香取慎吾「逃げそうになる瞬間は何度もあった」逃げない理由と夢を叶える秘訣 「凪待ち」インタビュー
2019.06.25 06:00
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俳優、アーティスト、アイドルと多彩な表現活動を続ける香取慎吾(42)。新たに挑む映画『凪待ち』(6月28日公開)で演じるのは、“ろくでなしの男”。誰も見たことのない香取慎吾の表情がそこにある。<モデルプレスインタビュー>
白石和彌監督と初タッグを組み、“最も切ない暴力”を描く本作は、香取にとって「新しい地図」を立ち上げてから初となる単独主演映画。モデルプレスのインタビューでは、本作を通じて見つめ直したという人生について、香取自身の“ダークサイド”な一面、稲垣吾郎・草なぎ剛のこと、そして香取だからこそ伝えられる“夢を叶える秘訣”などたっぷりと語ってもらった。
香取:映画を観てくださった方が「今まで見たことない香取慎吾だ」と言ってくださるんですけど、そこって僕の中では案外強くはないんです。作品は監督のものだと思っているので、そう思ってくださる方が多いというのは白石監督が“今まで見たことない香取慎吾”を引き出してくれたのかなと思います。
― 郁男という役を掘り下げるうえで、ご自分の中で何か発見はありましたか?
香取:今までの役は正義を語る役が多かったんだなと。簡単に言うと、前向きで、その人物自体が光を背負ってみんなに光を与えるような役。そこに気づけたのは、今回あまりにも光から離れているからだと思います。
こういった映画だと、本当はもっと光が差すもの。だけどこの映画のエンディングでは、光が差しているのか差していないのか…その光の見え具合が大好きです。映画を観終えたときに、自分の人生に置き換えて、自分の位置ってどの辺なのかなって考えさせられました。今の自分は幸せ。まず監督が大好きですし、白石監督の作品に参加できているのが幸せだなと思っているので、公開直前の今はすごく幸せです。
香取:華やかで闇とはかけ離れたアイドルとして生きているから(笑)、みなさんは見たことのない、みなさんには見せない闇ですよね。闇ではあるけど、好きな部分かもしれないです。お芝居では、俳優さんの生きてきた人生が役に映ると思うんです。今回監督が僕の闇を引き出してくれたので、監督にやられたなって感情があります。
― 郁男は“逃げる男”ですが、香取さんは逃げたくなるような闇に直面したとき、どう向き合っていますか?
香取:僕はけっこう逃げないかもしれないです。逃げそうになる瞬間もいっぱい経験してきましたけど、逃げなかったから今ここにいるのかなって思います。結果、逃げない。逃げそうなときもありますけど、逃げて後悔したくないんですかね。逃げるっていう選択はあるかもしれないけど、その中に少しでも隙間を見つけたら、それをこじ開けてでも光をめざしてきたかもしれない。……かっこいい。
― (笑)。かっこいいです!今回は新しい出発をされてから初めての単独主演映画となりました。完成披露試写会ではプレッシャーもあったとお話しされていましたね。
香取:『クソ野郎と美しき世界』は、どこか新しい始まりとしてのお祭りのような感覚もあって、先は見えていないけどハッピーだったんです。それが終わっていざ一人でやらせてもらうとなったとき、「あ、やべーな。大丈夫かな」っていろんな思いが生まれました。でもまずそれを壊してくれたのは、白石監督と最初にお会いした時。『凶悪』『孤狼の血』を観て、単純にすごくコワイ監督なんじゃないかと思っていたけれど、会った瞬間に「いつの日か香取さんと仕事がしたかった」と延々お話してくださって。その瞬間に、不安やプレッシャーがなくなった部分はありました。すごく愛情にあふれる監督で。でも『凶悪』のような作品を作るんですから。その不一致な部分が、何かいい化学反応を起こしてくれるんじゃないかと思えました。
それに撮影が始まったら、映画への愛がとても深い監督だということを知って、自分が抱いていたプレッシャーは間違っていたなと。今まで、ドラマでも映画でも「作品は監督のもの」と思ってやってきてたんですよ。でもそのときの自分はちょっと変わっちゃっていたのかもしれない。自分が主役だから「ちゃんとやらなきゃ」って。それが監督とお会いして撮影を進めることで、映画は監督のものなんだと思い起こすことができました。
香取:“慎吾ちゃん”はちゃんとした格好でいろんなところに映っていますけど、普段僕、これで生活してるんで(笑)。僕は初めて見る感じじゃないから全く違和感はなかったです(笑)。
― (笑)。メイクもなしで撮影に挑まれたそうですね。それは香取さんのご意見だったのでしょうか?
香取:いえ。僕が何かを言うことは一切ないですね。衣裳合わせのときも、着ているものを全部脱いで「はい、どうぞ」って感じで。メイクも「ノーメイクでお願いします」ということだったので「はい、わかりました」と。無精ヒゲは衣裳合わせのときにたまたま伸びていて、監督が「そのままいきたいです」と。
― こういった取材やイベントでの衣裳でも香取さんのご意見が反映されることはないんですか?
香取:ほぼないですね。時々私服のときもありますけど、基本的にスタイリストさんにお任せしています。「これとこれだったらどれがいいですか?」と聞かれても、「どれがいいの?」って聞いて。それで選んでくれたのを「じゃあ、それにします」と。もっと考えてよって言われるくらい(笑)。映画は監督のもの、衣裳はスタイリストさんのものと思っているからですかね。今日も衣裳ですけど、見た目がどうなっているか一度も鏡で確認していないくらいです。
― 鏡を見ないんですね。それは普段コーディネートを組むときでも?
香取:言われてみればあまり見ないかも。家を出るときに最後に姿見でチェックするっていうのもあまりしないかもしれないです。
― そうなんですね。ちなみにモデルプレスでは取材の際にいつも服や靴にも注目させてもらっています。ファンの方も香取さんのファッションを隅々チェックされているようで。
香取:Twitterで見てますよ。おもしろいよね、あれ。隅々までありがとうございます。
― 香取さんから見た稲垣さん、草なぎさんの普段のファッションの印象についても教えていただけますか?
香取:最近の稲垣さんはいいですね(笑)。すごくいい感じです。プライベートの格好は基本的に黒っぽいんですけど、昔と比べると最近は黒の中にちょっと差し色が入ってきたりして。これ言ったら怒られるかもしれないですけど(笑)、ヒラヒラしてるんです。ヒラヒラして色が入ってる。吾郎ちゃんには直接言わないですけど、それが最近好きです。草なぎさんは、「そのキャップどこで買ったの?」ってくらい僕とは違うファッションが好きですよね。同じ服バカですけど、ジャンルがこうも違うかと。
香取:今できることを一生懸命やること。無理矢理じゃなくても、ちょっとでも好きな部分を見つけて、それを貫いて進んでいけば、自分が描いていたのと違う方向になったとしても、目指す場所に上がっていけるんじゃないかなと思います。
― ありがとうございました。
「別の道に進むことになっても、次の新しいステップに進んで、そこで上を目指すわけじゃないですか。そうしたらこうやってまた巡り会えて、一緒にお仕事できる時が来る。それって本当に素敵なことですよね」
どんなときも光をめざし進んできた香取慎吾の言葉は、輝いていて温かい。
映画を観終えて、“ろくでなしの男”になぜか手を差し伸べたくなったのは、そんな香取の温かさと光が役に投影されていたからだと思った。
(modelpress編集部)
キャスト:香取慎吾 恒松祐里 西田尚美 吉澤健 音尾琢真 リリー・フランキー
監督:白石和彌
脚本:加藤正人
<ストーリー>
毎日をふらふらと無為に過ごしていた郁男は、恋人の亜弓とその娘・美波と共に彼女の故郷、石巻で再出発しようとする。少しずつ平穏を取り戻しつつあるかのように見えた暮らしだったが、小さな綻びが積み重なり、やがて取り返しのつかないことが起きてしまう―。
ある夜、亜弓から激しく罵られた郁男は、亜弓を車から下ろしてしまう。そのあと、亜弓は何者かに殺害された。恋人を殺された挙げ句、同僚からも疑われる郁男。次々と襲いかかる絶望的な状況から、郁男は次第に自暴自棄になっていく―。
“誰も見たことのない香取慎吾”―ろくでなしの男を演じ見つけたこと
― 今回演じるのは、ギャンブルに溺れ、暴力と狂気に満ちた主人公・郁男。これまで見たことのない香取さんの姿が映し出されていますね。香取:映画を観てくださった方が「今まで見たことない香取慎吾だ」と言ってくださるんですけど、そこって僕の中では案外強くはないんです。作品は監督のものだと思っているので、そう思ってくださる方が多いというのは白石監督が“今まで見たことない香取慎吾”を引き出してくれたのかなと思います。
― 郁男という役を掘り下げるうえで、ご自分の中で何か発見はありましたか?
香取:今までの役は正義を語る役が多かったんだなと。簡単に言うと、前向きで、その人物自体が光を背負ってみんなに光を与えるような役。そこに気づけたのは、今回あまりにも光から離れているからだと思います。
こういった映画だと、本当はもっと光が差すもの。だけどこの映画のエンディングでは、光が差しているのか差していないのか…その光の見え具合が大好きです。映画を観終えたときに、自分の人生に置き換えて、自分の位置ってどの辺なのかなって考えさせられました。今の自分は幸せ。まず監督が大好きですし、白石監督の作品に参加できているのが幸せだなと思っているので、公開直前の今はすごく幸せです。
「逃げて後悔したくない」香取慎吾は“逃げない男”
― イベントなどで、香取さんにも“闇”の部分があるとお話しされていましたね。香取:華やかで闇とはかけ離れたアイドルとして生きているから(笑)、みなさんは見たことのない、みなさんには見せない闇ですよね。闇ではあるけど、好きな部分かもしれないです。お芝居では、俳優さんの生きてきた人生が役に映ると思うんです。今回監督が僕の闇を引き出してくれたので、監督にやられたなって感情があります。
― 郁男は“逃げる男”ですが、香取さんは逃げたくなるような闇に直面したとき、どう向き合っていますか?
香取:僕はけっこう逃げないかもしれないです。逃げそうになる瞬間もいっぱい経験してきましたけど、逃げなかったから今ここにいるのかなって思います。結果、逃げない。逃げそうなときもありますけど、逃げて後悔したくないんですかね。逃げるっていう選択はあるかもしれないけど、その中に少しでも隙間を見つけたら、それをこじ開けてでも光をめざしてきたかもしれない。……かっこいい。
― (笑)。かっこいいです!今回は新しい出発をされてから初めての単独主演映画となりました。完成披露試写会ではプレッシャーもあったとお話しされていましたね。
香取:『クソ野郎と美しき世界』は、どこか新しい始まりとしてのお祭りのような感覚もあって、先は見えていないけどハッピーだったんです。それが終わっていざ一人でやらせてもらうとなったとき、「あ、やべーな。大丈夫かな」っていろんな思いが生まれました。でもまずそれを壊してくれたのは、白石監督と最初にお会いした時。『凶悪』『孤狼の血』を観て、単純にすごくコワイ監督なんじゃないかと思っていたけれど、会った瞬間に「いつの日か香取さんと仕事がしたかった」と延々お話してくださって。その瞬間に、不安やプレッシャーがなくなった部分はありました。すごく愛情にあふれる監督で。でも『凶悪』のような作品を作るんですから。その不一致な部分が、何かいい化学反応を起こしてくれるんじゃないかと思えました。
それに撮影が始まったら、映画への愛がとても深い監督だということを知って、自分が抱いていたプレッシャーは間違っていたなと。今まで、ドラマでも映画でも「作品は監督のもの」と思ってやってきてたんですよ。でもそのときの自分はちょっと変わっちゃっていたのかもしれない。自分が主役だから「ちゃんとやらなきゃ」って。それが監督とお会いして撮影を進めることで、映画は監督のものなんだと思い起こすことができました。
香取慎吾のファッション観 稲垣吾郎・草なぎ剛の私服事情も
― 劇中で披露する無精ヒゲを蓄えた姿も新鮮でした。ご自身のヒゲ姿を見たときの感想は?香取:“慎吾ちゃん”はちゃんとした格好でいろんなところに映っていますけど、普段僕、これで生活してるんで(笑)。僕は初めて見る感じじゃないから全く違和感はなかったです(笑)。
― (笑)。メイクもなしで撮影に挑まれたそうですね。それは香取さんのご意見だったのでしょうか?
香取:いえ。僕が何かを言うことは一切ないですね。衣裳合わせのときも、着ているものを全部脱いで「はい、どうぞ」って感じで。メイクも「ノーメイクでお願いします」ということだったので「はい、わかりました」と。無精ヒゲは衣裳合わせのときにたまたま伸びていて、監督が「そのままいきたいです」と。
― こういった取材やイベントでの衣裳でも香取さんのご意見が反映されることはないんですか?
香取:ほぼないですね。時々私服のときもありますけど、基本的にスタイリストさんにお任せしています。「これとこれだったらどれがいいですか?」と聞かれても、「どれがいいの?」って聞いて。それで選んでくれたのを「じゃあ、それにします」と。もっと考えてよって言われるくらい(笑)。映画は監督のもの、衣裳はスタイリストさんのものと思っているからですかね。今日も衣裳ですけど、見た目がどうなっているか一度も鏡で確認していないくらいです。
― 鏡を見ないんですね。それは普段コーディネートを組むときでも?
香取:言われてみればあまり見ないかも。家を出るときに最後に姿見でチェックするっていうのもあまりしないかもしれないです。
― そうなんですね。ちなみにモデルプレスでは取材の際にいつも服や靴にも注目させてもらっています。ファンの方も香取さんのファッションを隅々チェックされているようで。
香取:Twitterで見てますよ。おもしろいよね、あれ。隅々までありがとうございます。
― 香取さんから見た稲垣さん、草なぎさんの普段のファッションの印象についても教えていただけますか?
香取:最近の稲垣さんはいいですね(笑)。すごくいい感じです。プライベートの格好は基本的に黒っぽいんですけど、昔と比べると最近は黒の中にちょっと差し色が入ってきたりして。これ言ったら怒られるかもしれないですけど(笑)、ヒラヒラしてるんです。ヒラヒラして色が入ってる。吾郎ちゃんには直接言わないですけど、それが最近好きです。草なぎさんは、「そのキャップどこで買ったの?」ってくらい僕とは違うファッションが好きですよね。同じ服バカですけど、ジャンルがこうも違うかと。
香取慎吾が語る“夢を叶える秘訣”
― では最後に、モデルプレス読者へ向け、香取さんが考える“夢を叶える秘訣”のメッセージをお願いします。香取:今できることを一生懸命やること。無理矢理じゃなくても、ちょっとでも好きな部分を見つけて、それを貫いて進んでいけば、自分が描いていたのと違う方向になったとしても、目指す場所に上がっていけるんじゃないかなと思います。
― ありがとうございました。
編集後記
香取さんとは以前、記者としてではなく、違う形で一緒に仕事をさせてもらったことがあった。数年越しの再会の喜びを伝えると、“夢を叶える秘訣”を語る場面でこんな言葉をくれた。「別の道に進むことになっても、次の新しいステップに進んで、そこで上を目指すわけじゃないですか。そうしたらこうやってまた巡り会えて、一緒にお仕事できる時が来る。それって本当に素敵なことですよね」
どんなときも光をめざし進んできた香取慎吾の言葉は、輝いていて温かい。
映画を観終えて、“ろくでなしの男”になぜか手を差し伸べたくなったのは、そんな香取の温かさと光が役に投影されていたからだと思った。
(modelpress編集部)
映画『凪待ち』
公開日:2019年6月28日キャスト:香取慎吾 恒松祐里 西田尚美 吉澤健 音尾琢真 リリー・フランキー
監督:白石和彌
脚本:加藤正人
<ストーリー>
毎日をふらふらと無為に過ごしていた郁男は、恋人の亜弓とその娘・美波と共に彼女の故郷、石巻で再出発しようとする。少しずつ平穏を取り戻しつつあるかのように見えた暮らしだったが、小さな綻びが積み重なり、やがて取り返しのつかないことが起きてしまう―。
ある夜、亜弓から激しく罵られた郁男は、亜弓を車から下ろしてしまう。そのあと、亜弓は何者かに殺害された。恋人を殺された挙げ句、同僚からも疑われる郁男。次々と襲いかかる絶望的な状況から、郁男は次第に自暴自棄になっていく―。
香取慎吾(かとり・しんご)プロフィール
1977年1月31日生まれ、神奈川県出身。91年にCDデビュー。主な出演作に、ドラマ『新選組!』(04/NHK)、『西遊記』(06/フジテレビ系)、映画『THE 有頂天ホテル』(06)、『座頭市 THE LAST』(10)、『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~』(11)、『人類資金』(13)、『ギャラクシー街道』(15)、『クソ野郎と美しき世界』(18)などがある。2017年には、稲垣吾郎・草なぎ剛らと出演した「72時間ホンネテレビ」(AbemaTV)で様々な記録を樹立。日本財団パラリンピックサポートセンターのスペシャルサポーター、及び国際パラリンピック委員会特別親善大使に任命。2018年8月に香取と祐真朋樹がディレクターを務める「JANTJE_ONTEMBAAR」がスタート。9月にパリ、ルーヴル美術館で初個展「NAKAMA de ARTS」展を開催。2019年3月から6月には「BOUM! BOUM! BOUM! 香取慎吾NIPPON初個展」を開催した。
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