「Tシャツが乾くまで」(C)TBS

「Tシャツが乾くまで」最初はTシャツではなかった「一気に“不倫感”が上がりませんか?」タイトル決定の裏側&物語に仕掛けたユニークな視点【脚本家・生方美久氏インタビュー】

2026.08.07 08:00

女優の蒼井優が主演を務める、TBS系7月期金曜ドラマ「Tシャツが乾くまで」(毎週金曜よる10時~)。第5話を前に俳優の脚本家の生方美久氏にインタビューを実施し、タイトルに込められた意図や、キャラクターの作り方、夫婦の関係性などを聞いた。

  

蒼井優主演「Tシャツが乾くまで」

本作は、脚本家・生方美久による完全オリジナルストーリー。とある事故がきっかけで、当たり前に続いていくと思っていた幸せな日常が、突如崩れ去ってしまった2組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”を描く。

「ハードルを悠々と超えてきた」映像化への期待と驚嘆

― ここまでの放送をご覧になった感想を教えてください。

今回、主演の蒼井優さんをはじめ、TBSさんのドラマも演出の土井裕泰監督とも初めてご一緒させていただいているので、「こういうお芝居、演出になるのか」というイメージとの違いがおもしろい部分や、美術や衣装なども含め、自分の頭の中にあったときの映像がさらに膨らんだ感覚がすごく面白かったです。よく「小説を書かないか」と言っていただく機会があるのですが、私が脚本を書きたい理由として、映像になったものを見たいというのが一番大きいんです。なので、すごくワクワクしながら、一視聴者として楽しんでいます。

― キャストの方々のお芝居を見てどのように感じましたか?

脚本家になる前から、好きな俳優さんを聞かれたら「蒼井優さん」とずっとお名前を出していて、自分の書いたセリフを蒼井さんに言っていただくことが目標になるくらい憧れていました。今回、本読みの場で初めてお会いしたのですが、その一言めから本当に圧倒的で。衣装も着ていない状態にもかかわらず、こんなにも咲子になれるのかと。声を聞いただけでもう…。本当に素晴らしい俳優さんだと思いました。映像を見たら、自分の思い描いていた咲子でもあるし、私の想像を悠々と超えていってくださっていて。とにかくすごかったです!

「Tシャツが乾くまで」咲子が充と樹生に抱く思いとは

― 特に印象に残っているシーンはありますか?

周りの人から「あそこすごかったね」と言われたのが、第1話の警察で咲子が充の遺品を見たときに、少し笑ってしまうシーンです。脚本を書くにあたって、ご遺族の反応についても調べました。その中で、落ち込む、泣くということはもちろんありますが、予期せぬ死を迎えると、ある種のパニックになって、余計なことを言ってしまったり、笑ってしまったりという反応が自然にあるらしいんです。でもそれをドラマで描くと、視聴者からは「もっと悲しむだろう」とか「普通は笑わないだろう」と思われてしまいがち。だから、お芝居の塩梅(あんばい)によってすごく見え方が変わってくるだろうなと思っていたのですが、蒼井さんが、“何とか悲しみをごまかしている”さまを見事に演じてくださいました。

― 「夫婦」や「結婚」についてもリサーチされたとのことですが。

はい。ただ、調べれば調べるほど「人それぞれすぎる」となってしまいました(笑)。夫婦の在り方に正解はありません。年齢のせいもあるのかもしれませんが、私の周りは結婚を最終目的とした婚活のマッチングアプリをする人が多いんです。マッチングアプリを通して出会った二人は、知りたい情報を開示し合った上で「じゃあ付き合います」「じゃあ結婚しましょう」となる関係性だと思います。隠し事があるかないかはそれぞれですし、今回のドラマの中に直接込めたわけではないですが、最初から情報を開示している夫婦が増えている中で、“言えなかったことを持っている夫婦”というのは面白いかも、とは思いました。

― キャラクターを作るにあたって意識したことはありますか?

今回、キャラクターを分かりやすく対照的にすることはなかったです。例えば男性だったら、樹生と充を真逆のタイプにしようと意識することはなくて、主人公の咲子を中心に置いたときのバランスを考えました。「いなくなっても信じたい」という思いを貫くくらい充のことが好きな咲子がいて、樹生は充とは少し違うタイプだけど、どこか安心感みたいなものを抱いてしまう相手。でも恋愛にすぐ踏み込むのは違うな、みたいな感じで。

現実の恋愛でも、過去の恋人を思い返したときに、「全員同じタイプだった」という人もいるけど、「こういう人もいたし、ああいう人もいた」みたいな人の方が、案外多いじゃないですか。それと一緒です。ただ、咲子と樹生は、お互いに(夫と妻を)“喪失”しているので、匂いや境遇など、似ている部分に惹かれることもあれば、違うから安心することもある。矛盾するけれど近づいてしまうところは、調整しながら作っていきました。

「Tシャツが乾くまで」最初はTシャツではなかった――視聴者の想像力をかき立てるタイトルが生まれるまで

― タイトルも話題ですが、どのように決まったのでしょうか。

お題をいただいて企画を具体化するなかで、“コインランドリー”という場所や、“洗濯”をメタファーにした作品を作りたいと思いました。それを元にタイトルも考えていきました。スタッフさんとも「じゃあ、『何かが乾く』みたいな要素を入れたいですね」と話をしていく中で、実はTシャツではなくて、Yシャツという案もあったんです。でも、「Yシャツだと一気に“不倫感”が上がりませんか?」となって(笑)。その点、Tシャツは、男女の差があまりないフラットなもの。含みを持たせる意味で、『Tシャツが乾く前に』という案もありましたが、語呂などを考えて、最終的に『Tシャツが乾くまで』に行き着きました。このタイトルだと、どういう話なのかは分からないけれど、逆に興味を引くかなと。そういう意味でも気に入っています。周りからも「タイトルいいね」と、すごく言っていただきます。

「Tシャツが乾くまで」“共感も感動もないドラマ”の意味

― 今後に向けて、メッセージをお願いします。

情報解禁時「共感や感動を目指した物語ではないので、人間観察の感覚でお楽しみください」とお話ししたのですが、第1話を見た松山ケンイチさんから「共感と感動、あったよ!」と言っていただきました。たしかに、要所要所で感情移入してグッとくるところはあるかもしれません。

私は「自分には想像できない言動をとる人間を見る面白さがある」と思っているので、今作はそういう、“フィルターを通して見る”みたいな、少し距離をとった見方もおすすめしたいです。ただ、どんなドラマの楽しみ方も正解だと思います。考察したり、考察されたものを読んだりするのも楽しみ方の一つです。1回目はあまり勘繰りすぎずフラットに見ていただき、2回目は見逃し配信などでじっくりセリフを拾っていただくと、純粋に驚いたり悲しんだりしていただけると思います。

「Tシャツが乾くまで」充のいなくなった理由が分からないまま中盤へ

生方氏の書くセリフにはドキッとしたり、イラっとしたり、クスッとしたり、物事の核心を突くものがちりばめられている。物語は、充のいなくなった理由が分からないまま中盤に突入する。謎のヒントは生方氏の言葉に隠されている。(modelpress編集部)
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    Tシャツが乾くまで

    2026年07月10日(金)スタート

    毎週金曜22:00 ~ 22:54 / TBS系

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