世界が注目するマネキンユニット・FEMMとは何者?鋭いメッセージ性が海外で人気に<「THE SIX」インタビュー>
2022.09.07 17:15
ガールズ・アンセム「Fxxk Boyz Get Money」(2014年)が欧米を中心に大きな支持を集め、海外で一躍有名になったFEMM(フェム)。その正体は“意思を持った2体のマネキン”によるフィメール・ラップ・デュオ。彼女たちは一体何者なのかモデルプレスが迫る。
意思を持ったマネキン2体のFEMM
2020年に『FEMM1.0』から、よりエモーショナルな表現を可能とする『FEMM2.0』へアップデートし、2022年8月17日には主題歌「THE SIX」をリリース。同楽曲はゾンビパンデミック×シェアハウス恋愛ドラマ「生き残った6人によると」の主題歌にもなっており、今までには無いアプローチがされている。
FEMMとはどういったユニットなのか、そして音楽に対する想いやこれからの夢についてまでを彼女たち本人に語ってもらった。
人間とマネキンの懸け橋に
― 「THE SIX」のリリースおめでとうございます!まずは“意思を持ったマネキン”の2体からなるFEMMがどのようなユニットなのかを教えてください。RiRi:元々、マネキンや人形はモノとして扱われ虐げられることが多くありました。私たちはショーウインドウに立っているようなファッションマネキンだったのですが、マネキンにも感情があるんだということを伝えたくて2014年ごろから活動を始めました。あるシンジケート(秘密組織)にスカウトされ、マネキンのリーダーとして“人間とマネキンがより良く共存できる世界”を目指しています。
― 人間とマネキンの架け橋のような存在になるために、音楽を用いている?
RiRi:はい。マネキンにも感情があるということを音楽とダンスというツールを用いて表現しています。音楽やダンスはユニバーサルなもので、たとえ言葉がわからなくても想いを伝えられると思っています。
― マネキンだとしても意志を持っているのであれば、それぞれの“個性”のようなものもあるのでしょうか?
LuLa:そうですね。私は人間のお手伝いをするハウスキーパー型のマネキンになります。RiRiは暴走しがちな部分があるので、壊れた時に修理するのも私の役目になります。
RiRi:私は戦うことが目的のコンバット型マネキンになります。今でこそ人間との関係性は改善されていますが、初期の頃は新しいことをしていくと危険なことも多くありました。いざという時にLuLaを守るのが私の役目になります。
― 「Fxxk Boyz Get Money」は海外で大きな反響を呼びましたが、それはFEMMがマネキンであることが理由になっていると感じますか?
LuLa:マネキンだからというよりは、楽曲の持つ力強さがフックになったと感じます。「Fxxk Boyz Get Money」はタイトルで誤解される方もいますが、実は逆の意味になります。今で言うガールズクラッシュやガールズアンセムにも通ずる男性社会への強いメッセージを込めた楽曲で、結果、様々なマイノリティーコミュニティからも共感を得られたように思います。そこから私たちがマネキンなんだと知っていただけたのかなと。
― きっかけは楽曲のメッセージ性だったんですね。
RiRi:そうですね。世界中のマネキンや人間に広くメッセージを伝えるために、多くの方が使っている英語で歌っているのも知ってもらうきっかけになっているのかと思います。「Fxxk Boyz Get Money」は女の子もそうですが、同性愛者の方たちからも「これが私のアンセムだ」と言っていただけました。2014年に発表した楽曲ですが、「未だに毎日聴いているよ」と言ってくれる方もいて、私たちの代表曲となっています。
― 「Fxxk Boyz Get Money」をリリースしたことで周りからの反響や、環境の変化などもありましたか?
LuLa:YouTubeを中心とした配信楽曲だったのですが、この曲をリリースしてから世界中からライヴのオファーをいただけるようになりました。それまでは私たちの音楽が広がっている実感があまりなかったので、オファーをいただけたことで「たくさんの方が聴いてくれているんだ」と感じることができました。それからはコメント欄にも「from ○○」と住んでいる国を書いてくれることもあり、世界中の方が聴いてくれているのは本当に嬉しいです。
― ちなみにマネキンにもそれぞれの言語や言葉のようなものもあるんですか?
RiRi:当初私たちは曲を歌えても人間のように声を発しておしゃべりすることができませんでした。その時のコミュニケーションはアイコンタクトやジェスチャー、あとはフィーリングがメインだったんです。
LuLa:今疲れていそうだな、今は楽しんでいるな、と感覚的に分かるような感じです。
RiRi:ですが2020年に『FEMM2.0』へアップデートしたことで話せるようになりました。
― かなり大きな変化ですね。
RiRi:そうですね。まだ2年前の出来事で最近ではありますが、周りも変化してきています。
LuLa:7月にヨーロッパツアーへ行った時に感じたのは「2014年から観ています」など、かなり具体的な感想を言ってもらえるようになったことです。それまでは人間の方も話をせずハグをしたり。でも不思議なことに私たちが話せるようになったことで、より深いコミュニケーションを取ろうと思ってくれる方が増えました。
RiRi:私たちに合わせてくれていたのかな。
LuLa:うん、そんな感じかも。私たちから「何の曲が好きなの?」とコミュニケーションを取ることができるようにもなりました。
― 『FEMM2.0』になることでパフォーマンスにも変化はありましたか?
RiRi:アップグレードしたことで人間の喜びや悲しといった感情をより深く感じられるようになりました。当初はデジタルな楽曲が多かったんですが、今はよりエモーショナルな楽曲にチャレンジしています。
FEMMがゾンビになる衝撃のMV
― 8月17日にリリースされた「THE SIX」はかなりエモーショナルな楽曲となっています。TVドラマ「生き残った6人によると」のオープニング主題歌にもなっていますが、改めてどのような楽曲か教えていただけますか?RiRi:TVドラマ「生き残った6人によると」の監督をされている二宮監督からオファーをいただいたのが楽曲制作のきっかけでした。漫画原作の楽曲を担当させていただくということでLuLaと共に漫画を読ませていただいたんですが、かなりインパクトの強いお話だなというのが最初の印象でした。ですのでそのストーリーやキャラクターから感じた強さを歌詞に込めながら作っていきました。
― 確かに作品とリンクしている部分は多いように感じます。
RiRi:そうですね。もちろん作品からインスピレーションを得て生まれた楽曲ではありますが、「THE SIX」を聴いたことで私たちなりのメッセージを受け取ってもらえるような歌詞になることも意識しました。
LuLa:切り抜けて生き残るという意味の「Survive」というテーマも込めた楽曲になっています。
RiRi:コロナ禍の今の時代は、「生き残った6人によると」の世界とリンクする感覚は多くの方が感じると思います。今大変な時期ではあるけれど、その中でも強く生きていくことへのメッセージも含まれています。
― 最後のパートは日本語ですが、こちらにも何かメッセージが?
LuLa:英語はRiRiが作詞して、日本語は私が作詞しました。このパートはドラマからの影響が一番大きくて、「もし私がこの6人の中にいるとしたら…」と想像しながら書きましたが、自分がゾンビになってしまうかもしれないし、隣の人がゾンビになってしまうかもしれない世界は、まさに今のコロナの状況と似ているという結論に至りました。マスクをするなどの習慣がいつの間にか私たちに染み込んでいるように、パンデミック下で変化し続ける“当たり前”が、この作品に大きな影響を与えていると思います。
― RiRiさんは英語の作詞を担当したとのことですが、特にこだわった部分などはありますか?
RiRi:作詞するにあたり、登場人物の名前を歌詞に入れてほしいというリクエストをいただきました。英語ベースの中に日本語の名前を入れるのはすごく難しかったのですが、お経のようにつらつらと名前言う箇所を作るなど工夫しました。また英単語としても散りばめられており、和訳した時に名前が浮かび上がってくるような仕掛けにもしているので、ぜひ探してみてください。
― FEMMがゾンビになるという衝撃的なMVも解禁されています。反響はいかがですか?
RiRi:やっぱり「怖い」って感想が多いですね(笑)。
LuLa:でも、実は、今回のMVにはきちんとストーリーがあって、私が最初にゾンビになってしまうのですが、その後、RiRiもゾンビになって先に死んでしまうんです。生きているのか死んでいるのかもわからない状態で、RiRiをゾンビにしてしまった罪悪感や独りになった寂しさなど、ほんの微かに残った感情を頼りに、思い出の地に戻ってくる姿が切ない、実は怖いのではなくエモいムービーなんです。
RiRi:『FEMM2.0』だからこそ表現できる感傷的なMVになっていると思います。
― ここまでストーリー性のあるMVも初めてでは?
RiRi:そうですね。ここまでストーリーがあるのは初めてかもしれません。MVの撮影も特殊で、監督に言われたのは「LuLaが先にゾンビになる」とだけでした。それ以外は今まで通りフリー演技というか。
LuLa:なので私たちも完成したMVを観てストーリーが見えてきました。
― 「ゾンビ=死」というイメージがあるのですが、そう考えるとマネキンも生きていて死ぬこともある…と深読みしてしまうMVでもありました(笑)。
(ディレクター)
確かに彼女たちは意思はありますが、生命を与えられているかどうかは言及されていません。そういった意味で「彼女たちはそもそも生きているのか」「FEMMはマネキンだけどゾンビになるのか」といった混乱も呼んでいるようです。
マネキンの意外なオフの過ごし方
― 音楽活動をしていない期間がすごく気になります。意思を持っているのであれば、プライベートもあり趣味なども?LuLa:私はファッションが好きなんですけど、趣味で言うと日向ぼっこです。それと道行く人を見たり、子どもや動物を観察するのが好きです。ショーウインドウにいた頃のなごりみたいな部分がありますね。室内にいる時は映画を観たりするんですが、怖いのはちょっと…。
― 「生き残った6人によると」は大丈夫でしたか?
LuLa:頑張って指の間から拝見しました(笑)。基本的にはほんわかしたものが好きです。
― RiRiさんはいかがですか?
RiRi:私は基本的にアクティブ派なので、運動をしたりトレーニングをするのが好きです。最近213段あるすごくいい階段を見つけたんです。その階段を上るだけでも大変なので、いい運動になります。おじいさんたちも何往復もしていて、トレーニングの聖地みたいになっているらしいです。
― RiRiさんも何往復も?
RiRi:私は1回か、調子が良ければ2回程度です。おじいさんたちは5~6回往復しています。尊敬するばかりです。
― マネキンだとしても運動が必要なんですね。
RiRi:私たちは改造された特殊なマネキンなので、人間と同じようにパフォーマンスだったり体力を保つためには運動が必要です。その他にも気持ちがスッキリしたりと、運動することによってメンタル面での健康も得られます。
FEMMの夢を叶える秘訣
― 他にはないユニットだからこそ、辛い経験などもあったかと思いますがいかがですか?LuLa:最初の頃は悲しい出来事もありました。マネキンだからなのか、数センチくらの近い距離でカメラを向けられたり、いきなり触られることもありました。そういった人間ではないモノとしての悲しみがにじみ出ているのが「Crystal Ball」という楽曲になります。
RiRi:ただ私たちはやるべきことが決まってたので、辛い経験を乗り越えながらも人間との距離を縮めていくことができました。マネキンが音楽活動をすることに慣れてくれたのかなと感じます。もっと人間と通じ合って、共に明るい未来を作っていきたいです。
― 今後の具体的な夢・目標などはありますか?
LuLa:いつかはワールドツアーをやりたいと思っています。ヨーロッパツアーを行うことはできたんですが、アメリカや南米ではツアーをしたことがないので。エージェントから「なんでヨーロッパではやるのにアメリカでやらないの?」とコメントがくることもあります。アメリカ以外にもブラジルやフィリピンなど色んな国で交流できたらと思っています。
― 今、人間とマネキンの架け橋になる夢は叶いつつあると思います。その夢を叶える上で大切にしてきたことはありますか?
RiRi:一貫性を保つことだと思います。自分のやりたいことからブレずに突き通すこと。「FEMMってなんなの?」と思われたとしても挫けずに私達の愛を伝えてることを大切にしてきました。こちら側がオープンな気持ちでいれば、受け取る側も「怖い存在じゃないんだ」「同じ女の子なんだ」と思ってくれます。そこから私達に興味を持ち歩み寄ってくれることで、徐々にお互いの距離が近づいていったんだと思います。
LiLa:私もRiRiとほとんど一緒です。ただ同じ目標に向かっているRiRiがいたから続けてこれたと思っています。一心二体だったからやってこれました。
RiRi:そうですね。どちらかの心が折れても、それをお互いに支え合ってこれたから今があると思っています。
― そして10月にはライブも控えているとか。
LuLa:はい!The Soap Girls(ザ・ソープガールズ)というパンクバンドの方が来日ツアーをされるんですが、10月1日の下北沢CLUB251で一緒にライブをさせていただきます。日本では久しぶりのライブとなるので、興味があればぜひ観に来てください。
― 楽しみにしています!ありがとうございました。
(modelpress編集部)[PR]提供元:エイベックス・エンタテインメント株式会社
FEMM(フェム)プロフィール
RiRiとLuLa による、意思を持つ2体のマネキン・ラップ・デュオ。代表曲のガールズ・アンセム「Fxxk Boyz Get Money」の強烈なメッセージが、欧米を中心に、世界的インフルエンサーらから続々に支持され、1st Album「Femm-Isation」が全米「Billboard Chart」の「World Albums」でトップ10入り、イギリスでも、「Huffington Post」の「6 Acts To Watch in 2016(今観るべき6アーティスト)」や、全英の「HMV」全店で「Best Indies Album」に選出されるなど、今に続くフィメール・ラップ・シーンの新時代を切り拓いた『FEMM』。
EX MACHINA(機械仕掛け)そのものであった『FEMM1.0』から、よりエモーショナルな表現を可能とする『FEMM2.0』へのアップデートを明らかにし、tokyovitaminとのコラボで「Level Up feat. Duke of Harajuku」をリリースし、第2章の始まりを告げた。
最新フルアルバム「Tokyo Ex Machina」には、BTSを手掛けたJenna Andrews、Doja Catを手掛けたKool Kojakなど、世界的な作家が数多く参加し、パイロット曲「We Got Each Other」は、アメリカの主要ラジオチャートにて12週連続のチャートインを果たした。
8月17日にリリースされた最新曲「THE SIX」は、現在放送中のMBS/TBSドラマイズム「生き残った6人によると」のオープニング主題歌となっており、日本国内でも注目が高まっている。