EXILE ATSUSHI、“新生EXILE”への思い語る 人生観にも変化「家族を持ちたいと思うようになった」<「ONE」インタビュー>
2022.05.01 07:00
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EXILE ATSUSHI(42)が、自身の誕生日である4月30日にベスト&ニューアルバム『ONE』をリリース。昨年EXILEが20周年、そしてソロデビュー10周年という節目を迎え、モデルプレスではATSUSHIにインタビューを実施。新生EXILEへの思い、ソロ活動に専念してから今思うこと、アルバムの制作裏側エピソード、今後の展望などについて聞いた。
本作は、前作『40 ~forty~』以降にリリースされた「KAZE」や「Amazing Grace」、最新デジタルシングル「雪化粧」などの新曲を収録したオリジナルアルバムに加え、ソロデビュー10周年を記念したベストアルバムも収録。初回生産限定盤には、EXILE ATSUSHI率いる「RED DIAMOND DOGS」のベスト盤も収録と、EXILE ATSUSHIのソローワークスを結集したベストの名にふさわしい作品集となる。
ATSUSHI:EXILEはグループとしての表現なので、自分が作詞などで楽曲制作に関わる時は、ダンスパフォーマンスも視野に入れた“EXILEらしさ”をイメージしていました。グループ活動の時はEXILEが自分の王道だったのもあり、ソロの時は少し変化球を投げたくなるような気持ちがあって、EXILEではできないようなバラード曲をソロでやることが多く、そうやってバランスをとっていたのですが、ソロ活動に専念するようになってからは、自分が表現したいものを思うがまま作れるようになりました。
ライブをイメージしてソロでのアップテンポも作りましたが、それはEXILEの経験が生きているなと思います。石井竜也さんが作曲してくださった「KAZE」という曲は、自分で作詞して歌ってみると、意外に第1章っぽく感じたりもして、今までよりも肩の力が抜け、自由にアルバムを作れた感覚です。
― アルバムタイトル『ONE』にはどのような思いが込められているのでしょうか。
ATSUSHI:2020年11月にグループ卒業と同時にリリースしたアルバムが『40 ~forty~』というタイトルで40歳を記念したものだったので、それから制作した1枚目のアルバムで“第1歩”という意味での『ONE』です。そしてこういうご時世ですが、みんなでもう一度気持ちをひとつにできたらいいなという願いも込めて、シンプルなタイトルにしました。
― 収録曲はどれも思い出深い曲だと思いますが、制作過程の中で特に印象に残っている曲があればエピソードとともに教えてください。
ATSUSHI:「雪化粧」「I always love you ~いつもそばに~」の2曲は特に印象に残っています。「雪化粧」は、「Precious Love」以来8年ぶりくらいのストレートなラブバラードなのですが、バラードになるとどうしても人生観を歌いたくなってしまう自分がいるので、恋人だけではなく大切な人を想う曲なのですが、久々にすごく良い曲ができたなと思っています。北海道の広い大地でミュージックビデオを撮ることが昔からの夢で、僕の中でずっと眠っていたアイディアだったので、今回それが形となり、雪景色の中で撮ることができてすごく思い入れが強い曲になりました。
「I always love you ~いつもそばに~」は、ホンモノの父親と同じくらいお世話になっているバンドメンバーのキャプテンが新型コロナウイルスにかかってしまい、途中で重症化して、それが僕のツアー中だったのもあって「ツアーをやらないほうがよかった」と後悔したりもしたのですが、「でもあのまま立ち止まっていてもしょうがなかったし、そういう運命を受け入れるしかない」と考え、自分にできることとしてこの曲を作ったので、すごく大切な曲です。この2曲は今回のアルバムの核となっているのではないかなと思います。
― ソウル、レゲエ、ロック、賛美歌…本当にバラエティー豊かなアルバムで、制作のペースもとても早かったと思うのですが、大変ではなかったですか?
ATSUSHI:僕は音楽をやるにあたって、EXILE ATSUSHI像を裏切らないことが根底にあるかもしれません。制作ペースが早かったことに関しては、やっぱりコロナ禍が影響していると思います。リモートでファンの皆さんに収録曲を投票してもらったりもしましたし、ライブができない分、曲を作って配信して、皆さんにちょっとでも喜んでもらえたらという思いがありました。なのでペースは早かったのですが、アルバムを作ろうと思って作っていたというよりは、気づいたら10曲が出来上がっていましたね。
ありがたいことにこれまでもいろいろなジャンルの楽曲を歌ってきたので、僕のいろいろな側面を見てお話をいただくことが多かったように思います。僕は音楽のジャンルに対してあまり壁を感じていないので、僕が歌うことでそれがJPOPとして成立するならば、表現のひとつとしていろいろなジャンルを歌いたいという思いが常にあるので、まさに壁を作っていないことが今回のアルバムにも強く出たのかなと感じています。
ATSUSHI:デビューしてから歩んできた道のりがあるので、ソロ活動に専念してからというよりは、歌手活動20年に対する思いが強いです。運良くデビュー20周年の時にソロ10周年を迎えて、EXILEとして活動していた頃もソロ曲はあったのですが、しっかりソロデビューしてからを考えても10年も経ったんだなと。ファン投票の結果には驚きもありましたし、予想通り入ってきた曲もありましたし、その結果を見て我ながら歴史があるなと感じました。1位の「Precious Love」も、EXILE10周年の後に出している曲なので、自分のキャリアの中では、わりと最近のイメージだったのですが、もう8年くらい経っていて驚きました。
― ファン投票での驚きの1曲というのは?
ATSUSHI:2位に選ばれた、清木場(俊介)くんとの「fallin'」です。僕の中では完全に第1章の曲で、もちろん歌い直したことは鮮明に覚えていますが、それがファン投票の中に入っていて本当にビックリしました。でもそのくらいEXILE ATSUSHIのコアファンはきっと第1章から聴いてくれていて、それを求めてくださっていることがすごく顕著に現れた結果だと思うし、ましてや僕のソロ10周年のベストアルバムの中に清木場くんの声が入るというのはすごくスペシャルなことだなと嬉しい驚きでした。皆さんが僕のメッセージを感じながら曲を聴いてくださっていることが実感できた、自分にとってもすごくありがたい良い企画になりました。
― 2位に「fallin'」が選ばれた時に、清木場さんにご連絡したとお伺いしたのですが、その時のエピソードを詳しくお聞かせください。
ATSUSHI:LINEで連絡をしたら、山口弁で「それだけ昔から応援してくれてる人がいるってことやね」と嬉しそうな返事が返ってきました。清木場くんは本当に親戚のような、家族のような、兄弟のような感覚で、コロナ禍でもお互いの安否を常に気にしている関係性なのですが、こういう結果が出て、2人で喜びを分かち合えて良かったなと思います。僕と彼は一緒にデビューをしている仲間ですから、お互い20周年なわけで、彼にとってもメモリアルな年であることには違いないですし、そういう意味でもすごく嬉しいです。
― 先程、「EXILE ATSUSHI像を裏切らないことが根底にある」というお話がありましたが、今後は良い意味での裏切りのような構想はあるのでしょうか?
ATSUSHI:はい、考えています。不思議なもので、この20年、自分たちのやりたいことをある程度提示しつつ、ファンの皆さんが喜んでくれている姿を見てそれを肌で感じながら歩んできたので、デビュー当時にプロデューサーから「売れたら好きなことをやればいいんだよ」と言われていた、そのやりたかったことが何かがわからなくなるんですよ。やりたかったことをやったとしても、それが皆さんに受け入れられなかったら意味がないんです。頭の片隅にはあるけれど、それを今やりたいかと言われると違う気がしていて。それは自分だけが作り上げたわけではない、メンバーやファンの皆さんと作り上げてきたEXILE ATSUSHI像を壊したくない気持ちがあるので、なんとなく次はコンセプトアルバムなのかなと漠然と思っています。どこかで何かのジャンルに少し重心を傾けてやっていくことが、40歳以降の自分がやっていくことなのではないかなと。またそこでものすごく音楽に入り込んで、より深く追求していきたいです。
― それはやはり普段からファンの皆さんのことを第一に考えているから故の思いなのでしょうか。
ATSUSHI:そうですね。第一というと綺麗事っぽく聞こえてしまうかもしれないですが、ファンの皆さんに受け入れられなかったらEXILE ATSUSHIも存在しなくなってしまうので。あとはやっぱりステージ上でライブをした時に、その曲がどういう生き方をするのか、というのを常に念頭に置いているので、そこにいるお客さんがイコールになるんです。
ATSUSHI:EXILEはこれまで人数体制が何度か変わっていますが、常に進化しているグループであることは変わりません。リーダーがHIROさんでいる限り、僕は常に15分の1だと思って活動していたのですが、初期メンバーで最後に残った1人が僕だったので、抜けてみて感じたことは、わりと大きな部分の看板をちゃんと背負わせてもらっていたんだなということです。デビュー当時からいた、あのサングラスの男がいなくなるということの意味を、すごく客観的に考えさせられたし、今のメンバーがどういう形でEXILEを引き継いで進化させていくのがベストなのか、時には苦悩しながらも奮闘していくチャレンジ精神をすごく感じています。
コロナ禍という観点から子供たちをステージに上げることはできないけれど、僕たちは「Love, Dream, Happiness」をテーマに子供たちの未来や夢を伝えてきたグループなので、子供たちに対する愛はこれからも変わらずに引き継いでいってほしいです。そしてどんなに体制が変わろうとも、強くハッピーなEXILEであり続けることを願っています。
― ATSUSHIさんに憧れてオーディションを受けている方もたくさんいると思います。そんな後輩たちに、先輩としてどんな背中を見せ続けていきたいですか?
ATSUSHI:僕はそんなに大した背中は見せれていないです(笑)。僕が30代前半くらいの頃、後輩たちの勢いが出てきた時は、正直自分たちのEXILEのようであってほしいと思っていた時もあります。だけど、時代が違ければ人それぞれ個性もあるので、全く同じになるわけがないし、それぞれの表現があっていいのかなというのは途中から感じるようになりました。言い方が難しいですが、“やっぱりATSUSHIさんは音楽にすごくこだわっているよね”というのは感じてくれていたら嬉しいですね。
― ATSUSHIさんがソロアーティストして思い描いている将来像をお聞かせください。
ATSUSHI:僕の勝手な価値観なのですが、日本人の平均寿命がだいたい80歳くらいなので、40歳を迎えた時に「あ、折り返したんだな」と思いました。今年でもう42歳なので、60歳まで元気に歌えて毎年ツアーをやれてもあと20回。アルバムが毎年出せてもあと20枚。60歳以降、今まで通り健康で元気な声が出るかもわからないし、病気になるかもしれないし、その前に死んじゃうかもしれないし、どうなるかわからないので、そういうことを常に意識して後悔のないようにやっていきたいと思っています。
加山雄三さんみたいに、80歳になっても現役で歌われている姿を見ているとかっこいいなと思う一方で、コロナ禍になってからは、甥っ子や姪っ子、自分の両親たちと食事できる時間もすごく限られていることを実感しているし、周りを見渡して、自分もいつかは家族を持ちたいと思うようになってきました。まだ全然予定はないですけど(笑)。そういう意味で言うと、「ステージの上で死にたい」「死ぬまで歌っていたい」みたいな気持ちは前ほどそこまで強くはなくなり、どちらかというと1人の人間としての幸せや、いつ何があるかわからないこの世の中で感じられる幸せを大切にしたいと感じるようになりました。
それでも出来る限りはコンセプトアルバムを作ったり、ツアーをやったり、もちろん海外進出にも挑戦したりしたいという思いはあります。そしていつか自分のピアノかギターだけ、それはどちらかでも両方でもいいのですが、例えば綾戸智恵さんみたいにピアノ1個でライブをして、全国のホールを周ってみたいという気持ちもあります。自分で音楽を奏でて、自分で歌を歌って、楽器ひとつでライブを成立させる、というのは将来チャレンジしたいです。
ATSUSHI:今って、なかなか夢を見つけられない人が多いと思うんです。ゴルフで例えると、やらない人からすれば、あの広い場所であの小さい穴に玉を入れることの何が楽しいのかと思うけど、仲間と遠足気分だったり、途中で食べるランチが楽しみだったり、クラブを揃えるのが楽しかったり、打ちっぱなしに行くのが楽しかったり、その楽しさはやってみないとわからない。だからまずはいろいろなことをやってみて、好きなことを見つけるのがいいと思います。
僕はすごく論理的に考えて、段階を踏んで目標を達成しています。デビュー前に「日本一のアーティストなりたい」と言っても、将来的にはいいかもしれないけど、その時点では早すぎる話なので、それよりも「まずはデビューすること」が第1段階の目標なんです。そこをクリアしなければ日本一にはなれないわけだし、今となっては何を成し遂げれば日本一になるのかはわからないですけど。デビューするためには入りたい事務所を決めて、そこに引っかかるようなデモテープを録らなきゃいけない、じゃあビブラートをもっと勉強しよう。そうして逆算していくと、今やるべきことが見えてくるんです。僕はわりと論理的に未来のことを考えていたかもしれないですね。でも実際にビブラートができるようになってデモテープを何回も録って、事務所に送ったら何社か返ってきたので、ひとつひとつをクリアしていくしかないんです。
宝くじみたいな夢の叶え方は、ギャンブルすぎてきっと叶えにくいです。それよりも、今やるべきことを逆算していくと、着実に自分が行きたい場所に近づくことができると思います。あとは周りの人の協力あってこそ、道が開けていくので、やりたいことを口に出すこと。僕はすごく運も良かったのですが、しっかり思いやりを持って、とりあえず目の前の目標から達成していけば、自ずと道は切り開かれるはずです。
― 素敵なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
2014年4月より、初のソロアリーナツアー「EXILE ATSUSHI LIVE TOUR 2014“Music”」を開催し、全国11都市24公演30万人を動員。「第56回輝く!日本レコード大賞」では最優秀歌唱賞を受賞。グループ、そしてソロとしての受賞は史上初の快挙。ソロとして国内はもちろん、世界を視野に入れて活動する。
2016年、日本人ソロアーティストとしては初となるソロ6大ドームツアー「IT’S SHOW TIME!!」を開催。全11公演約40万人を動員。さらに、バンドプロジェクト「RED DIAMOND DOGS」を結成。ツアー中の8月31日、自身の海外留学及びEXILEとしての活動は2018年再開を発表。ツアー終了後の同年10月から2018年2月上旬までロサンゼルスやニューヨークに留学した。2020年11月2日、EXILEを卒業し、ソロ活動に専念することを発表した。
EXILE ATSUSHI、ソロ活動専念の今思うこと「ONE」に込めた思いとは
― グループ活動から離れて約1年半が経ちますが、グループ活動と並行しながらソロ活動をしていた時と比べて、ソロ活動に専念したうえでの制作で感じた心境の変化をお聞かせください。ATSUSHI:EXILEはグループとしての表現なので、自分が作詞などで楽曲制作に関わる時は、ダンスパフォーマンスも視野に入れた“EXILEらしさ”をイメージしていました。グループ活動の時はEXILEが自分の王道だったのもあり、ソロの時は少し変化球を投げたくなるような気持ちがあって、EXILEではできないようなバラード曲をソロでやることが多く、そうやってバランスをとっていたのですが、ソロ活動に専念するようになってからは、自分が表現したいものを思うがまま作れるようになりました。
ライブをイメージしてソロでのアップテンポも作りましたが、それはEXILEの経験が生きているなと思います。石井竜也さんが作曲してくださった「KAZE」という曲は、自分で作詞して歌ってみると、意外に第1章っぽく感じたりもして、今までよりも肩の力が抜け、自由にアルバムを作れた感覚です。
― アルバムタイトル『ONE』にはどのような思いが込められているのでしょうか。
ATSUSHI:2020年11月にグループ卒業と同時にリリースしたアルバムが『40 ~forty~』というタイトルで40歳を記念したものだったので、それから制作した1枚目のアルバムで“第1歩”という意味での『ONE』です。そしてこういうご時世ですが、みんなでもう一度気持ちをひとつにできたらいいなという願いも込めて、シンプルなタイトルにしました。
― 収録曲はどれも思い出深い曲だと思いますが、制作過程の中で特に印象に残っている曲があればエピソードとともに教えてください。
ATSUSHI:「雪化粧」「I always love you ~いつもそばに~」の2曲は特に印象に残っています。「雪化粧」は、「Precious Love」以来8年ぶりくらいのストレートなラブバラードなのですが、バラードになるとどうしても人生観を歌いたくなってしまう自分がいるので、恋人だけではなく大切な人を想う曲なのですが、久々にすごく良い曲ができたなと思っています。北海道の広い大地でミュージックビデオを撮ることが昔からの夢で、僕の中でずっと眠っていたアイディアだったので、今回それが形となり、雪景色の中で撮ることができてすごく思い入れが強い曲になりました。
「I always love you ~いつもそばに~」は、ホンモノの父親と同じくらいお世話になっているバンドメンバーのキャプテンが新型コロナウイルスにかかってしまい、途中で重症化して、それが僕のツアー中だったのもあって「ツアーをやらないほうがよかった」と後悔したりもしたのですが、「でもあのまま立ち止まっていてもしょうがなかったし、そういう運命を受け入れるしかない」と考え、自分にできることとしてこの曲を作ったので、すごく大切な曲です。この2曲は今回のアルバムの核となっているのではないかなと思います。
― ソウル、レゲエ、ロック、賛美歌…本当にバラエティー豊かなアルバムで、制作のペースもとても早かったと思うのですが、大変ではなかったですか?
ATSUSHI:僕は音楽をやるにあたって、EXILE ATSUSHI像を裏切らないことが根底にあるかもしれません。制作ペースが早かったことに関しては、やっぱりコロナ禍が影響していると思います。リモートでファンの皆さんに収録曲を投票してもらったりもしましたし、ライブができない分、曲を作って配信して、皆さんにちょっとでも喜んでもらえたらという思いがありました。なのでペースは早かったのですが、アルバムを作ろうと思って作っていたというよりは、気づいたら10曲が出来上がっていましたね。
ありがたいことにこれまでもいろいろなジャンルの楽曲を歌ってきたので、僕のいろいろな側面を見てお話をいただくことが多かったように思います。僕は音楽のジャンルに対してあまり壁を感じていないので、僕が歌うことでそれがJPOPとして成立するならば、表現のひとつとしていろいろなジャンルを歌いたいという思いが常にあるので、まさに壁を作っていないことが今回のアルバムにも強く出たのかなと感じています。
ATSUSHI、清木場俊介との楽曲ランクインに「驚き」
― ベストアルバムということで、これまでのソロ活動が凝縮されていますが、このラインナップを見つつソロ活動を振り返って、今どう感じていますか?ATSUSHI:デビューしてから歩んできた道のりがあるので、ソロ活動に専念してからというよりは、歌手活動20年に対する思いが強いです。運良くデビュー20周年の時にソロ10周年を迎えて、EXILEとして活動していた頃もソロ曲はあったのですが、しっかりソロデビューしてからを考えても10年も経ったんだなと。ファン投票の結果には驚きもありましたし、予想通り入ってきた曲もありましたし、その結果を見て我ながら歴史があるなと感じました。1位の「Precious Love」も、EXILE10周年の後に出している曲なので、自分のキャリアの中では、わりと最近のイメージだったのですが、もう8年くらい経っていて驚きました。
― ファン投票での驚きの1曲というのは?
ATSUSHI:2位に選ばれた、清木場(俊介)くんとの「fallin'」です。僕の中では完全に第1章の曲で、もちろん歌い直したことは鮮明に覚えていますが、それがファン投票の中に入っていて本当にビックリしました。でもそのくらいEXILE ATSUSHIのコアファンはきっと第1章から聴いてくれていて、それを求めてくださっていることがすごく顕著に現れた結果だと思うし、ましてや僕のソロ10周年のベストアルバムの中に清木場くんの声が入るというのはすごくスペシャルなことだなと嬉しい驚きでした。皆さんが僕のメッセージを感じながら曲を聴いてくださっていることが実感できた、自分にとってもすごくありがたい良い企画になりました。
― 2位に「fallin'」が選ばれた時に、清木場さんにご連絡したとお伺いしたのですが、その時のエピソードを詳しくお聞かせください。
ATSUSHI:LINEで連絡をしたら、山口弁で「それだけ昔から応援してくれてる人がいるってことやね」と嬉しそうな返事が返ってきました。清木場くんは本当に親戚のような、家族のような、兄弟のような感覚で、コロナ禍でもお互いの安否を常に気にしている関係性なのですが、こういう結果が出て、2人で喜びを分かち合えて良かったなと思います。僕と彼は一緒にデビューをしている仲間ですから、お互い20周年なわけで、彼にとってもメモリアルな年であることには違いないですし、そういう意味でもすごく嬉しいです。
― 先程、「EXILE ATSUSHI像を裏切らないことが根底にある」というお話がありましたが、今後は良い意味での裏切りのような構想はあるのでしょうか?
ATSUSHI:はい、考えています。不思議なもので、この20年、自分たちのやりたいことをある程度提示しつつ、ファンの皆さんが喜んでくれている姿を見てそれを肌で感じながら歩んできたので、デビュー当時にプロデューサーから「売れたら好きなことをやればいいんだよ」と言われていた、そのやりたかったことが何かがわからなくなるんですよ。やりたかったことをやったとしても、それが皆さんに受け入れられなかったら意味がないんです。頭の片隅にはあるけれど、それを今やりたいかと言われると違う気がしていて。それは自分だけが作り上げたわけではない、メンバーやファンの皆さんと作り上げてきたEXILE ATSUSHI像を壊したくない気持ちがあるので、なんとなく次はコンセプトアルバムなのかなと漠然と思っています。どこかで何かのジャンルに少し重心を傾けてやっていくことが、40歳以降の自分がやっていくことなのではないかなと。またそこでものすごく音楽に入り込んで、より深く追求していきたいです。
― それはやはり普段からファンの皆さんのことを第一に考えているから故の思いなのでしょうか。
ATSUSHI:そうですね。第一というと綺麗事っぽく聞こえてしまうかもしれないですが、ファンの皆さんに受け入れられなかったらEXILE ATSUSHIも存在しなくなってしまうので。あとはやっぱりステージ上でライブをした時に、その曲がどういう生き方をするのか、というのを常に念頭に置いているので、そこにいるお客さんがイコールになるんです。
新生EXILE、ATSUSHIの目にはどう映っている?人生観にも変化
― 今、EXILEが新生グループとしてライブや音楽活動などを積極的に行っていますが、グループを離れたATSUSHIさんからは、今の新生EXILEがどう見えていますか?ATSUSHI:EXILEはこれまで人数体制が何度か変わっていますが、常に進化しているグループであることは変わりません。リーダーがHIROさんでいる限り、僕は常に15分の1だと思って活動していたのですが、初期メンバーで最後に残った1人が僕だったので、抜けてみて感じたことは、わりと大きな部分の看板をちゃんと背負わせてもらっていたんだなということです。デビュー当時からいた、あのサングラスの男がいなくなるということの意味を、すごく客観的に考えさせられたし、今のメンバーがどういう形でEXILEを引き継いで進化させていくのがベストなのか、時には苦悩しながらも奮闘していくチャレンジ精神をすごく感じています。
コロナ禍という観点から子供たちをステージに上げることはできないけれど、僕たちは「Love, Dream, Happiness」をテーマに子供たちの未来や夢を伝えてきたグループなので、子供たちに対する愛はこれからも変わらずに引き継いでいってほしいです。そしてどんなに体制が変わろうとも、強くハッピーなEXILEであり続けることを願っています。
― ATSUSHIさんに憧れてオーディションを受けている方もたくさんいると思います。そんな後輩たちに、先輩としてどんな背中を見せ続けていきたいですか?
ATSUSHI:僕はそんなに大した背中は見せれていないです(笑)。僕が30代前半くらいの頃、後輩たちの勢いが出てきた時は、正直自分たちのEXILEのようであってほしいと思っていた時もあります。だけど、時代が違ければ人それぞれ個性もあるので、全く同じになるわけがないし、それぞれの表現があっていいのかなというのは途中から感じるようになりました。言い方が難しいですが、“やっぱりATSUSHIさんは音楽にすごくこだわっているよね”というのは感じてくれていたら嬉しいですね。
― ATSUSHIさんがソロアーティストして思い描いている将来像をお聞かせください。
ATSUSHI:僕の勝手な価値観なのですが、日本人の平均寿命がだいたい80歳くらいなので、40歳を迎えた時に「あ、折り返したんだな」と思いました。今年でもう42歳なので、60歳まで元気に歌えて毎年ツアーをやれてもあと20回。アルバムが毎年出せてもあと20枚。60歳以降、今まで通り健康で元気な声が出るかもわからないし、病気になるかもしれないし、その前に死んじゃうかもしれないし、どうなるかわからないので、そういうことを常に意識して後悔のないようにやっていきたいと思っています。
加山雄三さんみたいに、80歳になっても現役で歌われている姿を見ているとかっこいいなと思う一方で、コロナ禍になってからは、甥っ子や姪っ子、自分の両親たちと食事できる時間もすごく限られていることを実感しているし、周りを見渡して、自分もいつかは家族を持ちたいと思うようになってきました。まだ全然予定はないですけど(笑)。そういう意味で言うと、「ステージの上で死にたい」「死ぬまで歌っていたい」みたいな気持ちは前ほどそこまで強くはなくなり、どちらかというと1人の人間としての幸せや、いつ何があるかわからないこの世の中で感じられる幸せを大切にしたいと感じるようになりました。
それでも出来る限りはコンセプトアルバムを作ったり、ツアーをやったり、もちろん海外進出にも挑戦したりしたいという思いはあります。そしていつか自分のピアノかギターだけ、それはどちらかでも両方でもいいのですが、例えば綾戸智恵さんみたいにピアノ1個でライブをして、全国のホールを周ってみたいという気持ちもあります。自分で音楽を奏でて、自分で歌を歌って、楽器ひとつでライブを成立させる、というのは将来チャレンジしたいです。
EXILE ATSUSHIの夢を叶える秘訣
― 後輩へのアドバイスと通ずる部分がありますが、これまで多くの夢を叶え、また多くの人たちに夢を与えてきたATSUSHIさんの“夢を叶える秘訣”をお聞かせください。ATSUSHI:今って、なかなか夢を見つけられない人が多いと思うんです。ゴルフで例えると、やらない人からすれば、あの広い場所であの小さい穴に玉を入れることの何が楽しいのかと思うけど、仲間と遠足気分だったり、途中で食べるランチが楽しみだったり、クラブを揃えるのが楽しかったり、打ちっぱなしに行くのが楽しかったり、その楽しさはやってみないとわからない。だからまずはいろいろなことをやってみて、好きなことを見つけるのがいいと思います。
僕はすごく論理的に考えて、段階を踏んで目標を達成しています。デビュー前に「日本一のアーティストなりたい」と言っても、将来的にはいいかもしれないけど、その時点では早すぎる話なので、それよりも「まずはデビューすること」が第1段階の目標なんです。そこをクリアしなければ日本一にはなれないわけだし、今となっては何を成し遂げれば日本一になるのかはわからないですけど。デビューするためには入りたい事務所を決めて、そこに引っかかるようなデモテープを録らなきゃいけない、じゃあビブラートをもっと勉強しよう。そうして逆算していくと、今やるべきことが見えてくるんです。僕はわりと論理的に未来のことを考えていたかもしれないですね。でも実際にビブラートができるようになってデモテープを何回も録って、事務所に送ったら何社か返ってきたので、ひとつひとつをクリアしていくしかないんです。
宝くじみたいな夢の叶え方は、ギャンブルすぎてきっと叶えにくいです。それよりも、今やるべきことを逆算していくと、着実に自分が行きたい場所に近づくことができると思います。あとは周りの人の協力あってこそ、道が開けていくので、やりたいことを口に出すこと。僕はすごく運も良かったのですが、しっかり思いやりを持って、とりあえず目の前の目標から達成していけば、自ずと道は切り開かれるはずです。
― 素敵なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
EXILE ATSUSHIプロフィール
2001年、EXILEとして活動を開始。2006年よりEXILEの活動と並行してソロ活動を開始する。2011年、EXILE「Rising Sun」に収録された「いつかきっと…」にてEXILE ATSUSHI名義でソロデビュー。2012年、初のソロアルバム「Solo」を発売。初のソロライブツアー「EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE」を全国6都市で開催。2013年4月に発売された初のエッセイ「天音。」は20万部を超えるベストセラーとなった。2014年4月より、初のソロアリーナツアー「EXILE ATSUSHI LIVE TOUR 2014“Music”」を開催し、全国11都市24公演30万人を動員。「第56回輝く!日本レコード大賞」では最優秀歌唱賞を受賞。グループ、そしてソロとしての受賞は史上初の快挙。ソロとして国内はもちろん、世界を視野に入れて活動する。
2016年、日本人ソロアーティストとしては初となるソロ6大ドームツアー「IT’S SHOW TIME!!」を開催。全11公演約40万人を動員。さらに、バンドプロジェクト「RED DIAMOND DOGS」を結成。ツアー中の8月31日、自身の海外留学及びEXILEとしての活動は2018年再開を発表。ツアー終了後の同年10月から2018年2月上旬までロサンゼルスやニューヨークに留学した。2020年11月2日、EXILEを卒業し、ソロ活動に専念することを発表した。
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