モデルプレスのインタビューに応じた山田裕貴(C)モデルプレス

山田裕貴、志村けんさん役として“大事にした時間”と闘った重圧「乗り移ったかのように」<「志村けんとドリフの大爆笑物語」インタビュー>

2021.12.14 08:00

「小さい頃から人が笑っている姿を見ることが好きで、本当にお笑い芸人さんになりたかった」

そう語るのは、12月27日放送のフジテレビ系ドラマ「志村けんとドリフの大爆笑物語」(よる9時~)で志村けんさん役を演じる俳優の山田裕貴(やまだ・ゆうき/31)。しかし、日本を代表するコメディアンとして今も多くの人々の心に残り続ける志村さんを演じた裏には、大きなプレッシャーもあった。役柄とまっすぐ向き合い続けた撮影期間を経て、彼が感じたこととは――。<インタビュー>

  

山田裕貴、“志村けんさん役”演じる決意

(左から)加治将樹、勝地涼、山田裕貴、遠藤憲一、松本岳(C)フジテレビ
「志村けんとドリフの大爆笑物語」は、志村さんがコメディアンになることを決意し、1968年、高校卒業間際にバンドのボーヤ(付き人)としてザ・ドリフターズに携わるところから始まる。見習い時代の修業の日々、そして1974年にメンバーの一員となってから1990年代までの、想像を絶するような過酷なスケジュールや、人気の裏に隠された挫折と苦悩、葛藤を描く。

山田裕貴(C)モデルプレス
オファーが来た時のことを、山田は「『本当に僕に来ている話ですか?』と疑いましたし、『もしかしたら他の方に当たってダメだったから僕に回ってきたのかな』とか、考えなくてもいいようなことを考えてしまうくらいプレッシャーでした」と振り返る。

「でも、志村さんを“生きさせてもらう”なんて、俳優をやっていてそんなチャンスは二度とないだろうなと思って。もうやるしかないなと決意しました」

志村けんさんの“考え”まで知る…役作りの難しさ

山田裕貴(C)モデルプレス
軽快なテンポの会話が多い今作では、志村さん役ということにプラスして、“アドリブに見えるように芝居をする”という難しさもあった。

「役作りというかモノマネに近いような、でもモノマネというだけではダメだし…。志村さんのことを知るために、とにかく志村さんのことが載っている本や雑誌を読んで、どんな発言をしていてどんな風に考えていたんだろうと自分の中で深く考えました。

コントシーンでは、志村さんと加藤茶さんがアドリブでやっていた流れをそのまま文字起こししたものをベースに撮影しましたが、それをアドリブのように見せるという難しさもありました。何度も何度も志村さんのコントの動画を見て、『あ、このタイミングで加藤さんのことを叩いているな』『声色ってどういう感じかな、ここはもっと早く言うんだ』と確認していました」

山田裕貴(C)モデルプレス
加藤茶役・勝地涼には「本当に色々な面で助けていただいた」という山田。

「勝地さんは僕がプレッシャーを感じていることを察して、撮影の合間は他愛のない話で盛り上げてくださって。僕がセリフを言ったら自然と返してくれて、そこから急にコントのセリフ合わせが始まることもよくありました。他のシーンを撮りながら、合間には違うシーンのセリフをずっと2人で合わせているみたいな。『なんていう時間なんだ』と思いました(笑)」

山田裕貴にとって大事だった時間「志村さんと会話をしているような感覚」

山田裕貴(C)モデルプレス
“誰もが知っている人物を演じる”というプレッシャーを背負いながらも、撮影は進んでいく。山田は、撮影期間について「志村さんが乗り移ったかのようにお酒を飲む機会が増えました(笑)」と明かした。

「全国民が知っている方なので、自信を持ってやっても『これは志村さんではない』とおっしゃる方もいるでしょうし、とんでもないものを背負っているなというのは感じていました。『だいじょうぶだぁ』ではなく、『大丈夫かな、大丈夫かな』と毎日思っていました(笑)」

「帰宅後は缶ビールを開けて、その日の反省をして、あとは目の前にある志村さんのコント動画をひたすら見て。でも、この時間はなんだか志村さんと会話をしているような感覚で、僕にとって志村さんのことだけを考えている時間というのはすごく大事なものでした」

山田裕貴「誰かが笑うことで安心感をもらえる」

山田裕貴(C)モデルプレス
志村さん役を演じることが発表された時、山田はSNSで「志村けんさん役として、生きました」と報告し、2019年7月の自身のツイートを引用。そこには「ぼくはお笑いがだいすきだ 笑っている人間の顔がだいすきだ こんな中でも 必死にぼくらを笑わせてくれようとする 芸人さんたちが本当にだいすきだ もちろん芸人さんには敵わないけど 僕も人の心を動かすようなお仕事がしたい」と当時の山田の想いが記されていた。

そんな彼にお笑いを好きになったのはいつからか尋ねると、「小さい頃から人が笑っている姿を見ることが好きで、本当にお笑い芸人さんになりたかった」と話す。

「人の笑顔を見てからじゃないと自分は笑えないというか…。小学校の頃から、自分が変なことをやって皆が笑ってくれていることで『あ、俺ここにいていいんだ』と安心できて。僕の家は寡黙な人が多かったので、それもあって笑わせたいと思ったのかもしれないです。誰かが笑うことで安心感をもらえるから、面白いかどうかは別として、人が笑っているのが好きでした」

山田裕貴の“大切な仲間”

山田裕貴(C)モデルプレス
志村さんにとってザ・ドリフターズの存在が大きかったように、山田も「現場で出会った人は全て、一緒に作品を作る大切な仲間です」と語る。

「最近はレギュラーや主要人物の役をいただける機会も増えてきましたが、それまでは一部だけ参加する現場がほとんどだったので、誰かとめちゃくちゃ仲が深まったみたいなことは少なくて。もちろん、中には一緒に演じた記憶が濃く残っている方もいますが、共演させていただいた全ての人を“大切な仲間”だと思っています」

山田裕貴、新たな決意と夢

山田裕貴(C)モデルプレス
2021年、今作のほかにも映画6本(声優出演を含む)・ドラマ6本と驚異の活躍を見せた山田。

「最近『ようやく見てもらえる俳優になってきたのかな』と自分でも感じるところがあって。その分、お芝居に対する期待値やハードルは上がってくると思うので、1個1個クオリティを落とさずに上質なものを届けられる俳優にならなければなと。これまでも常々そう考えていましたが、改めて強く思いました」

そんな山田がいつも口に出しているという“夢”は「遺影で『イエーイ!』ってやっているおじいちゃん」。

「お葬式で『にんげんっていいな』を流したいんです(笑)。そんなふざけたお葬式なのに皆は泣いてくれているみたいな。周りの皆を愛して愛された俳優・人間になれたらいいなと思っています」

山田裕貴の“夢を叶える秘訣”「志村さんを演じることから逃げはしなかった」

山田裕貴(C)モデルプレス
2019年のインタビューでは“夢を叶える秘訣”として「夢を夢だと思わない」と話していた山田。2年間で環境は大きく変わったはずだが、「今も思っていないですね。実現できると思っている」と力強く答える。

そして「でも今思う秘訣を挙げるなら、“逃げないこと”」と付け加えた。

「目の前にあることから逃げないこと。どれだけ難しくても、どれだけ壁が分厚くても、それを『どう突破できるか』『どうクリアしていくか』というのを考え続けることが秘訣です」

まさにその秘訣が、今回の作品との向き合い方にあらわれていた。

「そうですね。逃げなかったです。それがどういう結果になるかはわからないけど、志村さんを演じることから逃げはしなかった」

山田裕貴からのメッセージ「志村さんに代わって…」

山田裕貴(C)モデルプレス
今回の取材は多忙なスケジュールの合間に行われたものだったが、山田は終始謙虚な姿勢でインタビューに応じ、明るく現場を盛り上げてくれた。

「コロナ禍になって志村さんが亡くなっただけではなく、生きることが辛くなったり、大変な思いをしている方もたくさんいると思います。放送日の1日だけでもいいので、そういう方たちを志村さんに代わって大笑いさせられたらいいなと思っています。ぜひ笑って観てやってください」―――強い信念を持って山田が“生きた”志村さん役を観るのが楽しみで仕方ない。

(modelpress編集部)

山田裕貴(やまだ・ゆうき)プロフィール

1990年9月18日生まれ。愛知県出身。2011年「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。近年の主な出演作には映画『あゝ、荒野』『あの頃、君を追いかけた』、ドラマ「HiGH&LOW」シリーズ(日本テレビ系)、「特捜9」シリーズ(テレビ朝日系)、NHK連続テレビ小説「なつぞら」など。

2021年も、ドラマ「青のSP―学校内警察・嶋田隆平―」(カンテレ・フジテレビ系)、「ここは今から倫理です。」(NHK)、「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ系)、映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』『テン・ゴーカイジャー』など多彩に活躍。2022年の待機作に映画『ハザードランプ』、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」がある。
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