モデルプレスのインタビューに応じた黒羽麻璃央 (C)モデルプレス

黒羽麻璃央の脳内、8割を占める「危機感」の正体――次に目指す先は明確「やるなら今だ」 モデルプレスインタビュー

2017.05.23 18:00

役者、黒羽麻璃央(くろば・まりお/23)に「今の頭の中は?」と尋ねると、「危機感が8割。あとの2割は…なんとかなるだろう精神」と笑った。そしてその危機感こそが、役者として一番のモチベーションになっているのだという。この先、ドラマ『ファイブ』(フジテレビ/初夏放送)、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』(10月7日公開)、映画『Sea Opening』(2018年早春公開)と映像作品が多数控え、これまで舞台中心だった活躍のフィールドをさらに広げようとしている。今こそ、しっかりと爪あとを残さなければ――そんな危機感に武者震いする彼にじっくりと話を聞いた。

  

単純に、テレビに出ている自分が好き

― 本日は舞台『男水!』の稽古でお忙しい中ありがとうございます。なんでも、体づくりのために厳しい食事制限中だとか…

黒羽:今日は朝から水以外、何も口にしていないです(笑)。

― 競泳というテーマでものすごい運動量なうえ、さらにストイックな…!

黒羽:前はどれだけ食べても太らなかったのに、今は食べたら食べた分だけ体に蓄えられるので…。それでもなるべく1日1回は、炭水化物を摂るようにしているんですけどね。

― 舞台が終わったら、思う存分好きなものを食べていただきたいですね。…突然ですが、2月に舞台『熱海殺人事件 NEW GENERATION』(作:つかこうへい、演出:岡村俊一)を観に行かせていただきました。

黒羽:ありがとうございます。

― つか作品がまさに“NEW GENERATION”なキャスト陣によって生まれ変わった形でしたが、舞台上で犯人・大山金太郎として生きる黒羽さんのものすごい気迫に終始圧倒されて。

黒羽:命を削っていましたからね(笑)。

― 本当に舞台上で吐いてしまうんじゃないかな、っていうぐらい…

黒羽:本当に、稽古場で過呼吸なんじゃないかっていう瞬間があって。でもそのぐらい大変なことをやっているんだなっていう…充実感はすごくありました。

― そういった姿もひっくるめて“役者・黒羽麻璃央”がめちゃくちゃカッコイイなと。

黒羽:ありがとうございます。つかさんの作品自体初めてでしたし、ああいう体力勝負なところも初めてで。運動はミュージカルや舞台でもやってきたんですけど、それとは体力の使い方が違いましたね。一公演ごと終わった後の疲労感が半端じゃなかった。心もえぐられるので。

― まくしたてるような長セリフも大変でしたよね。

黒羽:本当に。いや…大変でした、めちゃめちゃ(笑)。今までに喋ったことがないぐらいの量でしたから。

― 汗まみれで、舞台上で水を飲まれたりも(笑)。

黒羽:「何してもいいよ」って言われたので、「水飲みます!」って(笑)。

― それがまさに生きている舞台という感じがして良かったです。ビジュアルも髭をのばしていたこともあり、あの期間と今では全然顔が違うなぁと。

黒羽:そうですね。終わった時の達成感はヤバかったです。楽しかった。またつかさんの作品をやりたいと思いました。

― そして今は『男水!』ですが、日本テレビ初のドラマ&舞台連動企画ということで、ファンの皆さんはもちろん、業界内の注目も高かった作品だと思います。改めて、このプロジェクトを振り返るといかがでしたか?

黒羽:視聴率がどうだったのかなっていう…(笑)。そこは現実の問題として、ちょっと気にしていたところで。

― 初回は深夜帯にして3.7%の高視聴率だったと。

黒羽:本当にファンの方々はもちろん、業界の方からも「見たよ」とすごく温かい声をたくさんいただきました。今は舞台ですが、競泳を舞台でどう表現するかという部分で、「ドラマは良かったけど、舞台は良くなかった」とは思われたくないですね。元々、僕たちは舞台を中心にやってきた役者だし、そこで評判が落ちるというのは絶対に避けないといけない。「ドラマで見たあのシーンだ。舞台で生で見ると良かった!」っていう感動に持っていきたいです。

― ドラマでご自身の演技をご覧になってどうでしたか?

黒羽:僕はテレビに出ている自分が好きなので…(笑)。

― 良いですね(笑)。

黒羽:単純にね。映像に出てる自分が良いなっていう。こう言うと、なんか自分大好きみたいな感じになっちゃうんですけど(笑)。僕自身が望んでいたことなので、単純に良かったなって。友達とかも、知らない間に録画とかしてて(笑)。「録画して見たわ」「マジか!」みたいな。

― それは嬉しいですね!

黒羽:舞台だとどうしても、お金払って観に来て…っていうのがありますけど、テレビドラマだったら家で見られるじゃないですか。「昨日のあれ見たよ!」という声が聞けるのが今一番楽しくて、嬉しいです。

目指す先を「途中で忘れちゃってた」

― 『テニスの王子様』以降、『刀剣乱舞』や『黒子のバスケ』など舞台を中心にキャリアを重ねてこられましたが、今年は『男水!』を皮切りに映像作品がぐっと増えて。

黒羽:映像はすごくやりたいです。舞台も映像もできるのが一番だと思っています。今はまだ映像の世界では経験が少ないんですけど、経験していないからこそのワクワク感を大事にしたい。現場に慣れてしまうのは怖いんですよね。今は前ほど舞台を何本も連続でという感じではなく、映像を2作品ぐらいやって、また舞台に戻って…っていうサイクルなんですけど、それによってまた舞台が楽しくなってきて。

― 新鮮に感じられるわけですね。

黒羽:そうです。今すごくいい相乗効果を得ているなという。充実しています、本当に。

― やはり、デビュー当時からドラマや映画に出たいという思いは強かった?

黒羽:最初から思っていたんですけど、途中で忘れちゃってたんですよね。

― 目指す先を。

黒羽:「やりたいこと何だっけ?」って。元々、ドラマを見て「芸能界いいな」って憧れていたのに、いつしかそれを失っちゃっていたのはやっぱり怖かったですよね。

― ここ数年の2.5次元ブームもあり、どんどんコンテンツが舞い込んでくるという状況の中。

黒羽:お話をいただけることもそうですし、舞台だとどうしても拘束期間が長いので、他の作品ができなかったりもするんですけど、そういうことも含めてタイミング的に「違うことをやるなら今だな」と。もちろん舞台でスーパースターになるというのもすごいことだと思うんですけど、僕が元々やりたかったことはそれじゃない。一度、自分を見つめ直しました。それで今、こうやって映像作品に何本も出させてもらっているというのは相当運が良いというか…色んな人の頑張りがあってのことです。僕の頑張りはほぼないですから、そこは。

― それぞれの作品で結果を残してきたからこそだと思います。

黒羽:僕は与えられたものを成功させて、また呼んでもらえるようにするだけなんですけど、お仕事をいただけるというのは絶対に僕だけの力ではないので。

― ここまで続けてこられたモチベーションに、上がり下がりはありましたか?

黒羽:やる気が全く出なくて「休みてぇな…」って時もありますけどね(笑)。そういう期間もありましたけど、今はもう、何か仕事してないと不安になるっていうか。働いている方が楽だなと思います。

― 忙しいほうが楽。

黒羽:楽ですね。あまりジッとしてられないんでしょうね(笑)。怖い。モチベーションは恐怖。恐怖感。

― その恐怖がどこから来るのか、詳しく聞かせてください。

黒羽:本当に怖いです。自分の今のポジションみたいなものも、いつ誰かにピュッってとられるかわかんないし。今「やろう」っていう原動力は、危機感からしか来ていないかも。「このままじゃマズイ」っていう。やっぱり、だんだん先々のことを考えるようになってきて。着々と進んでいる感覚ではあるんですけど、最悪のパターンとかも考えちゃうんです。もう、20代中盤じゃないですか。年齢を重ねるごとに、だんだんイスは狭まっていくというか…本当に生き残り合戦なので。

― 非常にシビアですけど実際、皆さん同じ思いを抱えていらっしゃるんでしょうね。

黒羽:「10年後、誰が生き残っているか」みたいな。ぶっちゃけ、10代の頃はそういう話を聞いてもあまりピンと来なかったんですけど、今になって実感します。これを僕が後輩に伝えるかどうかは別ですけどね。多分、ピンと来ないと思うから(笑)。こんな風に考えるようになったのも、「ずっとこれで飯食っていきたい」って思ったことがひとつのきっかけでもあり。

― それはいつ頃ですか?

黒羽:去年ですね。

― かなり最近ですね。具体的なきっかけは?

黒羽:舞台『歌姫』(作・演出:宅間孝行 ※入山杏奈、阿部力、酒井美紀らと共演)ですね。絶対にあれがきっかけなんですけど。

― そこにどういう心の動きがあったんですか?

黒羽:最近、売れている人と仕事をする機会が多くなってきて。売れてるっていうか…“有名人”って言ったほうがわかりやすいかな。それで「有名人=生き残ってる人」という風に考えるようになったんです。その人達の考えや武器を知ったり、有名な人と有名じゃない人は何が違うのかなとか…まだ自分の中で答えは出てないですけど。だから俺もやっていきたいっていう。それがきっかけかな。今年の作品で言うと、ドラマ『レンタルの恋』で剛力彩芽さん、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』で足立梨花さんと共演して。


― そういった方々と共演すると、やはりインパクトは強い?

黒羽:単純に「テレビに出てる人だ!」っていう(笑)。それが自分にとってすごい刺激というか。そこのステージに行きたいっていうのが大部分です。

― 今は2.5次元ブームもあり、言い方は悪いかもしれませんが、舞台俳優の皆さんがひとつのトレンドみたいにとらえられることも多いと思うんです。

黒羽:すごい時代ですよね。年間、何個舞台あるんだよって(笑)。戦国時代ですよ。舞台を中心にやってる役者さんは本当に多いし、なおかつイケメンで。やっぱり嫌ですけどね(笑)。新しい子が出てくれば出てくるほど、自分の需要がなくなっていくんじゃないかなって。そういう意味でも怖いです。

― そこでライバル心を抱くことも?

黒羽:「この人と役を取り合うだろうな」っていう時は妬くと思いますけど…例えば『ファイブ』だったら佐藤流司や(松岡)広大、根岸(拓哉)がいますけど、彼らとは多分、役が被ることってないと思うんですよ。だからそこのライバル心はあんまり持っていないですね。

― 立ち位置が違うという。

黒羽:うん、多分同じ役を争うことはないかな。『刀剣』も多分そうだったと思います。でも、いい仕事をしている人達にはやっぱり嫉妬しますね。この間『刀剣』の新作を見た時も「いいな」って思いつつ、どこか羨ましく思ったり。色んな作品が情報解禁していくごとに「何で俺は出れなかったんだよ!」みたいな(笑)。

― 直近でお仕事をして、刺激を受けた方はいらっしゃいますか?

黒羽:『ファイブ』だと西井幸人はやっぱりすげぇなって思いました。『告白』も見ましたけど、色んな映画に出て、演技力を評価されている。しかも自分より年下ですからね。Twitterとかだとふざけているようにしか見えないかもしれないですけど(笑)、実際は結構しっかり話していて。今後のお互いの方向性とかを、撮影が終わった後のロケバスの中2人でずっと喋っていた時もありました。それで、こいつはすげぇしっかりしてんな!と思ったし、熱を感じましたね。

役者・黒羽麻璃央の強みとは

― これから先を意識する中で、ご自身の強みはどんな部分だと?

黒羽:何だろうな…。素直さじゃないですか?

― とても大事ですね。

黒羽:わかんないな、自分の武器って何なんですかね?(笑)お芝居できる人はいっぱいいるし、かっこいい人もいっぱいいる。そう考えると、武器って何なのかな。今、自分は初期装備ぐらいでようやく戦ってるぐらいの感じですね。

― 初期装備?

黒羽:ドラクエとかそういう…(笑)。レアな武器とか持ってない、初期装備。ようやくチュートリアル終わったかな、ぐらいの。

― なるほど(笑)。

黒羽:ようやく物語が始まる。…あっ、でも第1ステージクリアぐらいにしときます(笑)。これから挫折とか色々してくる頃じゃないですかね。次の面、進めねぇよ!みたいな。

― これまではどちらかというとスムーズに来たという感覚?

黒羽:まぁキツかったけどなぁ…。キツかったけど、スムーズだったと思いますね。これからはもっとキツイだろうと思うから。

― その素直さが、今に繋がっているのかもしれませんね。

黒羽:何なんだろうな、俺の武器って…真面目さかな。

― 今年は楽しみな1年になりそうですが、どういう姿を見せていきたいですか?

黒羽:それぞれの作品で違うイメージを持ってほしいです。全部ハマり役になりたい。役者として最高ですよね、全部ハマり役だったら。

― 映像作品は、これまでと違うファン層の方がご覧になるかもしれませんね。

黒羽:そうですよね。初めましての方も多いと思うんですが、幸いなことにすごい名前してるんで、名前だけでも覚えて帰ってください(笑)。

― (笑)。

黒羽:これは今となっちゃ武器ですよね。あ、武器ありましたね!

― 一度聞いたら忘れられない名前!

黒羽:ホストかな?みたいな(笑)。

― かけがえのない武器ですよ!今後はどういう作品や役柄に挑戦したいですか?

黒羽:まずは役者として寿命のあるものかな。ラブロマンスや学園ものはどう考えても寿命があるので、そこは早いうちにやっておきたいです。それと、クズの役。お芝居だったら人を殺めたり、傷つけたり、普段規制されているようなことが体験できたりもするので。やってみて、どういう感覚になるのか知りたいんです。『レ・ミゼラブル』や『ロミオとジュリエット』のように、質の違うミュージカルもやってみたい。あとはお仕事のジャンルで言うと、音楽とか。今はまだ自信はないので練習が必要ですけど、マルチにこなせるのは良いことですよね。お芝居が上手な役者さんって、歌もうまかったりするので。

夢を叶える秘訣

― 最後に、モデルプレスで必ずお伺いしている質問を。夢や目標に向かって頑張っている読者に向けて、“夢を叶える秘訣”をアドバイスお願いします。

黒羽:俺、まだ叶ってないけど大丈夫ですか?

― 是非、今までの経験談を含めてお願いします。

黒羽:夢を叶える秘訣…。僕は、言霊ってあると思います。夢や目標は内に秘めているだけじゃなくて、口に出したほうが叶うと思う。どこで誰が聞いてるかわからないし、そこから出会いに繋がるかもしれない。とりあえず言ってみればいいと思う。僕も絶対に口に出してきました。「映像に出たい」とか…それで今年、実際にこんな風になっているし。欲しいものがあるなら「欲しい!」と言って、そのために頑張る。口に出すことが自分の力になるのかなって思いますね。

― 今の黒羽さんの夢は?

黒羽:僕の夢は……車を買うことです(笑)。

― 非常に明確!(笑)

黒羽:わかりやすいでしょ?(笑)まぁ車だけじゃないんですけど…欲しいものを手に入れるためにって、すごい単純だけど頑張れるんですよ!

(modelpress編集部)

黒羽麻璃央(くろば・まりお)プロフィール

1993年7月6日生まれ。宮城県出身。2010年に第23回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」準グランプリ・AGF賞を受賞し、2012~2014年はミュージカル『テニスの王子様 2nd』に出演。以後演技の幅広さが高く評価され、ミュージカル『刀剣乱舞』(2015~2016)では人気キャラクター・三日月宗近役を演じた。今後は舞台『男水!』(大阪公演:5月24日~28日/森ノ宮ピロティホール)、舞台『黒子のバスケ』OVER-DRIVE(6月22日~7月9日/AiiA 2.5 Theater Tokyo ほか)、ドラマ『ファイブ』(フジテレビ、今夏放送予定)、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』(10月7日公開予定)、映画『Sea Opening』(2018年早春公開予定)などが控える。


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