【KEY TO LIT猪狩蒼弥「教場」インタビュー】「何をしても勝てない」木村拓哉を前に初めて感じた無力感 “優秀な自分”が打ち砕かれた瞬間
KEY TO LIT(キテレツ)の猪狩蒼弥(いがり・そうや/23)が、木村拓哉が主演を務める映画「教場 Reunion(リユニオン)/Requiem(レクイエム)」(1月1日~Netflixで配信/2月20日~劇場公開)に出演。「苦労を美徳と思わないように頑張ってきた」と語る猪狩だが、木村拓哉という圧倒的な存在を前に、その考えは大きく揺らいだという。約半年間の撮影を経て「努力は無駄じゃない」と気づけた今、彼の中で何が変わったのか―その心境を聞いた。
映画「教場 Reunion(リユニオン)/Requiem(レクイエム)」
今作は、冷酷無比な鬼教官・風間公親(かざま・きみちか)が統べる警察学校を舞台に、極限状態に置かれた生徒たちの人間模様を描く人気シリーズ。そんな連続ドラマの放送から3年の月日が経ち、「教場」シリーズの集大成となるプロジェクトが始動。主演:木村×監督:中江功氏×脚本:君塚良一氏」のゴールデントリオが再集結し、2026年にシリーズ史上初となる映画として公開される。猪狩は観察力に優れ絵を描くことが得意な警察学校の生徒・渡部流(わたべ・りゅう)役を演じている。猪狩蒼弥「教場」出演は“襟足”きっかけ 木村拓哉の声で実現
― 出演が決まったときのお気持ちを教えてください。猪狩:2023年に聞いたのですが、「俺ですか?」とびっくりしました。だって西畑くん(西畑大吾/2020年放送回出演)と目黒くん(目黒蓮/2021年放送回出演)…という流れだったので「俺?」と。マネージャーさんも「キャスティング会議で木村さんが猪狩くんの名前を出したから本人にやる気があるか確認してくれって」と、恐らく木村さんのマネージャーさんづてに聞いた感じだったんです。
実はそのお話があった2~3ヶ月前、同じテレビ局の別のスタジオにいらっしゃった木村さんにご挨拶に行ったら、「お前襟足なげえな」と言われて(笑)、よくよく聞いたらその後木村さんが「襟足長いあいつ(『教場』に)出そうぜ」みたいな感じに言ってくださったというお話だったみたいでびっくりでした。覚えてもらえたら嬉しいな、ぐらいの感じで挨拶したのですが、まさかそこまで行くとは思いませんでした。本当に襟足を伸ばしていて良かったです。
― 襟足にまつわる会話からオファーまで進んだのですね。
猪狩:木村さんは「ああいう奴を出したら面白いんじゃないの?」みたいにふわっと言っていたぐらいで、多分「あいつを出せ」ということではなかったと思うんですよね(笑)。僕としても襟足を切ったうえで、生徒役ではなく、ぱっと出るのかと思ってたら、「訓練です」と。2ヶ月ぐらいびっしり訓練があって、その途中で、髪を切ってくる日があったのですが、切ってから木村さんと髪についてなにかお話しするようなことはなかったです。
猪狩蒼弥、木村拓哉「HERO」きっかけに検察官志した過去「僕の人生は木村さんがベース」
― 実際に撮影してみて、木村さんとの交流はいかがでしたか?猪狩:合間に少しお話しさせていただいて、乗ってらっしゃる車の話だったり、逮捕術のやり方を聞いた流れで逮捕術をかけてもらったり。木村さんと2人のシーンもあったので、そこで「HERO」を観て検察官になりたかったというお話もさせていただいたんです。事務所に入るまでは本当に検察官になりたかったんですが、「でも頭悪いだろ」みたいなことを言われて(笑)。「いや、良かったんですよ」と返しても、「お前絶対無理だろ」って言われましたね(笑)。
どのみち木村さんは僕の人生にすごく大きく関わっていて、ひょんなことから事務所に入れることになったんですけど、それでも木村さんへの思いは変わらないから、僕の人生はどっちに行っても、結局木村さんをベースに生きていたんだな、というお話をさせてもらいました。
猪狩蒼弥、原作にいないキャラクター演じるうえでの考察「すごく考えた」
― 渡部はご自身の目線から見たらどういうキャラクターですか?猪狩:原作に登場しないキャラクターなので、モデルがいない。本当に恐縮なんですけど、原作に出てないと聞いたので、原作はチェックしてないんです。だからひたすらドラマを観ました。脚本家の君塚良一先生が魂を込めてくださった役なので難しかったんですが、もちろんその意味を汲み取るのがやるべきことだと思うから、すごく考えたんですけど、やっぱ情報が少なくて。矢代桔平(佐藤勝利)だったら、学生時代に警察官の自殺を止めたとか、星谷舞美(齊藤京子)はクラスで一番優秀で、ストーカー被害を撲滅しようと思っているとか、みんな説明が書いてあるんですけど、俺のところだけ「絵が好き」だけ。原作にもないからそこから作らなきゃいけなくて、俺に俺で出てほしいのか、それとも俺だから真面目にやってほしいのかとか、わからなくて。役作りのしようもなく、とりあえず一旦体を鍛えていたんですよ。
その後台本を読ませていただいたら、渡部は父親が警察官であることを打ち明けるんです。警察に対する熱はそんなにないんですが、結構観察力などはあって馬鹿でもない、でも優秀でもないんです。無気力で、ただ絵を描くのが好き。渡部が描く絵は全部オリジナルじゃなくて、模写なので、やはり現実的なことをすごく大事にしているような、ちょっと冷めてて、めんどくさがりで、でもやっぱ優しさや無邪気な部分もあるキャラクターだと考えています。そんな渡部が風間さんやいろいろな人と触れ合うことで生徒としての自覚が芽生えていくようなストーリーを意識しました。
― 絵を描くシーンへの準備は?
猪狩:スケッチの先生との勉強をしましたが、めっちゃ大変でした。「違います」「もっと筆を寝かせてください」と伝えられながら、ひたすら模写をして、絵を描く所作の練習をしていました。そしたら普通に絵がうまくなっちゃって(笑)。でも、先生が10秒でぱって描いたものは、僕らからしたら「いやこれ5分ぐらいかかるんじゃないの?」みたいなクオリティ。プロはすごい、と思いました。
― ご自身で考えた渡部の背景については中江功監督と答え合わせなどはしたのでしょうか?
猪狩:してないです。監督は後輩の舞台を手掛けてくださっていて、僕がそれを観に行ったこともあったので、撮影が始まる前にご飯に行ったんです。でも渡部のキャラクターのことというよりかは、僕は監督観、監督は僕の演技観を聞いている感じ。その中で監督はとにかく当ててこい、ということを考えているような人だと思って、1回最大出力を出してから教えてもらうスタイルなんだと感じたんです。フィルムすべて通して観たときに渡部がどういう動きをしたら画が映えるのかは監督に任せようと思っていました。
猪狩蒼弥、訓練で感じた葛藤「『揃えろ!』みたいなものは本当は嫌い」
― 訓練が大変だったとお聞きしました。猪狩:大変でしたね。僕は事務所でもマーチングやバトン、踊りを揃えることもそうですが、厳しい環境でやる団体行動はやってきたので、そこに対するしんどさはなくて、むしろ事務所でやっていたことの方が大変でしたし、懐かしかったです。それよりも、俺はこういう扱いを受けることが悔しくていろいろなものを磨いてきたので、改めて訓練のようなものに戻るという体験がもどかしかったです。
僕の中では、芸能人=人と違う部分を楽しんでもらうこと。「揃えろ!」みたいなものは本当は嫌いなので「なんで俺芸能界入ってこんなことやってんだ…」とは思ってしまいました。
猪狩蒼弥、木村拓哉からの言葉で意識に変化「グッとこらえて」
― 「教場」でしか観られない猪狩さんですね。猪狩:“作品のため”というゴールがあるから、なぜやっているかは自分が一番わかっているんですが、その集団での行為自体…2時間ただ歩くようなことがひたすら続くと大変でした。体力の有無は人それぞれだけど合わせなくてはいけない。結局これは僕たちの気持ちを1つにするしかないんですが、僕は気持ちを1つにするとかが一番向いていないんです(笑)。もちろんこの生徒の中で1人目立ってしまってもしょうがないのですが、普段だったら「俺に合わせろ!」みたいになるところを「一緒に頑張りましょう」という気持ちに持っていくところへの努力でしたね。意識的にそういうところに従わないこと=俺だと思って襟足を伸ばしてるわけなので、俺が俺である部分を楽しんでほしいバラエティなどとの切り替えは難しかったです。
点検訓練と言って、手帳や警棒の出し方などを確認する作業もあるのですが、個人差がめっちゃあるんです。僕はできるタイプなのですごく速くできたんですが、木村さんがいらっしゃったときに「競争じゃないから」「合わせることが目的だから」と言われて、「競争じゃないんだ」と(笑)。その木村さんの一言で合わせる必要があるんだと思えたんですが、逆に合わせすぎて僕が一番遅くなっちゃったり、左右の人がやったらやろう、と思っているとどっちも止まっている時間もあって、「そこ2人遅い」とか言われるんです。バラエティみたいに「俺が合わせてんだよ!」と言えるわけなく(笑)、グッとこらえて「すみません」と言うことが自分の中で慣れない環境でした。
― 撮影中に他のキャストの皆さんと話し合うような場面はありましたか?
猪狩:すごく話し合いました。そもそもマーチングは音楽で合わせるので、無音で合わせることはまず無理なんです。だから僕たちなりにも考えなくてはいけなくて、声が大きい人が「ワンツー」と言うとか、いろいろな試行錯誤をしました。その話し合いを重ねていく中で、もちろん空気が悪くなることもありましたが、雨降って地固まるというか、205期の僕らが感じている絆はそこの過程で生まれたものが大きいのかな、と思いました。特に仲がいい中山翔貴くん(真鍋辰貴役)と中塚智くん(紺野匠役)とは一昨日もご飯に行ったし、いい仲間と会えたな、と思っています。
― 事務所の先輩の佐藤勝利さんもいらっしゃいますよね。
猪狩:勝利くんはすごく距離の近い先輩で、「timelesz project」の期間中だったのでお忙しそうでしたけど、勝利くんも結構おふざけな人だから、いてくださったことでプラスなことが多かったです。
猪狩蒼弥、訓練経て感じたリスペクト
― もし猪狩さんが警察学校の生徒だったら?猪狩:そもそも入らない。だから警察の皆さんを本当に尊敬しました。でも考えたんですが、警察学校は半年なんですよ。で、俺は訓練2ヶ月、本番4ヶ月をやっていましたが、俺らは本当の生徒の方に比べたらよっぽど自由もあるし、仕事だからっていう割り切り方もある。生徒の方は僕らの訓練よりきっともっとしんどいですし、僕らは現場に出て卒業したら終わりだけど、皆さんは卒業してからが始まりだから、猪狩蒼弥と照らし合わせたときに、警察学校生との合わなさを自覚するとともに、現行で活躍されてる警察の皆さんに対するリスペクトを強く感じました。
猪狩蒼弥、木村拓哉との共演で覆された“苦労を美徳と思わない”考え「いかに井の中の蛙だったか」
― そもそも警察学校のような厳しい環境に身を置くことにはどのような考えがありますか?猪狩:嫌いです。大嫌いです。僕自身、しんどい思いをしてうまくいった経験がない。僕は苦労を美徳と思わないように頑張ってきた人間だから、しんどければいい、と思ったことはないし、厳しい環境でしか芽生えないようなものはあまり信じてなかったんですが、今回でその考えは少し変わりました。それはある程度僕が優秀だからだと思うんです。“できる人”というスタンスでずっと生きてきたんですけど、やっぱり木村さんという圧倒的な人を目の前にして、すごすぎたんです。これまでの自分は、学校だったらクラスで1番の成績をとって、事務所に入っていろいろ出させてもらって、ステージも作れます…みたいな感じでずっとやってたけど、これがいかに井の中の蛙だったか。圧倒的な木村さんが現れたときに、自分が初めて何をしても勝てないと自覚して、そのときにやれること、というとわからなかったんです。
だからそういうときに“ひたすら頑張る”ことが大事。多少嫌な思いしてまでやることの中で見つけられるものがきっとあるし、ここで気づけたのも結構大事なことだと思います。今までは無理なことに直面しても、違うやり方で達成できるように考えていたんですが、そこから逃げれなくなったときに、ひたすら頑張る経験を本当に必要とするときがこれから来ると思うんです。今回の訓練ではその疑似体験をさせていただいたというか、最悪出演を拒否することもできますが、そんなことはしないじゃないですか?撮影することは既に決定してる中でブツブツ言ってもしょうがないので、そうした環境に慣れたことは良かったと今になって思えてきました。またやりたいかと言われたらそうならないんですが、大事な経験だったとは今思っています。努力が無駄じゃないことには気づけました。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
猪狩蒼弥プロフィール
2002年9月20日生まれ、東京都出身。5人組アイドルグループKEY TO LITのメンバー。グループでは主にラップを担当し、自身で作詞、作曲を手がけることも多数。主な出演作に日本テレビ系「恋の病と野郎組 Season2」(2022)、ABCテレビ「全力!クリーナーズ」(2022)、テレビ朝日系「トモダチゲームR4」(2022)、映画「先生の白い嘘」(2024)、「恋を知らない僕たちは」(2024)などがある。もっと詳しくみる
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