モデルプレスのインタビューに応じた伊藤裕季也選手(C)モデルプレス

野球・伊藤裕季也選手、個人ファンクラブ開設 覚悟を持って臨む新シーズンへの想いとは【モデルプレスインタビュー】

2026.02.01 19:15

プロ野球選手の伊藤裕季也(いとう・ゆきや)選手がモデルプレスのインタビューに応じた。自身のプレースタイルやメンタル面での課題と向き合う伊藤選手。「自分がどうしたいか」を問い直し、覚悟を持って臨む新シーズンへの思い、さらなる力になるであろうファンクラブについて、そして孤独を力に変えてきた過去と夢を叶える秘訣を聞いた。

  

迷いを断ち切り「自分がどうしたいか」を最優先に

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
― 昨シーズンを振り返って、ご自身の中でどのようなシーズンでしたか?

個人的には100点ではなく、良くないシーズンでした。波がある中で、良い時に良くなりきれずにズルズルといってしまい、落ちている期間も長かったです。メンタル的な部分で色々なことを気にしすぎてしまったのが1番の要因ですね。コーチに言われたことや自分の立場を考えれば考えるほど、悪い方向にいってしまいました。求められること全てに応えようとして、結局自分の中で焦りが生まれ、吸収しきれずにうまくできませんでした。

― その反省を踏まえて、今シーズンはどのような点に力を入れていますか?

1番はバッティングで結果を出すことにフォーカスしたいです。これまでのプロ野球生活を振り返っても、迷っている期間はあまり良い結果が出ていませんでした。なので、今年は「自分がどうするべきか」よりも、「自分がまずどうしたいか」を最優先に考えていきたいです。やるべきことももちろんありますが、迷ってしまうことが多かったので、大前提として「自分がどうしたら後悔しないか」を基準にやっていこうと考えています。

― 悩んだり落ち込んだりした時は、誰かに相談するのでしょうか?

ほとんどないですね。技術的な悩みなら映像を見直しますが、考え方の部分では家で1人、頭の中でぐるぐると考えています。結局結論が出ないまま寝て、次の日を迎えることも多いです(笑)。


孤独な思考法と意外なリラックス方法

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
― 1人で考え抜くのはプロになってから?昔から?

昔からですね。大学時代はキャプテンをやっていて、「弱みを見せない」「理想とするキャプテン像」であろうとしていました。僕はやり始めたら完璧にやりたいタイプなんですが、周りとの温度差やギャップを感じて相談しづらかったのもあります。プロに入ってからも、誰に何を相談していいのか分からず、相談してどういう反応が返ってくるかを考えると一歩引いてしまって。

― 常に考え続けているようですが、気が休まる瞬間はあるのでしょうか?

シーズン中は体より頭の方が疲れますね。試合に出ていない時の方が、自分の立場などを考えてしまって疲れることもあります。人と一緒にいるより1人が好きなんですが、パズルをやっている時は何もかも忘れて没頭できるので、それが唯一の息抜きになっているかもしれません。

ファンクラブは「応援してくれる人」と向き合う場所に

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
― 2月から個人のファンクラブを開設されましたが、どのような意図があったのでしょうか?

オフシーズンのイベントなどでファンの方に応援してもらっている実感がすごくあって、野球の結果で返すのはもちろんですが、それ以外の時間でも何か届けたいと思ったのがきっかけです。SNSは誰でも見られる分、心無い言葉も目に入りますし、それを見てファンの方が嫌な思いをするのも避けたかった。ファンクラブなら、純粋に応援してくれている人たちだけに届けられるので、前向きにやりたいなと思いました。

― イベントなどでのファンとの交流もモチベーションになっていますか?

そうですね。球場では集中していて1人ひとりの顔を見ることは難しいですが、イベントで「いつも来てます」「初めて来ました」といった声を直接聞けるのはすごく嬉しいですし、モチベーションになります。

伊藤裕季也選手の悲しみを乗り越えた方法

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
― モデルプレスの読者の中には今、さまざまな不安を抱えている読者がいます。伊藤選手の「悲しみを乗り越えたエピソード」を教えてください。

悲しみですか……。うーん、なんだろうな…逆にありすぎますね(笑)。日々落ちては立て直して、の繰り返しなので。野球人生ですごく大きな怪我があったわけでもないですし、正直、野球で「大きくこれを乗り越えた」っていう劇的なものはなくて。

― 野球に限らず人生全体だと?

うーん……僕が小学2年生の時に両親が離婚しているんです。父と兄と僕の男3人家族っていうめちゃくちゃ男家族だったので、なんて言うんだろう「弱み」というか、「これが嫌だな」「これで悩んでる」とかって吐き出す場所とか時間が、家になかったんですよね、今思えば。

兄とも4つ離れていて、僕が中学生の時は兄は高校野球をしていて、僕が寝てから帰ってきて起きた時にはもういない。僕が中3の時にはもう大学で家は出ていったし。父も仕事があったり体調が良くない時期もあったり。小学校、中学校と、家で3人揃う時間もほとんどなくて。多感な思春期に、マイナスな感情を出す場所が1つもなかった。誰にも言えない、相談しようにもいない。それは中学生ながらに、めちゃくちゃしんどかったのは覚えています。

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
― その孤独やしんどさを、当時はどうやって消化していたのですか?

相談の仕方が分からないんですよね。みんなよく「相談して楽になった」とか言うじゃないですか。僕、その感覚が1ミリも分からないんです。相談しても解決できないし、自分で考えても結論が出ないことの方が多い。でも、どこにも投げられない。今振り返ると、中学生くらいの時に初めて「この先の人生、自分1人で全部やっていかなきゃいけないんだ」って、腹をくくった瞬間がありました。

― 重い覚悟ですね。

覚悟を決めた、というか、そうするしかなかったというか。「この先、一生こうやって1人で消化していかなきゃいけないんだ」って思った時のしんどさはありましたけど、「もう、そうやって生きていくしかない」と決めたのが、中1か中2くらい。だから、「悲しみを乗り越える方法」と聞かれたら、僕は「誰かに相談すること」じゃなくて、「とにかく自分の中で消化できるスキルを身につけること」だと思っています。

誰かと一緒に乗り越えるっていう感覚は一切分からないんですよね。中学生の時に「1人で何もかもやっていく」と決めて、腹をくくった。その時の決意が、ここまでの人生を強く生きられている要因かなと思います。

伊藤裕季也の夢を叶える秘訣

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
― モデルプレス読者の中には、夢を追いかけている人もたくさんいます。そんな読者に向けて伊藤選手の「夢を叶える秘訣」を教えてください。

正直なことを言うと、僕は「どうしてもプロ野球選手になりたい」っていう夢が、すごく強かったわけじゃないんです(笑)。

― え、そうなんですか? 今の活躍からは想像できません。

高校の時も、大学に入る時も、節々で「もう野球は辞めていいかな」って毎回思ってましたから。甲子園にも行けず、何も残せてない。だから大学に入る時「この4年間で野球は辞めよう」って決意したんです。でも、いざ入寮した日にふと考えちゃって。「あ、ここで辞めたら、小学校から続けてきたのに何も残らないな」って。その時ですね。「じゃあ、絶対に日本一になって終わろう」って、パッと思い浮かんだのが。

― そこで「プロになる」ではなく「日本一になる」という目標が生まれたと。

それが自分の中で1番しっくりきたんですよね。それまでの僕は、実は結構ふざけてるキャラで(笑)。サボるの大好きだし、きつい練習は嫌いだし、怒られるのも嫌。チームの中でもおちゃらけてる方だったんですけど、「日本一になる」と決めた大学1年の入寮日に、マインドがガラッと変わったんです。

性格的にやりだしたら完璧主義なところがあるので、私生活のスリッパ揃えから、練習への取り組みまで、別になんでもない細かいこともその一瞬の乱れも妥協かもしれないと思い、常にいい行動を。周りからは「お前、急にどうした?」って思われてたと思いますけど(笑)。オフの日も朝から1人でマシンを出して打ち込んだり、同級生にも厳しいことを言ったり。嫌われる覚悟というか、そういうキャラじゃなかったのに。

― 全てにおいて自分を律していたんですね。

だから、僕が思う「夢を叶える秘訣」を聞かれたら……「何かに全振りすること」かなと思います。バランスよくできる人もいるかもしれないですけど、僕は不器用なんで。何かを叶えるためには、犠牲にするものや切り捨てるものが絶対に出てくる。友達と遊ぶ時間なのか、ダラダラする時間なのか。それを覚悟して、目標に対して「全振り」したからこそ、日本一になれたし、プロにもなれたんだと思います。あの4年間、覚悟を決めてすべてを注ぎ込んだ経験が僕の答えですね。ただ、これが大学の4年間だったのも良かったんだと思います。もうちょっと長かったら続いてなかったとも思います。

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
― 日本一になるには、キャプテンの力だけでなくチームメイトの力も不可欠。どうやって周囲を巻き込んだんでしょうか?

正直に言うと、終わってから初めて「周りに助けられていたんだな」と気づきました。当時は「自分だけが頑張っている」と思い込んでいたんですが、振り返ってみると、同級生が陰でフォローしてくれていたり、周りに声をかけてくれていたりして「あいつが言ってくれたのは自分のためだったんだ」と引退してからハッとさせられました。

ただ、当時の僕のやり方としては「文句の言いようがないくらい突き詰めてやる」ことでした。「お前やってないじゃん」と言われないように、自分が完璧にこなして、相手に言い訳させない。「俺はやってるから」というのを、言葉以上に姿勢で示して、周りから突っつかれないように全てをやり切ることを意識していました。

― 圧倒的な行動で示すスタイルだったんですね。コミュニケーションの部分で工夫したことは?

同級生全員と個人面談をしました。20人以上いたんですが、1人ひとり呼んで、考えていることを聞いて。

― 相当なエネルギーが必要だったのでは?

めちゃくちゃ大変でした(笑)。みんな考えていることも違いますし。今思えばもっとうまくできたなとも思うんですが、当時は必死でしたね。周りからは「なんなんだあいつ」と思われていたでしょうし、僕も「もっとこうした方がいいよ」と言われても意地を張ってしまう子どもな部分がありました。でも、そんな僕を半分呆れながらも受け止めて、協力してくれた同級生たちがいたからこそ、日本一になれた。本当にいいチームメイトに恵まれたなと、今では感謝しています。

― 貴重なお話ありがとうございました。

自分を律し、1人で悩み抜くストイックな姿勢。その硬い殻を少しだけ脱ぎ捨てて「応援してくれる人たちだけに届けたい」と開設したファンクラブは、伊藤選手にとって心の安らぎであり、さらなる高みへ向かうための追い風になるに違いない。2026年、覚悟を乗せたその一振りが美しい放物線を描く瞬間を楽しみにしたい。

(modelpress編集部)

伊藤裕季也(いとう・ゆきや)選手プロフィール

伊藤裕季也選手(C)モデルプレス
1996年8月30日生まれ。日大三高から立正大学を経て、2018年ドラフト2位で横浜DeNAベイスターズに入団。2022年シーズン途中にトレードで東北楽天ゴールデンイーグルスへ移籍。
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