【頑張れる理由】山下美月「それが私にとっての幸せなんだと思います」
【連続ドラマ初単独主演「殺した夫が帰ってきました」(WOWOW)インタビュー】夫を殺し、その事実を隠しながら生きる女性という難役を演じきった俳優の山下美月(25)に撮影の裏話から役作りなどを聞いた。幸せをつかんだエピソードはあるか?という質問の回答からは、彼女が持つ仕事論の一端にも触れることができた。
山下美月「それが私にとっての幸せなんだと思います」
― 自身の幸せをつかむため様々な手段を講じる主人公・鈴倉茉菜になぞらえ、山下自身が常識にとらわれず、なにかを必死にやりくりして幸せをつかんだエピソードはあるか? と尋ねると、「幸せになりたい、という気持ちがないかもしれない」と意外な答えが返ってきた。【山下】人生を左右するような大きな出来事として、そういった経験はありません。特に仕事では「幸せになりたい」という目的のためになにかをするということはないですね。むしろ苦しい、しんどい、やめたいと必死にもがいていて、1、2年経って振り返ったときに「あのときの自分はなんて恵まれていたんだろう、なんて幸せ者だったんだろう」と気づくことの方が多いです。なので渦中にいるあいだは、ただただ大変だと感じていることばかりですね。
― では逃げ出したいか? その問いには明確にノーと言う。「やるしかないので!」と笑い、続ける。
【山下】もし私が本気で自分の幸せだけを追求するなら、おそらく自分のプライドやこれまでの積み重ね、そしてファンの皆さんの想いも全て手放して、地元で小さなカフェでも開くような生き方を選ぶと思います(笑)。そうすればきっと幸せになれるとも思うんです。
― それでもそれを選ばないのは、たくさんの人たちに支えられて今がある、という揺るぎない想いがあるから。
【山下】自分の素性を明かさず、穏やかに生活を送るという人生もあったかもしれません。でもやはり自分でこの道を選んだ以上、応援してくださる方々の想いを裏切ることはできません。
それに私はどちらかというと、エンターテインメントを提供する側。たとえ自分が苦労していたとしても、その苦労を表に出すのがいいとは思わないです。最終的に私たちが作り上げた作品を見て、楽しんで幸せな気持ちになってくださるのは、視聴者の皆さん。ですので、この仕事には達成感を求めていますが、自分自身の幸せを直接的に求めているわけではない、という感覚かもしれません。
言葉にするのが難しいので、誤解を招くかもしれませんが、決して今の私が不幸せだという意味ではないですよ。ただ自分が幸せになるためにこの仕事をしているのではなくて「誰かを幸せにしたい」という気持ちの方が強いということ。自分の活動を通して「誰かを救えたかもしれない」「笑顔にできたかもしれない」と実感できたとき、それが私にとっての幸せなのだと思います。
役作りに余念なし「唇もリップを3日間塗らずにわざと荒れさせて」
― 乃木坂46を卒業後、山下が途切れずに出演作が続いているのは周知の通り。クランクアップしたら、翌日に別作品でクランクインのスケジュールをこなすことも。今作も一時的ではあるが、3作品を掛け持ちしながら撮影が進んだ。【山下】正直なところ、あまり記憶がないんです(苦笑い)。移動中の車内で睡眠をとり、お風呂に入るためだけに家に帰る、というような生活で。自分でもどうやって日々を乗り切っていたのか、よく覚えていないほどです。ただ今作は内容がかなり暗く、役を引きずりすぎると精神的にまいってしまうような作品でした。
でも幸い、共演の萩原(利久)さんとは19歳の頃に作品をご一緒して親しい間柄でしたし、スタッフさんの中にも以前お世話になった方が多くいらっしゃったので、オンとオフをしっかりと切り替えることができました。オフのときは楽しく過ごし、撮影時は集中する、とても居心地の良い現場でした。
― たとえ作品が複数またがっても、セリフは当たり前のように覚えて現場に入る。萩原も「まず間違えない。本番に臨むにあたっての集中力が極めて高く、リスペクトするところが多いです」と絶賛していた。
【山下】かなり計画的に覚えるタイプです。まず1週間分の香盤とセリフに目を通して、このシーンは前々日あたりから覚えれば間に合うなとか、ここは長台詞や難しい言葉が多いから1週間前から練習を始めようといったように、計画を立てて進めていきます。
― 役作りも同様。様々な作品が同時進行しても準備を怠らない。
【山下】アプローチは作品によって異なります。「山田くんとLv999の恋をする」のときは、普段の落ち着いた自分とは正反対の役柄でした。なのであえてオフの時間もたくさん話したり、遊園地で気分を最高潮に高めた状態で現場に入ったり、意識的にテンションを上げるように試みました。今作は基本的にテンションが低く、感情をあまり表に出さない役柄ですが、物語の中で時間の経過がとても多い作品でした。現在の時間軸では、アパレル店員として働き、見た目も綺麗に整えている役。アパレルという職業柄、ファッションやメイク、ヘアスタイルにも気を配っています。
一方で回想シーンでは水商売をしていた過去が描かれます。約3週間の撮影期間で、こうした異なる時間軸を頻繁に行き来する必要があったため、それぞれの状態の演じ分けを明確に意識する必要があると感じていました。映画であれば、役作りのために半年ほどの時間をかけて増量や減量をしたり、髪の色を変えたりと、物理的な変化に時間をかけることができます。でも今作についてはそういう期間がなかったので、唇をわざと舐めて荒れさせるといったり、すぐにできる方法で表現しました。
たとえば物語の冒頭でバスに乗って上京するシーンは、ほぼすっぴんで臨み、唇もリップを3日間塗らずにわざと荒れさせて。爪もあえて雑に切るなど、細かな部分から役作りを始めました。内面に関して、今作は正直、共感という次元で語れる役ではなかったので、想像力を働かせて、自分の中のイメージで役を構築していきました。原作を読み込み、自分の中にある「守りたいもの」や「失ってきたもの」といった感情を、茉菜という役に照らし合わせながら表現していく。かなり特殊な役作りだったと思います。
山下美月、萩原利久だからこそ乗り越えられたシーン
― 茉菜が“殺した夫”鈴倉和希を演じるのは萩原利久。山下とは「電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-」(2019年・テレビ東京系)でのW主演、「降り積もれ孤独な死よ」(2024年・日本テレビ系)での共演以来、3度目の共演となる。互いに信頼し合う俳優仲間の二人が、殺し、殺される夫婦役として相まみえた。【山下】「電影少女」は今まで出演した作品の中で1番といっても過言ではないくらいハードで、いろんな面で大変でした。当時、同世代ということもあり、作品についてたくさんお話をさせていただき、一緒に乗り越えられたという想いがあります。今作のクランクインのシーンは、順撮りではなく難しいシーンからのスタートでしたが、そのときの信頼関係もあっていろいろと意見を出し合いながら撮影ができました。
― 過酷な撮影もあったが、共演歴があったからこそ無事に撮り終えたシーンも多々。声が聞き取れないほどの強風の中でも、お互いの口を見てセリフを読み取った。
【山下】最後の大事なシーンのとき、あまりに風が強くてほぼ声が聞こえない状態でやっていたのがとても印象深いです。自分の声すら聞こえにくかったんですよね(苦笑い)。でもお互い動揺せずにシーンにのめり込めたのは、これまで積み上げてきたものがあったからだと思います。
― DV夫を殺した妻、やっと手に入れた平凡な日常を過ごす中、殺したはずの夫が突然目の前に現れて…。にわかには信じがたい出来事を機に、主人公と“殺した夫”の過去の罪と愛が交錯するサスペンスミステリー。
【山下】原作を読ませていただいたとき、二転三転する展開に静かに感情を揺さぶられつつ、これを希望と呼ぶのか絶望と呼ぶのか?と考え続けていました。ドラマは全6話で、より展開が分かりやすく進んでいくので、毎話登場人物たちの印象が変わっていくと思います。
できればあまりタイトルに引っ張られすぎないでほしいですね。この作品の本質に、殺人やミステリーという部分はもちろんありますが、社会的な背景みたいなものも加わってきます。人によって感じ方が全然違うはずなので、そのやるせなさ、悲しさ、切なさ、その中にある光みたいなものを見つけ出せるような作品になったらいいなと思います。
(modelpress編集部)
ヘアメイク:吉田真佐美 / MASAMI YOSHIDA
スタイリスト:山本隆司(style³) / YAMAMOTO TAKASHI(style³)
山下美月(やました・みづき)プロフィール
1999年7月26日生まれ、東京都出身。2016年、乃木坂46のオーディションに合格してデビュー。2024年5月に卒業。在籍中から俳優としても高い評価を受け、NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」、TBS日曜劇場「下剋上球児」、TBS火曜ドラマ「Eye Love You」などに出演。卒業後もドラマ「降り積もれ孤独な死よ」、映画「六人の嘘つきな大学生」、ドラマ「御曹司に恋はムズすぎる」、映画「山田くんとLv999の恋をする」、劇場アニメ「名探偵コナン 隻眼の残像」などの話題作が続き、10月3日には映画「火喰鳥を、喰う」の公開を控える。連続ドラマW-30「殺した夫が帰ってきました」(WOWOW/7月11日より放送・配信 ※全6話)
アパレル会社でデザイナーを志す茉菜は、入社して1年半、アシスタントとして真面目に努力を重ね、念願のデザイナーデビューも射程圏内におさめて希望に胸を躍らせる若手社員。しかしその裏で茉菜は、誰にも言えないある秘密を抱えていた。日常的に暴力をふるう夫をある出来事を機に殺害し、過去を隠して平穏な暮らしを手に入れていたのだ。そんな茉菜の目の前に突然、殺したはずの夫が記憶をなくした状態で現れ、あろうことか共同生活を送ることに…。夫はなぜ生きていたのか、そしてなぜ今茉菜の前に現れたのか。“殺した夫”とともに過ごすうち、かつて知ることのなかった夫の温かな一面に触れる茉菜。しかしその末に明らかとなるのは、誰もが予想だにしない、衝撃の真実だった。もっと詳しくみる
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