「すべてがFになる」武井咲×綾野剛を選んだ理由 「リーガルハイ」「謎解き」のヒットメーカーが語るキャスティングの秘密/第6話場面カット/(左より)武井咲、綾野剛【モデルプレス】

「すべてがFになる」武井咲×綾野剛を選んだ理由 「リーガルハイ」「謎解き」のヒットメーカーが語るキャスティングの秘密

2014.11.25 18:00

現在放送中のフジテレビ系連続ドラマ「すべてがFになる」(毎週火曜よる9時)。同作は、累計370万部の同名ベストセラー(作者:森博嗣)より「S&Mシリーズ」を、武井咲(20)と綾野剛(32)のW主演で初めて映像化した。モデルプレスでは今回、企画を務める成河広明氏にインタビューを実施。「リーガルハイ」(2012年~)「謎解きはディナーのあとで」(2011年)「ストロベリーナイト」(2010年)などヒットシリーズを手がけてきた成河氏が、ドラマの裏側を語る。

  

武井咲×綾野剛 運命を決めるキャスティングの秘密

「すべてがFになる」は天才的頭脳の持ち主の仕組んだ、解の見えない密室殺人と猟奇犯罪方程式に挑む新本格ミステリードラマ。武井はスーパー理系頭脳をもつ“リケジョ”の女子大生・西之園萌絵(にしのその・もえ)、綾野は工学部建築学科の准教授・犀川創平(さいかわ・そうへい)を演じる。

「映像化不可能」と呼ばれる同作を描くにあたって、成河氏は「映像化不可能な理由は、ストーリーやトリックが難しいってこともあるんですけど、森博嗣の小説の世界では精神性や思考性がとても多く描かれているところにあると思います。それは、物語がとても抽象的とも言える。映像というよりも言葉の世界なので、それをどう具体化していくのかが難しいんです。理系的な難しさって実は思ったほどでもなく、それよりももっと難しいことがある。そこに果敢に挑戦しています」と語る。

さらに、理系ミステリーと言われることもあり、様々なタイプの“天才”が物語には登場するが、それを描くことが最も困難だったという。「何をもってしたら天才に見えるのか、文字の世界では“史上最高の天才”“神に最も近い天才”って描写されているんですけど、それってどういうことなの?って。実は、それを表現する描写はあまりドラマには登場しない。それは排除しているのではなくて不可能ということ。もちろんそれは諦めているという意味ではなく、映像として不可能。例えば、熱血漢の男だとみんなのために汗だくで走っていれば、熱血漢に見える。DVの男って言われれば、恋人や家族をDVしている描写を描けばいい。でも、天才の描写ってなんでしょうか?問題を解けばいいんでしょうか?でも、そういう問題じゃない。基本的にはすごく難しいことで、台本上どうト書きで書いて映像化しても、そうじゃないと思う人もいる。なので、その点に関してスタンダードでティピカルな描き方はしていないです」。

第6話場面カット/(左より)武井咲、綾野剛、早見あかり
これまでには、「リーガルハイ」「謎解きはディナーのあとで」など、コンビネーションが見どころとなる作品も多く手がけてきた。堺雅人と新垣結衣、櫻井翔と北川景子…そして、今作では武井咲綾野剛。キャスティングはドラマ作りにおいて重要な部分を締めるが、人気原作では視聴者側もすでにイメージが出来上がっているとあって、ことさら難しいのでは?「原作モノはもちろんですけど、オリジナル脚本でも実は同じです。僕らの中ではキャラクターが出来上がっているので、それに1番合っている女優さん、俳優さんに出会えることがスタッフにとっては1番の幸せですよね。やっぱり脚本家が書いた役を演じる役者さんがいて、それを演出する演出家がいて成り立っているので」。

今回のキャスティングもそれは当てはまるようで、「西之園萌絵と犀川創平っていう探偵は常に2人でいる。その立ち姿、居方にこだわった結果、武井さんと綾野さんのシルエットがいいと思ったんです。何がというよりは、感覚の話ですけど、背格好とか、並んでる絵を見て。それは監督陣も含めてスタッフみんなで思ってることです」。成河氏にとって、武井、綾野との出会いは運命だったのかもしれない。

また実際に2人の演技を見て、「周りから見てもお芝居のコンビネーションはいいと思いますね。現場のコンビネーションもいいですし。それに2人は、ほぼ実際の年齢の役をやっているんです。32歳の犀川創平、綾野剛と20歳の西之園萌絵、武井咲。その関係性を活かして、あえて自然体のお芝居をされているのもいい」と評価。長年の経験から培われてきたその直感は、確かなものだったのだろう。

早見あかりの存在を語る「すごい潜在能力を感じさせる」

第6話場面カット/早見あかり
一方で、もう一人この物語にとって、欠かせない登場人物がいる。それは天才プログラマー・真賀田四季(まがた・しき)。“神に最も近い人間”と呼ばれる彼女を演じているのは、女優の早見あかり(19)だ。

彼女は約300人のオーディションからこの役を勝ち取った。成河氏も「みんなで苦労して作った役」というように、「“神に最も近い天才”って文章では書けるんですけど、じゃあ具体的にはどういう風に描くのかってことが課題でした。本当に有名な女優さんから無名な女優さんまで色んな人を考え、想定しオーディションを行いましたね」とキャスティングは困難を極めた様子。

そうやって製作陣が試行錯誤した結果、早見は選ばれた。「彼女は、昔ももクロ(ももいろクローバー)の青だった。アイドル時代、ももクロの青の彼女っていうのは、メジャーな存在だった。そして、今の活動はそのことと彼女の中で確かに繋がっている。ももクロとして活動した自分がいて、でも女優に専念するために脱退した。そこを繋げて考えているところがいいなって思ったんですよ。自分の基礎や歴史をきっちり咀嚼できているのが話していて分かるんです」。

過去の経験を活かし、今女優として積極的に活動を行う早見。そんな彼女を「すごい潜在能力というかポテンシャルを感じさせる女優さん」と評価する成河氏は、「メジャーなのにミステリアスで、どこか捉えどころのない存在感がある。そのオーディションは書類審査から映像審査して、実際お呼びしてって流れで行ったんですけど、3次審査のときに会場に現れた瞬間、トップアイドルだったという華と、同時に神秘的なオーラみたいなものをスタッフ全員が感じたんです。それが真賀田四季っぽいなと思いました」と語る。

“女優・早見あかり”に一目惚れをしたのだろうか…「西之園萌絵、犀川創平と並ぶビッグキャラクターではある。それを早見さんにやっていただいてよかったなって思いますね」と明かし、「一生の中でもこんな難しい役は中々ないはずですからね。14歳から30歳までを演じ分ける必要もあり、それだけでも彼女の年齢でどう演じていくのかって難しい。でも、果敢にチャレンジしているし、監督にアイデアを提案している姿を見てプロだなと思いました」と敬意を表した。

ついに表題作「すべてがFになる」が描かれる

2話完結型で描く同作。25日放送の第6話では、森氏のデビュー作でドラマタイトルにもなっている「すべてがFになる」(1996年4月5日)の後編が描かれる。第5話で真賀田四季が密室の中で不可解な死を遂げたが、今回、その謎を犀川と西之園が徐々に解き明かしていく。

「表題作ですから、大ロケーションとセットを組んでいます。そういうスペクタクルを楽しんで欲しいなと思います。また、次々といろんなことが起こる作品なんですが、それを緻密に映像化していると思うんですね。あっという間の1時間になっているはずですよ」と成河氏。2話完結といえども、登場人物たちの物語は続く。「でも、それで終わりじゃない。そこから続いていく作品なので、その先にゴールに向かっていく姿を観ていただきたいです」。(modelpress編集部)

■成河広明氏 プロフィール

1970生まれ。これまでフジテレビ系「リーガルハイ」(2012年~)「謎解きはディナーのあとで」(2011年)「ストロベリーナイト」(2010年)などを手がけてきたヒットメーカー。また、「2014年エランドール賞」では「リーガルハイ」でプロデューサー奨励賞を受賞。現在放送中の「すべてがFになる」では、企画を務めている。
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