モデルプレスのインタビューに応じた桜田通(C)モデルプレス

桜田通が見つけた「自由」―役として生き、歌も歌う「人とは別の個性で戦うだけ」 モデルプレスインタビュー

2016.04.12 17:00

人気俳優を多数輩出するミュージカル「テニスの王子様」出身だとか、ドラマ「弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」のストーカー役が可愛かった!とか、映画『orange-オレンジ-』の萩田役はとにかくハマリ役だった!とか………。“俳優・桜田通”に対して、そのようなイメージをいくつか抱いていた。けれど3月下旬、東京・渋谷のライブハウスで自作の曲を熱唱していた彼は、これまでの作品で見たどの姿とも違っていて、また魅力的だった。そして、20代の若手俳優が“豊作”と言われる昨今。そのまっただ中にいる彼からの、ある種の「主張」が込められたステージとも感じられた。

  
その数日後に行ったインタビュー。漫画から飛び出してきたかのようにスラリと華奢で美しい彼の内面をぐぐっと掘り下げてみると、出てくるのは骨太な言葉の数々。表現者としての在り方、「自由」の2文字を選んだ思いとは―?

僕が一生かけても勝てない個性がある。それなら別の個性で戦うだけ

「Sakura da Festa 2016~Music for my friends~」にて(3月29日@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE)
ファンイベント「Sakura da Festa 2016~Music for my friends~」は本当に楽しい時間で、最高でした。初めてのライブ形式は挑戦的でしたね。何でもやってみたいんです。「役者なんだから芝居だけやってればいい」という意見もあると思うけど、僕は音楽も好きだし。来てくれたお客さんの心に何か残せれば、それだけでやる意味はあると思っているので。自分が役者だろうと何だろうと関係なく、やろうと思いました。

反省点はいくらでもあります。単純に歌や楽器がもっと上手くなりたい。自分の気持ちをもっともっと歌にのせて届けたい。自分の言葉をよりみんなの心に残すにはどうしたらいいんだろう?…たくさんありますね。心の残り方って色々あると思うんです。歌がいい、弾いている姿がいい、声が印象に残った…とか、何でもいいんです。僕はこれからも皆さんに対してなるべく多くのものを提示していくので、それを好きなようにとらえてもらえれば。

世の中には本当に色んな個性があって、素晴らしい人がたくさんいる。僕が一生かかっても勝てないような個性を持つ人もいることはわかってる。ただ、僕はそれとは別の個性で戦うだけ。自分がそうやって生きる中で、残していく作品に興味を持ち、応援してくださる方がいると信じているので。もちろん僕にも尊敬するアーティストや役者がたくさんいて、ファンという立場でもある。ただ、僕自身も同じように、人に対して何かの瞬間を心に残すチャンスがある人生になったから。そこは臆せずに行きたいなと思っています。

2つ目の扉が開けた留学。今、本当の自由に辿り着ける気がする

役者デビューとなると11年目ですが、それよりも前から歌やダンスをやっていたので、活動歴はそれ以上ですね。振り返ると、本当にたくさんの時間を無駄にしてきたなと思います。

デビュー当時は事務所の人に先導されて、知らない所を歩いている感覚でした。真面目にはやっていたけど、自分では何も考えずに動いていたと思います。例えばお腹が空いた時、それを満たすために目の前のものをそのまま食べてしまうくらい浅はかだった。「何を食べようかな」とか「これを食べたらこの後どうなるかな」ということも考えられないまま、僕はこの世界に居ちゃったんですよね。

変わったきっかけは、2013年3月頃から行ったイギリス留学です。自分で無理やりターニングポイントを作ったような感じで、2つ目の扉が開けたと思います。留学中は日本人と関わらない時間の中で色々考えて、戻ってきてからも仕事に対して気持ちを入れ替えることができました。それまでは平坦な道をただ何となく進むような生き方で、その分事故もありませんでしたが、留学を機にある程度自分で予想をするということを学んでからは、自分が考えた方向に歩いて行った結果、意外といい所に辿り着けたりして。大きなミスをして「事故ったな」と思うこともありますけど、そこから学ぶことも多いし、留学に行く前よりも楽しい気がします。

今の自分を一言で表すと「自由」ですかね。本当の自由というものに辿り着けるのではないかと思っています。昔は1人で色んな所に突き進んでいくことが自由だと思っていたんですけど、その自由はとても狭い世界のこと。もっと大きな世界での自由を手に入れたければ、1人きりじゃ辿り着けない。客観的な視点が必要なんです。最近は自分の中で意見を持てるようになったので、人に何かを言われていちいちイライラすることもなくなりました。心に引っかかるような貴重な意見があれば、真摯に受け止められる。そうやって周囲の人と関わりながら、想像力を膨らませていくことで世界が広がって、「やりたいことを実現する自由」が手に入る。この前のライブもそうです。昔の感覚のままだったら実現できていなかったと思うので、無駄にした時間は確かにあったし、取り戻せないけれど、結果的によかったと思っています。

芝居はうまくない。作品の中で精一杯、生きるしかない

『orange-オレンジ-』の萩田について、原作を読んだ方に「ハマリ役だ」と言っていただけると嬉しいです。役が合うということ、作品を好きになれたこと、それにキャストやスタッフさん、色んなことに恵まれた結果、反響に繋がったと思います。大事なのは、そういう要素が揃うことなんですよね。僕だけが頑張っても無理なんです。

今放送されているドラマ「グッドモーニング・コール」と「初恋芸人」は、撮影が被った時期もありました。「グッドモーニング・コール」は“イケメン御三家”の1人で、「初恋芸人」はとにかくモテたい芸人の役。よく「役の幅が広くてすごい」と言っていただけますが、僕自身はよくわからないです。だって世界中のみんな、やりたい気持ちと機会に恵まれればできることだと思うから。

僕は芝居がうまくないから、作品の中で精一杯、生きるしかない。例えば今、目の前にあるペットボトルを「喉が渇いた演技をしながら飲んで」と言われた時、パッとできる人が「芝居がうまい人」だと思うけど、僕にはそれができない。「1時間後にしてください」と言って、死ぬほど走って実際に喉をカラカラにしてから撮ってもらいます。その方が楽なんです。だから「初恋芸人」の撮影中、僕は芸人さんで、実際に笑いのネタを考えて、ライブをした。芸人の仲間たちと打ち上げで楽しい時間を過ごした。「グッドモーニング・コール」の時は、年下の幼なじみに恋心を抱きながら高校生活を過ごしていた。それが結果的に作品になっているだけなんです。作品の中にいる時は、「桜田通」としての気持ちは何もないですね。「芝居って楽しい!」とか思うこともない。楽しかったと気づくのは、作品を撮影し終わった後。さらにお客さんの反応が良ければ「間違ってなかったんだな」と思えるし、嬉しくて幸せです。

「桜田通」として生きるのはとてもつまらなくて、飽きてしまうと思う。だから僕は作品に出続ける。いつか僕が死んでしまった時、『桜田通』っていうドキュメンタリー映画が出来ていたらいいんですけどね。自分の人生が面白ければ、面白い作品になる。何よりも僕が輝いている作品になるんだろうなって思うと、カメラ回しておけば良かったな~(笑)。

したいように生きるのが一番。何よりも自分の感覚、行動を大事に

僕は特に「夢」ってものがないです。夢を持つことってそんなに大事かな?と思います。やりたいことならいくらでもあります。大きなこと言えば世界平和を願うし、戦争もなくなればいい。宇宙空間でお芝居を撮りたいし、宇宙でライブもしてみたい。そんなこといくらでもありすぎて、逆に夢なんてない(笑)。

何十年後に叶えたい夢をいくら語っても、明日死んだら叶わないじゃないですか。だとしたら、今日寝るまでの幸せを実現するために生きた方がよっぽど輝くと思う。その中で、自分のアンテナがピコって立った瞬間、もっと近いところで夢や目標を持てるかもしれない。近々のことをちゃんと真面目に考えながら生きていく方が、よっぽどいい所に辿り着けると僕は思います。

だから僕は、「夢を叶えにいく」っていう意識は持たない方がいいと思います。結果的に叶ったものが自分の夢だったんだと気づく瞬間の方が気持ちいいですよ。それはこの前のライブで感じたことです。ただ音楽が好きで、歌やギターの練習をして、音を合わせて、ダメ出しされて。心のどこかでは「いいライブをしたい」という夢があったのかもしれないですけど、練習を繰り返していた時はそんなこと意識していなかった。そしてライブ当日、皆さんからアンコールの声が聞こえた瞬間。「ひとつ夢が叶ったんだな」と思いました。「あと5秒後に俺の夢が叶うんだ!」というよりも「今、夢の瞬間にいるんじゃないか?」という方が、なんか嬉しいんだなって。

敢えて“夢を叶える秘訣”を言うとすれば、あまり意識をしないことかな。でもこれは、本当に真逆のことを言う人もいるんです。だからなるべく自分の感性に似た人に話を聞いた方がいいと思うし、したいように生きることが一番の近道。僕はしたいように生きています。人のせいにしてしまう瞬間が生きてて一番悲しくてつらいし、自分で失敗した方が頑張れる。何よりも自分の感覚、行動を大切にした方がいいと思います。

僕の中で今、明確なことはあります。人って楽しい時は楽しいし、嫌な時は嫌だから、出来るだけ嫌な気持ちにならないように生きていきたい。これが僕の夢かもしれません。悲しいなって思って泣いたり、ムカつくって思いたくない。「楽しいな、よかったね」という気持ちだけで、生きていきたいんです。それが夢です。

―――――― 取材を行ったのは、桜が満開になった4月1日。インタビュー後、エイプリルフールということに気づいた彼は「今日話したこと、全部ウソですよ(笑)。だからまた、取材してくださいね」といたずらっぽく笑って見せて、また私たちを魅了するのだった。(modelpress編集部)

桜田通(さくらだ・どおり)

モデルプレスのインタビューに応じた桜田通(C)モデルプレス
生年月日:1991年12月07日
血液型:B型
出身地:東京都
趣味:作詞・作曲

ミュージカル「テニスの王子様」(2006)にて主役を務め、映画『劇場版さらば仮面ライダー電王ファイナル・カウントダウン』(2008)野上幸太郎役で主演。 日本テレビ「サムライ・ハイスクール」(2009)、日本テレビ系「数学女子学園」(2012)、フジテレビ「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」(2010)、日本テレビ系「弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」(2014)、映画『BECK』(2010)、映画『王様ゲーム』(2011)、映画『人狼ゲーム ビーストサイド』(2014)、映画『がじまる食堂の恋』(2014)、舞台「ロック☆オペラ 『サイケデリック・ペイン』」(2015)、Netflix Original ドラマ「アンダーウェア」(2015)など話題作に多数出演。映画『orange-オレンジ』(2015)では萩田朔役を演じ好評を得た。

現在、ドラマ「グッドモーニング・コール」(Netflixにて毎週金曜午前0時配信)、「初恋芸人」(NHK BSプレミアム、毎週火曜よる11時15分~)が放送中。7月2日には全国東映系にて主演映画『僕のサボテン』が公開予定。

【Not Sponsored 記事】

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