可愛いのに男から選ばれない理由 フラれ続ける28歳香織の運命を変えた8568通りの性格診断とは?【恋愛小説】
2018.08.08 22:30
一度会ったら忘れられない。誰もがまた会いたくなる。男なら一度は付き合ってみたいと妄想し、女なら彼女みたいになりたいと願う。決して美人というわけではないけれども、月島香織(28)には、昔から言葉では語りつくせない魅力があった。
幼稚園から都内の有名私立Aに通っていた香織は、何不自由することなくエスカレーター式で大学に進学。
勉強ができたというわけでも、スポーツが万能だったというわけでもないけれど、常に周りは人だかりに。香織の笑顔1つで、瞬く間に心を奪われていくのだった。
香織には自分が「モテる」という自信があった。
それは“高嶺の花”でも“クラスで3番目に可愛いから”なわけでもなく、美人にはない“程良い可愛い雰囲気”が、男性に「イケそう」と思わせるのだというのを知っていた。
女性からの人気は男性ほどではないにしても、生まれつきのおっとりした口調と放っておけない気質から、自然と面倒を見てくれる人が現れた。
だから大抵のことは上手くいったし、そこそこ名のある企業で働くのも大したことじゃなかった。
今勤めている会社も安定という理由だけで受けた3社のうち、内定が出たからいるだけのこと。
働かずとも生きていけるだろう幼なじみたちが意外なほど就職していくのを見て、なんとなく自分も働くことにしたのだった。
幼なじみの大半は結婚したし、これといった取り柄もなく、仕事が好きというわけでもない香織は、自分ももっと早くに結婚するものだと思っていた。
まさか自分が29歳の誕生日を迎える1ヶ月前に、フラれるなんて思ってもみなかった。
でも実際に思っていなかったかといえば…本当は気づいていたのかもしれない。でも今回こそは上手くいくと信じていたかった。
誰にも言ったことはないが、香織は半年以上恋愛が続いたためしがない。
そればかりかいつも同じ理由でフラれてばかりいた。
半年に渡って社内恋愛をしていた田上昌大(32)に別れを告げられた理由も、「思っていたのと違った」の一言。
別れの常套句はほかにもいろいろあるだろうに、「好きな人ができた」でも「距離を置こう」でもなく、男にとって香織をフる言葉は一つと決まっているらしい。
また半年でフラれた…。
けれども香織にはもはや、そんなことはどうでも良い。
香織は来月の誕生日に、彼からプロポーズされるものだと思っていた。
彼はいつも「付き合って短くても関係ない」と言っていたし、「ずっと一緒にいよう」とも言ってくれていた。
それを何か、ぶち壊しにするようなことをしてしまったのだろうか。謝ったらまだ、やりなおせる可能性もあるのか。
今は部署が違うから会社にいても会うことはない。でも同じ建物の中に彼もいると思うと、今すぐ会いたくてたまらなくなる。
何日考えても、何度思い返しても答えが見つからなかった香織は、これまでなら考えられない行動に出た。
「突然ごめんね。実は折り入って相談したいことがあって…」
香織が勇気を出して昌大との社内恋愛、これまでの恋愛の一部始終を話すと、由佳は初めての恋愛相談に、驚きを見せないよう無表情に努めた。
「そんなことがあったんだ…」
由佳が一言、そう言うのが精いっぱいだと言わんばかりに香織を見つめると、真剣なままの香織が続けた。
「あのね、それで由佳ちゃんにお願いがあって…。彼に理由を聞いてほしいんだけど…だめかな?」
普通に考えれば、いくら同じ部署で顔見知りだからといって、人の恋愛に他人が首を突っ込むべきではない。いつもの由佳なら、迷わずにそう答えた。
でも今自分を頼り切って、おそらく初めてであろう恋愛相談をしてきたのは、ほかの誰でもない香織。
「わかった。それとなく探ってみるね」
安心してほっとした顔を見せる香織に、由佳は他愛もない話を続けて楽しい夜を過ごした。
会社から少し離れた場所にあるそのカフェで、いかにも緊張しているのが見て取れる香織に、由佳はほかの同期の近況や大学時代の友人との旅行話など、当たり障りのない話で場をつなぐ。
そんな由佳の様子に待ちきれなくなった香織は、食後のコーヒーがほしくなったところで、ようやく話を切り出した。
「この前の相談のことなんだけど…聞いてくれた?」
おそるおそる確認する香織に、「うん」と由佳が答えると、待ち構えたかのようにコーヒーが運ばれて来た。
一口飲むと由佳は、
「落ち着いて聞いてね。相性が良くなかったと言えばそれまでだけど正直、理由を聞いても驚かなかった」
と言ってカップを置いた。
「『何をするのも決めるのも全部自分任せで、一緒にいても楽しいのか何を考えているのか、わからなかった』って」
由佳が明かす予想外の理由に香織は思わずコーヒーを手に取るも、口元に運んだところで猫舌なのを思い出した。
流されやすい性格は自覚していた。優柔不断な面があることも否定できない。でも友人たちはそれを受け止めてくれたし、ありのままを受け入れてほしいというのは間違っているのだろうか。
「香織、私は長い付き合いだし、わかるよ。でも大人になったら、ちゃんと自分のことを伝えてアピールしていかなきゃいけない場面って増えてくるんだよ」
責めることなく心配の表情を見せる由佳の優しい声に、香織の目が光った。
「もっと自分のことを知って、何が好きなのか、何に向いてるのか、どんな人と一緒にいるのが幸せなのか、考えなきゃ。ずっと仕事を続けてきたのだって、仕事が好きだからかもしれないって考えたこともないでしょう?」
思わずはっとさせられる。確かに同じ仕事の繰り返しにはうんざりしていたけれど、誰かの役に立てたり、ささいなことに感謝してもらえたり、仕事を嫌だと思ったことは1度もなかった。
29歳にもなるのに、私は何も自分のことがわかっていないのかもしれない…。
由佳とのディナーを笑顔で終えた香織は、自分には何ができるのだろうかと考え始めていた。
さまざまな診断がある中で香織が惹かれたのは、8568通りの診断結果の中から性格を判定してくれるというもの。
無料だし大したことないかもしれないと思いつつ、会員登録をしてさっそく診断してみると、そこには簡易的な診断とは思えないほど詳しい分析結果が並んでいた。
『高い目標に挑戦し、成果を出してこそ達成感や喜びが得られる』
『周囲の人はあなたのユニークな発想に魅力を感じている』
私はこんなにも、自分の本当の『強み』や『魅力』を知らずに、活かしきれていなかったなんて…。
なんとなく、ずっと流れに流されていくと思っていた。
みんなが大学に行って就職するから、自分も働く。そしてそのうち、結婚する。
流される方が楽だし、それで嫌だと思ったこともなかった。
でも若さは無限じゃない。29歳を目前に思うのは、30歳になった私に何ができるのか。
経験もなく恋愛もうまくいかず、失敗できる若さも体力もなくなって、果たして本当にこのまま流されていて良いのだろうか。
昌大との別れはつらかったけれど、そのことを私に自覚させるためには必要不可欠なことだったのかもしれない。
香織はそんな風にまで思い始めていた。
診断を終えた香織には、今までの自分が信じられないくらいに、自分のやりたいことが見えていた。
誰も香織のことなど頼りにしていないだろうと思っていたものの、退職を告げると意外にも上司や同僚に引き止められ、香織にはそれも嬉しかった。
最後にずっと心残りだったことをどうするか…。
悩みに悩んだ香織は、1通だけLINEを送ることにした。
「今日で会社を辞めることになりました。本当にありがとう。香織」
これですべてが終わった。明日からもう、ここに来ることはない。
昌大にLINEを送ると、香織はこれまで感じたことがないほどの清々しさに、背中を押された気持ちになった。
しばらくして、LINEを開きっぱなしにしていることに気づいた香織が画面を見ると、そこには昌大からの返事が届いていた。
「お疲れ様。これから何か食べに行かない?」
返事が来た!
もし返事がきたら…と淡い期待を抱いていた香織の返信は、すでに決まっていた。
「行きたいお店があるの」
すぐに既読になった画面を見て香織は微笑んだ。
仕事も恋愛も、正直まだまだ頑張らなくちゃいけない。でも、きっと大丈夫。
香織は、今までで一番の自信に満ち溢れていた。(modelpress編集部)[PR]提供元:株式会社リクルートキャリア
勉強ができたというわけでも、スポーツが万能だったというわけでもないけれど、常に周りは人だかりに。香織の笑顔1つで、瞬く間に心を奪われていくのだった。
香織には自分が「モテる」という自信があった。
それは“高嶺の花”でも“クラスで3番目に可愛いから”なわけでもなく、美人にはない“程良い可愛い雰囲気”が、男性に「イケそう」と思わせるのだというのを知っていた。
女性からの人気は男性ほどではないにしても、生まれつきのおっとりした口調と放っておけない気質から、自然と面倒を見てくれる人が現れた。
だから大抵のことは上手くいったし、そこそこ名のある企業で働くのも大したことじゃなかった。
今勤めている会社も安定という理由だけで受けた3社のうち、内定が出たからいるだけのこと。
働かずとも生きていけるだろう幼なじみたちが意外なほど就職していくのを見て、なんとなく自分も働くことにしたのだった。
29歳の誕生日目前に訪れた突然の別れ
そんな香織も、気が付けば働き始めて7年目。来月で29歳。幼なじみの大半は結婚したし、これといった取り柄もなく、仕事が好きというわけでもない香織は、自分ももっと早くに結婚するものだと思っていた。
まさか自分が29歳の誕生日を迎える1ヶ月前に、フラれるなんて思ってもみなかった。
でも実際に思っていなかったかといえば…本当は気づいていたのかもしれない。でも今回こそは上手くいくと信じていたかった。
誰にも言ったことはないが、香織は半年以上恋愛が続いたためしがない。
そればかりかいつも同じ理由でフラれてばかりいた。
半年に渡って社内恋愛をしていた田上昌大(32)に別れを告げられた理由も、「思っていたのと違った」の一言。
別れの常套句はほかにもいろいろあるだろうに、「好きな人ができた」でも「距離を置こう」でもなく、男にとって香織をフる言葉は一つと決まっているらしい。
また半年でフラれた…。
けれども香織にはもはや、そんなことはどうでも良い。
香織は来月の誕生日に、彼からプロポーズされるものだと思っていた。
彼はいつも「付き合って短くても関係ない」と言っていたし、「ずっと一緒にいよう」とも言ってくれていた。
それを何か、ぶち壊しにするようなことをしてしまったのだろうか。謝ったらまだ、やりなおせる可能性もあるのか。
今は部署が違うから会社にいても会うことはない。でも同じ建物の中に彼もいると思うと、今すぐ会いたくてたまらなくなる。
何日考えても、何度思い返しても答えが見つからなかった香織は、これまでなら考えられない行動に出た。
モテるのに、恋愛が長続きしない
同期の前島由佳(28)は、香織とは違って何でもはっきり言うタイプだったこともあり、香織のここぞという時の駆け込み寺的存在だった。「突然ごめんね。実は折り入って相談したいことがあって…」
香織が勇気を出して昌大との社内恋愛、これまでの恋愛の一部始終を話すと、由佳は初めての恋愛相談に、驚きを見せないよう無表情に努めた。
「そんなことがあったんだ…」
由佳が一言、そう言うのが精いっぱいだと言わんばかりに香織を見つめると、真剣なままの香織が続けた。
「あのね、それで由佳ちゃんにお願いがあって…。彼に理由を聞いてほしいんだけど…だめかな?」
普通に考えれば、いくら同じ部署で顔見知りだからといって、人の恋愛に他人が首を突っ込むべきではない。いつもの由佳なら、迷わずにそう答えた。
でも今自分を頼り切って、おそらく初めてであろう恋愛相談をしてきたのは、ほかの誰でもない香織。
「わかった。それとなく探ってみるね」
安心してほっとした顔を見せる香織に、由佳は他愛もない話を続けて楽しい夜を過ごした。
香織に明かされた本命になれない理由
2日後、由佳に呼び出された香織は、緊張した面持ちで2人の行きつけのカフェに向かった。会社から少し離れた場所にあるそのカフェで、いかにも緊張しているのが見て取れる香織に、由佳はほかの同期の近況や大学時代の友人との旅行話など、当たり障りのない話で場をつなぐ。
そんな由佳の様子に待ちきれなくなった香織は、食後のコーヒーがほしくなったところで、ようやく話を切り出した。
「この前の相談のことなんだけど…聞いてくれた?」
おそるおそる確認する香織に、「うん」と由佳が答えると、待ち構えたかのようにコーヒーが運ばれて来た。
一口飲むと由佳は、
「落ち着いて聞いてね。相性が良くなかったと言えばそれまでだけど正直、理由を聞いても驚かなかった」
と言ってカップを置いた。
「『何をするのも決めるのも全部自分任せで、一緒にいても楽しいのか何を考えているのか、わからなかった』って」
由佳が明かす予想外の理由に香織は思わずコーヒーを手に取るも、口元に運んだところで猫舌なのを思い出した。
流されやすい性格は自覚していた。優柔不断な面があることも否定できない。でも友人たちはそれを受け止めてくれたし、ありのままを受け入れてほしいというのは間違っているのだろうか。
「香織、私は長い付き合いだし、わかるよ。でも大人になったら、ちゃんと自分のことを伝えてアピールしていかなきゃいけない場面って増えてくるんだよ」
責めることなく心配の表情を見せる由佳の優しい声に、香織の目が光った。
「もっと自分のことを知って、何が好きなのか、何に向いてるのか、どんな人と一緒にいるのが幸せなのか、考えなきゃ。ずっと仕事を続けてきたのだって、仕事が好きだからかもしれないって考えたこともないでしょう?」
思わずはっとさせられる。確かに同じ仕事の繰り返しにはうんざりしていたけれど、誰かの役に立てたり、ささいなことに感謝してもらえたり、仕事を嫌だと思ったことは1度もなかった。
29歳にもなるのに、私は何も自分のことがわかっていないのかもしれない…。
由佳とのディナーを笑顔で終えた香織は、自分には何ができるのだろうかと考え始めていた。
運命を変えた、香織の行動
気持ちが挫けてしまったら、今の自分を変えられないと思った香織は、とりあえずネットで「性格診断」と検索することに。さまざまな診断がある中で香織が惹かれたのは、8568通りの診断結果の中から性格を判定してくれるというもの。
無料だし大したことないかもしれないと思いつつ、会員登録をしてさっそく診断してみると、そこには簡易的な診断とは思えないほど詳しい分析結果が並んでいた。
『高い目標に挑戦し、成果を出してこそ達成感や喜びが得られる』
『周囲の人はあなたのユニークな発想に魅力を感じている』
私はこんなにも、自分の本当の『強み』や『魅力』を知らずに、活かしきれていなかったなんて…。
なんとなく、ずっと流れに流されていくと思っていた。
みんなが大学に行って就職するから、自分も働く。そしてそのうち、結婚する。
流される方が楽だし、それで嫌だと思ったこともなかった。
でも若さは無限じゃない。29歳を目前に思うのは、30歳になった私に何ができるのか。
経験もなく恋愛もうまくいかず、失敗できる若さも体力もなくなって、果たして本当にこのまま流されていて良いのだろうか。
昌大との別れはつらかったけれど、そのことを私に自覚させるためには必要不可欠なことだったのかもしれない。
香織はそんな風にまで思い始めていた。
診断を終えた香織には、今までの自分が信じられないくらいに、自分のやりたいことが見えていた。
人生初めての決断 29歳の幕開け
6年間働いた会社を辞めたのは、29年間の人生で香織が初めて自分でした決断だった。誰も香織のことなど頼りにしていないだろうと思っていたものの、退職を告げると意外にも上司や同僚に引き止められ、香織にはそれも嬉しかった。
最後にずっと心残りだったことをどうするか…。
悩みに悩んだ香織は、1通だけLINEを送ることにした。
「今日で会社を辞めることになりました。本当にありがとう。香織」
これですべてが終わった。明日からもう、ここに来ることはない。
昌大にLINEを送ると、香織はこれまで感じたことがないほどの清々しさに、背中を押された気持ちになった。
しばらくして、LINEを開きっぱなしにしていることに気づいた香織が画面を見ると、そこには昌大からの返事が届いていた。
「お疲れ様。これから何か食べに行かない?」
返事が来た!
もし返事がきたら…と淡い期待を抱いていた香織の返信は、すでに決まっていた。
「行きたいお店があるの」
すぐに既読になった画面を見て香織は微笑んだ。
仕事も恋愛も、正直まだまだ頑張らなくちゃいけない。でも、きっと大丈夫。
香織は、今までで一番の自信に満ち溢れていた。(modelpress編集部)[PR]提供元:株式会社リクルートキャリア