アジアエンタメのキーマンが語る「アジアから見た日本のエンターテインメントの現在」
MTVが、アジア最大規模のライブイベント「MTV World Stage Live in Malaysia 2013」を、9月8日にマレーシアにて開催した。今回モデルプレスは、MTVを傘下に持つバイアコム・インターナショナル・メディア・ネットワークス・アジアのエグゼクティブ・バイスプレジデント/マネージング・ディレクターを務めるインドラ・スハルジョノ(Indra Suharjono)氏らに現地でインタビューを敢行。アジアから見た日本のエンターテインメントの現在に迫った。
アジアから見た日本のエンターテインメントの現在
スハルジョノ氏は、バイアコム・インターナショナル・メディア・ネットワークス(VIMN)のアジア地域(東南アジア、中国、日本、韓国を含む)における戦略と事業を統括している。今回のインタビューでは、同じくVIMNで中国のクリエイティブ&コンテンツ・ディレクターを務めるチャールズ・チャン(Charles Chan)氏、フィリピンのカントリー・マネージャーであるレネ・エスグエラ(Rene Esguerra)氏にもご同席いただいた。アジアエンタメのキーマン スハルジョノ氏インタビュー
― インドラさんは、現在のアジアのエンターテインメント業界をどのように感じていますか?スハルジョノ氏:欧米からの輸入コンテンツが市場の多くを占めていた従来の状況に変化が見られます。ここ数年でアジアのコンテンツ自体がアジア各国の市場で大きく繁栄してきており、エンターテインメント業界もより成長してきていると感じています。
― より具体的に言いますと、どのように市場を伸ばしているのですか?
スハルジョノ氏:例えば映画業界に目を向けると、中国では海外映画の配給が増えると同時に国内での映画制作も拡大しています。日本、韓国では、今までハリウッドなどの海外映画がヒットを飛ばしていましたが、最近では国内映画への関心が高くなっていますね。
― それは音楽についても言えるのでしょうか?
スハルジョノ氏:こういった映画業界の状況は、音楽業界でも同じと言えるでしょう。アジア市場ではアジア各国の様々なコンテンツを好んで受け入れているので、音楽市場も開放され、コンテンツの往来が活発になってきましたね。
― このような流れになった要因はどこにあるのでしょうか?
スハルジョノ氏:私の意見では、多くの海外コンテンツに触れる中で、それらをどうしたらもっと良くしていくことができるのかということについて、アジア各国が学んできたことが大きな理由だと思います。例えば台湾、香港、日本映画などはストーリー性が素晴らしく、近年は一層、人々が日常の中で親しみやすい内容に進化していますよね。
― それについて、フィリピンの方はどうですか?
エスグエラ氏:フィリピンのコンテンツは、インドネシアや韓国で広がりました。その逆に韓国のコンテンツもフィリピンに広がって来ているので、徐々に市場が開放してきていると言えます。その上で、他言語での字幕やインターネットの普及で、テクノロジーの進歩が各国のコンテンツの浸透性を後押ししている状況にもあります。今までの価値観が各国でボーダーレスになり、外国産のコンテンツを受け入れる状況ができているので、今後アジアがひとつの市場として確立されていくのではないかと思います。
― アジア自体がひとつの市場ですか。
スハルジョノ氏:アジアの人口は全世界の47%にあたり、このアジア市場を開放すれば世界に大きな影響力を持つことが出来ると言えます。5~10年前に比べて、ハリウッドでもアジア人の活躍が目立ってきました。
アジアのタレントが成功を収める大きな理由は、彼らとファンの間の結びつきの強さにあります。音楽業界でもファーイースト・ムーヴメント(今回の「MTV World Stage Live~」にも出演)が大きな人気を得ていますが、それは世界人口の半分を占めているアジアの人々が、同じアジア人で構成された彼らに対して親近感を持っているからですよね。
またアジアの人々は、コンテンツのクオリティに関して生まれ持って高い意識をもっています。これは、世界でも十分に戦っていける大事な要素だと考えています。
― 中国の方はどうですか?
チャン氏:中国では現地制作が力を発揮し、人気が出てきています。その理由は、自身の感性だけでなく、欧米や日本の色を取り入れ、オリジナル色を出そうとした結果だと思います。こういったオリジナリティが中国の人々にうまく浸透し、評価を得られたのだと考えますね。
― なるほど。そんな中でのMTVのアジア市場戦略はどのようなものなのでしょうか?
スハルジョノ氏:私たちバイアコムは「グローカル戦略」を信じ、採用しています。ローカルとグローバルの双方を持ち合わせたブランディングとプラットフォームということです。ローカルの部分だけが100%ではうまくいきません。例えば、我々は食に関して多彩な品揃えを好みます。前菜やデザートがないメインコースが成立しないように。一番重要な事は、ローカルとグローバルの正しいミックスとバランスなのです。
― そのグローカルにおいて、MTVが見据えるものとは?
スハルジョノ氏:とてもシンプルなことですが、素晴らしいコンテンツはそれだけで素晴らしく、国境を越えたものであり、大切なのは視聴者との間にいかに強い絆を築けるかです。私たちは常に「グローカル」な内容に基づく提案をしていくことで、アジアの中で多くの優れた作品が生み出されるのを期待しています。「SHIBUHARA GIRLS」が良い例ですが、音楽においてもアジアのポップミュージックが世界に羽ばたくチャンスは大いにあります。
「MTV EMA(ヨーロッパ・ミュージック・アワード)」では、2011年に新たなカテゴリーとして「ワールドワイドアクト賞」を作りました。そこではK-POPグループのBIGBANGが5800万票を獲得し、ブリトニー・スピアーズらを抑えて見事受賞に輝きました。昨年は中国のハンギョンが受賞するなど、アジアのポップミュージックが世界で大躍進していると言えるでしょう。
―では、日本の音楽(J-POP)に関してはどのようにお考えですか?
スハルジョノ氏:アジアの音楽業界はJ-POPから始まり、M-POPとC-POP(中国系)がそれに続き、そしてK-POPが出てきました。アジア各国は、やはりJ-POPから様々な事を学び、成長してきたと言えるでしょう。
― 日本が音楽業界をリードしてきたということですか?
スハルジョノ氏:そのように思います。アジアの音楽エンターテイメントシーンは常に交差しており、日本はしばしばその発信源となっています。これを背景に生まれたのが「MTV 81」(海外に向けてジャパンカルチャーを発信する、MTV JAPANによるプロジェクト)です。MTV 81には、MTV JAPANと音楽、ファッション、ポップカルチャーとの繋がりが存分に生かされ、日本各地のポップカルチャーを現場ならではの視点で映し出しています。MTV 81は全世界の視聴者にとっての、日本のポップカルチャーの玄関となり、なおかつ日本のアーティストが世界中にファン層を広げていくためのプラットフォームになっています。
― 今後MTVは日本の音楽をどのような形で発信していきますか?
スハルジョノ氏:私たちは10月4日にフランスで「J-ONE」というチャンネルの設立を発表しました。これはアジアのポップカルチャーに特化した新チャンネルで、日本のアニメコンテンツの世界第2の市場であるフランスの視聴者に向けて、日本のエンターテインメントを届けていきます。J-ONE の設立は、アジア、特に日本のポップカルチャーを世界に広げていくためのわれわれの絶えざる努力を証明するものです。J-ONEでは、日本の文化や流行、ゲームショーや大きなイベントのニュース、「SHIBUHARA GIRLS」などのリアリティーシリーズ、「MTV Unplugged」やアワードショーなど、豊富なコンテンツを放送していく予定です。
― これからが楽しみですね。
スハルジョノ氏:MTV ASIAでは以前、「JK HITS」というJ-POPとK-POPを特集した番組を放送していましたが、コンテンツの使用条件に関して日本は韓国に比べ厳しいケースがありました。MTV 81やJ-ONEをご覧いただければわかるように、私たちは日本のコンテンツを日本やアジアの外で、再び放送していきたいと思っています。もちろん「MTV ASIA」も、J-POPにとって唯一無二の特別な場所にしていきますよ。
― ありがとうございました。
アジアの中のJ-POP
MTVとは異なるアジアの業界関係者らは、「日本の音楽は情報もほとんど無く、アジア市場で展開することが難しい」と語った。一方でK-POPは、ここ10年の文化政策で音楽、映画の世界進出を国家が後押ししてきたこともあり、アジア全体を席巻してきた。アジア各国でK-POPがブームとなり、今回「MTV World Stage Live~」でもK-POPボーイズグループのEXOがオーディエンスを熱狂させた。ガラパゴス状態
実際、当編集部でマレーシアの市場を見て回ったが、権利関係の縛りで、CD自体もアジアではほとんど販売されていない。ただ、数年前までは宇多田ヒカルの人気がアジアを席巻し、楽曲がアジアの人々からも広く支持されていたという。しかし、これは海賊版の流通によって拡散されたものだとされており、現在では以前より海賊版の取り締まりが厳しくなり、日本からアジア全体で楽曲が聴かれているようなアーティストは出現しなくなった。日本のコンテンツをリスペクトする世界のクリエイター、アーティストも多い中で、今後いかに日本がアジアや世界を意識してコンテンツを発信していけるのかは、J-POPの飛躍の鍵となるだろう。独自路線を選択して進化した日本の携帯電話市場はガラパゴス諸島の例えで「ガラパゴス携帯」と言われてきた。現状、エンターテインメントの領域でもガラパゴス状態となってしまっている日本から、アジアの音楽シーンをリードしていくアーティストが出現することを期待したい。(モデルプレス)
※「バイアコム・インターナショナル・メディア・ネットワークス(VIMN)」は米国バイアコム社の国際部門で、MTV、ニコロデオン、コメディ・セントラル、パラマウント・チャンネルといったバイアコムが保有する全てのブランドとビジネスを統括。これらのブランドは世界中のおよそ7億世帯の視聴者に向けて、約170の国と地域において37の言語を通じ、200以上のTVチャンネルと550を超えるデジタルおよびモバイルメディアを展開している。
あわせて読みたい
-
三代目JSB、真夏のステージで圧倒的パフォーマンス「スペシャルな夏をお届けしたい」
モデルプレス
-
西野カナ、真夏の野外ライブで恥じらい「汗ヤバいやん」
モデルプレス
-
倖田來未、夏フェス野外ライブでハプニング
モデルプレス
-
<速報>AKB48、「MTV VIDEO MUSIC AID JAPAN」レッドカーペットに登場
モデルプレス
-
視聴総合ランキング
2025年12月16日 19:15時点
※TVer内の画面表示と異なる場合があります。
-
01ザ・ロイヤルファミリー
The Last Episode「ファンファーレ」
12月14日(日)放送分
TVerで見る -
02終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―
第十幕 仲間の危機を救え…!隠蔽企業と最終決戦
12月15日(月)放送分
TVerで見る -
03良いこと悪いこと
第9話 犯人、だーれだ?
12月13日(土)放送分
TVerで見る -
04絶対零度~情報犯罪緊急捜査~
第11話 国家か娘か、総理に迫る究極の決断
12月15日(月)放送分
TVerで見る -
05誰も知らない明石家さんま第11弾
さんまの息子・二千翔さんの結婚式に番組が潜入!さんまのスピーチ初公開
12月14日(日)放送分
TVerで見る
最新ランキングはこちらPowered by -
-
<速報>安室奈美恵、「MTV VIDEO MUSIC AID JAPAN」レッドカーペットに登場
モデルプレス
-
恋が近づく 恋愛感度をあげる方法4つ
モデルプレス
おすすめ特集
-
12月のカバーモデルは「今年の顔」Mrs. GREEN APPLE大森元貴
特集
-
2025年「モデルプレス今年の顔」発表
特集
-
「2026年ヒット予測」発表 モデルプレス独自調査
特集
-
インフルエンサー影響力トレンドランキングを発表!「モデルプレスカウントダウン」
特集
-
モデルプレス独自取材!著名人が語る「夢を叶える秘訣」
特集
-
モデルプレス読者モデル 新メンバー加入!
特集
-
国内作品見放題数2位!アニメ・お笑い・ドラマ・映画が充実!オリジナル作品も!
特集
-
日本テレビ系日曜ドラマ「ぼくたちん家」の情報をたっぷり紹介
特集
-
FODでは放送中の最新作はもちろん、オリジナルの独占作品も見放題配信中!
特集
-
業界初! 全プラットフォーム横断の大規模読者参加型アワード
特集
-
SM ENTERTAINMENT JAPANが手がける『GPP』の情報をお届け!
特集
おすすめ記事
SPECIAL NEWS
記事ランキング
RANKING
-
01
【AAAインタビュー】宇野実彩子「30周年を目指したい」與真司郎・末吉秀太と語った今後― グループの成長と変化<後編>
モデルプレス
-
02
【AAAインタビュー】宇野実彩子・與真司郎・末吉秀太、20周年迎えファンへ届けたい“感謝” メンバー集結秘話も「素敵な仲間たちと出会えたなと思った瞬間」<前編>
モデルプレス
-
03
【竹内涼真&町田啓太「10DANCE」インタビュー後編】「あんなに支えてくれる人はいなかった」2人が感謝する存在 ダンスパートナーとしての互いへの想いも語る
モデルプレス
-
04
【竹内涼真&町田啓太「10DANCE」インタビュー前編】「片時もお互いの存在を切り離したことはない」ダンスを通じて深く結ばれた絆と芝居の駆け引き
モデルプレス
-
05
OCTPATH、デビュー逃したオーディションラスト挨拶の真相「あえて追い込むため」目指すは「8人でドームのステージに立つ」【独占カットあり/モデルプレスインタビュー】
モデルプレス