北海道・サッポロ古着の総本山「OLD 13 VINTAGE」へ出陣!──ベルベルジン・ディレクター、藤原裕「ヴィンテージ百景」

プワワ〜ン、プワワ〜ン(ほら貝)。ベルベルジン・藤原裕が札幌の老舗古着屋をチェック!
アブさん(左)、藤原裕(右)。ユタカが着用しているブラックのヴィンテージアロハは、50年代のコットン仕様。
【はじめに】

ヴィンテージデニムから時計、ゴローズまで。原宿にある古着屋ベルベルジン」のディレクター、藤原裕の周りには古くて新しいモノがころがっている。いまかれが注目しているヴィンテージウェアをはじめ、藤原裕の周囲で熱い“今”を発信する!

「マルヤマベース」ではヴィンテージショップのほかカフェも併設。さらにリペアや刺繍、シルクプリントを行っている。
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こんにちは、藤原裕です。夏は最高ですよね。ただし、汗でデニムの色落ちのスピードが激しくなりがちなので、気をつけてください。というわけで、ちょっとだけ涼みに、今回は札幌にある「OLD 13 VINTAGE」に行ってまいりました! こちらは古着業界の大先輩であり、北海道の古着界隈のカリスマである城島研児さん(じょうじま・けんじ 通称、アブさん)のお店なんです。僕がベルベルジンに入る前から、アブさんが働いていた札幌の「VONS」や「CHOP」(現在はどちらも閉店)は、人気店としてファッション誌にバンバン紹介されていたこともあり、そのすごさは知っていました。これまで、ご挨拶することは何度かあったものの、向き合ってガチタイマンするのははじめて……。今日は黒のアロハを着ているので、緊張しすぎて汗が目立たないか心配なわけで……。(「北の国から」第501話 脇汗)。

70年代にソットサスが手掛けたウルトラフラゴーラが、怪しく光る! 奥にはボールチェアの姿も。

ゴリゴリの王道

藤原:アブさんを初めてお見かけしたのは、ぼくがアメリカに買い付けに行きだした20代の頃です。たしか、ローズボウルのオークションの時でした。

アブ:俺は、ほかの古着屋さんのことは全然わからなかったけど、ベルベルジンの名前は知ってた。買い付け先のアメリカでも、誰かが「あれ、ベルベル(ジン)の人だよ」って言っているのを聞いたりしていたからさ。みなさん、ちゃんとヴィンテージを着ていたから、すごいなって思いながら見てた。俺らは短パンにスウェットと、汚い格好をしてたから(笑)。そういえば裕くん、1度うちの店に来てくれたことあったよね?

城島研児(じょうじま・けんじ)

札幌のショップ「VONS」を経て独立。自身のショップ、「CHOP」を99年にオープン。ファッション誌のスナップ特集にたびたび登場し、札幌市内のファッションに携わる人で知らない人はいないカリスマ。「僕も大ファンです!」と、信者ユタカ。

藤原:はい。でも、その時はアブさんがオーナーなのを知らなくて、お話できなかったんです。ちなみにアブさんは、どんな経緯で古着屋をはじめられたんですか?

アブ:入り口は、高校時代にリーバイス501や、マクレガーのスウィングトップが流行って、そこから古着が好きになったんだよね。それから「VONS」で働きはじめたという感じ。当時はナイロンのスキージャケットや、ビッグサイズのレギュラー501とか、めちゃくちゃ売ったよ〜。

アメリカのクレイアニメの主人公、ガンビーのぬいぐるみも山盛り。もちろんすべて80〜90年代製のもの。

藤原:そこから独立して「CHOP」をオープンされたんですか?

アブ:1999年に独立しました。「VONS」はライバルになるので、売上で負けないよう必死でしたね。当時はギャル男全盛期だったので、70sのプリントシャツやペンドルトンのセーター、あとはOPやロンジョンなどのサーフ系のアイテムが人気でした。

藤原:現在は「OLD 13 VINTAGE」のみでしょうか?

アブ:そうですね。「CHOP」を10年やったし、もういいかなと。

ヴィンテージのチャンピオンは、Tシャツのみならず、スウェットとパーカも大量にストック。お店のラインアップは次記事で紹介します!

藤原:「OLD 13 VINTAGE」に入った瞬間、「イメージ通りだ!」って思いました。アブさんならではの、ゴリッとした王道セレクトと言いますか。すごいテンションが上がりました。だから僕も今日、はりきってXXを穿いてきたんです。

アブ:俺も裕くんが来るっていうんで、はりきって普段着けない時計をしてきたよ。

アブさん(左)、藤原裕(右)。ユタカが着用しているブラックのヴィンテージアロハは、50年代のコットン仕様。

藤原:店内を見させていただいた限り、厳選しても、欲しいものがすでに3、4点はありました。でもだいたい「ask」って書いてあったので、あとで詳しく教えてください(笑)。根本的に好きなものが、似ているんでしょうね〜。

アブ:デニムはもちろんだけど、とくにカレッジ系とキャラクターもの、スカジャンは好きかな。

藤原:いま狙っているのものは?

「マルヤマベース」ではヴィンテージショップのほかカフェも併設。さらにリペアや刺繍、シルクプリントを行っている。

アブ:ジーンズは常に欲しいです。501ビッグEのSタイプが、いいですね。

藤原:その年代も人気があり、高騰化してますよね。ところで、札幌の古着屋事情について教えてください。

アブ:札幌の狸小路商店街のあたりで、何軒か増えているって聞いたけど、昔ほどではないかな。品揃えも、ぼくたちの好きな王道系ではないね。うちの服をチェックしにくる人も、40歳以上のお客さんばっかりだし。

藤原:それなら、アブさんが札幌の古着シーンを盛り上げましょう! その足がかりとして、うち(ベルベルジン)の系列店である「&BERBERJIN」で、ポップアップしてみませんか? この素晴らしいコレクションを、たくさんの人に手にとって見てもらいたいです! とか言いつつ、僕が買い物をしたいだけなんですけど……。

アブ:ポップアップとは思いつかなかったよ。ぜひ、よろしくね!

取材をおえて──

アブさんコレクションは、品揃えがすごすぎました……。デニムは当然のこと、スウェットからTシャツ、そしてスニーカーまで、どれも超一軍ぞろい。たとえるならば、イチローと王貞治、野村克也がビッグボス旗下のもと暴れまくるような、そんな時空を超えたラインアップでした。

OLD 13 VINTAGE

住:北海道札幌市中央区南2条西18丁目291-31 A-BU.BLD 2F
TEL:011-623-5766
営:13:00〜18:00
休:日曜
@juzochan13
maruyama-base.com

PROFILE

藤原裕(ふじはら・ゆたか)

ベルベルジン・ディレクター

原宿のヴィンテージショップ「ベルベルジン」顔役。ヴィンテージデニムマイスターとしても認知されている一方、多くのブランドでデニムをプロデュースするなど、現在のデニム人気を担っている。今回の札幌取材ではヴィンテージの先輩、アブさんに敬意を表し、富良野のキツネもびっくりの、バックルバック付きのまっ紺コンコンコン(あ、キツネの鳴き声です)の501XXを穿いて颯爽と登場した。前回の夜のエルメス紛失事件(まだ探してますよ!)から間もないだけに、この“キツネちゃんデニム”も事件に巻き込まれないか危惧するスタッフを尻目に、早くもユタカの頭はすでにススキノのことでいっぱい。ことの顛末は「アルコール百景」をお楽しみください。

毎日更新! YouTube「ベルベルジンチャンネル」はこちら!

文・オオサワ系 写真・岩田桂視(GQ)


アブさんの右手の親指に注目! スマイリーのタトゥーがクンニチワ!

「ヴァン・ナチュールあり、日本酒あり。札幌・味処 高雄でアブ色に染まる!」──ベルベルジン・ディレクター、藤原裕「アルコール百景」

ショップでの取材が終わり、ススキノで頭がはちきれんばかりになったアルコールモンスター・ユタカを捕縛。護送先は、市内からやや離れた豊平区にある「味処 高雄」だ。果たしてユタカは煩悩から無事脱することができるか、否か。運命は──。

は! 目隠しをはずされたと思ったら、ここは、どちら……。夢幻界?

「ユタカくん、いらっしゃい。ぼくはね、ここ10年ぐらいは街からちょっと離れたところで飲んでるんだよ。理由は騒がしいのと、街のノリにもう飽きちゃったっていうか」

ススキノ、じゃないのか……。アブさんは古着だけでなく、アルコール・スタイルにも一家言ありそうですね! ひとまず乾杯しましょう。どれどれメニューは?

「ユタカくん。はい、お品書き」(冊子を渡す)

説明しよう! 『YABAI!』(ぶんか社)は、1997年から98年にかけて刊行されたストリート・ファッションを中心とした若者向け情報誌だ。古着、スニーカー情報にくわえ、オリジナルコミックスなどを盛り込んでいたが、わずか3号で休刊。

『YABAI!』3号目にて、アブさんが私物を紹介。24年前にこれだけのコレクションを揃えていたことすら奇跡!

アブさん! それメニューじゃなくて、『YABAI!』です! しかし札幌の居酒屋にきて、『YABAI!』を読めるだなんて、幸せだなー! あ、ビールきた。先輩、乾杯ス! 北海道は湿度がないから、グラスが秒で空になりますね。次は……、おっと、フリウリのワイン発見。「ヴィーノ・ビアンコ」くださーい! ところで『YABAI!』は2号目が好きですね。ファッション業界で今をときめく方々が、誌面に登場してて、これが初々しいんですよ。ゴローズ前にあった丸太ショットも当時を偲ばせます。その一方、3号目に登場したアブさんは、誌面に出ている私物が鬼コレクションすぎて、恐ろしいですね。ベテラン強面古着屋みたいですもん。

この日の先付け。手前左から、シャインマスカットの白和え、北海シマエビのずんだ。奥は左から釧路のミンククジラ、タコとオクラ。

ダリオ・プリンチッチのヴィーノ・ビアンコ NV。長時間のマセラシオンにより、オレンジがかった液色に。セパージュは、シャルドネ45%、ソーヴィニヨン35%、ピノ・グリージョ20%。親しみやすい味わいと、複雑なアロマを両立した人気作。

しっとり飲めるヴァン・ナチュールは最高だな。さっきまでのみなぎりはどこへやら。だんだん穏やか、かつ心地よくなってきました。アブさんオススメのツマミ、「黒さつま鶏たたき」(980円)、「いも豚恵庭ねぎ辛みそ炒め」(900円)も、甘辛ミックスで、杯がジャブジャブ進みます。ところで、アブさんのニックネームの由来ってなんでしたっけ? やきうとか、焼貝とかそんなんでしたっけ?

「黒さつま鶏たたき」(980円)。生柚子胡椒の辛さが冴えわたる!

「昔からね、面白いこと思いついたら、すぐ実行しちゃうんだよね。レッド・ホット・チリ・ペッパーズが好きで、とくにフリーが好きだったなぁ。詳しくは言えないけど、ペニスソックスとか、取り入れたもんね。そんなことばっかりやってたのよ」

ペニスソックスを着こなしに取り入れる──。どういうオケージョンでそれが求められるのか想像しづらいのですが、破天荒ゲージはMAXみ。そうした積み重ねから、“あいつは危ない=アブ”と自然と言われるようになったのでしょうか……。

「いも豚恵庭ねぎ辛みそ炒め」(900円)。豆板醤と甘いタレが絡み合ったあと引く味わい。ごはんとも相性抜群だ!

でも、「味処 高雄」みたいな、酒よしツマミよし、それでいて、騒がしい街から一歩引いた場所を“マイ飲み屋”に選ぶだなんて、大人の余裕を感じます。

「そうかな。飲んだら脱いじゃうよ?」

こんなにもすぐ脱いでしまう人が目の前にいると、自然と心が穏やかになる。さっきまで、ススキノだ! 狸小路クルージングだ!と騒いでいた自分は、いったいなんだったんだろう。ユタカはまたひとつ大人の階段を上りました──。

藤原さんは、続いて千代酒造の「篠峯 八反 純米大吟醸 中取り 生酒」をゲット。白桃のようなフルーティさに、抜けるようなキレが感じられる味わい。冷酒がうまし。

味処 高雄

住:北海道札幌市豊平区平岸一条7-3-6
TEL:011-833-0063
営:17:30〜23:00(火〜金)、16:00〜21:00(土)、15:00〜20:00(日)
休:不定

文・オオサワ系、岩田桂視(GQ) 写真・岩田桂視(GQ)