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黒人俳優らが『ロミオとジュリエット』キャストへのサイバー暴力に抗議声明

800人以上のアフリカ系女性&ノンバイナリー俳優たちが、舞台『ロミオとジュリエット』のジュリエット役フランチェスカ・アメウォダー=リヴァースに向けられる人種差別的で女性憎悪の暴力に抗議した。
Photo: Dave Benett/Getty Images

トム・ホランドとフランチェスカ・アメウォダー=リヴァースが主演を務める舞台『ロミオとジュリエット』の配役発表後、フランチェスカがネット上で人種差別的な誹謗中傷を受けていることに対し、800人以上のアフリカ系女性&ノンバイナリー俳優が公開書簡で抗議を示した。Netflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿』(2020)などに出演するスージー・ウォーコマラらが音頭を取り、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)のラシャーナ・リンチ、ローレンス・オリヴィエ賞を2度受賞のシェイラ・アティム、BBCドラマ「ドクター・フー」のフリーマ・アジェマン、マリアンヌ・ジャン=バプティスト、ロリー・アディフォープ、ウンミ・モサク、タマラ・ローランスら883名が署名している。

「黒人パフォーマー、特に黒人女優たちは、自分の仕事を見つけるという罪を犯したことで、あまりにも多くのオンライン暴力に晒されてきました」。手厳しい皮肉を用いて訴える書簡には、こう綴られている。「フランチェスカ・アメウォダー=リヴァースが、ジェイミー・ロイド製作の『ロミオとジュリエット』にキャスティングされた際、多くの人が祝い、歓迎しました。若手俳優にとって快挙ですから、私たちの多くはソーシャルメディアを通じ、かわいい妹に向けて愛と祝福をシャワーのように送りました。ビッグな新星の登場です」

「ところが、黒い肌を持つパフォーマーの多くが経験したことのある、ありふれた恐怖がこれに続きました。美しく愛らしい魂を持つ彼女に向けられた人種差別的で女性憎悪の暴力は、見過ごせないところまで来ました。配役の発表で火が付いた、この醜くよじれた暴力は、真に恥ずべきことです。空虚で非生産的な人生を送る人たちが、ヘイトに満ちた暴力で心を満たしているのです」

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ロンドン・ウエストエンドで上演される『ロミオとジュリエット』は、キット・ハリントン主演の『フォースタス博士』やトム・ヒドルストン主演の『Betrayal 背信』、エミリア・クラーク主演の『かもめ』など、古典作品を大胆に演出してきたことで知られるジェイミー・ロイド・カンパニーが手がける。カンパニーは4月5日(現地時間)、フランチェスカにヘイトが向けられていることに抗議声明を発表。「我々は全力でカンパニー全員をサポートし、守り続けていく所存です。いかなる暴力も許されるものではありません。通報していきます」としていた。

今回の書簡では、この対応を歓迎したうえで、「これまで、黒人アーティストが人種差別や女性嫌悪の暴力にさらされた際、あまりにも多くのシアターカンパニーや放送局、プロデューサー、ストリーミング会社がサポートや助けを適切に行ってきませんでした。ヘイトを受けた本人に対応を任せ、それでいてプロモーションを求めました」と訴え、積極的に対応してこなかった過去の制作者たちを非難している。

「フランチェスカと同様の暴力に直面しているすべての黒人女性パフォーマーたちに、はっきりとしたメッセージを送ります……私たちが見守っています。白人の共演者たちが直面するプレッシャーに加え、黒人女性に向けられるヘイトというトラウマになるようなハードルがあるなかで、アートを作り上げる皆さんを見守っています。皆さんが輝く姿を見て、とてもワクワクしています」

シェイクスピアの『オセロ』や『マクベス』、ソポクレスの悲劇『アンティゴネ』、BBCのドラマ「バッド・エデュケーション」などに出演してきたフランチェスカがジュリエットを演じる『ロミオとジュリエット』は、ロンドン・ウエストエンドのヨーク公劇場で、5月11日から8月3日まで上演される。ドラマ「クラウデッド・ルーム」公開後、俳優活動を一時休止していたトム・ホランドが、俳優デビューを果たしたミュージカル『ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~』以来久しぶりに舞台に復帰する。シェイクスピアによる言葉使いと押韻、愛と闘いを描いた不滅の物語を、脈動する新たな視点で描いた舞台となるそうだ。

Text: Tae Terai