モデルプレスのインタビューに応じた森七菜(C)モデルプレス

【森七菜インタビュー】単独初主演映画「炎上」歌舞伎町で役を生きた覚悟の日々「何を食べても全く太らなかった」2度目の鑑賞で涙した理由とは

2026.03.31 17:00

2025年、ドラマ『ひらやすみ』や映画『国宝』『秒速5センチメートル』など話題作への出演が続いた女優の森七菜(もり・なな/24)。4月10日公開の映画『炎上』では、意外にも映画単独初主演を務める。インタビューでは、サンダンス映画祭での上映で涙した理由や撮影の舞台裏、悲しみを乗り越える方法まで、今の彼女が抱く想いをたっぷりと語ってもらった。

  

森七菜主演「炎上」

「炎上」(C)2026映画「炎上」製作委員会
カルト宗教信者の両親に厳しく育てられ、自身の感情を表現することが苦手な主人公・小林樹理恵(通称:じゅじゅ/森)。ある日、家族との関係に耐え切れず家を飛び出した彼女が、SNSを頼りに辿り着いた先は新宿・歌舞伎町。初めて知る新たな世界で、様々な人との出会いを経て、自分の意思を持つことができるようになったじゅじゅにとって唯一の安心できる居場所となったはずだった。そんな彼女が、歌舞伎町に火をつけるまでの150日間の物語が描かれる。

オリジナル脚本・監督を手がけたのは長久允氏。映画化までに5年間の歳月をかけ、様々な人への取材を重ねながら物語を作り上げた。撮影時には映画の舞台である歌舞伎町で実際にロケも敢行、街のありのままの姿を物語に落とし込んだ。

森七菜「やらないという選択肢はなかった」主演作への直感と覚悟

― まずは、オファーを受けた際の心境を教えてください。

森:最初に台本を読んだ時、これが自分の未来になっていくんだろうな、となんとなく予感できたんです。だから、この作品をやらないという選択肢はどこにもありませんでした。

― 昨年は多くの出演作が公開されましたが、本作はどのタイミングでの撮影だったのでしょうか?

森:撮影は「秒速5センチメートル」のすぐ後でした。役作りで肌を焼いていたので、一生懸命戻しながら臨みました。

― 衝撃的な描写も多くありましたが、撮影に臨む覚悟は必要でしたか?

森:はい。今回は歌舞伎町をはじめ実際にその場で撮影を行いました。特定のモデルはいませんが、そこに生きる彼女たちへのリスペクトを忘れず、尊厳を守る気持ちを持っていなければいけないと考えていました。撮影にも覚悟を持って挑みました。

「怯まずに挑戦して良かった」長久允監督への信頼

「炎上」(C)2026映画「炎上」製作委員会
― 最初に台本を読んで特に印象に残った場面を教えてください。

森:たくさんあります。これが一体どういう映像になっていくのか、全く想像がつかないシーンもたくさんあったのですが、長久監督への信頼があったので、きっとどうにかなるだろうと思って、自分なりに咀嚼して撮影に臨みました。でも、そういう未知の部分が撮影の楽しみの一つにもなったので、怯まずに挑戦して良かったなと思っています。

― 長久允監督とは今作で初タッグとなりますが、心に残っているやり取りはありますか?

森:私が演じたじゅじゅは、とてもハードなバックグラウンドを持っている女の子だったので、私自身、どうしても彼女を“悲劇のヒロイン”のように捉えてしまっていました。どこか固定概念のようなものがあったのかもしれません。でも監督から、トー横で生きる彼女たちは、たとえどれほど複雑な状況にいたとしても、笑えてしまえるし、「やばくないですか?」なんて冗談めかして喋れてしまう強さを持っている、というマインドセットについて聞いた時に「そっか。そうだよな」と、すごく腑に落ちたんです。

彼女たちの人生はこの先何十年と続いていく中で、その1秒1秒のすべて、悲劇だけを抱えて歩いているわけではない。時にはその重荷を手放して、普通にコンビニへ行ってお会計をして、友達とケンカして…という日常もあるはずなんです。そうした日常とのコントラストがある方が、彼女たちが抱えているものが、より色濃く出るような気がしました。だからこそ、監督の言葉をしっかりと自分の中に取り入れようと思って、精一杯向き合いました。

― 長久監督は森さんについて「内側に強い炎みたいなものを持っているんじゃないか」とおっしゃっていました。

森:どうなんですかね(笑)。普段の自分は基本的にダラダラしているタイプなので、あまり分からないのですが、この映画と共鳴した感覚があったので、そういったものが自分の中にもあるといいなと思っています。

歌舞伎町での撮影裏側「何を食べても太らなかった」

「炎上」(C)2026映画「炎上」製作委員会
― 実際に歌舞伎町で撮影をされてみて、街の印象はいかがでしたか?

森:本当にすごかったです。広場だけでもモニターが500個くらいあるじゃないですか? 500個は言いすぎですが(笑)。でも、気持ち的にはそれくらい圧倒されるほどたくさんあって。歌舞伎町タワーの大きなビジョンもありますし、至る所から同時にいろいろな音が聞こえてくるので、若干ノイローゼになりそうなほどでした(笑)。撮影現場にいた方から「俺が本物だ!」と大きな声で叫ばれたりもして、圧倒されるような独特の世界がありました。でも、じゅじゅにとってはこれが日常で、これが普通。だからこそ、まずは自分がこの空気を浸透させようと思っていました。

― 特に苦労されたシーンや、思い出に残っている場面を教えてください。

森:予告編でも一瞬流れていると思うのですが、歌舞伎町の路上に寝そべるシーンは、とにかく周りからの視線を感じました(笑)。外国人の方からも「大丈夫かな、あの子」「She is ok?」みたいな雰囲気で見られているのが伝わりながらも、お芝居に集中しなければいけなくて。人が多い場所での撮影だったので、独特の緊張感はありました。

― 精神的にも身体的にも相当な負荷があったのですね。

森:なんというか、体力を使いました。撮影期間中は何を食べても全く太らなかったです。それくらい体力を使っているんだなと実感しました。

― 撮影期間中は、どのようにオンオフを切り替えていたのでしょうか?

森:撮影がある時は新宿にホテルを借りて寝泊まりしていました。だから、良い意味で切り替えないまま撮影期間を過ごしていました。

「炎上」(C)2026映画「炎上」製作委員会
「炎上」(C)2026映画「炎上」製作委員会
― 現場の雰囲気はいかがでしたか?

森:穏やかでした。皆で撮影する時は、芝居の延長線上にいるような雰囲気で、終始良い空気感の中で作れていたと思います。あと、皆ずっとフラットでした。劇中の彼女たちも、どれだけ辛いことがあろうと「別に辛いことがあるのって普通じゃない?」というスタンスなんです。そういう強さを持っているので、何事もフラットに受け止めることは皆で大切にしていたかもしれません。

森七菜、2回目の映画鑑賞で涙した理由

― 劇中には思わず目を背けたくなるような過酷な描写も多かったと思います。演じていて苦しくなる瞬間はありませんでしたか?

森:撮影当時は、苦しいと全く感じていませんでした。でも、先日サンダンス映画祭で2回目に作品を観た時、すごく懐かしくなると同時に「苦しかったな」「辛かったな」という想いが一気に込み上げてきて、泣いてしまいました。会場にはたくさんの観客の方がいらっしゃったので、自分の芝居で泣いていると思われたら嫌だなと思って、必死に隠しながら泣きました(笑)。でも、それくらい辛かったんだと、改めて気づいて思わず涙が溢れてしまいました。

― 改めて振り返ると、どのような苦しさがあったのでしょうか。

森:今思うと、彼女の身に起こった出来事のすべてが、本当は一つひとつ、ちゃんと悲しんでいいことだったと思うんです。でも撮影している時は役として生きていたので、いちいち悲しむようなことはなかったですし、彼女が見せる反応も決して“悲しい”ものではなかったんですよね。

じゅじゅに馳せる想い「自分なりの幸せを掴んでほしい」

― 過酷な役を演じ切った今、どのような心境ですか?

森:まだ公開前ということもあり、どのような反応をいただけるか少し不安もあります。何より、この作品が“トー横”と呼ばれる場所に届いた時、そこにいる皆さんがどう感じるのかというのが、今一番緊張しているところでもあります。じゅじゅには特定のモデルはいませんが、“トー横”にいる彼女たちや、そこで守られているものを、この映画によって傷つけるようなことだけはしたくないという想いを持って作っていたので、それができているといいなと思います。

― 改めて、森さんご自身は、じゅじゅをどのような人物だと捉えていますか?

森:彼女はスポンジのような子で、自分以外のあらゆるものを吸収してしまうので、良い方にも悪い方にも流されるままに進んでいってしまう。たまたま“トー横”という場所に流れ着いて育った。それが彼女にとって正解だったのか、それとも不正解だったのか。それは彼女自身にしかわからないことだと思います。だからこそ、撮影が終わった今はただ、彼女に自分なりの幸せを掴んでほしい、と願うばかりです。とにかく元気でいてほしいです。

― サンダンス映画祭でのエピソードや、じゅじゅの幸せを願う森さんは、客観的な視点で役を見つめていらっしゃる印象です。普段からご自身の演技を客観的にご覧になるタイプなのでしょうか。

森:たしかに「幸せになってほしい」と願うのは客観的ですね。ただ、今こうして取材でお話しさせていただいている時間が、カウンセリングを受けているような気持ちで(笑)。今の「幸せになってほしい」も取材を通して出てきた言葉で、サンダンス映画祭で撮影を思い出した時も、自分の体験として抜け出せたという感覚です。自分の役を主観でしか捉えられないタイプだと思っていたので、こうして取材をしていただくことで、自分と役をしっかりと切り離すことができて、ようやくじゅじゅを卒業できたような気がしています。

森七菜、真逆のじゅじゅ役に共鳴

― 劇中のじゅじゅが家を飛び出して歌舞伎町へと向かう姿は、人生を変えるための大きな勇気が必要な行動だったと思います。森さんご自身は、彼女の行動に共感したり、リンクしたりする部分はありましたか?

森:彼女とリンクするところは本当になくて。私にとっては、彼女の選ぶすべてが新しい選択でした。助けを求めて辿り着いた先が“トー横”だということも、じゅじゅだからこその選択肢の一つに感じられます。でも、自分と重なる部分がまったくないからこそ、かえってその世界に入りやすかった感覚があったので、良かったのかなと思います。

― 台本の段階では想像がつかなかった部分もあったかと思いますが、完成した作品を初めてご覧になって感じたことを教えてください。

森:文字であらすじを読んだりするときっと深刻でヘビーな作品として受け取られると思うのですが、そこに生きる彼女たちからすれば「そんなことよりも、地面に落ちているキラキラしたアスファルトの方が楽しくない?」という感覚なんです。長久監督の面白い演出やカメラアングルで、監督のフィルターを通して、彼女たちを見ることができている。それによって、やっとこの物語が成り立っているのだと、じゅじゅとしても強く感じました。台本を読んだ時点では完成図の想像はつきませんでしたが、出来上がった映像は、私が見ていた景色とすごく似ていたんです。改めて、長久監督のティーンエイジャーへの共感力を実感しました。

「炎上」(C)2026映画「炎上」製作委員会
― 映画『炎上』でじゅじゅを演じたことは、森さんにとってどのような挑戦になりましたか?

森:初めての単独主演映画がこの作品で、本当に良かったと心から思っています。観てくださる方や楽しみにしてくださっている方々が「こんな役をやるんだ!」と言ってくださるのがすごく嬉しいです。ただ、自分では“チャレンジ”というよりも、もともと自分の中にあった幅のような気がして、それを長久監督が新たに引き出してくださったという感覚です。映画単独初主演として、この作品ができた自分は本当にラッキーだなと。長久監督には感謝の気持ちでいっぱいです。

― 様々な話題作にご出演されているので、今作が映画単独初主演だとお聞きして驚きました。

森:私もびっくりしました(笑)。全く意識していなかったのですが、別の取材で「初主演ということで…」とお話しいただいた時に気づいて「あ、そうなんですか?」と(笑)。物語の主人公を演じるという意識はありましたが、主演という立ち位置は全然自覚がなかったです(笑)。

森七菜「帰ってきたなと実感できる唯一の場所」

― 劇中のじゅじゅにとって歌舞伎町がホッとできる居場所であったように、森さん自身にとってホッとできる場所はありますか?

森: 私はやっぱり、地元の大分が大好きです。自分にとって「帰ってきたな」と実感できる唯一の場所です。最近はなかなか帰れていないので、早く行かなきゃ、と思っています(笑)。

― 昨年も多忙を極めていたかと思いますが、インプットする時間や息抜きの時間はありましたか?

森:ドキュメンタリーやリアリティショーが大好で、よく観ています。それが自分にとって息抜きになっています。あとは、旅行によく行きます。この前も1人で韓国へ行って、美味しいものを食べたり、韓国にいる友達に会ったりして、楽しい時間を過ごせました。

森七菜が悲しみを乗り越える方法

― 歌舞伎町で様々な人と出会い、自分の意思や感情を持つことができるようになったじゅじゅ。森さんご自身は喜怒哀楽がはっきりしているタイプですか?

森:怒ることはないです。自分の中に“怒”がなくて、“悲しい”という感情も、そんなにないかもしれません。基本的にはいつも喜んだり笑ったりして、最後には「まあいっか」と思えるようなタイプです(笑)。

― 悲しい出来事に直面した時は、どのように乗り越えていますか?

森:悲しんでいる自分を、どこか楽しんでいる自分がいるんです。変ですよね(笑)。でも“悲しい”と感じることで「ああ、生きているんだな」と実感できるので、何もない状態よりずっと嬉しいです。“悲しい”という感情が生まれるのは、その事柄に対して一生懸命だったという証拠ですし、それだけ自分にとって大事なものだと認識できる。そう思うと、あまり悲しくなくなってきます。最後には「泣いていてもしょうがない!」という気持ちになって自然と乗り越えられています。

― 最後に、自分の居場所に悩む若者たちに向けて、じゅじゅを演じた森さんから伝えたいことはありますか?

森:自分の居場所や、本当に居心地が良いと思える場所って、結局は自分にしか作れないもの。だから、多少ナルシストになってもいいので、まずは自分自身のために、自分が心地良いと思える空間を作ってほしいなと思います。そこに、たまに誰かを呼んでみたりして。そうやって少しずつお花が咲いていくみたいに、その場所が豊かになっていったら素敵だなと思います。私も今、居心地の良い場所が少しずつできている人生の途中なので、皆さんも自分の好きなものに自信を持って、一歩ずつ進んでいってほしいなと思います。

私は、自分が好きな本を部屋に並べているので、好きな友達が家に来た時に、皆で「この本いいよね」と語り合えるとすごく嬉しいです。そういうことが最近ようやくできるようになってきて「人生だな」と思います(笑)。

― 素敵なお話をありがとうございました。

(modelpress編集部)

森七菜(もり・なな)プロフィール

2001年8月31日生まれ、大分県出身。新海誠監督映画『天気の子』(19)のヒロイン役声優で一躍脚光を浴びる。映画『国宝』(25)で第49回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞する。近年の主な出演作は、ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ/23)、『ひらやすみ』(NHK/25)、映画『四月になれば彼女は』(24)、『ファーストキス 1ST KISS』『国宝』『フロントライン』『秒速5センチメートル』(25)など。
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