モデルプレスのインタビューに応じたleccaこと斉藤れいな氏/写真:街頭演説にて (C)モデルプレス

leccaこと斉藤れいな氏、歌手・母として味わった“現実の壁”―小池新党から政界進出決意の真の理由を語る<モデルプレスインタビュー前編>

2017.06.02 08:00

東京都の小池百合子知事の就任後、初となる東京都議会議員選挙がまもなくに迫った(6月23日告示、7月2日投開票)。小池知事が代表に就任した地域政党「都民ファーストの会」の勢力がどこまで及ぶかが一つの争点となっているが、この小池新党の公認候補の一人として注目を集めているのが、南多摩地区での立候補を表明しているシンガーソングライターのleccaこと斉藤れいな氏(さいとう・れいな/38)。昨年、歌手デビュー10周年を迎え、順風満帆なアーティスト活動を行ってきた彼女が、なぜいま政治の道へ進むのか、都政で何を実現したいのか、そしてこれからの音楽活動は――?今回モデルプレスは、斉藤氏にインタビューを行い、詳しく話を聞いた。

政治に進出、立候補表明の理由

― 早稲田大学政治経済学部に在学中、leccaとしてアーティスト活動をはじめ、2006年にメジャーデビュー。2012年には初の日本武道館公演を敢行し、昨年はデビュー10周年を迎えられました。これまでも音楽活動と並行して、さまざまな社会的活動に参加されてきた斉藤さんが今回、「都民ファーストの会」から都政を目指そうと決めたのはなぜでしょう?

斉藤:もともと政治には多大な興味と期待があり、ずっと投票活動で政治参加を行ってきてファンの方へのブログでも「選挙に行こう」などと書いていた自分ですが、正直音楽だけでは変えることのできない社会の中の圧倒的な制度的格差や不平等を、一体どうやって是正していけばいいのか日々悩んでおりました。

私の行ってきた女性の意識改革や啓発活動、子宮頸がん予防推進やいじめ対策や震災復興のみならず、音楽活動と並行して社会的な様々な問題を日々全国の方から伝えて頂きました。政治にはぜひ、市民の一番近くにいて市民の為に切磋琢磨して頂きたい、そう願っていましたがなかなかお任せしたいと思う政党や政治家も少なくなっていたのが実状です。

しかし小池都政が始まる頃から、東京都の改革はすごいスピードで進んでいまして、特に教育や子供たちのための政策をすごく緻密に考えていらっしゃいます。都議会改革や政治そのものへの不信の払拭にも素早く取り組んでおられます。そこに賛同して都民ファーストの改革の一助に私もなりたいと思いました。

小池百合子東京都知事、斉藤れいな氏 /街頭演説にて(C)モデルプレス
小池百合子東京都知事、斉藤れいな氏 /街頭演説にて(C)モデルプレス
― それでも政界に進もうと決意するのは相当な覚悟が必要だったと思います。これまでもブログで政治について語っていらしたり、楽曲でその思いを伝えたりと、社会へのメッセージを投げかけていらっしゃいました。もともと政治の世界に感心をお持ちだったのでしょうか?

斉藤:中学、高校くらいから政治の持っている可能性やパワーにはとても興味がありました。自分が信頼する方におまかせしてぜひ頑張っていただきたいと今まで投票活動をしてきたんですが、周りには「政治はちょっと…」という方がとても多くて。同じ政治経済学部を出た友達ですら、「政治の話しようよ」「一緒に政治塾行ってみない?」と話しても、政治には興味がない、期待も持っていないという方が多く、このままではいけないという気持ちはずっと持っていました。

音楽活動をしていてもそういった焦りのようなものがあったんです。私の音楽はメッセージ性の強い曲も多くて、何か行き詰まっていたり悩みを抱えていたりする方に響いてくれたらという気持ちで歌ってきました。ただファンの方のお話を聞いていて、悩みや問題を抱えている方を果たして私はどれだけ助けてあげられているんだろうと。

『For You』(2009年)という曲を出した頃から全国的に私の歌を聴いてくださる方が増えたのですが、音楽が広がれば広がるほど、音楽だけでは果たせない現実の壁を感じるようになりました。何かできないかとはずっと思って様々な活動も並行して行わせて頂いてきましたが、小池都知事の掲げる東京大改革の可能性を強く感じたのがきっかけで、希望の塾に行かせていただきました。

歌手、母、都議選候補者…“3足のわらじを履く”ことで見えたこと

斉藤れいな氏/街頭演説にて(C)モデルプレス
斉藤れいな氏/街頭演説にて(C)モデルプレス
― 出馬を表明されて、周囲の反応はいかがでしたか?

斉藤:身近な方たちはすんなりと受け入れてくれました。「あ、やっとそちらに行くんだ」という感じがありました(笑)。音楽活動はやはりこれまでのペースではできなくなるということもあるので、事務所やレコード会社の方たちは難色を示すかもしれないなと思っていたのですが、むしろ「行ってきなさい」という感じで背中を押していただきました。両親も「嫌な予感はしてたけれども(笑)、言い出したら聞かないから、体には気をつけてやりなさい」と。

でも実は一番応援してくれているのは主人なんです。色々な問題に対してどうしたらいいだろうと夜な夜な子どもたちが寝てから考えている私を、おそらく一番近くで見ているのが主人なので、「そんなにやりたいなら、音楽を少しお休みすることになってもいからやりなさい」と。その言葉がなければ、正直希望の塾には通えていなかったと思います。

― 周りのサポートにも背中を押されたんですね。ただ芸能人の政界進出には賛否両論がつきものかと思います。世間の声をどのように受け止めていらっしゃいますか?

斉藤:私は政治未経験ですし、どちらかといえば否の方が多いと思っています。「何ができるんだ」「そもそも議員と他の活動の兼業ってどうなんだ」というご意見でしたり、ファンの方の中からも「leccaの音楽が届けられなくなるんじゃないか」「ツアーが疎かになるんじゃないか」といった声もいただきました。なので決して、今ある音楽のお仕事を中途半端にはできません。

また、私が働く2児の母として、音楽家として、会社社長として、ラジオパーソナリティとして、切磋琢磨して一市民の立場で生活を営んできたことは決して政治活動を行っていく上でマイナスの経験であるとは考えておりません。常に様々な立場の方々に寄り添うことを身上としてきた自分であるからこそ、しがらみとは離れた自身の政治的な理想を持っていけると考えています。

様々な声があることは重々承知の上ですが、私がその改革の一助となることで、助けられる人達がいるんだということを絶対に信じてやっていかなければいけないと思っています。

― 昨年10月に「希望の塾」へ参加された頃は、3月リリースのニューアルバム「High Street」の制作期間と重なっていたかと思います。そして現在はライブツアー「lecca LIVE TOUR 2017 “People on the High Street”」の真っ只中。母、歌手、そして「希望の塾」への参加と、3足のわらじという形で苦労されたことも多いのではないでしょうか?

斉藤:今までずっと夜型だったのですが、子供が生まれてからは、朝、子供を保育園に送って、10時過ぎから夕方4時ぐらいまでの時間に集中して曲を作る朝型の生活になっています。ただ政治の勉強を集中的に始めてからは、一週間休みなし、睡眠時間が3、4時間くらいです。

夜子供たちを寝かしつけてから勉強していると、すごく眠いんですが、不思議なことにものすごく元気で(笑)、寝ている時に政策のことを考えているんですかね。朝起きると、「あ!この政策がいいんじゃないか」と思いついて1人でメモを取るっていう…(笑)。それがワクワクして仕方ないんです。もともとそうやってメモをしながら曲を作るスタイルだったのですが、それが今は政策作りになっていまして、アイディアが溢れてきます。ただまだ素地がありませんので、先輩議員や周りの方々にも意見を伺いながら作っていきたいなとは思っていますが、女性だから感じること、母だから感じることを政策にも反映できたらと思います。

都政で叶えたいこと―“待機児童”を経験して感じた真の課題

小池百合子東京都知事、斉藤れいな氏/街頭演説にて(C)モデルプレス
小池百合子東京都知事、斉藤れいな氏/街頭演説にて(C)モデルプレス
― その政策の部分も詳しく伺いたいのですが、まずご自身も目の当たりにしたという待機児童問題は東京都が抱える深刻な問題の一つです。この問題についてどのように考えていらっしゃいますか?

斉藤:私の場合は長男が認可園に入れず、認証園も5年待ちと言われ、無認可園でお世話になったのですが、そちらは3歳までという限界がありましたので、4歳になったときにも同じ壁にぶつかりました。それで何度か引っ越ししなくてはならなくなり…。こうした教育の課題は子供が大きくなってもずっと続く問題です。お母さん方、お父さん方の環境によって子供が得られる教育環境に大きく差が開いてしまうのは私にとっては納得しかねるところですし、自分の子供さえ良ければいいという風にも思えません。

待機児童問題でいえば、ただ認可園を増やせばいいという問題でもなく、認可と認証園の保育料格差の是正やそれ以外の保育施設の調査と周知も必要です。保育士の方々へのベビーシッター利用の支援や、保育ママなど多様な保育形態の拡充など、取れうる方策は乱れうち形式で取るべきであると考えています。

― そのほかに都政で実現したいことについてお聞かせください。

斉藤:公教育の充実も実現したいことの一つです。例えば英語教育一つとっても課題はたくさんあると思います。私は19歳のときにカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に短期留学していたのですが、日本人学生がたくさんいて、皆ペーパーテストの結果トップクラスにいました。日本人は優秀と言われていたのですが、いざコースがスタートしてディスカッションとなると、誰も手を挙げられない。誰もしゃべれない。その日の夜に全員で泣きながら反省会をするということがありました(笑)。読み書きできるのに話せない、ディスカッションが出来ないというのはまさに日本の英語教育を受けた学生たちの特徴です。

JETプログラムという、日本で英語を教えたいという海外の青年たちの力をもっと活用していこうという取り組みがあります。そこにサテライト授業やITのネット配信を使うことが出来れば、日本人教師が学習補助をするだけでも英語教育を届けていくことが可能ではないかと考えています。

また、いじめ防止対策推進法が制定されてから数年たちますが、一向にいじめそのものはなくなる気配がありません。昨今はネットの普及でいじめが「見えない化」も進んでいる中で、被害者に対する支援のみならず、いかに傍観者に対するアプローチが進められるかが重要です。被害者本人からでなくてもできるいじめ報告アプリの実用化や傍観者アプローチの推進を行っていきたいです。

夢を叶える秘訣

― 新たな夢に向けて大きな一歩を踏み出した斉藤さん。夢に向かって頑張るモデルプレス読者に向け、“夢を叶えるための秘訣”のアドバイスをお願いします。

斉藤:夢に対して向かう時というのは、困難や壁、障害も生じてくるものだと思います。けれど常に脳内に難しさよりも向かうべき理想のかたちを思い浮かべ、障害に振り回されずにブレずにいることが大切だと思います。そして意味のあることしかしないこと。意味のあることとは何か、自分の理想に近づく手段を考え、選んでいくことが必要だと思います。

特に女性はお付き合いもあるでしょうし、仕事も、ご家族のこともあって…と、とにかくやることが多い。だからこそ優先順位をしっかりとつけること。ふと気づいたら人に頼まれたことばっかりやっていた、自分がやりたいことを後回しにしてしまっていたということもあると思います。なので時には立ち止まって、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)を大切に(笑)、半年に1回でも今の自分を見直して夢について考えてみるといいのではないかと思います。

― 貴重なお話、ありがとうございました。

不安や苦しみに寄り添いながら、前向きなメッセージを投げかけるleccaの楽曲に救われてきた人は多いだろう。今度はそれを政治で叶えたい、“現実の壁”を越えたい――そんな想いがひしひしと伝わってくるような熱量に溢れたインタビューだった。後日配信のインタビュー後編では、これからの音楽活動に対する彼女の思いを紹介する。(modelpress編集部)

斉藤れいな(さいとう・れいな)プロフィール

1979年2月26日生まれ。東京都多摩市で育ち、早稲田大学政治経済学部に進学。在学中にleccaとしてアーティスト活動を始動。その後、2006年4月にミニ・アルバム『Dreamer』でメジャーデビュー。2012年には、自身初の日本武道館公演を敢行した。

2011年に第一子、2015年に第二子を出産。同時に保育や教育、食の安全やエネルギー問題など持続可能な次世代のための社会のあり方に関心を高める。いじめをテーマにした映画「十字架」の主題歌担当や、釜石市観光大使としての復興イベント参加を経て、音楽だけでは変えることのできない現実的な問題を解決したいと、2016年10月「希望の塾」に参加。

歌手活動は2016年にデビュー10周年を迎え、同年ベストアルバム「BEST POSITIVE」をリリース。現在、ニューアルバム「High Street」を引っさげたライブツアー「lecca LIVE TOUR 2017 “People on the High Street”」を開催中。

■lecca オフィシャルホームページ
http://avex.jp/lecca/
斉藤れいな オフィシャルホームページ
https://reina-saito.amebaownd.com/
■Facebook
https://www.facebook.com/reinasaitominamitama/

■6月4日(日)小池百合子都知事と街頭演説を実施
・17:50~18:10/稲城駅
・18:30~18:50/若葉台駅
・19:10~19:30/京王多摩センター駅
主催:都民ファーストの会
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