「愛のごとく」古屋呂敏、飛躍の今だからこそ抱く“映画初主演”への覚悟 インティマシー・シーンで大切にしたカメラ外での行動「刺激的に見せるためのものではなく」【インタビュー】
俳優の古屋呂敏(ふるや・ろびん/35)が、1月23日公開の映画「愛のごとく」で映画初主演を果たす。モデルプレスでは古屋にインタビューを実施し、理想の座長像や役への印象を語ってもらった。
古屋呂敏主演「愛のごとく」
かつて小説家としてデビューするも、現在はライターとして生きる男・ハヤオ(古屋呂敏)。ある夜、彼はSMに耽る一組の夫婦を垣間見る。夫に束縛される妻がこちらを見てほほ笑むその光景は、背徳と快楽、そして失われた情念の象徴として、ハヤオの心に深く刻まれる。そんな中、大学時代の恩師の死をきっかけに、元恋人のイズミ(宮森玲実)と8年ぶりに再会。彼女との再会を機に、現実と記憶、幻想が交錯する中、彼の心は静かに揺らぎ始め、イズミとの関係に再び引き寄せられていく。古屋呂敏の座長像「現場で生まれる空気や感情を大切に」
― 本作が映画初主演ということで、出演が決まった際の率直な心境をお聞かせください。理想の座長像などはありましたか?古屋:「愛のごとく」のお話をいただいた時は、率直にとても嬉しかったです。同時に、これは自分にとって大きな挑戦になる作品だという感覚も強くありました。映画での初主演ということで、喜び以上に“しっかりこの作品と向き合わなければいけない”という覚悟を自然と持ったのを覚えています。
もちろん、座長としての理想像について考えることもありました。現場を引っ張る存在でありたい、背中で語れる俳優でありたい、という思いはありましたが、最初から完璧を目指すというよりも、あまり気負いすぎないことを大切にしました。自分が無理に何かを演じるのではなく、等身大の自分で現場に立ち、監督や共演者、スタッフの皆さんと丁寧にコミュニケーションを重ねながら、一つひとつのシーンに誠実に向き合っていく。座長だからこそ特別なことをするというよりは、現場で生まれる空気や感情を大切にしながら、チーム全員で同じ方向を向いて作品を作っていく。その中心に自然と立てていたら、それが自分なりの座長像なのかなと感じています。初主演という立場に緊張や不安がなかったと言えば嘘になりますが、それ以上に「この物語を観る方の心に、何かを残せるような作品にしたい」という気持ちが、撮影を通して常に自分の原動力になりました。
― 近年、「VIVANT」や「恋をするなら二度目が上等」などの話題作への出演を経てファン層も大きく広がっていますが、そうした飛躍の中で今作の主演に挑むにあたり、ご自身の中で意識の変化や「今の古屋さんだからこそ表現できた」と感じる強みはございますか?
古屋:自分自身、役者としてのキャリアはまだまだスタートラインに立ったばかりだと自覚しています。「VIVANT」や「恋をするなら二度目が上等」といった作品に出演させていただき、ありがたいことに多くの方に自分の存在を知っていただく機会は増えましたが、その分浮き足立たないように、より一層足元を見つめるようになりました。日々勉強の毎日で、現場ごとに新しい発見があり、正解のない問いに向き合い続けている感覚です。その中で、派手な成長というよりも、一つひとつの現場で拾い上げた小さな気づきや答えを、ゆっくりと積み上げている段階だと思っています。
今の自分だからこそ表現できた強みがあるとすれば、経験を重ねる中で生まれた余白や、感情の揺らぎをそのまま受け止められるようになったことだと思います。完璧ではない人物の弱さや迷いに対して、無理に答えを出そうとせず、観る方に委ねるような表現ができるようになったのは、これまでの出会いや現場の積み重ねがあったからこそだと感じています。まだ道の途中ではありますが、今の自分が持っているすべてを誠実に注いで向き合えた作品です。その等身大の姿が、スクリーンを通して何かしら伝わってくれたら嬉しいです。
古屋呂敏、脚本を読んだ際に抱いた印象
― 初めて脚本を読んだ際、作品全体の空気感やご自身が演じられる役柄に対してどのような印象を抱かれましたか?古屋:脚本を最初に読んだ時にまず感じたのは、映画の脚本でありながら純文学に近い手触りを持った作品だということでした。大きな出来事が連続するわけではないけれど、何気ない日常の中に、人の心が揺れ動く瞬間が丁寧に積み重ねられていて、その一つひとつが静かに胸に残る。人は日常の中でこんなにも多くのことを感じ、そしてその中で、まだ知らなかった自分自身と出会っていくのだなと、読みながら何度も考えさせられました。またタイトルにもなっている「愛のごとく」という言葉が、とても象徴的だと感じました。はっきりとした形や定義があるわけではなく、でも確かにそこに存在しているもの。その曖昧さや不確かさこそが、この物語の核なのだと思いました。愛とは何かを断定するのではなく、登場人物たちの選択や沈黙、すれ違いの中に、愛に“似た何か”が浮かび上がってくる。その距離感が、とても文学的で美しいと感じました。
僕が演じるハヤオという人物も、まさにその「曖昧さ」を抱えた存在でした。脚本を読み進める中で、彼の中にある葛藤や不安、そして拭いきれない孤独に、自然と触れていく感覚がありました。ハヤオは自分の感情を言葉にすることが得意な人間ではなく、むしろ多くを内側に抱え込んで生きている人物です。その沈黙の中に、彼なりの誠実さや、人を想う気持ちが確かに息づいていると感じました。小説的な世界観だからこそ、説明しすぎないこと、感情を声高に表現しすぎないことが大切だと思いました。脚本を読んだ時点で、ハヤオという人物を「演じる」というよりも、彼の時間を一緒に生きるような感覚で向き合いたいと思いました。この作品は、観る方それぞれが自分自身の経験や感情を重ね合わせながら、「愛のごとく」という言葉の意味を探していく物語だと思います。その視点として、静かに立てる役柄であることに、大きな魅力と責任を感じました。
― 演じるにあたって特に大切にされた部分や、事前に準備されたことがあればお聞かせください。また、ご自身が演じられた及川ハヤオに共感した部分、逆に「自分とは全く違う」と感じた部分がありましたら、それぞれ教えてください。
古屋:今回ハヤオを演じるにあたって個人的に一番苦労した点は、僕自身とハヤオがとても違う人間だと感じたことでした。古屋呂敏としての自分は、人に対する興味や好奇心が比較的強いタイプで、誰かと関わることで刺激を受けたり、自分の感情が動いていくことを楽しめる人間だと思っています。一方でハヤオは、社会や他者との間に一定の距離を保ちながら生きている人物で、その距離感や「そっけなさ」は、決して冷たさではないのですが、外から見るとどこか掴みどころのない存在でもあります。その内面的な在り方を、どうすれば表面的な無愛想さや無関心に見せずに表現できるのか。ハヤオの社会に対する距離感を、感情を削ぎ落とすのではなく、むしろ内側に深く沈めていくように表現する必要があると感じていました。この点については、撮影前から監督とも何度も話し合いを重ねました。
事前準備として特に意識していたのは、感情を足すことよりも、削ぎ落とすことでした。セリフの裏にある感情を説明しようとせず、言葉にしない選択をした時に、彼が何を守ろうとしているのかを考える。間や沈黙、視線の動きなど、細部にハヤオの心情が滲むように心がけました。小説的な世界観を持つ作品だからこそ、演じすぎない必要があったと思います。
古屋呂敏、インティマシー・シーンにおいて大切なのは「相手を信じること」
― 官能純文学ということで、インティマシー・シーンもポイントだと思います。このようなシーンで意識したこと、監督やお相手の宮森玲実さんと相談したことはありますか?古屋:インティマシー・シーンにおいて一番大切にしていたのは、相手を信じること、そしてハヤオという人物から自然に立ち上がってくる“その瞬間の感情”を何よりも大事にすることでした。この作品における官能は、刺激的に見せるためのものではなく、人と人との距離がふと縮まる瞬間に生まれる、心の揺れのようなものだと思っています。一度「スタート」の合図がかかれば、その空間は本当に2人だけの世界になります。だからこそ、カメラが回っていない時間の積み重ねがとても重要だと感じていました。
撮影に入る前には、監督を交えてシーンの意図や、どこまでをどう表現するのかを丁寧に共有し、不安や曖昧な部分を残さないように何度も話し合いました。特に意識していたのは、宮森玲実さんが一番安心できる環境を作ることです。相手が安心してその場にいられなければ、観る方にとっても決して美しいシーンにはならないと思っています。物理的な距離感だけでなく、精神的な信頼関係をどう築くかという点に全力を注ぎました。宮森さんとは、事前に細かくコミュニケーションを取りながら動作そのものよりも、その手前にある気持ちや迷い、ためらいを共有できたことがシーンに深みを与えてくれたと思います。インティマシー・シーンは特別なものというよりも、物語の延長線上に自然と存在する時間になったと感じています。人が誰かと深く関わる時の言葉にならない感情や孤独、そして「愛のごとく」寄り添う瞬間が、静かに伝わってくれたら嬉しいです。
古屋呂敏が怒りを乗り越えた方法
― モデルプレスの読者の中には今、さまざまな不安を抱えている読者がいます。そういった読者へ向けて、これまでの人生の中で「怒りを乗り越えたエピソード」を教えてください。古屋:日本の高校を卒業後、アメリカの大学に進学したのですが、その時に初めて自分が“マイノリティ”であるという現実を強く意識しました。日本では言葉にしなくても通じる「空気を読む」文化の中で生きてきましたが、そこにはそれがほとんど存在せず、黙っていることは「何も考えていない」と受け取られてしまう。自分の意見や存在を、言葉や態度で示さなければならない環境でした。
特に強くそれを感じたのが、大学の公式サッカーチームに所属した時です。最初はアジア人で体格も比較的細身だったこともあり、正直なところチームの中で対等な存在として見てもらえていないと感じる瞬間が多くありました。試合中もなかなかパスが回ってこない。自分がそこに「いない」かのような感覚を味わい、悔しさや怒りを覚えたことを今でもはっきりと覚えています。その時、怒りを外にぶつけることもできましたし、環境のせいにすることもできたと思います。でも最終的に自分が選んだのは、「どうすれば認めてもらえるか」を考えることでした。練習では誰よりも走り、声を出し、プレーで自分の存在を示す。言葉でも自分の意思をはっきり伝えるようにしました。主張することでしか自分は守れないのだと、身をもって学びました。そうすると次第にパスが回ってくるようになり、仲間になることができました。信頼されるようになった時、「怒り」を「行動」に変えることの大切さを初めて実感しました。その経験は、ただサッカーが上手くなったということ以上に、自分の人生にとって大きな転機だったと思います。この経験を通して学んだのは、悲しみや怒りそのものが悪いわけではなく、それをどう扱うかが大切だということでした。自分の中に湧き上がる感情を否定せず、原動力に変えていく。その感覚は、役者という仕事に向き合う今の自分にも、確実に生きています。
古屋呂敏の夢を叶える秘訣
― モデルプレス読者の中には今、夢を追いかけている読者もたくさんいます。最後に、古屋さんが考える「夢を叶える秘訣」を教えてください。古屋:僕が考える「夢を叶える秘訣」は、とてもシンプルですが「継続」だと思っています。才能やセンス、環境に恵まれている人はたくさんいます。でも、それだけで夢が叶い続けるわけではなくて、むしろ途中でやめてしまう人の方が圧倒的に多いと感じています。うまくいかない時、評価されない時、結果が見えない時間をどう過ごすか。その時に「続ける」という選択ができるかどうかが、最終的に一番大きな差になるのだと思います。継続といっても、常に前向きでいる必要はないと思っています。モチベーションが下がる日もあれば、自信をなくす日もある。それでも完全に手放さず、たとえ小さくても続けること。昨日より少しだけ前に進む、その積み重ねが、後から振り返った時に確かな道になっていると感じています。
僕自身、役者や写真の活動を通して、すぐに結果が出ることばかりではありませんでした。むしろ、うまくいかない時間の方が長かく遠回りもたくさんしました。自分より容姿が素敵な方、お芝居がうまい方はたくさんいます。それでも、やめなかった。続けてきたからこそ、思いがけない出会いやチャンスが目の前に現れる。その瞬間に手を伸ばせるのは、続けてきた人だけだと思っています。
― ありがとうございました!
(modelpress編集部)
古屋呂敏(ふるや・ろびん)プロフィール
1990年生まれ、京都府出身。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人で、日英バイリンガルのスキルを持つ。2020年に「仮面ライダーセイバー」のストリウス役で注目され、以降ドラマ「恋をするなら二度目が上等」(MBS/TBS)、「レプリカ」「できても、できなくても」(TX)など幅広い作品に出演。俳優として活動する一方でフォトグラファー/映像クリエイター “ROBIN FURUYA” としても活動し、多面的に表現を続けている。「愛のごとく」池袋・新文芸坐 公開初日舞台挨拶
【2026年1月23日(金)上映回】《登壇者》
古屋呂敏(ハヤオ役)、宮森玲実(イズミ役)、東ちづる(あゆ子役)、井土紀州監督
【2026年1月24日(土)上映回】
《登壇者》
古屋呂敏(ハヤオ役)、宮森玲実(イズミ役)、蒼田太志朗(マサキ役)、窪田翔(藤木役)、たなかさと(詩織役)、井土紀州監督
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