「いま、ヴィンテージ・ミリタリーで好きなのはこの7着!」──ベルベルジン・ディレクター、藤原裕「ヴィンテージ百景」

藤原裕さんはヴィンテージ・ミリタリーにも造詣が深い。プロトタイプからパタゴニアまで現在のベスト・コレクションを教えてもらった!
L2 プロトタイプ

【はじめに】

ヴィンテージデニムから時計、ゴローズまで。原宿にある古着屋「ベルベルジン」のディレクター、藤原裕の周りには古くて新しいモノがころがっている。いまかれが注目しているヴィンテージウェアをはじめ、藤原裕の周囲で熱い“今”を発信する!

藤原裕 ベルベルジン
ギャラリー:「いま、ヴィンテージ・ミリタリーで好きなのはこの7着!」──ベルベルジン・ディレクター、藤原裕「ヴィンテージ百景」
Gallery27 Photos
View Gallery

こんにちは藤原裕です。今回紹介するのはヴィンテージ・ミリタリーです。昨今のヴィンテージ・デニムブームに隠れてあまり目立っていませんが、ミリタリーアイテム、特にUSものは昔から根強いファンが多いことでも有名です。フライトジャケットやフィールドジャケットなど種類も豊富で、ディテール使いも面白いですし、そして何よりタフな雰囲気はデニムと遜色なくかっこいいです。今回も20年近くかけて集めたコレクションを紹介いたします!

古いものほどディテールが面白い

最近はEUミリタリーも人気ですが、アメカジ好きの自分としては、やはりUSものに惹かれます。中でも、昔からフライトジャケットが大好き。僕にとっての最初のフライトジャケットは、バズリクソンズのB-10でした。その後、ベルベルジンに勤め、本物のMA-1やL-2B、B-15シリーズなど、様々な名作に袖を通してきました。今回はマニア垂涎のテストサンプルモデルや大好きなL-2シリーズなどを紹介します。ミリタリーウエアの魅力のひとつであるディテール使いと合わせて、チェックしてください。

L-2 テストサンプルのプロトタイプ

7年ほど前に原宿の「ヴォストック」で見つけて、一目惚れで購入しました。当時3万5800円でした。ミリタリーマニアの方に教えてもらったのですが、 L-2のシリーズの中でテストサンプルと呼ばれるものは、首裏に白いタグが付くそうです。でも、これにはありません。さらに調べてもらうと、これはタグがつけられる前のモデルではないかということでした。タグが外された痕跡もなく、おそらく40年代後半くらいのものだと思います。サイズ感もぴったりなので腕まくりをしながらよく着ていますが、知り合いのマニアな方たちに見つかると「それは着ちゃダメなやつ!」って怒られます(笑)

ミリタリーマニア曰く、世界に2着あるかないかというレベルの、超お宝ジャケット。ゆったり目のシルエットは藤原さんにぴったり。

ブラウンのリブは、G-1などで使用されていた通称”2段リブ”。そのディテールから、こちらのジャケットが40年代頃のものであるのがわかる。

2段リブは、ボディと接する上部分が太めのピッチであるの対し、裾方向にいくに連れて徐々に細めのピッチに変化しているのだ。

クラウン社のバネ仕様のジッパー、通称”バネクラ”は、B-15Cなどでも使われている人気ジッパー。しかもこちらは、引き手部分が通常よりも小さいものを使用している珍しい仕様。

右/L-2B、左/L-2A

L-2A、L2-B

フライトジャケットの中でも特に、L-2シリーズが大好きです。ボアが付属したタイプや、MA-1だとボリュームがありすぎで着こなしづらい。L-2は薄手で着やすく、あと初期型はエポレットやオキシジェン・タブなどがつくので、そういったディテールデザインも気に入っています。ライナーがオレンジ色の後期型のタイプはまだ市場で見かけますが、この年代のフライトジャケットは、なかなか出なくなりました。相場は3〜4万円で、決して安くありません。特にL-2Aは、見つかってもほぼタイトサイズのものなので、今っぽい大きめのものを探すのはさらに困難でしょう。

L-2Bが好きすぎて、藤原さんはこちらのローレンスポーツウェア社製のボディのもの以外に、サイズ違いであと4着ほど所有しているそう。

L-2Bが好きすぎて、藤原さんはこちらのローレンスポーツウェア社製のボディのもの以外に、サイズ違いであと4着ほど所有しているそう。

左下部分に施したL-2Bのパッチワーク。リペアされた跡だ。「パッチの形がオシャレなので、気に入っています」と藤原さん。

背中にもパッチワークが。たまにリフレクターを貼っているものもあるそう。同色&同素材がクールだ。

L-2Bの着丈の短さを、思い切ってカスタムした。洗濯による縮みから裾を引っ張り上げてしまっていた裏地をボディから切り離すと、着丈が10cmほど下がり、着やすいシルエットになったそう。

L-2Aの製造工場で有名なスペリオトッグス社製のもの。XLサイズはかなり貴重だ。

エポレット部分には、階級章をつけていた痕跡が。残念ながら残っているのはスナップボタンの受け側のみ。

1950年代 U.S. NAVY TYPE A-1 デッキジャケット

2〜3年前に、原宿にあるユーズドショップにて1万9800円で購入しました。デザインが気に入り、興味を持ったので色々調べてみるとU.S. NAVY TYPE A-1 デッキジャケットということがわかりました。しかもこれ、ナイロン仕様ですが、エアフォースではなくネイビーのジャケットなんです。購入するときにフードも探してもらったのですが、残念ながらいまだ見つかっていません。

藤原さんはどんなヴィンテージでも、デイリーウエアとして取り入れるのが信条。しかし、レア度の高いこちらのジャケットは、まだ数回しか着ていないそう。

大きくプリントされた「SIZE MEDIUM」が目を引く。その上に小さく「NAVY DEPARTMENT」の文字が。目の細かなアクリルボアがついている。

防寒性を考慮し、フロント部分はジップ&スナップボタンを用いた比翼仕立てだ。

パタゴニア MARSシリーズ

2000年代初頭よりパタゴニアで展開していたミリタリーラインです。現在は、生産終了しています。このシリーズは、米軍に納品するために製造され、日本ではほぼ市場に出回りませんでした。なので、レアアイテムとしてミリタリーファンから人気が高いです。ちなみにMARS(マーズ)とは(Military Advanced Regulator System)の略称です。年代によって胸もとにブランドロゴが入るものとそうでないものがあり、“ロゴなし”の人気が高いです。マウンパやダウンジャケットの“ダスパーカ”など色んな型があるのですが、個人的にはこれが一番のお気に入りです。竹下通りにある「フラミンゴ」で、1万2800円で買いました。

背面はフィッシュ・テール。この独特のシルエットがいいと、藤原さん。自転車に乗る時などに着用するそう。

軍で実際に使用されていたもの、もしくは軍に支給したにも関わらず、使われずにデッドストックの状態で見つかるなど、市場への出回りかたはさまざま。製造年代などを調べる際は、内側のラベルがヒントになる。

2000年代初頭に製造された古いモデルは、左胸部分に「Patagonia」のネームテープがついていない。

内側の様子。ナイロンやメッシュを用いた作りだ。ミルスペック表記のタグなどはない。

60年代 ファティーグジャケット

若い頃は、おじさんが好きそうなジャケットだなと思っていたのですが、実際自分がその年令に近くなり、その魅力がわかりました(笑)。コンディションが良かったことに加えて、後期型がリップストップコットン仕様であるのに対し、これはノンリップと呼ばれる前期型だったこと、あとデッドストックだったこともあって買いました。自分が20代の頃にお世話になっていたかっこいい先輩方が着ていて、ずっと憧れていたこともあり、結構探してようやく見つけました。

サイズ表記はミディアム・ショート。羽織った際に少し肩が落ちる感じがお気に入りなのだという。ちなみに藤原さんはラージ・ショートも所有しているそうだが、こちらはわりと大きめなサイズ感なのだそう。

先ほどのファティーグジャケットと同じ型。その見た目から”グリーンリーフ”と呼ばれ、1960年代に普及したもの。肩部分のエポーレットと、サイドアジャスターがついていないのが特徴。

黄緑のような、迷彩柄としてはやや明るい色味がお気に入りという藤原さん。ちなみに同年代製の同じカモ柄でも、ブラウンリーフと呼ばれる茶系がベースとなった柄も存在するという。

藤原さんはロンTの上から羽織り、その上からコートを着てコーディネートのアクセントのような使い方をするという。M-65ほど重たくないからシャツ感覚で着られ、レイヤードにも最適なのだ。

取材をおえて──

M-51パーカをはじめ、ストリートではいまミリタリー人気がじわじわと盛り上がっています。ミリタリーアイテムは飾り気がなくたくましいデザインが魅力です。ミリタリーウェアの世界もディープで、今回紹介したUSミリタリーだけでも相当堀りがいがありますね。またUSに限らず、ヨーロッパのサープラスものも面白いです。USものとはまた違った雰囲気と、背景があり、同年代のモデルを見比べてみるのもいいですね。軍モノ古着を眺めてたら、甲類焼酎一升瓶ぐらいすぐに空いちゃいますよ!

PROFILE

藤原裕(ふじはら・ゆたか)

ベルベルジン・ディレクター

原宿のヴィンテージショップ『ベルベルジン』顔役。ヴィンテージデニムマイスターとしても認知されている一方、多くのブランドでデニムをプロデュースするなど、現在のデニム人気を担っている。こんかいの取材場所は、できたてほやほやの藤原さんの作業場兼アルコール補給基地「ベロンペロン・陣」(事務所)でした〜。なおここでは現在、キープボトルを募集中。条件はアルコール度数13度以上!

毎日更新! YouTube「ベルベルジンチャンネル」はこちら!

文・オオサワ系 写真・湯浅亨