『エミリア・ぺレス』でトランスジェンダーを公表している俳優としてオスカー史上初めて主演女優賞にノミネートされるも、過去にSNSへ投稿していた数々の差別発言が発覚し、物議を醸しているカルラ・ソフィア・ガスコン。ジャック・オーディアール監督が彼女の言動を「許し難い」と非難したことを受け、自身のインスタグラムで謝罪の意を表し、自分が沈黙することで映画そのものが評価されることを願った。
2月6日(現地時間)、ガスコンは同作のお披露目となったカンヌ国際映画祭のレッドカーペットで、監督やほかのキャストたちとともに手を繋ぐ写真を投稿。「ジャックのインタビューを受けて、この映画とジャック、キャスト、素晴らしいスタッフの皆さん、そして全員で共にしたこの美しい冒険のために作品自体にのみ語ってもらうことを決意しました。私の沈黙によって、本作が愛と違いへの美しい讃歌として評価されることを願います。ここに至るまでの間、傷つけてしまったすべての方々に心からお詫びいたします」と綴った。
スペイン出身のガスコンは、オーディアールが監督と脚本を担った『エミリア・ぺレス』で、性別適合手術を受けるメキシコの麻薬カルテルのリーダーを演じ、ゾーイ・サルダナやセレーナ・ゴメスらとともにカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞するなど、高い評価を得ていた。だが、過去にイスラム嫌悪や人種差別、アカデミー賞における多様性への批判、そして当時すでに共演が決まっていたセレーナに対するヘイトをツイート(現X)していたことが1月下旬に発覚。過去の過ちを謝罪し、Xのアカウントを無効化したが、アメリカとイギリスでの配給権を持つNetflixや同作のオスカーキャンペーンを指揮するPR会社に相談なく出演した「CNN」のインタビューで、涙ながらに自己弁護し、あたかもキャンセルカルチャーの被害者であるかのように語ったことで、さらに批判が高まった。
オーディアール監督は『デッドライン』のインタビューで、「今、彼女には自分の言動を振り返り、責任を負うための時間が必要だから、私は連絡を取っていない」「彼女は、私にはどうしようもできない自己破壊のループに入っている。彼女が続けていることが、まったく理解できない。なぜ自分を傷つける行為をする? 彼女が、自分を被害者かのように語るのには驚かされる。まるで言葉は人に危害を与えないと思っているかのようだ」と苦言を呈した。
また、『エミリア・ぺレス』は数々の映画賞で多くのノミネーションを得ているものの、ガスコンの言動により賞レースへ影響が出ていることにも触れ、「彼女と親しい人に危害を与えている」と語っていた。
Text: Tae Terai
READ MORE