<山崎育三郎&根本宗子インタビュー>「いつか作ってみたい」が実現 新たな領域に踏み込んだ『The Handsome』の魅力とは
2024.04.24 20:30
ミュージカルやドラマ出演、歌手など多方面で活躍する山崎育三郎。劇作家・演出家の根本宗子にプロデュースを依頼し、4月24日(水)に6年ぶりのアルバム『The Handsome』をリリース。新たなチャレンジとしてタッグを組んだ2人に、作品の魅力や思いを語ってもらった。
山崎育三郎&根本宗子、初コラボ
山崎育三郎が6年ぶりのオリジナルアルバム『The Handsome』をリリース。劇作家・演出家の根本宗子がプロデュースを手掛けた、ミュージカルのようなアルバム。
10の楽曲がひとつの物語を紡ぎ、山崎育三郎が演じる“この世で最もハンサムな詐欺師の人間模様”がアルバムを通して描かれている作品。
楽曲提供アーティストには、OKAMOTO’S、マハラージャン、清 竜人、吉澤嘉代子、大森靖子ら豪華アーティストが参加。さらに「LIKE、重ねていく」のフィーチャリング相手には幾田りらを迎える。
山崎育三郎「オリジナルミュージカルを作る感覚で…」
― 「The Handsome」のリリース決定おめでとうございます!ミュージカルのようなアルバムをリリースしようと思ったきっかけを教えてください。山崎:僕のミュージカルの原点が、小椋佳さんのオリジナルミュージカルという企画で。毎年ゼロイチで新作のミュージカルを作っていく環境で育ったので、オリジナルミュージカルに対しての思いや憧れがずっとありました。いつかオリジナルミュージカルや、ミュージカルになるようなアルバムを作りたいという想いがベースにあったので、このアルバムは“オリジナルミュージカル”を作る感覚でスタートしました。
― オリジナルミュージカルを作りたい、という想いがあった中で、今回演出家・劇作家でもある根本宗子さんにプロデュースの依頼を?
山崎:根本さんの存在は俳優仲間から聞いていました。演劇、ミュージカルのことをここまで愛し、理解している方は探してもいないと思ったんです。根本さんが作る世界観が素晴らしくて、どの作品を観ても惹かれるので、いつかご一緒させていただきたいという思いがずっと前からありました。今回、物語をベースにした、ミュージカルになるようなアルバムを誰と作りたいか考えた時に、根本さんとやってみたいなと思い、お声掛けをさせていただきました。
― 「アルバム」という言葉だけでは言い表せない作品だなと強く感じました。根本さんはお話を聞いた時、どう感じましたか?
根本:最初お話を聞いた時は、ご本人からのご提案だと思っていなくて。もちろんアルバムのプロデュースは、依頼を頂いたこともやったこともないので、率直にどうしてオファーが来たのか興味深く、お話を伺いに行きました。そしたらまさかご本人からのご提案だと聞き、ぜひ私にできる限りご一緒したいなと。高校生の頃からずっと育三郎さんのミュージカルを見てきたので、育三郎さんとこういうアルバムにチャレンジできるのはありがたい機会だなと思いました。
― 想像もしていなかったアルバムのプロデュースに携わることに。
根本:演劇も音楽もイギリスの作品に影響を受けてきて、その中で 「The Who(ザ・フ
ー)」というバンドの『Tommy(トミー)』というロックミュージカルのアルバムに高校時代に出会いました。『Tommy』がきっかけでミュージカルに興味を持ち、いつかこんなアルバムを作ってみたいなとは思っていましたが、私はミュージシャンではないので、ミュージカルの劇伴が世に出る形なのかなと長年夢を抱いていたところに今回のお話が来たので、制作過程も楽しかったです。リリースされた時にどういうリアクションが飛んでくるのかが、他のお仕事よりも未知数なので楽しみです。
― お二人がやってみたかったことが、実現された素敵な作品なんですね…!実際に一緒に作品を作ってみていかがでしたか?
山崎:今回総合プロデュースとして根本さんに入っていただき、間違いないなと思いました。普段は穏やかで優しい方なんですけど、元々アスリートっていうのもあってすごく情熱的で、作品や1つの物作りに対して、覚悟を持って挑む姿勢にすごく感動しました。これだけたくさんの方が関わっていても一切妥協もしない。尊敬、信頼できる方ですね。
根本:ありがとうございます。私も今回ご一緒して、より育三郎さんご自身がエンターテイナーだなと改めて感じました。人を楽しませることが大好きで、すべてお客さんありきで考えているんだなと。育三郎さんの情熱が見えたからこそ、真摯に向き合えた企画でしたね。
山崎:本当ですか。嬉しいですね…。
根本:この企画のトップに立つのは育三郎さんなので、育三郎さんについていきたいと思えるかどうかが、作品作りにとって大事でした。なので参加してくださったアーティストの方々もすごく楽しんで楽曲を作ってくださいました。各アーティストの方と、育三郎さんが今まで歌ってきた楽曲の雰囲気を研究する打ち合わせなどもあったんですけど、それが楽しかったです(笑)。自分が書くならこういう曲を歌ってほしいとか、今まで育三郎さんが歌われていないような楽曲も、今回のアルバムだったら提供してみたいって皆さんおっしゃっていました。
山崎:打ち合わせ、見てみたかったですね(笑)。僕自身も、今回は皆さんの音楽の世界にちゃんと染まりたいと思いました。
根本宗子、山崎育三郎は「詐欺師っぽい…」
― 「The Handsome」のコンセプトが「この世で最もハンサムな詐欺師の人間模様」となっておりますが、このコンセプトの誕生秘話を教えてください。根本:今回複数のアーティストの方と1つの物語を作らないといけないというのが他のミュージカルとの大きな違いで、バラバラの楽曲が揃うからこそ面白くなる物語にしないといけなかったので、浮世離れした設定にした方がいいんじゃないかなと。「この世で最もハンサムな詐欺師」ってすごくキャッチーだけど、意味分からないじゃないですか(笑)。でもそれを育三郎さんが演じたらすごく面白そうだし、育三郎さん自身、お話していてとにかく頭が切れるというか、頭の回転が早くて言葉数も多いので…。
山崎:詐欺師っぽい?(笑)
根本:いえ、詐欺師を演じて欲しい(笑)。悪い意味じゃなく、自分が役を書くとしたら、詐欺師って演じ手の口が相当うまくないと面白くならない役だと思っていて。歌詞にも言葉をたくさん入れたかったので、詐欺師という設定がいいんじゃないかというご提案を育三郎さんにしました。
山崎:それを聞いてめちゃくちゃ面白い!と思いましたね。
根本:色っぽさや艶っぽさのある楽曲から、弱い面が見える楽曲まで、いろいろなテーマが考えやすいなと思いました。主人公の愛称は育三郎さんから出たんですよね。
山崎:プリンスはもういいかなと思っていて(笑)。プリンスの次はなんだろうっていくつか考えた中で、「ハンサム」が印象的だったんです。字にした時も可愛いし、例えばこれがミュージカル「The Handsome」というタイトルだったらキャッチ―で響きもいいなと。
根本:ミュージカルらしいタイトルというのもすごく考えましたよね。アルバムというよりは、ミュージカルのチラシにした時の字面とか。
山崎:そうそう。ミュージカルのロゴにした時のイメージ。ミュージカル「モーツァルト!」、ミュージカル「エリザベート」のように、名前が作品のタイトルになっても素敵かなと思い、愛称をハンサムにしましたね。
― 「ハンサム」にも誕生秘話があったんですね。では、そんな「ハンサム」の物語を10の楽曲から作り上げていく際に苦労した点はありましたか?
山崎:基本的には物語という軸に沿って作っていくので、それがブレることはないと思うんですけど、曲ごとの繋ぎは根本さんが中心となって動いてくださいました。アーティストの皆さんに次の楽曲に繋がる終わり方や、間、秒数など、細かくこだわってくださいましたね。
根本:アーティストの方は他の曲を知らないので、曲単体で見たら「こう終わった方がいい」がもちろんあるんですけど、どうしても今回のコンセプトが物語なので、そこを説明して理解してもらいました。皆さんがそれを面白がってくださったのも本当にありがたかったです。
― 参加されているアーティストさんも豪華ですよね。アーティストの方々にも協力いただいて。
根本:本当に皆さんの楽曲が素晴らしくて面白くて、完成して通しで聴いた時に私はわくわくが止まりませんでした。全曲じっくり本当はお話ししたいエピソードがたくさんあるんですが、音楽劇を一緒に作ってきたことのある清竜人さんが、3曲と編曲で1曲担当してくださったこともアルバムが物語としてきちんとまとまった大きな理由の1つですし、お話をいただいた時から1曲目はロックオペラとの親和性で絶対にOKAMOTO‘Sにお願いしたいと心に決めていました。育三郎さんがロックミュージカルはやられたことがないとおっしゃっていたこともあり、1曲目から「今回の育三郎さんは違うぞ!」という強さを出したいなと思って。普段育三郎さんは譜面で歌われているので、1曲目と4曲目のOKAMOTO‘Sのロックの楽曲も譜面にしてもらってレコーディングも面白かったですよね?(笑)
山崎:そうそう(笑)。無理を言ってロックの楽曲にも全部音符を書いてもらったので、大変だったと思います。レコーディングにはアーティストの皆さんが立ち会ってくださって、歌い出しはこっちがいいけど作品の流れ的にはこっちだよねってディスカッションをする時間もありましたね。演劇の稽古場のようなやり取りがレコーディング現場で行われたりする瞬間は刺激的で面白かったし楽しい時間でした。これだけジャンルが違うアーティストの皆さんが、1つのアルバムに参加することはなかなかないと思います。
― レコーディングも、普段とは少し違った雰囲気で行われたんですね。
山崎:皆さんのアプローチの仕方が違ったり、音へのこだわりも違くて。例えばマハラージャンさんは、ワンフレーズごとに止めるんですよね(笑)。一生終わらないんじゃないか?と思うぐらい本当に細かく、「もう少しそこの語尾を短く」とか、「ブレスはこうで、リズムはもう少しこうして」って。マハラージャンさん自身もディレクションは初めてでしたよね?
根本:他の方に歌のディレクションをするのは、初めてとレコーディングの際おっしゃってましたよね。
山崎:そうですよね。この作品で、根本さんが出会わせてくれたアーティストの方それぞれがやってきた音楽の向き合い方だったり世界に触れられた瞬間は、心動きました。皆さんがシングル曲を作るぐらいの真剣勝負で向き合ってくださったので、レコーディングの時間は1番思い出に残っていて印象深かったです。
根本:レコーディングで一番すごいなと思ったのが、各アーティストの方が普段ご自身で歌われる方なので、デモもご本人が歌ってくださっていて。ご本人が歌っているデモを聴き込むとどうしてもかっこいい歌い方などをトレースしてしまいがちに思うじゃないですか、でも育三郎さんは全部自分の中から出てくるもので歌っていらして、やっぱりとんでもない人なんだなって。
山崎:自分の中でそうならないための譜面なんですよ。まず譜面だけで音をとっていくと、自分で歌いたいように歌っていけるので。クラシックの学校に通っている時、その人の歌い方になってしまうから耳コピをするなと言われていたのが、今だに染みついています。
根本:なるほど。アルバムを通して聞いた時に、1つの役として育三郎さんの歌で表現しているのがすごくいいなと思いました。育三郎さんが歌うべき歌にちゃんと聞こえるのが本当に凄いことなので皆さんにも体感して欲しいです!
山崎育三郎&根本宗子の夢を叶える秘訣
― 「The Handsome」のこだわりやポイントがあれば教えていただきたいです。根本:そもそもこういうことをやろうと思う人がいないですよね(笑)。レコード会社の方からしたらトリッキーなアルバムじゃないですか。なのでそれを形にできたこと自体が育三郎さんとだからこそなのかなと。これが第1弾として、今後いろいろな展開が生まれたらいいなと思います。
山崎:この企画自体に結構びっくりされますよね。昨日も大阪でアルバムのキャンペーンをしていて、ラジオ局とかたくさん周ってきたんですけど、皆さんものすごくいい反応なんですよ。「なんですかこのアルバム!」って。長く音楽に携わっているDJの方や、音楽業界の方がたくさんいらっしゃる中でこのアルバムを紹介すると、皆さんの新鮮な反応が見れて、新しいことをしているんだなとも思います。今までになかったものができているんだなという感覚です。
根本:楽曲のポイントとしては、セリフで締めているところですかね。物語のあるアルバムということで、1曲目とラストの曲が特にミュージカルナンバーっぽいので、よりこだわりが詰まっているのかなと思います。
― ちなみに1つ1つプロットがありますが、これは根本さんがミュージカルのようなアルバムを作る上で、必要だと思って作られたものなんですか?
根本:楽曲をアーティストの方にオファーする際、音楽劇を作る時と同じような形でやる方法しか私にはなかったので、プロットを作りました。多分普通に楽曲提供していただくのであれば、もう少しざっくりとしたオーダーを投げるものなのかなと、各アーティストの方に「こんなに長いプロットが届いたの初めてです」って言われて気がつきました(笑)。
山崎:何が出てくるんだろうとずっとワクワクしていました。根本さんの中で見えているものだったり、これだっていうものに全面的についていくと思っていて。僕は彼女のことを信頼していましたし、彼女がいいと選んだ時点でそれが正解なので、最大限の思いを込めてパフォーマンスするだけでした。
根本:今回のアルバムは、育三郎さんの思いがしっかり伝わって嬉しかったし、選んでもらった意味が分かるオファーだったので、私も各アーティストの方の好きな楽曲や、魅力的だと思っているところを分かりやすくしてオファーを投げたかったんですよね。オファーをする時に、自分だから来たオファーなんだって思ってもらえる方が、結果良いものができると思うので、それを皆さんに感じてもらえたらいいなという意味も込めて、プロットをしっかり書きました。
― 新しいチャレンジとして出来上がったアルバムの反応が楽しみですね!では最後に、夢を追いかけているモデルプレスの読者に向けて、お二人の「夢を叶える秘訣」を教えてください。
山崎:自分の気持ちに正直にワクワクしたり、心が動く場所に自分の身を置くことが、夢を叶える秘訣かなと思います。先のことを考えるより、今この瞬間、置かれている状況でどれだけ思いを持って挑めるか。今回のアルバムもそうですけど、今までなかったものに挑む瞬間ってワクワクするじゃないですか。夢を叶えるというよりも、夢に向かっている過程が1番楽しいので、いつもワクワクすることを探している感覚はあります。
根本:自分と周りを信じることですかね。何のためにやっているんだろうって希望がなくなる瞬間に直面することって皆さんあると思うんです。今育三郎さんがおっしゃっていた、夢に向かってワクワクして進んでいくことも、最終的にうまくいっているビジョンを信じることも大事だと思います。頑張ってきたから不安になるし、心配になって崩れそうになるものだと思うので、不安な時ほどそれまで費やしてきた時を信じます。
山崎:特に根本さんのようにゼロからものを作る方は、自分から考えや想いを生み出していくわけだから、本当に強い芯を持っていないと。自分は与えられた通りの表現なので、また違うと思います。
根本:リスキーな仕事だなと思います。2年後の台本の依頼を受けるけど、書ける保証なんてないじゃないですか(笑)。
山崎:確かにね。その時点でどうなっているかなんて分からないし。でも、託す方は信じているわけですから(笑)。
根本:書けなくて逃げても怒らないでください、脚本家じゃなくなっている可能性もあります!って毎回言っています(笑)。
山崎:自分も今回オファーして、オッケーもらった時点で大丈夫っていう気持ちでした。何やっても根本さんが楽しめていたり、ワクワクしていたら、それが正解なんです。やっているチームがワクワクしなかったら誰にも伝わらないし、ここで信じられなかったら誰にも伝わらないと思うので、信じることは共感できますし、夢を叶えるうえで大事なことだと思います。
― 貴重なお話ありがとうございました!
(modelpress編集部)[PR]提供元:ソニー・ミュージックレーベルズ
撮影:堅田ひとみ
オリジナルアルバム『The Handsome』
01.神に生かされた俺02.Witch GAME
03.Handsome Voice1
04.メロディの続きを
05.Land of covenant
06.dammit
07.光のない方へ
08.Handsome Voice2
09.LIKE、重ねていく feat.幾田りら
10.Handsome boy
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<Blu-ray収録内容>
『billboard classics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2023 -PRINCIPE-』
01.星から降る金
02.愛と死の輪舞
03.⾜もとが揺れるとき "WHEN YOUR FEET DON'T TOUCH THE GROUND"
04.ネバーランド "NEVERLAND"
05.世界が終わる夜のように
06.美女と野獣
07.ひそかな夢
08.栄冠は君に輝く
09.誰が為
10.エンベロープ
11.にじ
12.千年トラベラー
13.僕のヒロインになってくれませんか?
14.I LAND
15.On Your Side
16.君に伝えたいこと
「神に生かされた俺」Music Video メイキング映像
「LIKE、重ねていく」Music Video メイキング映像
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