鈴木仁「今夜すきやきだよ」実年齢より年上の“年下彼氏”役…繊細な調整に挑む ジェンダー観で新たな気付きも<インタビュー前編>
2023.01.27 18:00
テレビ東京系ドラマ24「今夜すきやきだよ」(毎週金曜深夜0時12分~)に出演中の俳優・鈴木仁(すずき・じん/23)にモデルプレスがインタビュー。演じる杉浦ゆきは、“年下彼氏”でありながら鈴木の実年齢よりは年上。前編では、そんなゆきの役作りや、ジェンダーロール・婚姻制度・セクシュアリティがテーマになっている同作で気付いたことについて聞いた。
蓮佛美沙子&トリンドル玲奈W主演「今夜すきやきだよ」
コミック「今夜すきやきだよ」(谷口菜津子著、新潮社)を実写ドラマ化した同作。蓮佛演じる内装デザイナーで恋愛体質な「あいこ」とトリンドル玲奈演じる絵本作家でアロマンティックの「ともこ」。2人が、日常生活に当たり前のようにあるジェンダーロールや、婚姻制度、セクシュアリティにまつわる生きづらさへ立ち向かう姿を、おいしいお家ご飯を通して紡いでいく。鈴木は、あいこの恋人・杉浦ゆき役。会社のセミナーで初めてあいこに出会ったゆきはあいこに惹かれていく。仕事だけでなく、1人の人間としてもあいこをリスペクトするゆきだが、実は根深い問題を抱えていて…。今後の展開でさらにゆきの心の内が明かされていく。
鈴木仁「観ている人が安心するような作品」
― まずは初めて脚本を読んだ時の印象から教えてください。鈴木:ともことあいこ、リズミカルに進む2人の話が軸になっていますが、ゆきやしんた(三河悠冴)などの他のキャラクターも生き生きとしていて人間らしい部分がたくさんあると感じました。すごく温かいストーリーで、観ている人が安心するような作品になるだろうなという印象を受けました。
― 具体的にどのような部分を「温かい」と感じましたか?
鈴木:食事を通してお互いが素直になっていく、意思を伝え合っていく部分です。演じてみて、読んだ時よりも一層温かいなと感じています。当たり前でもある食事というところから、これだけ人と人の繋がりが生まれて幸せな方向へ進んで行ったり、落ち着く関係性ができたりするんだなと思いました。
― 原作は読まれましたか?
鈴木:読みました。
― 鈴木さんはマンガもお好きですが、原作を読んだ時の率直な印象もお聞かせください。
鈴木:絵の雰囲気がすごく可愛らしくて、キャラクターの優しさがにじみ出ているなと思いました。物語の中でちょっとぶつかり合うことがあっても、それぞれの悪い部分はあまり見えてこないというか、優しさに包まれている作品なので、誰が読んでもすごく気持ちよく読めるんじゃないかなと感じましたね。
― 原作ではゆきに対して「こういう人っているよね」とネガティブなイメージを抱いても、その優しさがあるからこそ、そう感じたことが消えるような感覚になります。
鈴木:そうなんですよね。緩和される・中和される感じで悪い方向に進まないというか、嫌な気持ちにならない。「こういう人とぶつかったりするよね」「自分はこの人の気持ちわからないな」みたいに思っても、そういうキャラが敵役になりすぎないというのはこの作品の魅力だなと思っていました。
原作では描かれていないオリジナルの部分でゆきの深いところも描かれているので、1~12話の中でどう変化・成長して、あいこと関わっていくのかというのを脚本を読んで感じ取るようにしています。また監督とたくさん話し合ってキャラクターを作っていきました。
鈴木仁、役作りで繊細な調整
― 具体的にどのような部分を相談されたのでしょうか?鈴木:バランスです。年下彼氏ならではの幼い感じの可愛さと普段との差を作るために、そこのバランスは1番相談しました。監督に「もうちょっとフラットに」「可愛さを残しすぎずトーンを下げていいよ」といった言葉をいただいて、実際に試してみて、そこから「でもここはコミカルだから上げたいんですけど…」「じゃあ周りの会話のところ落としてみようか」のような感じで、話しながら試行錯誤してやっています。
― すごく繊細な表現をされているんですね。
鈴木:そうですね。僕も最近実年齢より年上の役をやらせていただくことが増えてきたんですけど、上だからと言って必ず大人っぽくなるわけではなく、可愛らしい人物像の場合もあるので、そういうバランスを探りながら演じるのは挑戦であり勉強になっています。なので今回も勉強しながら新しい自分を模索して演じています。
鈴木仁とゆきの共通点
― 鈴木さんから見たゆきはどのようなキャラクターでしょうか?鈴木:「世の中的にはこれが常識だろう」という考えが自分の心の中にあって、それを相手にもまっすぐぶつけてしまう人です。当たり前のことを当たり前だと思って、それを胸に真っ当に生きていこうとしてきたからこそ、あいこと付き合うことでぶつかって変化していきます。1番大きく動いていく登場人物なんじゃないかなと思うので、そこを丁寧にやっていけたらなと思います。
― 情報解禁時には「人間味溢れるゆきを作りたい」とおっしゃっていましたが、そういうゆきになれている実感はありますか?
鈴木:完璧ではないと思うので満足はできていないですが、最初の頃より4人(あいこ・ともこ・しんた・ゆき)での食事シーンが増えてきて、あいこ・ともこのキャラクター像やしんたの独特な印象とはまた違う、人間味があって落ち着いた部分もある…という一面が、ゆきのキャラクターとして活きているのではないかなと思っています。でも完成した映像によってどう映るかはわからないので、今日もこの後の撮影頑張ります(笑)!
― そんなゆきと鈴木さん自身の共通点や相違点を教えてください。
鈴木:ゆきは自分のテリトリーの中で決まり事があるタイプで、ドラマが進むにつれてその部分が見えてくるのですが、そこは自分も似ている部分があるなと思っています。でも「料理は女性にしてほしい」みたいなジェンダーに関する価値観は違うというか、自分も興味があるので一緒にやりたいタイプです。
― 鈴木さんの決まり事というのは?
鈴木:インテリアの配置を自分の暮らしやすいようにするなど、そういう自分の中のこだわりはあるかもしれないです。
― それは内装デザイナーのゆきとも通ずるところですね!
鈴木:はい。なので最初に「内装デザイナー」という文字だけ見て「かっこいいな」と思いました(笑)。
蓮佛美沙子・トリンドル玲奈の印象は?
― 蓮佛さんとの共演シーンが多いかと思いますが、現場でのエピソードを教えてください。鈴木:すごく簡単な言葉になってしまうのですが「しっかりしている方だな」というのはやはり感じました。2人での撮影もすごく多いので、その時に「こうやった方がやりやすい」と提案してくださったり、監督と僕が話しているところに参加してくださったりして。ゆきとの関係性をあいこ側からも作ってくださっているので、すごく丁寧で優しい方だなという印象です。なので、蓮佛さんがあいこの行動やセリフで「ここどうしようかな」と悩んでいる時に、2人のシーンで自分が何かサポートできることがあればしたい。自然とそう思えるような方です。
― トリンドルさんの印象はいかがですか?
鈴木:もちろんテレビで観ていたので、その印象から大きく外れていませんでした。でもともこに対する強い気持ちを持たれていて、蓮佛さんにも撮影以外の時に「こういうことしたかったんだよね」と言っていたと聞きました。まっすぐ自分の意志を持っていらっしゃる方なんだなと感じました。
鈴木仁、ジェンダー観で新たな気付き
―ドラマを撮影していく中で鈴木さん自身の恋愛観に変化はありましたか?鈴木:ともこみたいな人もいるんだなというのを改めて感じました。ともこ目線はこれまで自分も知らなかったところだったので、勉強になりました。恋愛感情のあるなし関わらずに、誰かを支えたり、誰かとパートナーになれるんだなとすごく感じました。
― 鈴木さんはこれまでにも「消えた初恋」(テレビ朝日系/2021年)や「ギヴン」(FOD/2021年)など多様な恋愛観を描いた作品に出演されていますが、恋愛やジェンダーに対する新たな気付きというのは毎作品であるものなのでしょうか?
鈴木:そうですね。それまで自分が関わる機会のなかったようなキャラクターに出会うと、「こういう人たちもいて、こういう考えを持っているんだな」と気付きます。そのキャラクターが絶対というわけではないですが、一部でも知れることで、毎回発見もありますし、今後自分がそういった役を演じるときの強みにもなると思っています。
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(modelpress編集部)
鈴木仁(すずき・じん)プロフィール
1999年7月22日生まれ、東京都出身。2014年「アミューズ オーディション2014」でファイナリストに選出。2016年に「第31回メンズノンノモデルオーディション」で準グランプリを獲得し、2017年1月より同誌専属モデルとして活動。俳優としても活躍し、「花のち晴れ~花男 Next Season~」(TBS系/2018)で一躍話題に。主な出演作にドラマ「消えた初恋」(テレビ朝日系/2021)映画「小さな恋のうた」(2019)「ジオラマボーイ・パノラマガール」(W主演、2020)「モエカレはオレンジ色」(2022)など。2023年3月上演予定のオールナイトニッポン55周年記念公演「宮沢賢治『銀河鉄道の夜』より『たぶんこれ銀河鉄道の夜』 ~The Night of the Milky Way Train(right?)~」にも出演が決定している。
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