《編集局長が会いに行く・後記》小田原を訪ねて本当に良かった “巻き込まれ力”で課題を超える魅力
4月2日付の「編集局長が会いに行く」は、湘南ベルマーレフットサルクラブ社長の佐藤伸也さんにご登場いただいた。プロスポーツは勝利と観客動員が使命。それと同じくらいに、社会貢献を事業の柱に据えている点が興味深く、取材を申し込んだ。ファンとつながりを強めたり、社員の意欲を高めたりといった仕組み作りから土台にある考え方も新鮮で、繊維・ファッションビジネス業界のヒントになるのではないだろうか。
(若狭純子)
ミスマッチを極力避ける努力
私の頭の中には、「競技で勝つために幼い頃から多くの時間を費やしてきた選手たちが、地域貢献の活動にすぐさま取り組めるものだろうか。主体的に続けられるとしたら、秘訣はあるのだろうか」という疑問があった。
それは、取材を通して、みるみる氷解していった。
佐藤さんは普段から「感動する仕組みから考えて、順番があるよね」と話し、契約更改の際などにも確認しているという。例えば、地域への貢献活動から始めるファン作りという取り組みが、少々まどろこしいと感じるような選手、つまり、競技にだけ専念したいのだという選手とは契約しないそうだ。社会活動はチームの成長に有効な手段と明言しているため、そこに共感できないなら互いに良くないし、長続きはしないからと、はっきりしている。
とはいえ、ミスマッチも起こるし、互いに「揺れ動く」ことはあるという。象徴的なのが、ファンに罵倒された時だ。「社会課題解決なんてやってるから、負けたんじゃないのか?」などという声が観客席から飛んで来る。他のチーム以上に、すり減るだろうと察するが、それでも、ビジョンやミッションに立ち返れば、自分たちの行っていることは間違っていないし、理解して応援してくれているファンもいると前を向ける。
もともと厳しい目にさらされるプロのピッチに立つからだろうか、ネガティブな力も「飲み込む力があるようにも思う」と佐藤さん。実際、応援の声はポジティブな方が多いため、選手たちにはSNSなどの発信は個人でも積極的に行うよう促しているという。全体の数%に過ぎない罵声に負ける必要はないと、データも使って伝えているそうだ。
アスリートのセカンドキャリアを考える
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