戸田恵梨香、結婚に恐怖を感じた理由「嘘をつきたくない」信念と人との向き合い方も語る<「彼女」インタビュー>
2022.12.23 07:00
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自身初となるトークエッセイ本『彼女』を20日に発売した女優の戸田恵梨香(とだ・えりか/34)。モデルプレスでは戸田に、仕事への原動力になっていることや大切にしている信念について聞いた。役者、女性として新たなステージに進んだ彼女が抱いていたある恐怖とは?真っ直ぐな言葉を紡ぎインタビューに応じてくれた姿からは、凛とした強さと優しさが垣間見えた。
戸田恵梨香、初のトークエッセイ本「彼女」
本作は、今のすべてを詰めた初めてのトークエッセイ集。戸田が息を吹き込み演じてきた“彼女”たちが教えてくれたこと。誰も知らなかった、“戸田恵梨香”のこと。願いを込めて綴る珠玉の1冊となっている。演じるキャラクターごと愛される戸田。彼女が自身の役について語る時、そこには戸田本人の人生が、価値観が、願いが、大きく宿る。2021年1月からインタビューを開始。想いを馳せた幾つかの役柄と、心身ともに大きな変化が訪れた月日を追った、ありのままの言葉たちが綴られている。
戸田恵梨香、刺激を受けた人物・支えになっている言葉とは?
― これまでの共演者の中で刺激を受けた方や敵わないと感じた方はいらっしゃいますか?戸田:田中裕子さんとご一緒させてもらった時に、裕子さんの現場での居方や立ち振る舞いにすごく刺激を受けました。
― 「彼女」の中で「人との出会いに恵まれていた」と書かれていましたが、これまでを振り返って、戸田さんが救われた言葉や支えになった言葉があれば教えてください。
戸田:以前にドキュメンタリー番組で訪れたミャンマーで医療を提供されている吉岡(秀人)先生の言葉が自分の中にすごく残っています。自分のためだけではなく、誰かのために生きることが自分に返ってくるという言葉は役者をやっていく上でも励みになりました。この言葉は、今私がいる業界だけではなく、もっと広い世界にも当てはまることで、人と向き合っていくことそのものが幸せなんだなと実感させられました。自分がへこたれそうになった時は吉岡先生の言葉を思い出すようにしています。
戸田恵梨香、原動力となっている存在・信念明かす
― これまで活動をしていく中で「辞めたい」と思うこともあったかと思いますが、それでも仕事を続けることができた一番の原動力は何でしょうか?戸田:まずはここでやるしかないという思いが大きくあり、やり続けてこられたというよりも、やり続けるしかなかったのかなと思っています。上京して自分が「役者に向いてないな」と思った時、父に「いつでも帰ってきたらいい。恵梨香を養うぐらいのお金はあるから」と言われたことがありました。その時に「辞めちゃいけない」、「家族のために頑張りたい」、「親の期待を裏切らず親の期待に応えたい」と子供ながらに思うようになりました。そして、いつしか自分自身の成長へと繋がるこの仕事の魅力に気づき、仕事を続けていたように感じます。
― 役者の仕事をする上で大切にしていることや信念はありますか?
戸田:自分の気持ちに嘘をつかないことです。やりたい役を簡単に演じられるわけでもなく、結果を残さないと次の仕事に繋がらないというすごくシビアな業界であり、我慢もたくさん強いられる世界に身を置いていると感じています。それでも、何をしている時が一番楽しいのかと考えると、しっかりと集中をして、素直に芝居をしている時に感動や喜びを感じます。だから、芝居をしている時に嘘をつきたくない。人と向き合っていく中でも、ごまかさず素直に向き合っていくことが、自分の喜びとなり、相手への敬意に繋がっていくのかなと思います。
― 「日々結果を出していかないといけない」ことに対してのプレッシャーとどのように向き合っていたのでしょうか?
戸田:プレッシャーを感じていたというよりは負けず嫌いが発動していました。最初は事務所にどう認めてもらえるのかということが私の勝負所だと考え、社長やマネージャーさんに「お芝居良かった」と褒めてもらえることが自分の原動力にもなっていたので、プレッシャーを糧にしていた気がします。ただ真っ直ぐに向き合い走っていたことが私の場合は運良く前に進めるきっかけとなっていました。
戸田恵梨香「固定概念を作られるのがすごく怖かった」
― 本来の自分と世間から求められている戸田恵梨香像とのギャップや葛藤はありましたか?戸田:事務所に対して認められたいという気持ちが強かったですが、世間に対しては「戸田恵梨香といえばこういうイメージだよね」という固定概念を作られるのがすごく怖かった時期があったので、なるべくイメージが固まらないようにしていました。
― その恐怖がなくなったのはいつ頃だったのでしょうか?
戸田:1つの役に縛られず、自分の振り幅をどれだけ広げられるかということにこだわって挑戦してきたのですが、この1~2年で人には向き不向きがあるということを感じ始め、いただいた作品や役の中でも自分でイメージできないことや自分の持っている世界とかけ離れすぎてしまっているとお芝居として上手く表現しきれないのではと思うこともあります。例えば、声優のお仕事は同じお芝居でも私にとってはまるで畑違いの世界なので、そこはプロの方に任せることが一番作品のためになるのではないかということです。自分の限界ではないけれど、自分自身の個性について理解できるようになり、それからはイメージに対して執着や恐怖心はなくなっていったように感じます。ただ、自分の限界は決めたくないですし、自分がこれからの人生を生きていく中で役者だけにとらわれず、1人の人間として豊かになっていきたいので、強い執着は持たないようにしたいと今は思っています。
戸田恵梨香、結婚に恐怖心を抱いた理由とは?
― これまで真っ直ぐ長年走り続けてきたところから、立ち止まることへの恐怖心はなかったのでしょうか?戸田:雑誌や広告のお仕事、「彼女」の出版などもあり、現在は休業という形をとっているわけではないということを前提として、立ち止まることへの恐怖はないです。ただ、結婚をすることに対しての恐れはありました。自分の人生を変えるきっかけの1つですし、その先に妊娠をして子供を宿すということは、すべての女性が立ち止まる瞬間だと思います。10代後半から20代前半で仕事を始め、ある程度仕事の基盤ができた中で恐らく結婚や妊娠のことを考えると思いますが、結婚をすることが自分にとっての本当の幸せなのか、子供を生み、育てることが今の自分にとって本当に良いことなのか、しっかりと子供と向き合えるのか…私自身も色々と考えました。仕事を休むことへの恐怖より、また新たな人生を選択することによって、自分だけの世界ではなくなり、自分本位の選択だけでは進んでいかないぞということを感じていました。
― その恐怖は今も続いているのでしょうか?
戸田:正直、それを考えたところで仕方ないという結論には至りましたが、私自身が止まることはないと思っています。人として1つの経験を積むことになり、その経験によって学ぶこともありますし、たくさん成長させてもらえる1つのきっかけにもなるので、自分の糧にしていきたいです。むしろ自分自身に対して今後、どう変化していくのだろうという期待の方が今は大きいです。
戸田恵梨香、今自分にできることと向き合う
― 「彼女」を読んだ読者の方で、壁にぶつかっている方や挫折を経験した方がいたらどのような言葉をかけて救いたいですか?戸田:「逃げてもいい」と言うと思います。立ち止まることも必要で、自分にとって合う合わないがあること、本当に自分の道はこれでいいのかと疑問に思うことはきっとあります。恐らく、大勢の方が色々な可能性を持ちながら過ごしているので、自分の内側と向き合いながら、自分が幸せだと思う選択をしてほしいです。
― 今、女優として、1人の女性としてどのような未来図を思い描いていらっしゃいますか?
戸田:基本的に今が未来に繋がると思っているので、今自分がどう選択するかを考えてきました。
最近、海外で働いている方とお話しをした時に、これまでは海外で暮らす方が「日本に行ってみたい」「日本の街は美しいよね」など、日本に対して憧れを口にすることが多かったようなのですが、コロナ禍の今、日本に行きたいという方が少なくなっている傾向だと聞きました。このことは日本のエンタメ業界はもちろん、日本人として何をすべきかということが問われているのだろうなと感じます。私には何ができるのだろうと考えた時、やはりお芝居しかない。役者としてエンタメを廃らせることなく、前進していきたいなと日々思っています。
― 貴重なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
戸田恵梨香(とだ・えりか)プロフィール
1988年8月17日生まれ、兵庫県出身。ドラマ、映画、CMなど幅広く活躍。近年は、ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系/2018年)、連続テレビ小説『スカーレット』(NHK/2019年~2020年)、『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系/2021年)、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2018年)、『あの日のオルガン』(2019年)、『最初の晩餐』(2019年)などの話題作に出演。現在、主演映画『母性』が公開中となっている。
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