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30歳、マンションを買う──Vol.15 ヴィンテージ・マンションのリスク(特別編)

『GQ JAPAN』の編集者・イナガキ(購入当時30歳)が、ひょんなことから中古マンションを購入した! 快適に日々を過ごしていたものの、ここにきてトイレまわりに重要なトラブルが発生した! そのドタバタ劇とは?
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築50年超のマンションを購入した理由

新型コロナウィルス感染拡大直前の2020年3月、筆者は築50年超のマンションを購入し、引っ越した。

“ヴィンテージ・マンション”といえば聴こえはいいかもしれないが、ただの“古いマンション”である。

周囲からは、「そんな古いマンション、大丈夫?」「大地震が起きたらどうするの?」などと心配された。
Vol.1 なぜ今、この時期に購入!?
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が、立地と間取り、そして比較的手頃な価格に惹かれた筆者は、「まぁ、大丈夫だろう」と、思い、買うことにした。

築50年超だから最新のマンションに比べ設備は劣る。が、後付けのオートロックもあれば、ゴミ出しは24時間OK。駐車場も空きがあったし、共有部も比較的綺麗に保たれている。はじめてわが家に来た人は、たいてい「え?ここが築50年超のマンション!?」と、驚く。

巨大地震が発生したら、どうなるかわからない。なぜなら耐震診断を受けていないからだ。
Vol.3 新古物件という選択肢
Vol.4 今すぐには住めない!?
Vol.5 駐車場は運次第

もし診断を受けて基準に満たない場合、耐震補強工事が必要になってしまう。工事には莫大な費用が生じるため、修繕積立金のみで賄える可能性は低い。ゆえに、各戸から費用を徴収しなくてはならなくなるが、はたして全戸が応じてくれるかは不明だ。

もし応じてくれない場合、耐震補強の工事が受けられず、わがマンションは“耐震面に不安を抱えるマンション”というレッテルが貼られてしまい、資産価値が大幅に下がることになるはず。だから、耐震診断はあえて受けないのである。ちなみに古いマンションの多くは、耐震診断を受けていないのが実情だ。

もっとも、東日本大震災時の巨大な揺れに耐えたのだから、倒壊の危険性は低いらしい。それに、「もしも……」のことを考えたらキリがないし、耐震強度を満たしているマンションを探して、的確の物件があったとしても、価格が跳ね上がってしまうので、筆者の予算では到底買えない。ということで、気にしないようにした。

ちなみに筆者のマンションは、耐震補強の費用がまかなえるかどうかは別にして、修繕積立金はそれなりに蓄えていた。古いマンションのなかには、蓄えがないケースも多いと聞くから、安心である。これも購入理由のひとつになった。
Vol.6 ヴィンテージ マンション探しの旅へ
Vol.7 ヴィンテージ マンションと耐震性
Vol.8 管理体制は大丈夫!?

引越し早々のトイレ・トラブル

部屋はフルリノベーションしているため、とても築50年超とは思えない。来客者は「新築のマンションみたいだね」と、言ってくれるのが嬉しい。

設備も充実している。キッチンはビルトインの食洗機付きだし、リビングの窓ガラスは複層だから、外の音がほとんど入らない。在宅勤務が恒常化している今、わが部屋は快適なワーク・スペースにもなっている。

が、入居して早々トラブルが起こった。トイレが詰まったのだ。

とはいえ、当方の落ち度があったとは思えなかった。トイレットペーパーを大量に流した記憶もない。あわてて業者を呼ぶと、わが部屋のトイレの問題ではなく建物の配管側の問題らしい。しかも、トイレからはるか先の管が問題を起こしているようで、薬剤を投入しても流れは良くならず、その日のうちには直らなかった。
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翌日、あらためて来た業者が「カメラで状況を撮影しませんか?」と、提案してきた。修理時などに映像が役立つらしい。プラスで費用は発生するというが、念のため依頼した。

トイレを取り外し、早速作業に入る。太いケーブルを、トイレの配管へ慎重に入れていく。が、なかなかトラブルの箇所にたどり着けないようで、担当者が首をひねる。

慎重に作業を進めていくこと数時間、やっとのことでトラブル箇所に到達した。撮影されたカメラの映像を見せてもらったらが、びっくりするほど錆が付着していた。

「原因はこれです。鉄管部分のつまりですね」

これを直せばトイレが正常に使える! と、思ったものの、業者からは強烈な一言が……。

「これほどの詰まりの場合、今、応急処置を施したところで、いずれまた詰まると思います」

なぜ、そんな詰まりを放置したままマンションを販売したのか? と、売主に憤りを感じていたところ、これは売主の責任ではないとのこと。
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詰まっていた鉄管はマンションの共有部分にあるので、売主やリフォーム業者が勝手に交換や補修をしてはならない箇所になるのだという。共有部分はマンションの管理組合が管理する部分だからだ。それゆえ、詰まりの責任はマンションの管理組合にあるそうで、修理費用も管理組合が負担すべきものであるとのことだった。

わが部屋のトイレの修理費用は約12万円。「詰まるたびに10万円超の修理費用が発生したら本当に困るなぁ……」と、一瞬途方に暮れたものの、費用負担が発生しないのであればちょっと安心。後日、立て替えた修理費用は無事に振り込まれた。

これで平穏な日々を過ごせる、と、思ったものの、それは甘かった。やはり築50年超の事実を侮ってはいけなかった。悪夢の続きは次週報告する。