作曲家・吉田文＆書家・中塚翠涛、デンマークでコンテンポラリー・オペラを上演　異色のコラボ

『影』はアンデルセンが書いた物語で、昨年デンマークのアンデルセン文学賞を受賞した村上春樹がスピーチの中で触れ、注目を浴びた作品。

イベントの開催目的は、150周年記念という機会に日本とデンマークのアーティストたちを繋ぎ、両国間の文化理解・交流を促進することだ。企画者の1人でもあるデンマーク在住の新進気鋭の若手作曲家・吉田文（よしだあや）は「抽象的と言われる現代音楽を、書やビジュアルアートを通して視覚化することに興味がありました」と語り、『影』の物語にインスピレーションを受け、オリジナルのオペラを作曲・演出し、書とビジュアルアートとのコラボレーションに挑んだ。

書家・中塚翠涛を抜擢

今回抜擢されたのは、従来の枠に捉われず幅広い手法で独自の表現を追求する書家・中塚翠涛（なかつかすいとう）だ。また、コンテンポラリー・オペラのバックグラウンド映像を手がけたことのあるデンマーク人ビジュアルアーティスト・マウヌス・ピンドが書の映像化を担当した。

中塚は「デンマークという土地のもつ音をイメージしながら表現しました。同じ雨でも日本とデンマークでは感じ方が全然違います。デンマーク訪問を通じて実際に肌で感じたことを、書と音楽と映像を通じて皆さんにお伝えできたら嬉しいです」とコメントしている。

主にデンマーク人と日本人で構成される歌手4名と演奏家7名がオペラを演じる中、背後のスクリーンには書とビジュアルアートのコラボレーションによる映像作品が映し出された。上演後、観客からは「すべてが本当に美しかったです。日本的な要素とデンマーク的なものが混ざり合って美しく調和していて素晴らしかったです」といった声が聞かれた。

上演後には石川県のお酒・加賀鳶で鏡開きが行われ、振る舞われた日本酒を片手に出演したアーティストと観客が交流を深めた。観客にはデンマーク人アーティストも多く、これを機会に日本とデンマークに橋を架ける新たなアートプロジェクトの誕生や文化交流も期待される。なお、本作品は17日まで上演される。（modelpress編集部）