ジョナサン・ノーラン監督「フォールアウト」制作で影響を受けた日本映画と子供の存在 「まるで縁が一周して戻ってきたかのよう」【インタビュー】
世界的ヒットドラマ「フォールアウト」のシーズン2が、Prime Videoにて12月17日より世界配信を開始。製作総指揮を務めたジョナサン・ノーラン(Jonathan Nolan/49)がモデルプレスのインタビューに応じ、影響を受けた日本映画と子供の存在、夢を叶える秘訣などたっぷりと語った。
「フォールアウト」シーズン2
世界的ヒットを記録したビデオゲームを実写化した本作は、世界の終末から200年後を舞台に “持てる者”と“持たざる者”の物語を描く。複雑奇妙で暴力的な世界で物語が繰り広げられたシーズン1の壮大なフィナーレの余韻に浸りながら、シーズン2では視聴者をモハビ・ウェイストランドから終末後の活気溢れる都市・ニューベガスへと誘う。ジョナサン・ノーランが影響を受けた日本映画
― 前日に開催されたジャパンプレミアでも来日の喜びを語られていましたが、改めて日本にいらっしゃった心境を教えてください。ノーラン:日本は世界で最も好きな場所の一つなので、来ることができて本当に嬉しいです。僕は幼い頃から、日本の映画やゲームといった数々の作品に触れて育ちました。そうした作品から受けた影響が今の自分の仕事に繋がっており、まるで縁が一周して戻ってきたかのような感慨深いものを感じています。残念ながら今回の滞在は短いのですが、日本食を堪能して帰りたいと思っています。
― 日本の作品に影響を受けられたとのことですが、具体的にはどのような作品にインスピレーションを受けられたのでしょうか。
ノーラン:いっぱいあります。「フォールアウト」に関してよくお話ししているのはマカロニ・ウエスタンが黒澤(明)監督から影響を受けているという点です。例えば「荒野の七人」「マグニフィセント・セブン」は、もともと「七人の侍」に影響を受けて作られていますよね。そういう風に繋がって戻って来るという意味で黒澤監督の「七人の侍」や「用心棒」からは影響を受けています。
それと同時に「自分はなぜこれほどゲームが好きなのか」というルーツもあります。僕はイギリスで育ち、11歳の時にアメリカへ引っ越したのですが、イギリス訛りでなかなか友達ができなかったんです。そんな時に親が任天堂を買ってくれて「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」をプレイしていました。その時に僕は“真のゲーマー”になったわけです(笑)。それらのゲームに影響を受けて今の「フォールアウト」へと繋がっています。
― ちなみに、ご自身のゲームの腕前はいかがですか?
ノーラン:子供たちからは尊敬されています。自分でも結構イケていると思います(笑)。最近は忙しくてなかなか時間が取れないのですが、今年は「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」を子供と一緒にずっとプレイしています。親子で楽しんでいます。
子供の存在でものづくりに変化
― お子さんは「フォールアウト」をはじめ、ノーランさんが手掛けられた作品をご覧になることはありますか?ノーラン:「フォールアウト」は、子供に見せるには少しバイオレンスすぎるかな(笑)。これまでの僕の作品の中で、子供たちが唯一観ているのは「インターステラー」です。
今ちょうど温めている企画は、子供たちがまだ幼いうちに僕と一緒に観られるような作品を目指しています。
― お子さんがいることで、ご自身のものづくりに対する考え方に変化があったり、作品に影響を与えたりした部分はありますか?
ノーラン:とてもあります。「フォールアウト」シーズン1のオープニングはまさにその一例で、クーパー・ハワードと彼の娘が誕生パーティーに参加しているシーンから始まります。実は、私が監督を務めたパイロット版の制作も最後の方になって追加したシーンなんです。ショーランナーの2人に、もっと後のエピソードで使う予定だったフラッシュバックを、ここ(第1話の冒頭)から始めたいと言いました。視聴者がよりキャラクターに感情移入できるような、そんな場所から物語を始めたかったからです。この作品は「終末」も大きなテーマですが、やはり自分も親になったことで「親として終末をどう見るか」という視点を入れたかったんです。
若者に伝えたい「フォールアウト」の魅力
― モデルプレスの読者には10代・20代も多く、まだ「フォールアウト」の世界に触れたことがない方や、その魅力をこれから知るという方も少なくありません。そうした方々に向けて、改めて「フォールアウト」という作品の面白さ、そしてシーズン2の見どころを教えてください。ノーラン:僕が元々この世界に惹かれた理由は、ゲームが持っている非常にユニークで素敵なトーンにありました。物語は終末の世界を舞台にしていますが、同時にそれは“新しい世界の始まり”でもあります。僕にとってすごく新鮮に感じられるのは、そこにユーモアがあること、そして、とにかく変わっているところです。おそらく、ご覧になる皆さんにとっても、これまでにない新しさを感じていただける、そんな作品だと思っています。
― ちなみに、もし推しキャラを一人選ぶとしたら?
ノーラン:それはルール違反ですね(笑)。全ての役者、キャストを愛しているので選べません。でも、カイル(・マクラクラン)演じるハンクとして、シーズン2で経験していく道のりは、観ていてとても面白いです。父親像としても興味深いです。僕自身としては、彼よりは良い父親でありたいな、と思っています(笑)。
ジョナサン・ノーランの夢を叶える秘訣
― モデルプレスの読者には今、夢を追いかけている方がたくさんいます。その読者に向けて、ノーランさんの夢を叶える秘訣を教えてください。ノーラン:大事なのは、しっかりと周りの人々の声に耳を傾けて、アドバイスがあればそれを一度受け入れることだと思います。全部ではなく、ある程度で構いません。しかし、その次に大切なのは、自分が追いかけるもののために、言われたことを全部無視することです。素晴らしいものを生み出したり、新たな試みに満ちた作品を作ったりする時、それは決して「他人に言われて作られたもの」ではないはずです。誰かに指示されて作るのではなく、自分自身で作るものです。皆さんの夢も同じだと思います。どこか少しだけ開いている扉や窓を見つけて、そこに上手く入り込む。とにかく自分の夢を追い続けてほしいです。
「フォールアウト」続編に言及 今後の展望は?
― すでにシーズン3の制作も発表されていますが、この物語のさらなるシリーズ化や映画化など、今後の構想はありますか?ノーラン:「フォールアウト」の世界観は、とにかく果てしなく広く、それぞれのゲームごとに、異なるストーリー・キャラクターが登場します。それはつまり、このユニバースの中で語ることのできるストーリーテリングが、まだまだたくさん存在しているということになります。このレベルのクオリティで、今後もこの作品を作り続けていきたいという気持ちがあります。
― 貴重なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
ジョナサン・ノーラン プロフィール
1976年6月6日生まれ。大学卒業後に執筆した「Memento Mori」が兄のクリストファー・ノーラン監督映画「メメント」(2000)の原案となり、連名でアカデミー賞脚本賞にノミネートされ、ブラム・ストーカー賞脚本賞を受賞した。以降、映画「ダークナイト」(2008)、「インターステラー」(2014)など数々の話題作の脚本を務め、ドラマ「PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット」(2011、2013、2014、2016)や「ウエストワールド」(2018、2020、2022)、「ペリフェラル ~接続された未来~」(2022)では製作総指揮を務めるなど、多岐にわたり活躍。「フォールアウト」シーズン3の制作も決定している。もっと詳しくみる
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