吉岡里帆「すごく苦しい思いもするかもしれないけど…」背中を押した父の言葉 連ドラ主演で難テーマに挑む<インタビュー>
2018.07.12 06:00
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女優の吉岡里帆(よしおか・りほ)が7月17日スタートのカンテレ・フジテレビ系ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(毎週火曜よる9時)に出演する。2016年の朝ドラ『あさが来た』以降、話題作への出演が続くが、今作で挑むのは新人ケースワーカー。生活保護という社会性の高いテーマを描いた作品で人の人生に寄り添う。今回、吉岡はモデルプレスなどのインタビューに応じ、同作への意気込みを語った。
吉岡里帆主演「健康で文化的な最低限度の生活」
柏木ハルコ氏による同名漫画を実写化。安定を求めて公務員となった義経えみる(吉岡)が、“生活保護受給者”を支援するケースワーカーの仕事に配属されたことをきっかけに、何らかの事情で生活に困窮している受給者のさまざまな“人生”に向き合い、戸惑いながらも奮闘していく様子を描く。吉岡里帆の役作り
― 台本を読んで感じた印象からお願いします。吉岡:目を逸らしてはいけない部分をしっかり生々しく描きながらも、視聴者の方が見た後に希望を持って「明日も頑張ろう」と明るい気持ちになれるような脚本だと思いました。それに脚本では、私が演じる義経えみるの設定として、映画を撮っていた、というオリジナル要素が入っているんです。えみるにとって自分が夢に見ていた映画の世界はとても非現実的なもので、しかし実際に自分が仕事として向き合うことになったケースワーカーという仕事は、今まで経験したことがないぐらい濃密な人生の物語があって…という、少し皮肉めいた対比がされていて面白かったです。
― 特に好きなシーンはありましたか?
吉岡:えみるが「風と共に去りぬ」を見るシーンが好きです。前向きで少し抜けてるところがある子なので、どんなに重いことを抱えていても「まあ、いっか」と考える。名作とリンクする部分もあったので、この先も名作映画との対比シーンがあるのかな、と楽しみです。
― 今回は社会問題をテーマとした作品ですね。
吉岡:生活保護という題材自体が色々な側面を持ち合わせていて、どう関わっているかによって、見え方が全然違うものですよね。なので、原作は1つの側面だけを描くのではなくて、どの側面も描いていこうと、果敢に挑戦している印象です。もちろんドラマ班も同様に、一部分だけで美談のように描くこともないですし、だからって暗く描いていくわけでもなく、本当にフラットに現状の問題を描きつつ、絶妙なところを表現しようとしています。
― えみるという主人公はどう捉えていますか?
吉岡:キャラクターとしては良くも悪くも普通の子。就職したばかりで何も知らない、でも頑張って働こうという希望も持っていて、不器用だけどお人好しな、等身大の22歳という感じがしています。もちろん原作には近づきたいと思っているのですが、自分の感情にも嘘をつきたくないので、私が演じて感じた部分も出していきたいです。
― 役に入るにあたり、どんな準備をしましたか?
吉岡:原作でもケースワーカーの監修をされている衛藤(晃)さんがドラマでも監修をしてくださっていて、先日お話させていただきました。実際に体験されている話が、漫画で見た世界と同じぐらい濃くて…緊張感がありました。また、私が新人役なので、これから新人の方にもお話を伺う予定です。ベテランの方との対比や、知識がないからこそ訪問にしっかり行って情深く人の話を聞こうとする姿勢、日常生活で仕事をどういう風に受け止めていらっしゃるのか、など沢山聞きたいです。
あと原作だと、ケースワーカーで対峙した相手の人の話や生活環境を全身に浴びてしまって、それを家に持ち帰って影響されてしまっている描写があるんです。そこは、今回ドラマで自分も表現したいと思っているので、実際はどのくらい自分たちの私生活に仕事が影響を及ぼしているのか、といったところも知りたいですね。
吉岡里帆、オファー受け熟考
― オファーを受けたときは、即決でしたか?それとも悩みましたか?吉岡:考えました。まずプロットを読ませていただき、プロデューサーさんとお話させていただいて、原作を読んで…と色々と段階を踏んで考えました。でも米田(孝)プロデューサーがものすごい熱意でこの作品に挑まれているんです。「絶対面白いものになるから。めちゃくちゃ良いドラマになると思うから、一緒に頑張ろう」と言ってくださったのは大きかったです。
米田さんとは「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」でもご一緒させていただいたのですが、「レディ・ダ・ヴィンチ」では主役の吉田羊さんがすごくかっこよくて、いつかあんなふうに主演を張れたらいいなと憧れていたんです。そんな「もっと頑張りたい、もっと頑張りたい」と思っていた時期を見てくださっていたプロデューサーさんですし、作品にもスタッフさんにも役者にも愛情たっぷりに接してくださる方だと分かっていたので、一緒に作品作りしたいなと思い決断しました。
― 5月には事務所社長の小笠原明男さんが亡くなられましたが、生前この作品について何かお話はされましたか?
吉岡:「きみが心に棲みついた」を終えて、その後に「そろそろ一緒に作品選びをしていこう。作品のオファーが来たら一緒に台本を読んで、何をやっていくかを一緒に考えていこう」と明男さんが話してくださりました。私は「一緒に作品選びをしていきたい」とずっと話していたので、それがすごく嬉しかったんです。実は今回、初めて自分で本を読んで、これがしたいと自分で決断した1作目で。明男さんは生前「どうするか自分で決めなさい。難しい内容なので、簡単に人からやれって押し付けれるものではない。自分で選んでいいよ」と委ねてくれて、「自分がしたいと思うなら頑張ってみなさい」と背中を押してくれた作品でした。
吉岡里帆、共演者とのエピソードは?
― 共演する方の印象を教えて下さい(取材はクランクイン前に実施)。吉岡:井浦(新)さんとは、デビューして初めてのドラマに出演した時に共演させていただいたんです。昔から井浦さんが出られている映画を見ていたので、当時すごく嬉しくって!本読みだけでも本当に嬉しかったんです(笑)。その時は直接、お芝居をすることはなかったんですけど、終わる時に「いつか言葉をかわして一緒にお芝居できたらいいな」と思っていたので今回、とても感慨深かったです。ちょうど先程『ケンカツ』の本読みをしたのですが、半田(井浦が演じる半田明伸)さん、そのままで(笑)。こんな素敵な先輩に恵まれたえみるは本当に幸せ者だなと思ってしまいました。井浦さんは知的で優しい方なので、これからお芝居するのがすごく楽しみです。
田中(圭)さんはこの前まで「おっさんずラブ」に出ていらっしゃったので、ついつい視聴者目線で見てしまいましたが、今回は厳しい京極係長として全然違う人です(笑)。まだ一瞬しかお会いしていないのですが、しっかり一緒に作品を作っていきたいです。遠藤憲一さんは、こんなにチャーミングな大御所の方がいらっしゃるのか、というぐらい本当に変な壁がなく、たっぷりの優しさで接してくださる方です。初日から「吉岡ちゃん!」と言ってくださって、それもちょっと嬉しくて(笑)。この前、宣伝の撮影で、一緒に手でハートを作ったのですが、そういうのも楽しく一緒にしてくださるんです。初共演ですが、和気あいあいと温かい空気の中で撮影できるだろうな、という気がしています。
吉岡里帆「身が引き締まりました」父からメッセージ
― この作品をやることについて、ご家族の方はどんな反応でしたか?吉岡:報告をした時、父がものすごく喜んでくれたんです。「本当に苦しみ、大変な思いをしながら生活している方たちがたくさんいて、そういう中で皆それぞれ一生懸命頑張って生きている。里帆は里帆で自分の役割をちゃんと全うしなさい。とても意味のある仕事だ」と電話で言ってくれました。その後すぐに漫画を全部買って読んでくれたみたいで「すごく苦しい思いもするかもしれないけど、その苦しい分やりがいもとてもあるだろうし、伝わる人にはちゃんと届く作品になると思う」と言って、父親の会社の人や友達も皆が応援してくれて、すごく嬉しかったです。
― 素敵なお父様ですね。
吉岡:父親は、高校受験の時、大学受験の時、事務所に所属になった時、大役が決まった時など節目節目で人生にとって大切なことがどういうことなのか、という教えをくれる人なんです。昨日も偶然メールで「主演という大きな役をさせてもらうんだから、当たり前のことを誰よりも丁寧に頑張ってください。応援してます」というようなメッセージが来て、すごく身が引き締まりました。
家族は1番のファンでいてくれているので、よく深い話をするんです。私が仕事で悩んだり、喜んだりしたことは全部話すのですが、その都度その都度「自分が同じ年齢の時はこうだったよ」とか「一緒に働く人たちとこういう風に頑張っていくべきだよ」とか助言をくれます。
「健康で文化的な最低限度の生活」見どころ
― では、どんな方にこの作品を見てほしいですか?吉岡:生活保護をテーマにしていますが、あまり良く知らない若い人に知ってもらいたいので、ぜひ見てもらいたいですし、毎日仕事を一生懸命頑張っている人たちにも見ていただきたいです。あとはドラマ自体があまり重くなりすぎず、でもちゃんと考えていけるような作りになっていて、家族の話がとても多く描かれているので、家族皆で見ていただきたいです。
― 最後に見どころをお願いします。
吉岡:原作の柏木(ハルコ)先生が長い年月をかけて、綿密に取材されてきたものを漫画にされて、私達はそれに感動してドラマ化することになりました。
実際に現実で起こっていることが描かれているので、目を背けてはいけない内容ですし、人間関係が希薄になっている時代の中で、人と人との密接な関わりであったり、1対1で向き合うことの大事さだったり、とても大事なテーマを盛り込んでいます。
とても難しい題材ですが、それを超えるぐらいのエネルギッシュさで、希望のある作品にしていきたいと思ってます。そこではいろんな人達がいろんなことを思いながら、なんとか一歩進もうと懸命に人生と向き合っているので、今、どうすれば前に一歩進めるだろうか、と悩んでいる方はぜひ見て下さい。私達も一緒に前を向いて進んでいけたらいいなと思っています。よろしくお願いします。
― ありがとございました。(modelpress編集部)
健康で文化的な最低限度の生活 第1話あらすじ
かつて映画監督を目指したが挫折し、安定・平凡を求めて公務員になった義経えみる(吉岡里帆)。これでこの先の人生も安泰だとホッとしたのも束の間、栗橋千奈(川栄李奈)や七条竜一(山田裕貴)ら4人の同期とともに配属されたのは、生活保護受給者を支援する、激務必至の生活課だった…。早速、えみるも先輩ケースワーカーの半田明伸(井浦新)から担当を任されるが、その数なんと110世帯!福祉の知識もなければ人生経験も足りないえみるは、受給者たちの様々な人生模様に触れ、大きな不安と戸惑いの中で、ケースワーカーとしてのキャリアをスタートする。そんなある日、役所にかかってきた一本の電話が、えみるの運命を大きく左右することになる。えみるの担当受給者である電話の主は、突然「これから死にます」とだけ告げ、電話を切ってしまう。大慌てのえみるにたいして、前任者や親族は、いつものことだからとまともに取り合おうとしない。しかしこれが、新人のえみるにとってはあまりにショックな事件へと発展してしまう。配属早々、厳しい現実を突きつけられたえみるは、自分なりに受給者たちの人生に寄り添っていかなければならないと決意する。
しばらくして、えみるは求職活動中の受給者・阿久沢正男(遠藤憲一)と面談をすることに。阿久沢は、健康上の問題はないのになぜか咳が止まらず、聞けば、一日一食しか食べていないという。えみるから報告を受けた、えみるの上司の京極大輝(田中圭)は、阿久沢のお金の使い道に何か秘密があるのではとにらみ、「すぐに家庭訪問。徹底調査!」と指示を出す。意を決して阿久沢の家を訪ね、調査のために冷蔵庫の中を見せてもらったえみるは、そこであるものを見つけて……!?
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