(左から)SNARE COVER、井手上漠(C)モデルプレス

井手上漠の人生が楽曲に SNARE COVERが書き下ろし<「私らしく、僕らしく。-井手上漠のこと-」インタビュー>

2022.04.15 12:00

みんなが憧れるタレントやモデル、SNSで注目を集めるインフルエンサー、そんな「あの子」の人生に潜む本音やパーソナルなメッセージを、アーティストが楽曲化する新たなプロジェクト「わすれね」が3月26日よりスタート。アーティストは、クリエイターの協力を得て「あの子」に取材を行い、そこで明かされた本音や悩みなどを歌詞に乗せ曲を作る。そして「あの子」の代弁者として歌う。世間が抱くイメージとは違う、リアルを捉えた描写が心に響き、歌を通してその世界観に引き込まれていくような企画となっている。

井手上漠×SNARE COVER

同プロジェクト第1弾の「あなた」に選ばれたのは、ジェンダーレスモデルの井手上漠。楽曲を制作し歌うのは、インディーズバンドの世界⼤会「エマージェンザミュージックフェスティバル」2017年で優勝を果たし、美しい歌声で多くの人々を魅了するSNARE COVER(スネアカバー)。

(左から)SNARE COVER、井手上漠(C)モデルプレス
彼はこの企画が始まる前から井手上の人生に興味を持っており、その生き方をイメージした楽曲を制作していたと言う。本企画への参加が決まり、改めて井手上の人生を掘り下げ、今回新たに「私らしく、僕らしく。-井手上漠のこと-」を完成させた。今回は井手上が曲を聴いて感じたことや、SNARE COVERが曲作りにおいて意識したことなどを語ってもらった。

井手上漠「自分のことが曲になるってロマンチック」

井手上漠(C)モデルプレス
― まずは井手上さんにお伺いしたいと思います。「わすれね」プロジェクト第一弾の「あなた」に選ばれたと初めて知った時の感想を教えてください。

井手上:すごく嬉しかったです。第一弾ということもそうですし、性別のないアイコンとして活動している私を選んでいただいたので、この曲がもっと浸透していったら、この先の日本がもっと変わるきっかけにつながるかもしれないので、そういう意味でも嬉しく思いました。

― ご自分のことが音楽になるのは、どんな感覚ですか?

井手上:今まではお仕事でも自分発信することが多くて、誰かに代わりになって伝えてもらうというのは今回が初めてだったので、最初は不思議な感覚でしたけど、自分のことが曲になるってロマンチックだなって思いました。

― SNARE COVERさんは、以前から井手上さんをイメージした楽曲を制作されていたそうですが、それはどんな曲だったんですか?

SNARE COVER:漠さんがSNSとかYouTubeにアップされていたインタビューからインスピレーションを受けて作っていたんですけど、壮大でありながら柔らかい、バラード調の曲でした。

SNARE COVER(C)モデルプレス
― 実際にお会いしてみて、いかがでしたか?

SNARE COVER:デモ曲をいくつか作ってインタビューに挑んだですけど、色々な話を聞いたら、やっぱり全く新しいものを作ろうって思って。帰りの電車の中でサビのメロディが浮かんできたので、それが消えないうちにと思い、渋谷のカラオケボックスに駆け込みました。たまたまギターも持っていたんで、そこでほぼ1コーラス分を作って、それを家に持ち帰ってアレンジしました。

井手上:すごいですね。曲ってそんなにすぐ浮かぶものですか?

SNARE COVER:いや、こういうのって自分にとっては結構珍しいことです。なので、受けたインスピレーションが本当に大きかったんだと思います。音楽家であることの喜びを感じて、自分の力が及ばない何かに動かされているみたいな、誘われるがままに進めていったというか。今回はそういう感じで作れて、本当に嬉しかったですね。

SNARE COVER「凛とした強さを感じた」

井手上漠(C)モデルプレス
― 井手上さんに関してはどんなことを感じました?

SNARE COVER:僕はもともと漠さんのファンでしたが、実際に会って、想像していた以上に神秘的な美しさがあって感動しました。全てを受け入れるような柔らかさや綺麗さとかはもちろんあるんですけど、それだけでなく、覚悟を持って生きてるみたいな凛とした強さもあって。インタビューで漠さんが、「ジェンダーレスであることの概念は、自分の中でもう既に超えている」と、「自分の好きなものは誰にも奪えない」とおっしゃっていたのが特に印象的でしたね。その若さでそういうことが言えるのってすごいなって。

― 井手上さんは、ご自身のことを強いと思います?

井手上:自分ではあまり分からないけれど、「柔らかいイメージだけど、実際に話してみると凛としてるね」とかってよく言われます。でも、自分の強さの盾になっているのは、やっぱり母に教えられてきたことが大きいのかな。独り立ちして約1年経ちますけど、怖いものに立ち向かう時でも、母の教えのおかげでなんでも立ち向かっていけると思っています。

― お母さまの教えの中で、一番大事にしていることは何ですか?

井手上:数え切れないくらいありますね。母が「ああしろ、こうしろ」って私に言ってきたのは私が中学生の頃までで、高校生になってからは全く何も言わなくなったんです。仕事で忙しかったのもあるんでしょうけど、私が1日中寝ていようが、全部自分の責任だよって、口にしないから自分で気付きなさいっていう感じで。その母が、私が高校を卒業する前、3年ぶりに言ったのが「謙虚でいなさい」ということでした。その時は意味がよくわからなかったけれど、今、謙虚とは何かということをすごく考えますし、謙虚でいることの大切さも改めて感じています。

SNARE COVER(C)モデルプレス
― 本当に素敵なお母様ですね!では、SNARE COVERさんにお聞きします。このプロジェクトのような、モデルとなる方をインタビューして曲を作るというやり方は初めてだったのでしょうか?何か新しい発見はありましたか?

SNARE COVER:誰かと一緒に曲を作ることはありますけど、こうやって一人のタレントさんを元に作っていくのは初めてでした。自分が持っている力を集めて悩んで作るというよりは、漠さんが持っている力を元に作っていったんで、その違いはすごく感じましたね。

井手上漠「天気のいい休日の朝に聴きたい」

― 井手上さんは完成した曲を聴いて、どのように感じましたか?

井手上:まず最初に思ったのは、天気のいい休日の朝に聴きたい曲だということですね。曲調からも、歌詞からも、やる気と元気をもらえるので。私、休日の朝とか、起きた時に太陽の光が部屋に入ってきてると、すごいやる気が出るんです。日光が「頑張れよ」って私を照らしてくれる感じがして。そんな時にこの曲をかけて1日を迎えたいです。

井手上漠(C)モデルプレス
― 歌詞については、どういう印象を持たれましたか?

井手上:私はめちゃくちゃ地元愛が強いので、いろんなメディアに出る度に私の出身地である島根の隠岐の島について話すんですが、今回「ないものはない」という隠岐の島のメッセージを歌詞に入れてくれたのがとても嬉しかったです。「ないものはない」って、「ないから仕方ない」というような意味と、その逆の「全てがある」という意味と、二つの意味に捉えることができると思うんですけど、隠岐の島はその両方で成り立っていると思います。

― とても素敵なメッセージですね。他に、歌詞で好きなフレーズはありましたか?

井手上:「雨のシャワー 涙で流し」というのも、とても好きです。私、たまに雨に当たりたくなる時があるんですよ。泣きたい時に雨に当たると泣いた気分になるし、頑張らないと出ない汗も雨に当たれば流せた気分になるので、心が満たされるんです。シャワーを浴びながら悩みごとを考える、なんてこともします。

― ご自身のことが歌詞となって表現されたことで、改めて気付いたことはありますか?

井手上:私のことをちゃんと知ってくれている、気持ちも届いてるんだって感じられて嬉しかったし、安心しました。曲の捉え方は人それぞれだと思いますけど、私にとっては自分の曲だから、子供のような愛着を感じます。

SNARE COVER:そう言っていただいて、 とても嬉しいです。

SNARE COVER「漠さんのバックグラウンドをしっかりと描いた」

― SNARE COVERさんが詞を書く中で、特に意識したことはどんなことですか?

SNARE COVER:僕にとって音楽を作る上で大事なことって、メロディと、そのメロディに乗る言葉の響きなんです。例えば、先ほども話に出たCメロの「あなたの言葉沁み渡り 季節の色に気付き 涙雨のShowerで流し 見上げればカラフルな虹」という歌詞は、少し韻を踏ませて最後の言葉の母音は全部「イ」で終わらせてます。そこに「ア」とか違う音が入ってしまったりすると、芸術性に欠けるなと思ったので、そういうこだわりはすごく意識して作りました。いつもは言葉やストーリー性より響きを優先することの方が多いんですが、このプロジェクトはストーリー性がものすごく大事なので、響きにこだわりつつも、漠さんのバックグラウンドもしっかりと描いてます。

SNARE COVER(C)モデルプレス
― 「儚く散る桜吹雪 胸躍る打ち上げ花火 真っ赤っかに染まる紅葉 かじかんだ手に溶ける雪」という歌詞も、とても素敵ですね。隠岐の島の四季をイメージして?

SNARE COVER:そうですね。実際に隠岐の島に行ったことはないですが、四季がはっきりしているところや雄大さにおいては、僕が住む北海道と少し共通している部分があるんじゃないかなと思って、色々と自分の中で想像して作りました。

― 井手上さんは歌を聴いて、島を想像できました?

井手上:できますね。四季のところは一つひとつの描写が島と合っていると思います。例えば東京だったら桜を見たいと思ったらわざわざ見に行かないといけないし、花火も花火大会に行かないと見れないけど、沖ノ島は高い建物がなくて遠くまで見渡せるので、桜も花火もすぐそこにある感じなんです。そういうことも感じられて良かったです。

井手上漠「前向きに人生を送っていただけたら嬉しい」

― 最後に、この曲をどんな方に聴いて、どんなことを感じて欲しいかなど教えてください。

SNARE COVER:この曲で僕が一番好きなのは、「好きなものは誰にも奪えない」というところです。一番深くて確信をつくようなメッセージなんじゃないかなと思ってます。自分が本当に好きなものを隠さざるを得ない人たちや、若い方たちは特に、自分の価値とか力とか、社会に出たらどういうことができるのとか、分からずに一人で悩んでいる人は多くいると思うので、そういう人たちに伝わったら嬉しいですね。漠さんはご自身の経験を通して、世間に対して声をあげることができる、使命感を持っている方のように感じます。それは誰もができることではないですし、僕は今回漠さんの力をお借りして、この曲を作ることができて本当に嬉しく思います。

井手上:元気や勇気をもらえるポジティブな曲で、言葉一つひとつが今のZ世代の子たちに刺さるんじゃないかと思います。私は学生の頃、本当に好きなことを表に出せなくて悩んでいた時期がありました。悩んだり考えたりすることは、もちろん悪いことではないですけど、それを表に出した時にどういう世界が待っているかは分かっていた方がもっと前向きになれると思うんですね。だから、同じように悩んでいる人たちにこの曲が届いて、好きなものをもっと積極的に発信したり、らしさを全開に生きていけるような、やる気や勇気につながったらいいなと思います。もちろんZ世代だけでなく、いろんな世代の方たちの心に刺さる歌だと思うので、是非多くの方に聴いていただいて、皆さんに前向きに人生を送っていただけたら嬉しいです。

― ありがとうございました。

(左から)SNARE COVER、井手上漠(C)モデルプレス
(modelpress編集部)[PR]提供元:ene

Interview&Photo by Atsuko Tanaka

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