ディズニー「ベイマックス」日本にインスパイアされた制作裏の秘密【米アニメーション・スタジオ潜入レポ(1)】
2014.12.05 10:00
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「アナと雪の女王」に続くディズニー最新作「ベイマックス」が、12月20日に日本にて公開される。モデルプレスでは今回、同作の制作が行われた米カリフォルニアの「ディズニー・アニメーション・スタジオ」で取材を行い、監督やクリエイターへのインタビューを通して、次々と名作が生まれるその秘密に迫った。
「アナと雪の女王」のディズニー・スタジオが次に描き出すのは“限りない優しさ”
今年、空前の大ヒットとなった「アナと雪の女王」。全世界を熱狂させたあの名作を生み出したウォルト・ディズニー・スタジオが次に手がけるのが「ベイマックス」だ。同作は早くに両親を亡くし、唯一にして最愛の存在であった兄タダシを謎の事故で亡くしてしまったひとりぼっちの少年ヒロと、心とカラダを守るために作られたケア・ロボットの“ベイマックス”が繰り広げる感動アドベンチャー。エルサとアナの姉妹愛で世界中を感動に包み込んだウォルト・ディズニー・スタジオが、この冬「ベイマックス」で限りない優しさを届ける。「ディズニー・アニメーション・スタジオ」潜入レポート第1弾となる今回は、スタジオの至るところに飾られた「ベイマックス」の展示品の数々、そして日本にインスパイアされた作品ビジュアルについてお届け。
ディズニー・スタジオも“ベイマックス一色”に
今回、取材を行ったのはアメリカ・カリフォルニア州バーバンクに本社を構えるウォルト・ディズニー・スタジオのアニメーション制作部門。1923年、ウォルト・ディズニー・スタジオの創設と同時に設立されたこのスタジオでは、1937年の長編映画第1作目「白雪姫」から現在に至るまで50本を超える長編アニメーションを制作している。この歴史あるスタジオに足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、入り口の大きな看板。「魔法使いの弟子」の帽子がシンボルとなっている玄関には現在、巨大なベイマックス&ヒロの看板が飾られている。
また、吹き抜けのエントランスでも等身大のベイマックスがお出迎え。その後も壁やミーティングルームなど、至るところにベイマックス・ヒロをはじめとする登場人物たちのコンセプトアートやフィギュアが飾られ、スタジオ内はまさに“ベイマックス一色”。
さらに、スタッフがランチや休憩をとるフリースペース「caffeine patch」では、映画の舞台である架空都市“サンフランソウキョウ”を再現。この“サンフランソウキョウ”は、サンフランシスコの地形をベースに、建物の外観や看板、アメリカの街には存在しない電信柱の電線、路地の雰囲気など、細かなアクセントに日本要素が盛り込まれており、その影響もあってか、BARスペースは屋台風に装飾され、冷蔵庫には日本の飲料水などが入れられている。
このほかにも、壁一面にイラスト、廊下には映画にも登場する大きな鳥居、と物語の世界観にどっぷりと浸かることができるディズニーならでは遊心でいっぱいだ。
また、この広々としたそのスペースでは、普段個室で作業をしているスタッフたちが集まり積極的な交流を行っている。こういったクリエイティブな空間での情報共有や意見交換こそが、世界中を虜にする作品創りには欠かせないのかもしれない。そして、「ベイマックス」もそのひとつなのだろう。
日本にスポットを…徹底したリサーチと作品創りにかける情熱
日本風にアレンジされたビジュアルの数々からも読み取れるように「ベイマックス」では、日本にスポットを当てている。これまでにもディズニー作品の中では、「シュガー・ラッシュ」(2012年公開)に登場するゲームのキャラクターなど、日本をフィーチャーしてきた作品もあったが、映画自体でスポットが当たるのは初めて。これは、親日家として知られている製作総指揮のジョン・ラセター氏、そしてプロデューサーを務めるロイ・コンリ氏の「僕らはみんな日本に恋しているから」という想いから始まった。そのため、作品創りに欠かせないリサーチは実際に日本でも行われ、スタッフが東京・大阪を訪れたそう。そこでインスパイアされ完成したのが、「ベイマックス」に登場する街並みだ。その点について、プロダクション・デザイナーのポール・フェリックス氏は語る。
「実際にその場所に行くのと、そうでないのではやはりわけが違います。スケール感や空気感、人々がその空間にどうやって生活しているかなどは、実際に行ってみないとわからないものです。実際、東京には美しい自転車がたくさん並んでいました(笑)。ディズニーでは、世界中の場所をパロディーにして見せることが多いのですが、パロディーにするためには先に本物を知る必要があるのです。そのためにあらゆるデザインのディテールを調べ、写真を撮ってきました。普通の人は撮らないような、電柱とかマンホールとかいったものの写真もあります。我々にはこれがとても役に立ちました」。
圧倒されるほど壮大な風景は、作品の見どころのひとつ。日本語も織り交ぜながら描かれた看板や東京の街を思わせる街並み…どこを切り取っても美しく、そして懐かしさに溢れている。その中からもうひとつ、印象的なのがウィンター・バイン。上空に無数に浮かぶ気球のような“それ”は、中にタービンがありジェネレーターのような役目をする。
「日本の凧のようにデザインして浮かべてみたのですが、この架空の都市のビジュアルイメージのシンボルになりました」とポール氏が語るように、映画に欠かせないひとつのアクセントになっている。
キャラクターデザインにも活かされた日本文化
日本の影響を受けているのは、キャラクターも同じ。ケア・ロボット“ベイマックス”は、日本の鈴をイメージしており、「キャラクター・デザイナーとして、鈴は非常に面白いと思いました。2つの丸と、それを結ぶ線を見たときに、これはベイマックスに使えそうだとひらめきました。口も必要かなとは思っていたのですが、ジョン・ラセターにそのまま提案したらとても気に入って、口がないほうがロボットっぽいということになり、このように丸が目を象徴するものとして瞬きの動きのテストをしました」とキャラクター・デザイナーのシヨン・キム氏が明かしてくれた。また、ベイマックスのボディはカーネギーメロン大学のロボット工学部で開発されている「柔らかいロボット」を参考にデザイン。そのふわふわなボディと鈴をイメージしたつぶらな瞳が、愛くるしいビジュアルのポイント。これまでのロボットのイメージとは全く異なるディズニーならではのデザインは、単なる産物ではなく彼らの徹底的なリサーチと飽くなき探究心があってこそだ。(modelpress編集部)
■ディズニー最新作「ベイマックス」
2014年12月20日 日本公開
<ストーリー>
ひとりぼっちの天才少年ヒロは、亡き兄が人々の心と体を守るために作ったケア・ロボットのベイマックスと共に、危険を冒して兄の死の真相を探る。人を傷つけることを禁じられたベイマックスは、大切なヒロを守り切れるのか?
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