玉森裕太主演「パラレルワールド・ラブストーリー」の脚本家・一雫ライオンの小説がすごい!読みだしたら止まらない衝撃ストーリー<モデルプレスインタビュー>
2018.10.12 10:00
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Kis-My-Ft2の玉森裕太が主演、東野圭吾氏のベストセラー小説を実写化する映画「パラレルワールド・ラブストーリー」(2019年公開)の脚本を手がけた一雫ライオン(45)。話題作の脚本を担当するほか、昨年「ダー・天使」で小説家デビューを果たした。読書家の間で話題を呼んだ「ダー・天使」だが、早くも新たな小説「スノーマン」を発売。今作への思いや反響に迫った。
今作「スノーマン」は、白く美しい連続殺人鬼を追うサスペンス。肌が白く、「スノーマン」と呼ばれる犯人は、謎めいた美しさから話題を集めていく。そんな彼をめぐる悲しき結末とは?
去年、デビュー作の「ダー・天使」を書き終えて、小説をどんどん書いていきたいという思いが強くなりました。「ダー・天使」は処女作ということもあり、わりと私小説的な部分も入った、読み終わった後に読者の方が温かい気持ちになれるような作品でしたが、温かい作品だけでなく、残酷な話や人間の底の話みたいなものも個人的に好きなので、「ダー・天使」と真逆な世界観は何かと思ったとき、この話を思いつきました。
― まさかのどんでん返しも多々あり、続きが気になって一気に読み進めてしまいました。執筆にあたり、どの程度プロットを考えていたのでしょうか?
それがノープロットなんですよ(笑)もう本当5行くらいで設定を決めて。最初に決めたのは、スノーマンと呼ばれる白く美しい連続殺人鬼というキャラクター。それが肝にありました。そして、白く美しい連続殺人鬼に子どもを殺されたシングルマザーと証拠を隠してしまった刑事がいて、事件がどんどん混乱して進んでいく悲しい物語というくらいの設定でした。それを編集者の方に伝えて書き進めていきました。小説は、脚本の世界と違い、多くのスタッフさんとの関わりがなく、わりと一人で進められるので新鮮です。
伏線もあまり、伏線だと意識せずに書きました。伏線を作ろうと意識するほうが、それが伏線に見えてしまうと思うんです。これまでも脚本を書いてきたので、自然に伏線になっていたかと思います。想像を膨らませる小説だからこそのトリックを仕掛けられるのもおもしろいです。
― 団地の一室で、多数の遺体が発見されることから物語が始まりますが、参考にしたものなどはありますか?2017年の座間での事件に似ているなという印象を受けました。
不思議なのですが、書いている事柄に似たことが現実にあったりするものなんですよね。こういった大きく報じられる事件は、社会の中に何らかの要因があると思うんです。書きながらそれを自分で知りたかった部分がありましたね。
― 登場人物のモデルはいますか?
それもいないかな。この物語で書きたかったのは、人の悪意。その悪意こそがスノーマンのモデルかもしれませんね。
一番の苦労は2作目ということでした。「ダー・天使」は、小説を出版できるという喜びがあり、それに向かって相当な熱量でいけました。2ヶ月くらいで書き終えたので、自分の中でそれくらいのペースでいけるのかなと思いながら今作を書き始めたのですが、小説を書きたいと思いが強くなり、いい意味で欲が出てきたんです。そうなると「ダー・天使」のときよりも言葉に少しこだわってみようとか、本当に苦労するようになって…。時間がかかりながらの作業でした。いつものことながら情緒不安定が繰り返しやってきて…(笑)。ただ、残酷な描写もありますが、その点についてはあまり苦労することなく、わりと楽しく書けました(笑)
― 着地点までけっこうな道のりだったようですね。
そうですね。ただ、脚本を書いてきたので、物語の決着のつけ方はどこかでわかっているように思います。だけど、そこに簡単にいきたくない、まだ他の道があるんじゃないかと思い、そこが一番大変でしたね。ですが、書き終わって読んでくださった方の感想とかを聞くと、やっぱりあれくらいは苦労しなきゃなとも思います。この苦労は忘れてはいけないなと。2作目は大変になりましたが、この先、作家としてもやっていくことを考えると、一番いい時期に苦しんだなと思います。
― 「ダー・天使」「スノーマン」と、一雫ライオンさんの小説に登場するキャラクターは、どちらかというと低所得層、決して裕福といえない暮らしを強いられている人が多い印象を受けます。
編集の方にも「弱者に対する眼差しみたいなのが、多分ライオンさんの核なんでしょうね」と言っていただきました。そのような声をいただくことは多いです。僕自身、高校のとき、一度退学して定時制高校に行ったのですが、そのことが影響しているのかもしれません。それまでは、わりと恵まれていた学校に行っていたのですが、そこが肌に合わずで。定時制高校にはいろんな人がいました。いろんな人がいて、これが現実だなという気がしました。多分、17歳ながら、そこで大事なことを感じたんだと思います。それが作品に表れているのかな。多数派でない人間をエンターテインメントとして書いているほうが、自分としても心地よいです。
ありがたい感想が多かったです。デビュー作ですが、僕の場合、文芸の賞をとってデビューといったわけでなく、いろんな方との縁で小説を書かせていただきましたが、やっぱり書いてよかったと思えるような声をたくさんいただきました。今回の「スノーマン」も読者好きの方が集まるサイトで「おもしろかった」といった声があったので、非常にありがたく、嬉しいです。
― 一雫ライオンさんの本を手にした読者の方は、どういったきっかけで一雫ライオンさんの作品と出会ったとお考えですか?
歳は45ですが(笑)、新人作家の本を手にしてもらうハードルは高いと思います。ですが、編集者さんをはじめ、多くの方のお力添えをいただき、たくさんの方に本を手にとっていただきました。あと、やはりカバーがきっかけで手にとってくださった方もいるかと思います。「ダー・天使」のときは処女作だったので、また今回とは違う思い入れがあり、編集の方に絵を見せるなど打ち合わせをしました。今回は、編集者さんのセンスに委ね、作品に合うイラストレーターの方を探してもらい、カバーが出来上がりました。
― 今後、どのような作品を書きたいですか?
また違ったジャンルに挑戦したいですね。いずれのテーマにせよ、背徳感みたいなのが多分好きなんだと思います。そこの軸はぶれずに書いていきたいですね。
― 脚本家としても活動されていますが、今後のバランスは?
小説を書きたいという思いはもちろん強いですね。頭の中でいっぱい書きたい小説がうじゃうじゃ出てきています。脚本ももちろんお話があれば嬉しいです。「パラレルワールド・ラブストーリー」の現場に伺ったのですが、Kis-My-Ft2の玉森裕太さん、吉岡里帆さん、染谷将太さんと豪華なキャスト陣で…みなさん、とてもオーラがあって、素敵でした。
実は、今回「スノーマン」を書いている最中に映画「パラレルワールド・ラブストーリー」の決定稿をあげなければならなかったんです。それでいったん、脚本の仕事に集中したのですが、小説のイメージがやっぱりどうしても逃げるというか、そういった苦労もあったんです。ですが、「パラレルワールド・ラブストーリー」に関わることで感じたことも。やっぱり東野圭吾さんは偉大だなと。力強く、エネルギーが落ちないまま読者を引きずり込んでいく。そうして映画の決定稿が上がり、もう一度「スノーマン」に戻った時に、読ませ切るのは、作家としての体力だなと思いました。大事なことを自分で掴んだ気持ちになりましたね。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
デビュー作とは全く違った作風の「スノーマン」
― 前作「ダー・天使」は、ハートフルなファンタジーでしたが、今作「スノーマン」ではサスペンスに挑戦。この作品を書こうと思ったきっかけやテーマにサスペンスを選んだ理由を教えてください。去年、デビュー作の「ダー・天使」を書き終えて、小説をどんどん書いていきたいという思いが強くなりました。「ダー・天使」は処女作ということもあり、わりと私小説的な部分も入った、読み終わった後に読者の方が温かい気持ちになれるような作品でしたが、温かい作品だけでなく、残酷な話や人間の底の話みたいなものも個人的に好きなので、「ダー・天使」と真逆な世界観は何かと思ったとき、この話を思いつきました。
― まさかのどんでん返しも多々あり、続きが気になって一気に読み進めてしまいました。執筆にあたり、どの程度プロットを考えていたのでしょうか?
それがノープロットなんですよ(笑)もう本当5行くらいで設定を決めて。最初に決めたのは、スノーマンと呼ばれる白く美しい連続殺人鬼というキャラクター。それが肝にありました。そして、白く美しい連続殺人鬼に子どもを殺されたシングルマザーと証拠を隠してしまった刑事がいて、事件がどんどん混乱して進んでいく悲しい物語というくらいの設定でした。それを編集者の方に伝えて書き進めていきました。小説は、脚本の世界と違い、多くのスタッフさんとの関わりがなく、わりと一人で進められるので新鮮です。
伏線もあまり、伏線だと意識せずに書きました。伏線を作ろうと意識するほうが、それが伏線に見えてしまうと思うんです。これまでも脚本を書いてきたので、自然に伏線になっていたかと思います。想像を膨らませる小説だからこそのトリックを仕掛けられるのもおもしろいです。
― 団地の一室で、多数の遺体が発見されることから物語が始まりますが、参考にしたものなどはありますか?2017年の座間での事件に似ているなという印象を受けました。
不思議なのですが、書いている事柄に似たことが現実にあったりするものなんですよね。こういった大きく報じられる事件は、社会の中に何らかの要因があると思うんです。書きながらそれを自分で知りたかった部分がありましたね。
― 登場人物のモデルはいますか?
それもいないかな。この物語で書きたかったのは、人の悪意。その悪意こそがスノーマンのモデルかもしれませんね。
続きが気になる一冊 執筆中の苦労は?
― この作品を書く中で苦労したことなどはありますか?一番の苦労は2作目ということでした。「ダー・天使」は、小説を出版できるという喜びがあり、それに向かって相当な熱量でいけました。2ヶ月くらいで書き終えたので、自分の中でそれくらいのペースでいけるのかなと思いながら今作を書き始めたのですが、小説を書きたいと思いが強くなり、いい意味で欲が出てきたんです。そうなると「ダー・天使」のときよりも言葉に少しこだわってみようとか、本当に苦労するようになって…。時間がかかりながらの作業でした。いつものことながら情緒不安定が繰り返しやってきて…(笑)。ただ、残酷な描写もありますが、その点についてはあまり苦労することなく、わりと楽しく書けました(笑)
― 着地点までけっこうな道のりだったようですね。
そうですね。ただ、脚本を書いてきたので、物語の決着のつけ方はどこかでわかっているように思います。だけど、そこに簡単にいきたくない、まだ他の道があるんじゃないかと思い、そこが一番大変でしたね。ですが、書き終わって読んでくださった方の感想とかを聞くと、やっぱりあれくらいは苦労しなきゃなとも思います。この苦労は忘れてはいけないなと。2作目は大変になりましたが、この先、作家としてもやっていくことを考えると、一番いい時期に苦しんだなと思います。
― 「ダー・天使」「スノーマン」と、一雫ライオンさんの小説に登場するキャラクターは、どちらかというと低所得層、決して裕福といえない暮らしを強いられている人が多い印象を受けます。
編集の方にも「弱者に対する眼差しみたいなのが、多分ライオンさんの核なんでしょうね」と言っていただきました。そのような声をいただくことは多いです。僕自身、高校のとき、一度退学して定時制高校に行ったのですが、そのことが影響しているのかもしれません。それまでは、わりと恵まれていた学校に行っていたのですが、そこが肌に合わずで。定時制高校にはいろんな人がいました。いろんな人がいて、これが現実だなという気がしました。多分、17歳ながら、そこで大事なことを感じたんだと思います。それが作品に表れているのかな。多数派でない人間をエンターテインメントとして書いているほうが、自分としても心地よいです。
脚本家が小説家デビュー 反響は?
― 今回が2作目となりますが、デビュー作「ダー・天使」の反響はいかがでしたか?ありがたい感想が多かったです。デビュー作ですが、僕の場合、文芸の賞をとってデビューといったわけでなく、いろんな方との縁で小説を書かせていただきましたが、やっぱり書いてよかったと思えるような声をたくさんいただきました。今回の「スノーマン」も読者好きの方が集まるサイトで「おもしろかった」といった声があったので、非常にありがたく、嬉しいです。
― 一雫ライオンさんの本を手にした読者の方は、どういったきっかけで一雫ライオンさんの作品と出会ったとお考えですか?
歳は45ですが(笑)、新人作家の本を手にしてもらうハードルは高いと思います。ですが、編集者さんをはじめ、多くの方のお力添えをいただき、たくさんの方に本を手にとっていただきました。あと、やはりカバーがきっかけで手にとってくださった方もいるかと思います。「ダー・天使」のときは処女作だったので、また今回とは違う思い入れがあり、編集の方に絵を見せるなど打ち合わせをしました。今回は、編集者さんのセンスに委ね、作品に合うイラストレーターの方を探してもらい、カバーが出来上がりました。
― 今後、どのような作品を書きたいですか?
また違ったジャンルに挑戦したいですね。いずれのテーマにせよ、背徳感みたいなのが多分好きなんだと思います。そこの軸はぶれずに書いていきたいですね。
― 脚本家としても活動されていますが、今後のバランスは?
小説を書きたいという思いはもちろん強いですね。頭の中でいっぱい書きたい小説がうじゃうじゃ出てきています。脚本ももちろんお話があれば嬉しいです。「パラレルワールド・ラブストーリー」の現場に伺ったのですが、Kis-My-Ft2の玉森裕太さん、吉岡里帆さん、染谷将太さんと豪華なキャスト陣で…みなさん、とてもオーラがあって、素敵でした。
実は、今回「スノーマン」を書いている最中に映画「パラレルワールド・ラブストーリー」の決定稿をあげなければならなかったんです。それでいったん、脚本の仕事に集中したのですが、小説のイメージがやっぱりどうしても逃げるというか、そういった苦労もあったんです。ですが、「パラレルワールド・ラブストーリー」に関わることで感じたことも。やっぱり東野圭吾さんは偉大だなと。力強く、エネルギーが落ちないまま読者を引きずり込んでいく。そうして映画の決定稿が上がり、もう一度「スノーマン」に戻った時に、読ませ切るのは、作家としての体力だなと思いました。大事なことを自分で掴んだ気持ちになりましたね。
― ありがとうございました。
一雫ライオン(ひとしずく・らいおん)プロフィール
1973年7月12日生まれ。東京都出身。俳優としての活動を経て、演劇ユニット「東京深夜舞台」を結成後、脚本家として活動。映画「前橋ヴィジュアル系」「TAP 完全なる飼育」「ホテルコパン」「サブイボマスク」「イイネ!イイネ!イイネ!」などの脚本を担当。2017年「ダー・天使」で小説家デビュー。ほか、著書に「小説版 サブイボマスク」がある。(modelpress編集部)
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