ディズニー監督陣が語る映画作りの裏側 「ベイマックス」が出来上がるまで【米アニメーション・スタジオ潜入レポ(2)】/撮影:Kaori Suzuki【モデルプレス】

ディズニー「ベイマックス」が出来上がるまで 監督陣が語る映画作りの裏側【米アニメーション・スタジオ潜入レポ(2)】

2014.12.09 11:00

「アナと雪の女王」に続くディズニー最新作「ベイマックス」が、12月20日に日本にて公開される。モデルプレスでは今回、同作の制作が行われた米カリフォルニアの「ディズニー・アニメーション・スタジオ」で取材を行い、監督やクリエイターへのインタビューを通して、次々と名作が生まれるその秘密に迫った。

  

「アナと雪の女王」のディズニー・スタジオが次に描き出すのは“限りない優しさ”

ウォルト・ディズニー・スタジオ最新作「ベイマックス」(12月20日日本公開)/(C)2014Disney.AllRightsReserved.
今年、空前の大ヒットとなった「アナと雪の女王」。全世界を熱狂させたあの名作を生み出したウォルト・ディズニー・スタジオが次に手がけるのが「ベイマックス」だ。「ベイマックス」は早くに両親を亡くし、唯一にして最愛の存在であった兄タダシを謎の事故で亡くしてしまったひとりぼっちの少年ヒロと、心とカラダを守るために作られたケア・ロボットの“ベイマックス”が繰り広げる感動アドベンチャー。エルサとアナの姉妹愛で世界中を感動で包み込んだウォルト・ディズニー・スタジオが、この冬「ベイマックス」で限りない優しさを届ける。

「ディズニー・アニメーション・スタジオ」潜入レポート第2弾となる今回は、監督のドン・ホール氏&クリス・ウィリアムズ氏、プロデューサーのロイ・コンリ氏の3ショットインタビューをお届け。

作品の完成は「ハッピーで少し悲しい」―裏側を語る

クリス・ウィリアムズ氏、ロイ・コンリ氏、ドン・ホール氏/撮影:Kaori Suzuki
インタビューを行ったのは、作品ができあがった翌日。完成したばかりの作品を前に、「ハッピーで、ほっとして、興奮して、そして少し悲しい。少しね、少し悲しいよ」(ドン氏)と語る。

長い歳月をかけて丁寧に真摯に、そして愛情を込めて作り上げたからこそ、嬉しくもあり寂しくもある――「なぜなら、僕たちは、映画を作ることにすごく慣れてしまっているし、この映画が本当に大好きだからね。でも今は、映画を僕たちの手元から放して、世に送り出さないといけないんだ」(ドン氏)。

「ベイマックス」のラフ画やコンセプトアート/撮影:Kaori Suzuki
「ベイマックス」のラフ画やコンセプトアート/撮影:Kaori Suzuki
ディズニーでは、1つの映画を制作するためにチームを編成する。映画の度に人選を行うため「まったく同じ組み合わせになることは決してない。違う構成になる」(ロイ氏)。チームで試行錯誤を繰り返し、1つの映画を完成させる。すなわち映画の完成は、チームの解散を意味する。

「そういうふうに映画は作るものなんだ。僕は、それはいいことだと思う。ストーリーごとに、新しい経験をし、新しい人々と仕事をするというのはいいことだと思うよ」(ロイ氏)。映画の完成にどこか名残惜しさを感じるのは、それだけ“愛”を込めたから。そして今、またひとつ、彼らの愛が思いっきり詰まった作品が世に送り出される。

「情熱を持っていることを追いかけろ」が合言葉に

クリス・ウィリアムズ氏、ドン・ホール氏、ロイ・コンリ氏/撮影:Kaori Suzuki
最新作「ベイマックス」の原案はマーベル・コミックスの「Big Hero 6」。ディズニー作品にとって、マーベルとのコラボレーションは今回が初。誰もがワクワクしてしまうようなこのコラボレーションの実現に向け、3年半前、ドン氏は動き出した。

「情熱を持っていることを追いかけろ」――製作総指揮のジョン・ラセター氏が常々口にしている言葉だ。この言葉を受け、ドン氏の頭に浮かんだのがアメリカンコミック出版社「マーベル・コミックス」だったそうで「子どもの頃から、ディズニー・アニメーションとマーベル・コミックスが大好きだった。それで、これらの2つの情熱を混ぜ合わせるというアイディアが浮かんだんだ。そのときは僕も、ジョン・ラセターもとても興奮したよ。そして、自分たち独自のものに出来るマーベル作品を見つけるために、すべてのマーベル作品を見始めた。そしてリサーチをして、僕は『Big Hero 6』を見つけました。それは、日本のスーパーヒーロー・チームを描いた無名のマーベル作品で、僕たちみんながその作品に恋してしまいました」と振り返った。

「ベイマックス」のラフ画やコンセプトアート/撮影:Kaori Suzuki
「ベイマックス」のラフ画やコンセプトアート/撮影:Kaori Suzuki
夢を生み出す場所は、いつだって夢に溢れている。「コミックブック全体が、日本的なものすべて、日本のポップカルチャーに対するラブレターみたいだったんです。それで、その作品について僕たちはマーベルと話し合い、彼らはこの作品を僕たち独自のものにして、コミックブックにインスパイアされた完全オリジナル・ストーリーを作ることを勧めてくれました」(ドン氏)。

ドン氏の頭に芽生えた小さな蕾は、気がつけば壮大なプロジェクトへと発展した。彼らのアナザーストーリーは、ここから始まった。

柔軟な発想が生む最高の作品「どんな意見も聞きたい」

ロイ・コンリ氏/撮影:Kaori Suzuki
ディズニーの作品創りにおいて、もうひとつの特徴と言えるのが積極的な意見交換を行うということ。それは「ベイマックス」でも同様で、ストーリーを組み立てていく際には、ストーリー・トラストを中心に話し合いを行っていくという。

「素晴らしいストーリーの担当者たちが部屋に集まり、意見をくれるんだ。そこで(制作中の映画の)問題点を指摘する。そして、その問題を解決するため9つの案を出す。でも、そこから1つを選ばないといけないわけじゃない。自分自身の解決法を考えることも出来るんだ。問題点を指摘するということは、ストーリーの弱いところを見る手助けをして、強化してくれているということ。信頼関係が必要とされ、完全に心を開くことが要求される。また、他の人々の意見を聞くという勇気も必要だ。もしそういうことが出来れば、より良い映画を作ることが出来るんだよ」(ロイ氏)。

「僕たちは、どんな映画を作るつもりなのか、確固たるものを持っていないといけない。でも、もし気楽に反対することや、異論を唱えることが出来る環境があれば、より良い映画を作ることができる。だから、どんな意見も聞きたい。もし対立するようなアイディアを持っていたとしても、それも聞きたいんだ」(クリス氏)。

クリス・ウィリアムズ氏/撮影:Kaori Suzuki
ドン・ホール氏/撮影:Kaori Suzuki
柔軟な発想は作品をより良いものにする。それを彼らは身を持って実感している。話し合いに話し合いを重ね、アイディアは何度も練り直される。完成の直前まで“最高の状態”を探り続ける姿勢が、夢を生み出す最大の秘訣なのだろう。

「間違いなく東京のファッションに影響を受けているよ」

「ベイマックス」のラフ画やコンセプトアート/撮影:Kaori Suzuki
「ベイマックス」のラフ画やコンセプトアート/撮影:Kaori Suzuki
また「ベイマックス」では、映画全体で日本にスポットが当たる。それはディズニーにとって、長い歴史の中でも初の出来事。実際に13日間東京に滞在し日本文化を学んだという彼らのリサーチは、作品全体に活きており登場人物のファッションにも影響を及ぼしている。

ロイ・コンリ氏、クリス・ウィリアムズ氏、ドン・ホール氏/撮影:Kaori Suzuki
「原宿では、ファッションの世界に浸ることが出来たよ。たくさん写真を撮ったし、日本のファッション雑誌をいくつか買ったよ。そのとき、東京でファッショナブルであるというのがどういうものかが分かるようにね。そして、僕たちが持っている芸術的フィルターを通したものが(映画で)使われたんだ。だから、間違いなく東京のファッションに影響を受けているよ」(ドン氏)。

そんなところに注目して観てみるのも、またひとつの楽しみ方かもしれない。(modelpress編集部)


■ディズニー最新作「ベイマックス」
2014年12月20日 日本公開
<ストーリー>
ひとりぼっちの天才少年ヒロは、亡き兄が人々の心と体を守るために作ったケア・ロボットのベイマックスと共に、危険を冒して兄の死の真相を探る。人を傷つけることを禁じられたベイマックスは、大切なヒロを守り切れるのか?
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