話題のドラマ「女子的生活」LGBT当事者に与えた影響は 主演・志尊淳&トランスジェンダー指導・西原さつきが反響語る<インタビュー>
2018.01.18 12:51
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俳優の志尊淳がトランスジェンダーのヒロインを演じたNHKドラマ10「女子的生活」の第3話が19日、最終回が26日(ともに夜10時~)に放送される。この度、志尊と、トランスジェンダー指導・西原さつきが、トレーニングを振り返り、視聴者に伝えたいことを語った。
坂木司氏の痛快ガールズストーリー「女子的生活」をドラマ化した同作。志尊は、見た目はスラリとした美しい女性だが、実は体は男性で心が女性、恋愛対象は女性という“複雑な”トランスジェンダーのヒロイン・みきを演じている。
一方、「女性らしい所作」を志尊に指導した西原氏は、男子として生まれるが幼少期から強い性別違和を覚え、大学卒業後は広告代理店にOLとして勤務、性別適合手術後はタイで行われたトランスジェンダーの世界大会「Miss International Queen 2015」で特別賞『ミス・フォトジェニック賞』を受賞した。
現在は、LGBT関連の講演会、モデルなどを中心に活動。性同一性障がいの方のための女性化レッスン『乙女塾』の代表講師も務める。
志尊:俳優仲間が「見てるよ!」と連絡をくれたんですけど、正直、最初は「淳が主演だから」「女性の格好をしているから」というところに興味があったそうです。でもドラマを見てくれて「内容が面白かった」って言ってくれています。
西原:海外の作品を含めてトランスジェンダーを扱った映画やドラマは、悲劇的な部分にフォーカスすることがすごく多いんです。例えば“親に認められたい”“周りの理解を求めて頑張る”みたいな演出が多くなりがちです。けどこのドラマは、みきちゃんというキャラクターが女の子として生きる楽しさや、カワイイものが好きなキラキラした気持ちとか、彼女の明るい部分にフォーカスが当たっていて。私の知っているLGBT当事者の人たちの間では、そこが斬新だったという反応が多いですね。
志尊:視聴者の皆さんからの反響もたくさんいただいていますね。この作品は、見ている方がどこに着眼点を置くかで、捉え方がまったく変わってくるドラマだと思うんです。どんな捉え方であれ、この作品が多くの視聴者の皆さんへ届いたことに、僕は幸せを感じています。
西原:LGBT当事者は現実問題として苦しんでいる方も多いんですけど「このドラマのおかげで、親にカミングアウトができるようになった」という方の声を聞いて、人の人生を左右している作品だなぁとすごく感じました。実は私の周りで、このドラマのオンエアが決まってから、親にカミングアウトをしたという人が10人以上もいて。ドラマがスタートする前から期待値は高かったんですけど、始まったことによって、作品の持つ影響力がすごく強くなったなぁというのを感じています。
志尊:視聴者の方からの反響で「ふとした瞬間にみきの男性的な部分が見えるところがグッときた」という声が多かったのも印象的でした。みきを演じる上で、撮影の1ヶ月前から、西原さんに女性的な所作のトレーニングをしていただいたんですけど、撮影に入ったら、みきの気持ちを最優先にしたかったんです。“女性に見られたい”という一心だけだったら、女性と並んだ時に猫背にしてみるとか、見え方を変えられる部分はあったと思うんですけど、それでも僕はみきの“強さ”を絶対に消したくなかったので。そこを視聴者の方がしっかり見てくださっていたのは、すごく嬉しかったですね。
西原:正直に言うとまったくお芝居の経験がなかったんです。三鬼チーフ・プロデューサーから「みきの親友もトランスジェンダーという設定なので、役をお願いできないですか?」とお話をいただきました。ただ最初は、演技ってどうやったら良いのかがわからなかったんです。ドラマがクランク・インして、自分が出演するシーンの撮影まで2週間くらいあったので、撮影現場で出演者の皆さんの姿を見て勉強させていただきました。それでも、いざ自分の撮影が始まってカメラの前に立つと、まったくの別世界で。みきちゃんとパンケーキを食べるというお芝居の時に、私がすごく緊張していると志尊さんが「食べる芝居は慣れていても難しいですよ」と声をかけてくれたので、リラックスして臨むことができました。
志尊:西原さんと共演させていただいて感じたんですが、西原さんには“芝居をしよう”という気負いがなくて、セリフも本当にともちゃんが喋っている雰囲気を最初から作ってくれていました。だから僕もみきとして、その会話をしっかり成立させたいなと思って演じていました。2人の共演シーンは回想も交えるんですけど、僕が台本を読んだ時の解釈と、さつきさんが台本を読んだ時の解釈ってきっと違っていて。トランスジェンダーの当事者だからこそ感じることができる深い部分を、きっとさつきさんは感じていたんだと思います。
西原:共演シーンの中で、ともちゃんがみきちゃんに「彼氏ができたからルームシェアを解消してほしい」と話すシーンがあるんですけど、台本ではさらっと書かれていて。ともちゃんは彼氏ができたことで、みきちゃんと暮らした家を出て行ってしまうんですけど、トランスジェンダーの人が、普通の男性と恋愛するってすごく覚悟がいることなんです。友達と恋人を天秤にかけること、そして男性と恋愛することを考えた時に自分の中で熱量が上がってしまって…。
志尊:その熱量というものに僕はリアリティを感じたんです。みきに対して大事なことを言わなきゃいけないというともちゃんの気持ちを受け止めることに徹しました。
西原:そうですね。本当にすごくできる人でも半年はかかります。今回のドラマでは、通常は1年かかるトレーニングを撮影までの約1ヶ月に落とし込んで行いました。トレーニングでは足の筋肉に負荷がかかるので、本来は筋肉を休ませる時間を作らないと仕上がっていかないんです。今回はその辺りもかなり、志尊さんを追い詰めているなぁという自覚はありました。でも視聴者の方にみきちゃんに対して「やっぱり男っぽいね」とか絶対に言わせたくなかったので。志尊さんが汗だくになって辛そうにしているのもわかっていたんですけど、なるべく休憩は取りながら、でも追い詰めてみたいな。ご本人が一番大変だったと思います。
― 西原さんからの指導の中で、印象に残っていることや、これは難しかったなという所作があれば教えてください。
志尊:全部、難しかったですね。ただ教えてもらっているものをやるということでは繕っているものになってしまうので。例えば後ろ歩きをしながら普通の生活しろと言われているような感覚で。
西原:たしかにそうですね(笑)。
志尊:だって普通に生活していて、「あ、今この角度かっこいいかな?」とか考えて物を取ったりしないじゃないですか(笑)?何気ない動作でも意識する部分が多すぎて混乱してくるんですよ。歩く動作も「足!手!目線!首!肩!」って意識するところがたくさんあるので「う~ん…なんやねん!」って思うんですけど(笑)。理論的に考えつつも、あとは自分で“この時の、この体の感覚は見え方がいいんだ”というように、見え方の美しさを体の感覚でつかんでいきました。僕としては、撮影現場に入ってからは芝居に集中したかったので、その前の段階でできる限りのことをしたいと思って。だからこそトレーニングでは「もっとお願いします!」って前のめりになりましたね。
西原:志尊さんはドラマでは本当にみきちゃんをサラっと演じているんですけど、ただでさえ男性として生まれた人が女性として生きるだけでも難しいのに、さらにお芝居もしている。感覚的には着ぐるみを着た状態で野球をするような、二重にも三重にも大変な負荷がかかってると思います。よくキャラクターが着ぐるみ着た状態でサッカーやってたりして、みんな「すごい!」ってなるじゃないですか。あんな感覚に近いと思います。
志尊:野球のマスコットキャラクターがアクロバットしているようなもんです(笑)。
西原:今回初めてお芝居をやらせていただいて、セリフを言うだけでもイッパイイッパイだったり、表情を作ったり気持ちを作ったりという大変な作業を体験しました。自分がカメラの前に立ったことで初めて、「私は志尊さんに大変なことをやらせていたんだ」と思って。撮影の合間にも「普段こんなことをやってたんだね」って。「すごいね」って言っていました。そこから彼には頭が上がらないです(笑)。
志尊:いえいえ(笑)。
― 師弟共演の裏側にはそんなエピソードがあったんですね。
西原:あれは自分がともちゃんを演じてなかったら、きっと理解できなかったことだったと思います。みきちゃんを演じる志尊さんの気持ちに近づいたことで、普段の指導の仕方も少し変わってきました。
志尊:このドラマのお話をいただいた時「トランスジェンダーの役です」と言われて、僕自身も最近よく聞く言葉だけど、具体的にどういうことなのかが正直わからなかったんです。撮影に入る前はトランスジェンダーの当事者の方々を背負っている気持ちで、責任を持って、このドラマが当事者の皆さんのことをもっと知っていただける良い機会になればいいなという気持ちでした。でも今は自分の気持ちがすごく変わってきています。“何かを伝えたい”というようにこちらの考えを押し付けたくないというか。本当にみきって、もちろん女性なんですけど、みきという確立された存在という感覚があって。みきを演じたあとに、彼女がトランスジェンダーって言われることに対しても、なんとなく抵抗を感じるようになってきて。
西原:「女性」だからね。
志尊:トランスジェンダーという言葉を聞きすぎて「なんか違うな」って思ったんですよ。僕は今、この作品が持っているメッセージ性であるとか、みきちゃんという人物の生き方を見て、視聴者の皆さんに何かを感じ取ってもらえればいいなと思っているだけです。ドラマの後半の撮影では、みきとして生きることしか考えなくて。実際にドラマがオンエアされて、たくさんの方に反響やご意見をいただいて、皆さんがいろんなことをドラマから感じ取ってくれたこと、僕はその一つ一つが嬉しくて。「可愛い」でも「キレイ」でもすごく嬉しくて。この作品を見ていただいて、何か届いているというよりも、この作品を見てくれたことに、僕は嬉しさを感じるんです。伝えたいことはたくさんあるけど、それを僕が言葉にするのは違うのかなって最近は思っているんです。“ここを見て欲しい”ではなくて、ドラマを見て、その人がどう感じてくださるかが全てだと思います。僕がすごく大好きなこの作品が、いろんな人に届けばいいなという気持ちでいますね。
西原:みきはトランスジェンダーって言われていますけど、それ以上に一人の女性なんです。私自身も実際、トランスジェンダーということを公表して、いろんな活動をやらせていただいていますけど、正直プライベートで「私はトランスジェンダーだから」って思わないんですよね。正直、忘れちゃうくらいですし。私以外にもそう思ってる当事者って多いと思います。最初のお話に戻っちゃいますけど、女の子が感じている楽しい部分、ファッションやメイクが好きなところとか、そういう部分をすごく見て欲しいですね。トランスジェンダーですというと、どうしてもお涙頂戴が多いんですけど、それだけだったら、別に性別を変えても楽しくないじゃないですか?私もそんな世界しかなかったら生きていて楽しくないんですよ。だけど今、私もこうやって女性として生活をして「トランスジェンダーです」とあえて言っても“女の子を楽しむ”ことがそれ以上に価値があることなんです。みきちゃんはまさにそこを体現してくれていて、それってトランスジェンダーの当事者だけじゃなくて、生まれながらの女の子も見ていて絶対に共感できる部分なので、そういう意味では性別とか生まれた性は関係なく、いろんな人に届いてほしいです。
(modelpress編集部)
一方、「女性らしい所作」を志尊に指導した西原氏は、男子として生まれるが幼少期から強い性別違和を覚え、大学卒業後は広告代理店にOLとして勤務、性別適合手術後はタイで行われたトランスジェンダーの世界大会「Miss International Queen 2015」で特別賞『ミス・フォトジェニック賞』を受賞した。
現在は、LGBT関連の講演会、モデルなどを中心に活動。性同一性障がいの方のための女性化レッスン『乙女塾』の代表講師も務める。
「女子的生活」出演者が語る反響
― 第2回の放送が終わったところですが、ドラマの反響はいかがですか?志尊:俳優仲間が「見てるよ!」と連絡をくれたんですけど、正直、最初は「淳が主演だから」「女性の格好をしているから」というところに興味があったそうです。でもドラマを見てくれて「内容が面白かった」って言ってくれています。
西原:海外の作品を含めてトランスジェンダーを扱った映画やドラマは、悲劇的な部分にフォーカスすることがすごく多いんです。例えば“親に認められたい”“周りの理解を求めて頑張る”みたいな演出が多くなりがちです。けどこのドラマは、みきちゃんというキャラクターが女の子として生きる楽しさや、カワイイものが好きなキラキラした気持ちとか、彼女の明るい部分にフォーカスが当たっていて。私の知っているLGBT当事者の人たちの間では、そこが斬新だったという反応が多いですね。
志尊:視聴者の皆さんからの反響もたくさんいただいていますね。この作品は、見ている方がどこに着眼点を置くかで、捉え方がまったく変わってくるドラマだと思うんです。どんな捉え方であれ、この作品が多くの視聴者の皆さんへ届いたことに、僕は幸せを感じています。
西原:LGBT当事者は現実問題として苦しんでいる方も多いんですけど「このドラマのおかげで、親にカミングアウトができるようになった」という方の声を聞いて、人の人生を左右している作品だなぁとすごく感じました。実は私の周りで、このドラマのオンエアが決まってから、親にカミングアウトをしたという人が10人以上もいて。ドラマがスタートする前から期待値は高かったんですけど、始まったことによって、作品の持つ影響力がすごく強くなったなぁというのを感じています。
志尊:視聴者の方からの反響で「ふとした瞬間にみきの男性的な部分が見えるところがグッときた」という声が多かったのも印象的でした。みきを演じる上で、撮影の1ヶ月前から、西原さんに女性的な所作のトレーニングをしていただいたんですけど、撮影に入ったら、みきの気持ちを最優先にしたかったんです。“女性に見られたい”という一心だけだったら、女性と並んだ時に猫背にしてみるとか、見え方を変えられる部分はあったと思うんですけど、それでも僕はみきの“強さ”を絶対に消したくなかったので。そこを視聴者の方がしっかり見てくださっていたのは、すごく嬉しかったですね。
志尊淳・西原さつきの共演感想
― 第2回では、西原さんがみきのかつてのルームメイト“ともちゃん”役で志尊さんと共演されていましたね。西原:正直に言うとまったくお芝居の経験がなかったんです。三鬼チーフ・プロデューサーから「みきの親友もトランスジェンダーという設定なので、役をお願いできないですか?」とお話をいただきました。ただ最初は、演技ってどうやったら良いのかがわからなかったんです。ドラマがクランク・インして、自分が出演するシーンの撮影まで2週間くらいあったので、撮影現場で出演者の皆さんの姿を見て勉強させていただきました。それでも、いざ自分の撮影が始まってカメラの前に立つと、まったくの別世界で。みきちゃんとパンケーキを食べるというお芝居の時に、私がすごく緊張していると志尊さんが「食べる芝居は慣れていても難しいですよ」と声をかけてくれたので、リラックスして臨むことができました。
志尊:西原さんと共演させていただいて感じたんですが、西原さんには“芝居をしよう”という気負いがなくて、セリフも本当にともちゃんが喋っている雰囲気を最初から作ってくれていました。だから僕もみきとして、その会話をしっかり成立させたいなと思って演じていました。2人の共演シーンは回想も交えるんですけど、僕が台本を読んだ時の解釈と、さつきさんが台本を読んだ時の解釈ってきっと違っていて。トランスジェンダーの当事者だからこそ感じることができる深い部分を、きっとさつきさんは感じていたんだと思います。
西原:共演シーンの中で、ともちゃんがみきちゃんに「彼氏ができたからルームシェアを解消してほしい」と話すシーンがあるんですけど、台本ではさらっと書かれていて。ともちゃんは彼氏ができたことで、みきちゃんと暮らした家を出て行ってしまうんですけど、トランスジェンダーの人が、普通の男性と恋愛するってすごく覚悟がいることなんです。友達と恋人を天秤にかけること、そして男性と恋愛することを考えた時に自分の中で熱量が上がってしまって…。
志尊:その熱量というものに僕はリアリティを感じたんです。みきに対して大事なことを言わなきゃいけないというともちゃんの気持ちを受け止めることに徹しました。
志尊淳、トレーニングを振り返る
― 今回、西原さんは“トランスジェンダー指導”ということで主演の志尊さんに女性の所作や声の出し方、話し方などを指導なさったと思うんですが、クランク・インまでの約1ヶ月の間でトレーニングをされたそうですね。通常、西原さんの「乙女塾」では、トレーニングに1年くらいかかると伺ったのですが?西原:そうですね。本当にすごくできる人でも半年はかかります。今回のドラマでは、通常は1年かかるトレーニングを撮影までの約1ヶ月に落とし込んで行いました。トレーニングでは足の筋肉に負荷がかかるので、本来は筋肉を休ませる時間を作らないと仕上がっていかないんです。今回はその辺りもかなり、志尊さんを追い詰めているなぁという自覚はありました。でも視聴者の方にみきちゃんに対して「やっぱり男っぽいね」とか絶対に言わせたくなかったので。志尊さんが汗だくになって辛そうにしているのもわかっていたんですけど、なるべく休憩は取りながら、でも追い詰めてみたいな。ご本人が一番大変だったと思います。
― 西原さんからの指導の中で、印象に残っていることや、これは難しかったなという所作があれば教えてください。
志尊:全部、難しかったですね。ただ教えてもらっているものをやるということでは繕っているものになってしまうので。例えば後ろ歩きをしながら普通の生活しろと言われているような感覚で。
西原:たしかにそうですね(笑)。
志尊:だって普通に生活していて、「あ、今この角度かっこいいかな?」とか考えて物を取ったりしないじゃないですか(笑)?何気ない動作でも意識する部分が多すぎて混乱してくるんですよ。歩く動作も「足!手!目線!首!肩!」って意識するところがたくさんあるので「う~ん…なんやねん!」って思うんですけど(笑)。理論的に考えつつも、あとは自分で“この時の、この体の感覚は見え方がいいんだ”というように、見え方の美しさを体の感覚でつかんでいきました。僕としては、撮影現場に入ってからは芝居に集中したかったので、その前の段階でできる限りのことをしたいと思って。だからこそトレーニングでは「もっとお願いします!」って前のめりになりましたね。
西原:志尊さんはドラマでは本当にみきちゃんをサラっと演じているんですけど、ただでさえ男性として生まれた人が女性として生きるだけでも難しいのに、さらにお芝居もしている。感覚的には着ぐるみを着た状態で野球をするような、二重にも三重にも大変な負荷がかかってると思います。よくキャラクターが着ぐるみ着た状態でサッカーやってたりして、みんな「すごい!」ってなるじゃないですか。あんな感覚に近いと思います。
志尊:野球のマスコットキャラクターがアクロバットしているようなもんです(笑)。
西原:今回初めてお芝居をやらせていただいて、セリフを言うだけでもイッパイイッパイだったり、表情を作ったり気持ちを作ったりという大変な作業を体験しました。自分がカメラの前に立ったことで初めて、「私は志尊さんに大変なことをやらせていたんだ」と思って。撮影の合間にも「普段こんなことをやってたんだね」って。「すごいね」って言っていました。そこから彼には頭が上がらないです(笑)。
志尊:いえいえ(笑)。
― 師弟共演の裏側にはそんなエピソードがあったんですね。
西原:あれは自分がともちゃんを演じてなかったら、きっと理解できなかったことだったと思います。みきちゃんを演じる志尊さんの気持ちに近づいたことで、普段の指導の仕方も少し変わってきました。
志尊淳&西原さつきが伝えたいこと
― 『女子的生活』は、残すところあと2回となりました。ドラマ全体を通して、お2人が視聴者の方々に伝えたいことはなんですか?志尊:このドラマのお話をいただいた時「トランスジェンダーの役です」と言われて、僕自身も最近よく聞く言葉だけど、具体的にどういうことなのかが正直わからなかったんです。撮影に入る前はトランスジェンダーの当事者の方々を背負っている気持ちで、責任を持って、このドラマが当事者の皆さんのことをもっと知っていただける良い機会になればいいなという気持ちでした。でも今は自分の気持ちがすごく変わってきています。“何かを伝えたい”というようにこちらの考えを押し付けたくないというか。本当にみきって、もちろん女性なんですけど、みきという確立された存在という感覚があって。みきを演じたあとに、彼女がトランスジェンダーって言われることに対しても、なんとなく抵抗を感じるようになってきて。
西原:「女性」だからね。
志尊:トランスジェンダーという言葉を聞きすぎて「なんか違うな」って思ったんですよ。僕は今、この作品が持っているメッセージ性であるとか、みきちゃんという人物の生き方を見て、視聴者の皆さんに何かを感じ取ってもらえればいいなと思っているだけです。ドラマの後半の撮影では、みきとして生きることしか考えなくて。実際にドラマがオンエアされて、たくさんの方に反響やご意見をいただいて、皆さんがいろんなことをドラマから感じ取ってくれたこと、僕はその一つ一つが嬉しくて。「可愛い」でも「キレイ」でもすごく嬉しくて。この作品を見ていただいて、何か届いているというよりも、この作品を見てくれたことに、僕は嬉しさを感じるんです。伝えたいことはたくさんあるけど、それを僕が言葉にするのは違うのかなって最近は思っているんです。“ここを見て欲しい”ではなくて、ドラマを見て、その人がどう感じてくださるかが全てだと思います。僕がすごく大好きなこの作品が、いろんな人に届けばいいなという気持ちでいますね。
西原:みきはトランスジェンダーって言われていますけど、それ以上に一人の女性なんです。私自身も実際、トランスジェンダーということを公表して、いろんな活動をやらせていただいていますけど、正直プライベートで「私はトランスジェンダーだから」って思わないんですよね。正直、忘れちゃうくらいですし。私以外にもそう思ってる当事者って多いと思います。最初のお話に戻っちゃいますけど、女の子が感じている楽しい部分、ファッションやメイクが好きなところとか、そういう部分をすごく見て欲しいですね。トランスジェンダーですというと、どうしてもお涙頂戴が多いんですけど、それだけだったら、別に性別を変えても楽しくないじゃないですか?私もそんな世界しかなかったら生きていて楽しくないんですよ。だけど今、私もこうやって女性として生活をして「トランスジェンダーです」とあえて言っても“女の子を楽しむ”ことがそれ以上に価値があることなんです。みきちゃんはまさにそこを体現してくれていて、それってトランスジェンダーの当事者だけじゃなくて、生まれながらの女の子も見ていて絶対に共感できる部分なので、そういう意味では性別とか生まれた性は関係なく、いろんな人に届いてほしいです。
(modelpress編集部)
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