最終話の見どころ
― 最後に最終話の見どころをお願いします。塚原:先生でなくなったからこそ、野球に全力で行ける南雲が描かれます。部活動の顧問は実は教師にはかなりの負担だし、それを当たり前に描くことに違和感がありましたが、家族にも応援され監督として寄り添う中で、新しい大人の背中を見せていけるようになります。かっこよく爽快に勝ち進んでいく南雲、山住、地域のみんなも含めた下剋上をぜひお楽しみください。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
「下剋上球児」最終話あらすじ
星葉高校にサヨナラ勝ちし、ついに決勝進出を決めた越山高校野球部。しかしいざ勝ち進んでも、甲子園出場には高額費用がかかることが発覚。丹羽(小泉孝太郎)は地元の有力者たちを集めて皆で頭を悩ませていた。そんなこととはつゆ知らず、南雲(鈴木亮平)の家で決勝へと決意を固める部員たち。三年生は皆、高校生活最後になるかもしれない試合、そしてその後の進路について思いを巡らせるのだった。そんな中、大学からスカウトを受けていた根室(兵頭功海)はそのことを姉・柚希(山下美月)に言えずにいて…。さらに犬塚(小日向文世)はある決意を固めていた。
そしていよいよ決勝当日。星葉高校の応援団も越山の応援のために駆けつけてくれるなど越山高校応援ムードの中、南雲と生徒たちの“日本一の下剋上”がかかった、運命の試合がスタートする。
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