山下遥香さん(C)モデルプレス

TikTokで話題“キャバクラ部長”が描く業界の未来とは「女性が夢を描ける場所へ」新店舗オープン、海外展開― 経営戦略を担う山下遥香の信念<モデルプレスインタビュー 1回目>

2025.01.31 18:00

すすきの札幌の人気No.1ニュークラブ(キャバクラ)「バルセロナグループ」で営業部長を務める山下遥香さん。学生時代にニュークラブの魅力に触れ、そこに秘められた可能性を見出した彼女は、この業界に飛び込む。課題が多く、偏見の目で見られることも少なくない水商売業界を、女性が安心・安全に働き、経済的・精神的な自立を獲得して卒業していく業界に変えるため、日々挑戦を続ける山下さん。そんな彼女の人生観と想いに迫る。【インタビュー全2回の1回目】

「業界を変えたい」大手を蹴りニュークラブの世界へ

山下遥香さん(提供写真)
― SNSを積極的に活用し、業界の魅力を幅広く伝えている山下さん。普段はバルセロナグループの「営業部長」として、どのようなお仕事をされているのでしょうか?

山下:お店に立って営業の仕事をするというよりは、本社で全社の経営戦略に紐づく様々なプロジェクトを担当し、プロジェクトマネージャーとして仕事をしています。

実際は、かなり多岐に渡るプロジェクトに参画していて、2023年にドバイの5つ星ホテルで世界初のオープンとなったキャバクラ出店や、お客様目線で非日常を楽しんでいただける内装制作の買付・ディレクションも行っています。また、年間3,000名以上の学生さんと接点を持つ弊社クルーの新卒採用を行うほか、全社で300万人フォロワー超のSNSマーケティングも任されており、今年はバルセロナで初の北海道外展開となる中洲出店にもコアメンバーとして参画していました。

最近はSNSで私のことを知ってくださる方が多いので、街中で「あ、TikTokのキャバクラ部長!」とお声かけいただくことが多く、ありがたい限りです。

(一番左)山下遥香さん(提供写真)
― 本当に色々なことをされているんですね。新卒採用をしていらっしゃるとのことでしたが、山下さんも新卒でバルセロナに入社されたのですか。

山下:はい。私も新卒で入社しています。学生時代にキャバクラでアルバイトをしていたのですが、その際に「水商売は何者でもない女性が、出自や学歴・スキルに関係なく、経済的・精神的な自立を獲得し、理想の人生を掴み取れる」そんな可能性がある仕事だと感じたんです。

― ニュークラブ(キャバクラ)業界で働くことに対して抵抗はありませんでしたか?

山下:元々キャストとして働く前は、私自身が「親に言えない仕事だ」「アウトローな人が多そう」と偏見を持っていたのですが、実際に働いてみると全く違う感覚になりました。頑張った分だけ結果が出て自分のお給料は上がるし、「この仕事があったから、シングルマザーになっても立派に子どもを育てられた」と言っている周りのキャストさんたちもたくさんいらっしゃる。お客様も素敵な方ばかりで「今日商談が決まったよ。ありがとう」とか「会えて元気が出た」といった言葉をいただける仕事でもある。それから、ニュークラブは自分の接し方次第で人の役にも立てる仕事なんだ、求められている仕事なんだと思えるようになりました。私もこの仕事のおかげで、念願だったアメリカへの交換留学にも行けました。

― そんな業界に運営側として飛び込もうと。

山下:はい。帰国後に普通に就活して、大手企業に内定をいただき、一時は内定承諾もしていたのですが、「自分が本当は何がしたいのか」という問いに立った時、「私が一番好きで、同時に一番課題を感じるのは、水商売業界なのかもしれない」と思うようになったんです。キャストさんに苦しい働き方を強いる会社があったり、お給料が未払いになっている会社があったり。働く人からも、お客様からも求められていて無くならない業界。そうなのだったら、この場所が女性が安心・安全に働けて、経済的・精神的自立を獲得して夢を持って卒業していく、そういう人材輩出の機能を持った業界にしていくということは日本にとって価値があると思ったんです。自分の使命を見つけたような感覚でした。

― バルセロナグループを選んだのは、山下さんと考え方が近かったからですか?

山下:そうですね。業界自体を変えていこうと思っているのは、バルセロナグループだけだと私は感じています。会社としての明確なビジョンとミッションがあり、それに向けて社長・経営陣・社員が一丸となって新卒採用などにも力を入れています。正直、私は志を共にするバルセロナグループを見つけられていなかったら、この業界を選べてはいなかったと思います。

中洲新店舗オープンに手応え「素敵な方を採用できた」

山下遥香さん(C)モデルプレス
― そんな中で迎えた今夏の中洲店オープンは、きっと特別な思いで取り組んでいらっしゃったのではないかと感じるのですが。

山下:はい。ものすごく大変でしたが、想像を超えて手応えとやりがいのある数ヶ月間のプロジェクトでした。やはり新天地での展開は今までとは勝手が全く違っていて、すすきのでは「すすきのNo.1」が新店舗を出すので、キャストさんもたくさん面接に来てくださいますし、お客様も連日並んでまでご来店してくださるのですが、新天地では全く勝手が違います。まずは一番大事な「キャストさんの採用活動」で、九州のキャストさんたちにバルセロナの特色やイメージを掴んでもらうためにプロモーションには特に力を入れました。オープンまでの1年間、バルセロナの本社役職者、現場役職者、社員全員でチーム一丸となって全力でコミットしたプロジェクトでしたね。

― その反響はいかがでしたか?

山下:本当にありがたいことに700名以上の方から応募をいただきました。それも「楽して稼ぎたい」という動機ではなく、「この仕事をやるなら本気で頑張りたい」と、まさに私たちが発信している「頑張りたいなら、バルセロナ」というメッセージに共感してくれた素敵な女性たちがエントリーしてくださり、その中から65名の可能性に溢れるキャストさんを採用できたのは、本当に嬉しいことでした。オープン後も、ありがたいことに連日、お客様が並んで待ってくださるほどの繁盛店になりましたし、キャストさんたちも皆さん前向きに頑張ってくれていて、直近ではバルセロナグループの系列店の中でもトップレベルで売上をあげる店舗にまで成長しています。

「課題の多い業界」真正面から切り込む

山下遥香さん(提供写真)
― 反面、課題に感じることも多くあったと。

山下:そうなんです。キャストさんたちは、何歳までキャストをできるか分からない不安もある中で、個人事業主として日々一生懸命働いてくれています。だからこそ、自分がより輝けると思ったお店を選ぶ権利も当たり前にあるのですが、移籍が決まったキャストさんを脅すような手法で辞めさせないようにする店舗や、キャストさんの不安や疑問に不誠実な対応をする店舗も中にはあるようで…。そんな業界の課題に真正面から向き合っていかないといけない、と私個人としては改めて、業界にある多くの課題と、それを解決することへの使命感を感じる数ヶ月間でした。

― 水商売業界に対しての課題を感じたんですね。

山下:そうですね。実際にお客様に価値を届けてくれるサービスの提供者はキャストさんで、多くの女性が従事するビジネスなのにも関わらず、業界全体としては、運営側、特に意思決定権を持った役職者のほとんどが男性というのも少なからず原因としてあると思うんです。もちろんお客様は男性なので、その気持ちが理解できる方が運営をしているという論理は一定理解できますが、キャストさんへの理解不足やサポート不足はまだまだだなと個人的に感じます。

そんな業界の中でバルセロナグループでは、私含め2名の女性が部長職、1名が取締役職に就いていますし、現場にも女性役職者が多くいます。男女で何が違うと論じる気はありませんが、キャストさんと同じ、女性としての感性や感覚を活かして、キャストさんがより働きやすい、より安心できる職場を作っていくことに、私は特に使命感を感じています。PMSの際にお休みを取れる「F休」という制度も、女性役職者の意見から実現した福利厚生の一つです。こういう取り組みも、もっともっと増やしていきたいですね。

―なるほど。山下さんはその先でどんなことを実現したいんですか?

山下:まず、キャストさんたちが当たり前に安心・安全に働ける業界に変えていくこと。苦しい働き方を強いることなく、不合理なことで苦しむことなく、まっすぐに頑張れる。そういう会社・業界にまずは整備をしていきたいです。そんな環境で、卒業後の生活や夢に向かって計画・準備しながら頑張れていたら、キャストという仕事を卒業した先でも「全力で走り切った20代が今の自分を創ってくれているな」「頑張ってきた自分が誇らしいな」「水商売を本気で頑張ってよかったな」と思える女性が増えると思うんですよね。

私は、キャバクラはまだまだ世の中の偏見が根強い業界だと思っていて、そこを変えていきたいです。キャバクラのような、家でも職場でもないサードプレイス(第三の居場所)って、日々頑張っている大人にこそ必要な場所だと思うし、働きたいと言ってくれる女性もたくさんいる。今までも、これからも無くならないビジネスだと思う。無くならないなら、しっかりした会社が、しっかりした運営体制のもと、価値をお客様やキャストさんに届けた方が良いと思うんです。お客様たちが元気をチャージできて、明日もまた仕事で頑張れる。そして、その価値を届けるキャストさん達が、安心・安全に働く中で経済的・精神的に自立して夢を描いて卒業していく。キャバクラをそんな場所にするために、私はバルセロナの価値をもっと磨いていきたいと考えています。

ニュークラブのメリット・デメリットとは

山下遥香さん(提供写真)
― 他のお仕事と共通で、キャストで働くのは良い点もあれば大変な点もあると思います。キャストとして働く上で「これだけは心構えしておいた方がいい」というのはありますか?

山下:私個人として感じる部分でいうと、それこそ「自分次第」で良い仕事にも苦しい仕事にもなるということですね。メリットがあれば、デメリットももちろんあります。それをしっかり理解した上で、働くのが大事だと思います。20代で人生が終わるわけじゃないので、働いていた期間を意味のあるものにして欲しいんです。そのために「自分の在り方次第」ということは心構えしておいてほしいと個人的には思います。

例えば、お客様に対して「今日はいくら使ってもらおう」ということばかり考えていたら結果はついてきません。私たちのお客様は世の中で活躍している方達ばかりなので、そんな考えはお客様に見透かされますし、信頼関係が築けないと思います。「人は鏡」なので。

― 信頼関係が大切なんですね。

山下:はい。それにはギブ(与える)をする気持ちが大切です。自分ばかりテイク(もらう)を求めてしまうと、信頼関係は築けないと思うんです。お客様が「今日来て良かった」「会えて元気が出た」と何かしらお客様に価値を届けるという意識がすごく大切です。「この人のために何ができるだろう」「どんなふうに力になれるだろう」と考えているキャストさんは、お客様との関係も長く続きますし、売上も安定している印象です。人と人との信頼関係で繋がるって素敵なことだなと思います。

― 山下さんはどんな部分にメリットがあると感じますか?

山下:何もない状態からスタートしても頑張ったら頑張った分だけしっかり収入が増えますし、本気でSNSを活用すれば知名度もつけることができる。経営者の方との繋がりも築ける。美しさと対人能力を活かして、知名度と資産と人脈をゼロから築けるお仕事なので、会社を起業するためにキャバクラを始める女性もいらっしゃいます。昼職で働いていたら手取り十数万円の女性が、夜職を頑張ったら年収1,000万を超えていくことは多いので、若くして頑張ったら頑張った分だけ稼げる夢のある仕事だと思います。自分の頑張りとお給料がここまでシンプルに結びつく仕事って意外と少ないと思うので。

― ちなみにデメリットはどういった部分になりますか?

山下:個人的に思う部分でいうと、キャストとしての寿命には限りがあるということですかね。いつまで現役で働けるか分からないという将来への不安は、アイドルやスポーツ選手のようにつきまとう感情だと思います。銀座などの高級クラブなどは話が変わりますが、基本的にニュークラブは20代〜30代中盤までが中心です。また、毎月の売り上げがお給与に繋がっていくので、それに対するプレッシャーはかかりますし、対人のお仕事ならではのストレスもあると思います。本気で成果を狙うなら、営業連絡やSNSの更新に美容・体型管理などやらなければならない仕事内容は多いです。

ただ本気でやれば、デメリット以上のメリットがあります。若いうちにしっかりと稼ぎ資産運用できれば、それでずっと食べていける形だって作ることができますしね。何にせよ、キャストを卒業してからも続く自分の長い人生の中で、キャストとして頑張る数年間を価値のあるものにしてほしいなと強く思います。

「人は鏡」バルセロナで再認識

山下遥香さん(C)モデルプレス
― 入社前後で自身のマインドや姿勢として変わったことはありますか?

山下:わたしは、この業界は“人”の価値が全てだと感じています。キャストさんはもちろん、お客様も人。そのキャストさんをサポートする私たち社員も人。私たちの業界は「無形商材」で、人と人がともに過ごす時間・空間を売っているビジネスだと思っています。そんな「人の価値が全て」のこの業界で働くなかで、「人は鏡」という考え方が、より深く自分の中に落とし込まれたような気がしています。

― 先程も「人は鏡」とおっしゃっていましたね。

山下:はい。人って、相手に接されたように接してしまう生き物だと思うんです。例えば自分に対して強く当たってくる人がいるとして、それに対して自分が相手と同じように強く当たれば、またより一層強い反発で返ってきます。でも愛を持って接していけば、いつか愛で返ってくることもあると思うんです。そんなふうに思えていると、ちょっと嫌な人にあった時も、相手の背景を少し想像する余裕が持てて、優しくなれるんですよね。もちろん完璧に体現するのは難しいですが(笑)。

同時に、自分の目の前で起こった出来事を、自分がどう捉えるかも大切だと思います。「世界は汚い」「人は自分を裏切るものだ」そう感じていても、それが事実というよりは、自分がかけている色眼鏡のフィルターで世界をみて「そう見える」のだと感じます。だからこそ、自分を変えないと何も変わらない。どんな相手でも、私は「相手を信じるという眼鏡」をかけていよう。私は、世界や出来事をポジティブに捉えていよう。そういう考え方が強化されたように感じますね。人が全てだからこそ、自分の「在り方」に気づくことも多く、自分を見つめ直すタイミングが多かったのは、変化のひとつだと思います。昔はもっとトゲトゲしていたので(笑)。

― 今後、特に力を入れていきたい取り組みはありますか?

山下:直近だと、今回勇気を持って新店舗を選んでくれた桃李中洲のオープニングキャストさんたちのためにも、もっともっと中洲店を磨いていきたいですね。キャストさんたちがもっと輝けるように、SNSマーケティング面でのサポートや、お客様により楽しんでいただくための改善施策、まだまだやりたいことは山積みなので。私個人としては、桃李中洲店をキャストさんが「九州で一番輝ける」「自己実現していける」「頑張ってよかったと思える」そんなお店創りをしていきたいと思っています。

そして、そういう在り方を大切にするバルセロナグループという選択肢をもっと多くのキャストさんに知ってもらえるように、SNSも含めてプロモーション活動にもより注力していきたいですね。本当はもっと色々あるのですが、話出すと止まらないのでこのくらいにしておきます(笑)。

― (笑)。ありがとうございました。
山下遥香さん(C)モデルプレス

女性が安心して働ける業界を創り上げ、より多くの夢を叶えられる環境を目指す山下遥香さん。挑戦を恐れず、未来に向かって進み続ける彼女の姿は、同じく夢を追いかける多くのキャストの希望となっているのだろう。後編では、山下さんの歩んできた人生とプライベートを深掘りする。(modelpress編集部)

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