<由薫インタビュー>“等身大の私”を詰め込んだEP「Sunshade」で新たな領域へ ONE OK ROCK・Toruとの共作エピソードも
2024.09.06 17:15
シンガーソングライターの由薫(ゆうか)が、9月6日(金)にデジタルEP「Sunshade」を配信リリースした。メジャーデビューから2年経った今、彼女が音楽を通して描きたいこととは?涙腺を刺激するスローバラードから全編英語詞のインディーポップサウンドなど幅広い5曲に込めた想いを、本人に解説してもらった。
優しく寄り添うような歌声
22年6月にメジャーデビューした由薫は、デビュー直後から映画やドラマの主題歌、CMソングなど数々の作品に自身の楽曲が起用され、世間の注目を浴びてきた。中でも23年2月リリースの「星月夜」は、デジタル総再⽣数4億回を突破するほどのヒット曲となっている。また、今年3月にはアメリカ・テキサス州オースティンにて開催された世界最⼤級の複合イベント「2024 SXSW Music Festival」に出演。昨年に続き、2年連続で同イベントで歌唱した。
国内外問わず精力的に活動し、聴く人に優しく寄り添うような歌声と歌詞が老若男女に支持されている由薫。そんな中リリースされたEP「Sunshade」には、ONE OK ROCKのギタリスト・Toruと共作した楽曲2曲を含む全5曲が収録されている。
由薫、EP「Sunshade」で歌いたかったこと
ー デジタルEP「Sunshade」の配信リリースおめでとうございます!昨年に続いてのEPリリースですが、今回は全体を通してどのような作品になっているでしょうか?由薫:これまでよりも、もう1歩踏み込んだ楽曲を作りたいと思って制作しました。今までは大きい対象について歌うことが多かったのですが、それよりももっとパーソナルな部分に迫って、1対1の愛や人間関係について歌いたかったんです。“誰かから誰か”、“私からあなた”、その1対1を5曲とも意識して歌詞を書いていきました。
ー 今回のEPは5曲のうち3曲がタイアップになっていますね。
由薫:そうなんです。元々はそれらをひとつにまとめたいというところからEPの制作が始まりました。タイアップ3曲に「Clouds」と「ツライクライ」の2曲を加えたかたちになります。元々両方ともデモがあったのですが、このEPに合うのではないかと思ってデモから持ってきて完成させました。
ー 5曲を並べてみた時に感じることや、自分の音楽スタイルに対して思うことはありましたか?
由薫:改めて、それぞれに振り切った曲ができたのかなと感じますね。バラードはしっかりとバラードに合った歌詞を書き、「Clouds」のようなポップスらしい曲は全部英語にして、歌詞の内容もノリを良くしました。俯瞰してみると、曲の持っている要素をしっかりと描き切ることが今までよりできるようになったのかなと思います。
ー 確かにどの曲もそれぞれ違った世界観に仕上がっていますよね。
由薫:由薫として活動し始めて、自分の中では音楽性もどんどん変化してきました。この先もっと深く遠いところに行きたいので、そこに向かって歩んでいくための新たなリリースが「Sunshade」なのかなと思ったりもします。今年1月にファーストアルバム「Brighter」をリリースしてから初のEPですし、アルバムをリリースする前と後では気持ちの変化もあったりして…。これからやりたいことをするために、自分にとっても意味のある作品になった気がしています。
ー 「Sunshade」という楽曲のタイトルをEPのタイトルにも採用したのは、単にリード曲というだけでなく他に意味合いもあるのでしょうか?
由薫:そうですね。リード曲であるのはもちろん、「Sunshade」という言葉自体すごく気に入っていて。それから、もともと同音異義語やダブルミーニングが好きで、「Sunshade」もたくさんの意味が紐づけられる言葉だと思ったんです。日傘という意味の言葉だけれど、「Sun」・「shade」と対比する2つが1つの単語に入っている深い言葉というか。そうした思いを込めて、EPのタイトルにももってきました。
由薫「恋愛の話に...」ONE OK ROCK・Toruとの共作エピとは?
ー では、デジタルEP「Sunshade」に収録されている5曲について、楽曲に込めた想いや制作エピソードなどを1曲ずつ教えてください。【勿忘草】『本⼭製作所』CMソング
由薫:この曲はすごくナチュラルに、遊ぶようにしてデモを作り始めました。曲作りでは、アイデアが内から自然に出てくることもあれば、あえて自分の殻の外に出てチャレンジすることもあるのですが、「勿忘草」は曲が出来上がるまでの流れが自分の心と近かった気がします。真っ直ぐな曲なので、曲も真っ直ぐにアレンジしていただきました。
ー 歌詞を見ると、1番のAメロはふわふわしていて抽象的ですが、2番のAメロは「余裕のない夜に⼀⼈で⾷べた⼀切れのケーキ」など、割と具体的で場面が想像できますよね。
由薫:確かに2Aは、今までとは違う自分が出てきたと思っていました。これまでは1 Aのような歌詞を書くことが多くて、抽象的なほうが聴いてくださった多くの方が共感できるのかなと思っていたんです。でも、自分が経験していない具体的なことを書いても、それはそれで逆に共感できるところもあるなと気付いて。2Aのような歌詞は、それこそ今回のEPを通して自分なりに考えていたことが表れているように思いますね。
【もう⼀度】『本⼭製作所』CMソング
由薫:これはタイアップのために作った曲で、テーマのひとつに「繋がる」というワードがありました。自分にとっての“繋がり”って何だろうと考えると、それは“音楽”だと思ったんです。今の生活のほとんどが音楽を始めたからこそあるものだし、音楽によって色々な出会いもあるなとすごく感じる。じゃあ音楽での繋がりを歌おう、と思いながら作っていきました。
ー 比較的アップテンポで、明るくてのびのびとした歌声が印象的でした。
由薫:元々はバラードとして作っていたのでもう少し暗い曲調でしたが、ポップなアレンジを聴いたらすごく良いと思いました。そこから、ライブでこの曲をみんなで歌って、曲の内容をその場で体験できたら面白いのではないかと考えて、後から「So Sing along」を付け加えました。そういう意味では、初めて何かのために振り切って作った曲ですね。
【Clouds】
由薫:最初から全部英語詞にしようと思っていたのですが、洋楽と邦楽のバランスをとるのが難しくて。そこで、英語詞にする代わりに歌詞の内容では日本での等身大の私を表現しました。まさに日本みたいなものよりも、実際に生活する中で自分が触れているものを描きたくて、大学生の時に見ていたスクランブル交差点や地下鉄の景色などを入れ込んでいきましたね。歌詞が直接的に伝わるのはきっと英語話者の方々なので、その人たちに日本で私が見ているもの、感じていることを伝えることで、曲のバランスがとれたかなと思います。
ー だから歌詞に「Tokyo」というワードが入っているのですね。もう少し歌詞について詳しく教えていただきたいです。
由薫:学生と社会人との対比を入れたいと思って作っていったのですが、1番では将来に対する不安も抱えつつ、それでも人生の夏休みと言われる期間を過ごす大学生のキラキラ感を描きました。2番ではヒールやネクタイといった言葉を入れて、スニーカーを履いていた時のように自由には走れない社会人をイメージしています。それでも「Canʼt we escape?」とあるように、ここから逃げ出して夢を追いたいと思っている。ちょうど周りが社会人になってきたタイミングでもあったので、今の自分の感覚を日記みたいに詰め込む感じで書きました。
【ツライクライ】
由薫:作曲・編曲をしていただいたONE OK ROCKのToruさんと「セッションしよう!」みたいな気軽でのびのびとした空気の中で作り始めていきました。5曲目の「Sunshade」もToruさんと作ったのですが、この2曲もまた対比になっていて面白いな、と。「Sunshade」は日傘ですけど、「ツライクライ」は雨傘についての描写がたくさんあるんです。それに「クライ」は「shade」と繋がる部分でもあるし、面白いですよね。
ー 過去の恋が雨とともに思い出されるような美しい曲ですが、制作過程でToruさんとどういう会話をしたか覚えていますか?
由薫:恋愛観について会話をしたのが印象に残っています。曲の断片がある中で、私の仕事はその裏にある物語を想像して書き出すことだと思うんですけど、この物語の主人公が誰で相手が誰で…というのがずっと掴めなくて。Toruさんに相談したら、恋愛の話になりました(笑)。コライト(共同での楽曲制作)ということもあり、ただメロディーに歌詞を乗せるだけでなくて、お互いの何気ない会話から色々と呼応し合ってこの曲全体の空気感が生まれたと思います。Toruさんにとっても大切な欠片が入ったこの曲に対するリスペクトを持ちつつ、最後のサビの歌詞で自分なりの曲に対する答えを入れて、お互いが納得できる着地点を探っていきました。
【Sunshade】TBS系⾦曜ドラマ「笑うマトリョーシカ」主題歌
由薫:シングルでもリリースした楽曲で、周りの人たちからはCメロの「ねえ、カレンダー何年分⽤意してればいいの?」から続く問いかけの部分が「由薫らしくて良いね」と言ってもらうことが多くて嬉しいです!ドラマ主題歌なので作品を観ている方たちからの反響も大きくて、「登場人物の心情を歌っているみたい」といったコメントを見ると「よっしゃ!」って思ったりします(笑)。自分目線で歌詞を書いても、しっかりとドラマと重なり合う部分があるのが良い主題歌だと思っているので、そこを聴いてくださった方が受け取ってくれたんだなって。
由薫、日々の癒しになっているものは?
ー メジャーデビューから今年で2年が経ちましたが、これまでの活動を振り返って思うことや気付きがあれば教えてください。由薫:メジャーデビューする前はライブハウスで弾き語りをしていて、そこからデビューしていきなり映画のタイアップだったので、初めてだらけで何事にも必死に食らいつく日々というか…。一つひとつに対して何を求められているんだろうと考えながら、とにかく追いつけるように頑張る、みたいな時期がありました。それは自分が成長する機会をもらえているということだし、成長スピードをめちゃくちゃ早くしてくれたなと思っています。インディーズまでの自分の歩んできた軌跡を辿ると、もちろんゆっくり自分なりに成長はしていました。でも、メジャーデビューしてからは様々なコライトや海外でのセッション、ライブを経験できて、大きな影響を受けたり、何かが分かったりすることが結構あったなと思いますね。
ー きっと怒涛の日々でしたよね。
由薫:2年経ってアルバムを1枚出せて…と考えると、なんというか1周した気がして。右も左も分からずがむしゃらに飛びついた時期を経て、自分なりに音楽が少しずつ分かるようになってきました。良い意味で変化している部分もあるだろうし、これからに繋がるような蓄えが、今自分の中にあるんじゃないかと思います。音楽は不思議なもので、アートである一方でパーソナルな部分でもある。これからはそういうところの濃度をもっと濃くして、“由薫”としての音楽を深めていくことが大切な気がしています。作品をリリースするたびに1歩だけ前に進める感覚があるのですが、今回の「Sunshade」もこの先の道を想像するきっかけになったのかなと感じます。
ー ありがとうございます。忙しい毎日を過ごされているかと思いますが、由薫さんの癒しになっているものはありますか?
由薫:音楽に癒されるのはもちろんですが、最近は外に出かけたり人と話したりすることが自分にとっては一番の癒しになっていますね。昔は遊びに行って人と話すと、帰った後にすごく疲れていたけど、今は逆に人に会うことで疲れが軽くなっている感じがします!友達は音楽活動を応援してくれているので、話すといつも勇気づけられていますね。
ー ちなみに由薫さんは、ファンの方からの感想などもよく見られているんですよね。ファンからの声に励まされることもありますか?
由薫:そうですね。見てると言うと、ちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。でもファンのみなさんの声は私にしっかり届いているので、感想を見るたびに改めて「良い」と思ってもらえるものを作っていきたい気持ちが強まりますね。自分が色々な意味を込めて作ったものが、どれだけ聴いてくれた人に届いているのかすごく興味があって。意図がちゃんと届いたと感じる瞬間があると、良かったなと思えるんです。逆に届いてない部分があったとしたら「じゃあ次からどうしよう」と考えますし、音楽を通しての距離感もみなさんのリアクションが影響している部分があります。
ー 最後に、今後の活動で挑戦したいことや楽しみなことがあれば教えてください。
由薫:11月1日に代官山UNITでEP「Sunshade」をコンセプトに一夜限りのワンマンライブを予定しているので、そこで「Sunshade」を生でファンの方にしっかりとお伝えしたいです。それだけでなくて、音楽の面白みが伝わるように音源からもう1歩踏み込んだ“ライブ感”を体験してもらえるような公演にしたいなと思っています!今まで3回ツアーをしてきた中でも「Brighter」のツアーがすごく印象的で、バンドメンバーからも多くのことを吸収させてもらいました。それに加えて、お客さんたちとの親密度も以前より高くなってきたと思うので、11月のライブが楽しみです。
ー ありがとうございました!
時折キュートな笑顔を見せながら、言葉を選んで丁寧に話をしてくれた由薫。自分と深く向き合いながら制作したことが感じられるEP「Sunshade」は、各曲テイストは違えど、どの曲を聴いても“等身大の由薫”の魅力が詰まっている。これを携えて、さらに先へと歩んでいく彼女の今後に期待したい。(modelpress編集部)[PR]提供元:ユニバーサルミュージック合同会社
Digital EP 「Sunshade」詳細
収録曲01:勿忘草 『本⼭製作所』CMソング
02:もう⼀度 『本⼭製作所』CMソング
03:Clouds
04:ツライクライ
05:Sunshade TBS系⾦曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』主題歌
由薫 Live “After Sun”
[日程]2024年11月1日(金)[会場] 東京 / 代官山UNIT
[開場 / 開演] 18:00 / 19:00
由薫プロフィール
2000年・沖縄生まれのシンガーソングライター。幼少期をアメリカ、スイスで過ごす。15歳でアコースティックギターを⼿にし、17歳でオリジナル楽曲の制作を開始。
かねてから映画や本が好きで、その頃に⾒つけた映画の主題歌を作るというオーディションで特別賞を受賞したことが現在の活動を始めるきっかけとなる。
2022年6⽉に楽曲「lullaby」でメジャーデビュー。2023年2⽉にリリースした「星⽉夜」はドラマ『星降る夜に』主題歌に抜擢。各種チャート1位を獲得し、ST再⽣数は3か⽉⾜らずで5,000万回再⽣を記録。2024年1⽉には「星⽉夜」を含むメジャーデビューからの軌跡をまとめた1stAL「Brighter」をリリース。